ボクはスポーツノンフィクション作家の山際淳司さん(残念ながら既に故人)が好きで、彼のスポーツエッセイ集「スローカーブをもう一球」は、購入して20年以上経った今でもボクの本棚の永久保存書籍の1冊です。このスポーツエッセイ集の中に「江夏の21球」というのがあるんですが、若い人たちは知らないでしょうね。
これは1980年のプロ野球日本シリーズ「近鉄対広島」の第7戦、9回裏に江夏豊が投げた21球だけをドキュメントしたものです。広島4-3近鉄で迎えた9回裏、1アウト満塁のピンチの場面で江夏がどのように投球したかということを、そのときのバッターや監督や江夏自身に取材しながら構成した文章です。
他にも高校野球をテーマにした表題の「スローカーブをもう一球」や、幻のモスクワオリンピックのボート競技の日本代表・津田選手(シングルスカルの津田)を描いた「たったひとりのオリンピック」など、彼の書く文章は徹底した取材に基づく「スポーツ心理」が描かれていて、とても魅力的なのです。
なんで「週アル」でこんな話をするかというと、ジュビロ磐田戦で発売された「アルビレックス新潟プレビュー8号」を読んでいたら、山際氏の文章を初めて読んだ時の感動がよみがえってきたのです。
今回発売された「プレビュー」の中にある「絆の8秒」という特集記事は、山際氏のスポーツエッセイを思わせるような素晴らしい内容だったと思います。サッカーというスポーツのゲームの一部分を切り取り、選手や観客の心理にまで言及しながら文章で表現することによって、こんなにも読み手を「ドキドキさせる」ってことを再認識させてくれましたね。
「絆の8秒」:これは10月6日の大宮戦。連敗を4で止め、ホームで8試合ぶりの勝ち星となったあのゲームの、ロスタイムで起きたエジミウソンの感動の決勝ゴールについて、それぞれの選手の心理状態も含めて記載した4ページの特集記事です。ロスタイム、アルビのゴール前での波状攻撃。中野洋司のセンタリングからエジミウソンの決勝ゴールまでの8秒間、6度のボールタッチ。これを、センタリングしたヒロシ、相手のクリアボールを拾った三田、ゴール前に詰めていた河原、交代でベンチに下がっていた寺川、この4者の目でドキュメントタッチで「気持ち」に注目して描いています。
「プレビュー」の記者さん、すごいわ。大拍手! 正直言って、ボクは驚きましたね。素晴らしい記事だったと思います。こんな記事をどんどん書かれたらサポーターとしては嬉しくてたまりませんね。ありがとうございました。
そうそう、今回のプレビューは「北野のインタビュー」「勲のインタビュー」「アルビ戦士の握力コンテスト」なども、とっても面白い企画でした。ブラジルでは体力テストはやらないんですね。これで300円は絶対に安い!