トルコはチャイです。トルココーヒーがよく飲まれているのかと予想していましたが、予想が見事に外れました。チャイは、「仕事中に一休みするとき」「仕事をしていない人も一休みで」「仕事中も」「食後にデザートと一緒に」…日常の様々な場面で、実によく飲まれておりました。
チャイは、紅茶を煮出したもの。「ウサギの血」という呼び名もあるほど濃い。陶器のカップではなく、ガラスのコップで飲む。砂糖を入れる…。飲みだすと、クセになります。私も、休憩の度に飲んでいました。
地中海のイスタンブル(以下IST)側を、エーゲ海と呼ぶ。エーゲ海は、ダーダネルス海峡へつながる。海峡を抜けるとマルマラ海がある。その先が、ボスポラス海峡で、ボスポラス海峡は黒海へ続いている。
ISTから、ボスポラス海峡クルーズが出ている。野次馬としては、もちろん乗り込んだ。12月のISTとしては暖かい日とのことで、2階のデッキへ出ていられた。橋の上からの釣り人や、岸に連なる釣り人を眺めていた。
60歳前後のチャイ売りのオジサンが、お盆に10杯ほどのチャイを載せて売りに来た。たちまち売り切れた。私もいただいた。ボスポラス海峡で飲むチャイは、熱く甘く…実に美味い。「チャイ」という音が、田舎者の年寄りには心地よく響きます。たかが、砂糖入りの紅茶なのですが。
チャイ売りのオジサン、大いに気を良くして駆け足で階下の厨房へ戻った。そして、新たに煮出した10杯ほどのチャイを売りに戻ってきた。ドジョウはそれほどいなかった。2杯だけ売れ、残りをもってすごすごと引き上げた。正確には引き上げようとした。
右手にチャイの盆を持ち、左手でデッキから下へ降りるドアを開けようとした。なかなか開かない。見かねた私が手を貸そうとしたら、微笑みながら制止した。そして、勢いよく開けようとしたら、こともあろうにドアが外れて倒れてきた。驚いたオジサンは、当然抑えようとしたが、船のドアは鉄製で50kgは十分ある。片手で押さえられるようなものではない。よって、オジサンは、右手も使った・・・。しかし、ドアは倒れ、分厚いガラスが飛び散った。相前後して、チャイのガラスコップもソーサーもド派手な音と共に砕け散った。ブチ撒かれたチャイが惨めさを一層引き立たせた。
ナスレディン・ホジャは、このチャイ売りオヤジのいきさつをどの価値観でとらえるだろうか…
1 欲を出すと損をする
2 片手でドアを開けるな
3 人の好意は受け入れろ(私がドアを開けてあげようとした)
4 チャイの出張販売はやめろ
彼は、この日、「ISTで最も不幸なオヤジ」だったと思う。
しょんぼりと、ガラスのかけらを片付けるオヤジ…泣いてはいなかったが…。チャイのガラスコップはそれほどの臨時出費ではない。問題は、船のドアのガラス。彼が弁償しなければならないとなると、給料1週間分には相当するだろうなあ…。
チャイは、紅茶を煮出したもの。「ウサギの血」という呼び名もあるほど濃い。陶器のカップではなく、ガラスのコップで飲む。砂糖を入れる…。飲みだすと、クセになります。私も、休憩の度に飲んでいました。
地中海のイスタンブル(以下IST)側を、エーゲ海と呼ぶ。エーゲ海は、ダーダネルス海峡へつながる。海峡を抜けるとマルマラ海がある。その先が、ボスポラス海峡で、ボスポラス海峡は黒海へ続いている。
ISTから、ボスポラス海峡クルーズが出ている。野次馬としては、もちろん乗り込んだ。12月のISTとしては暖かい日とのことで、2階のデッキへ出ていられた。橋の上からの釣り人や、岸に連なる釣り人を眺めていた。
60歳前後のチャイ売りのオジサンが、お盆に10杯ほどのチャイを載せて売りに来た。たちまち売り切れた。私もいただいた。ボスポラス海峡で飲むチャイは、熱く甘く…実に美味い。「チャイ」という音が、田舎者の年寄りには心地よく響きます。たかが、砂糖入りの紅茶なのですが。
チャイ売りのオジサン、大いに気を良くして駆け足で階下の厨房へ戻った。そして、新たに煮出した10杯ほどのチャイを売りに戻ってきた。ドジョウはそれほどいなかった。2杯だけ売れ、残りをもってすごすごと引き上げた。正確には引き上げようとした。
右手にチャイの盆を持ち、左手でデッキから下へ降りるドアを開けようとした。なかなか開かない。見かねた私が手を貸そうとしたら、微笑みながら制止した。そして、勢いよく開けようとしたら、こともあろうにドアが外れて倒れてきた。驚いたオジサンは、当然抑えようとしたが、船のドアは鉄製で50kgは十分ある。片手で押さえられるようなものではない。よって、オジサンは、右手も使った・・・。しかし、ドアは倒れ、分厚いガラスが飛び散った。相前後して、チャイのガラスコップもソーサーもド派手な音と共に砕け散った。ブチ撒かれたチャイが惨めさを一層引き立たせた。
ナスレディン・ホジャは、このチャイ売りオヤジのいきさつをどの価値観でとらえるだろうか…
1 欲を出すと損をする
2 片手でドアを開けるな
3 人の好意は受け入れろ(私がドアを開けてあげようとした)
4 チャイの出張販売はやめろ
彼は、この日、「ISTで最も不幸なオヤジ」だったと思う。
しょんぼりと、ガラスのかけらを片付けるオヤジ…泣いてはいなかったが…。チャイのガラスコップはそれほどの臨時出費ではない。問題は、船のドアのガラス。彼が弁償しなければならないとなると、給料1週間分には相当するだろうなあ…。