湖水地方寺坂 小迪文藝春秋このアイテムの詳細を見る |
年末に読んだ小説。
「湖水地方」「シャルル・ド・ゴールの雨女」の二編収録。
著者は1978年生まれだそうで、若い世代だけに「今」を捉える感覚が優れているな、というのが第一印象。
「湖水地方」の湖、「シャルル・ド・ゴールの雨女」の空き地を潰してできた広大な公園などの情景の無味乾燥さが、「今」という時代をよく表しているように思えます。
個人的には「シャルル・ド・ゴールの雨女」のほうが好み。
空港のカフェでの短い時間の会話と回想を切り取った作品ですが、テンポラリーな舞台設定と、主人公の極めてプライベートな(他人から見れば取るに足らない、しかし本人にとっては深刻な)煩悶とのバランスが、妙味のある抒情性を生んでいます。
「湖水地方」のほうは、妹が体調を崩して嘔吐した…という始まり方がいきなりベタさを感じさせるオープニングで、やや萎えました。
最後に、突飛に葦舟が登場するあたりの唐突性は嫌いじゃないですが。