そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

製造業派遣を巡る動向の実像

2009-01-24 21:23:59 | Economics

本日の日経新聞朝刊企業面「雇用 派遣業界に聞く 下」パソナグループ南部靖之代表のインタビューから以下メモ。

-製造業派遣の契約打ち切りについて要因をどうみているか。

「製造業が各地に新設した工場の労働力は二、三年前まで、期間工など直接雇用の非正規社員だけでなく請負社員にも依存していていた。工場長は請負社員に直接、指揮命令できない。繁忙期なので三十分残業してほしいなどと指示すれば法に抵触する」

「一部製造業が請負社員に指示を出していたことが偽装請負といわれ、厚生労働省は各社に直接雇用か派遣社員に置き換えるよう求めた。そのころ製造業への派遣期間を三年に延ばす制度変更が重なった。その契約期限が今年に集中する。期限切れを前に製品の売れ行きが目に見えて悪くなった昨秋から、工場側は派遣契約の打ち切りを前倒しで始めた。派遣打ち切りの背後にそうした構造要因がある。コンプライアンス不況の一種だ」

「小泉の規制緩和路線が身分の不安定な派遣社員を多く生み出した」みたいな「物語」が、如何に一面的な見方であるかがよくわかる。
製造業という業態にとって景気変動による雇用調整が必須命題である以上、製造業派遣を禁止したところで、請負の復活など他の形態での非正規雇用に置き換わるだけだろう。
それよりも雇用からあぶれた人たちへのセーフティネット構築や、社会全体の雇用流動性を高めることのほうが余程重要なことのように思います。

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社会保障負担増と労働インセンティブ

2009-01-24 00:48:13 | Economics
1月23日(金)日経新聞朝刊「経済教室」、加藤久和明治大学教授の論文から備忘のため以下メモ。

・社会保障負担(租税と保険料の合計)の対GDP比を国際比較すると、日本はOECD加盟30カ国中下から3番目(27.3%)と低い(最も高いのはスウェーデンの49.8%!)。
・が、だからといって、単純に日本では租税や社会保険料の負担増を受け入れる余地が大きいとも言えない。
・なぜなら、国際的な実証分析の結果、租税・社会保険料の比率引き上げは経済成長率を低下させることが分かっているである。
・負担の増加が労働者の労働インセンティブ低下をもたらすことなどがその要因である。
・結局は、社会保障などの所得再分配を賄う負担を優先する(公正性の重視)か、経済成長によるパイの増大を優先する(効率性の重視)かのトレードオフ問題となる。
・日本において社会保障負担拡大が避けられない以上、経済成長(効率性)をできるだけ損なわないような負担の仕組み構築が重要。
・消費税引き上げは、所得税負担増よりも労働インセンティブを損なわない点で望ましい。
・また、同じ理由で、基礎年金部分の財源を租税で賄う方が、報酬比例の社会保険方式よりも望ましい。

ベーシックインカム論や年金改革(税方式)論とも通じる話だけど、やっぱりここで論じられている通り、セーフティネットはフラット税率の租税で賄い、高報酬へのインセンティブは残すような制度がいいような気がするなあ。
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