おとのくに♪♪

生徒さんのピアノレッスンで感じたこと、考えたこと、コンサートの感想などポツポツ綴っています。

ボリス・ギルトブルグ ピアノリサイタル 2018年11月2日

2018年11月02日 | コンサート情報
私にとっては、昨年の「東京・春・音楽祭」以来2度目のギルトブルグのリサイタルです。

<プログラム>
ラヴェル:クープランの墓
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番「熱情」
          休憩
ショスタコーヴィチ(ギルトブルグ編):弦楽4重奏曲第3番
プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第3番

休憩後の2曲はギルトブルグお得意の世界です。

ショスタコは2番、8番もご自身でピアノ用に編曲していますが、今回は3番。

ギルトブルグ自身の解説によると、

「なぜこの作品をピアノに編曲する必要があったのかと問われれば、私はショスタコーヴィチの大ファンであり、切に自分で演奏したいと思ったからである。」

とあります。

それが本当に伝わってくる演奏でした。
打楽器的な要素があり、ピアノ曲でも成立します。
この曲の世界を表現したいと思うのもわかるなぁと思いながら聴いていました。
ピアノの方がより無慈悲な感じが表現できるように思います。

この作品は<戦争カルテット>とも言えるそうで、当初各楽章に次のようなタイトルが付けられていたそうです。

1嵐の前の静けさ
2不穏な物音と予感
3解き放たれた戦争の力
4死者へのオマージュ
5永遠の問ーなぜ?そして何のため?

出版に当たりこれらのタイトルは取り除かれたそうで、それは第2次世界大戦直後のソビエト政権に受け入れられなかったのだろうとのこと。さらに数回の演奏後この曲はショスタコーヴィチ自身が完全に取り下げてしまったそうですが、スターリンの死後ようやく再演されたそうです。

第3楽章、つらい曲でした・・

今、オリジナルの弦楽四重奏の演奏を聴いていますが、壊滅、破壊、苦痛、不吉といったものはもしかしたらピアノの方が伝わるかもしれません。

この曲はタブレットを譜面台に置いて足元でご自身で譜めくりをして演奏されていました。
ほとんど暗譜されていたので譜めくり時も画面を見ずに足だけ動かし譜めくりしていらっしゃいました。

無駄な動きがないので弾いている感じがしない時もありました。
ソフトペダルを多用していないのにそのような音が自力で作れる。
ノンペダルなのに響く。
単旋律なのに数人で弾いているかのような太く芯のある音が出せる。

そして決してセンチメンタルにならない詩情。
人の世の無常を静かに語る若きピアニスト。

今回はサインは戴かなかったので帰り際にサインをされているお姿をチラリと拝見しただけですが、青い眼がキラキラ美しく輝いていらっしゃいました。
コメント
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