今日の日経新聞朝刊「経済教室」山下一仁・東京財団上席研究員の論文「農業ビッグバン今こそ」より。
日本の米価(60キログラム当たり)は国内需要の減少により十年前の二万円から一万四千円に低下したが、日本が輸入している中国産の価格は二千円から一万円にまで上昇している。減反をやめれば、米価は約九千五百円に低下し、国内の需要は一千万トン近くに拡大する。輸入米よりも国内価格が下がるので、事故米の原因ともなったミニマムアクセス米は輸入しなくてもよい。関税も要らなくなるので世界貿易機関(WTO)や自由貿易協定(FTA)交渉で後ろ向きの対応をしなくて済む。
価格低下によって、新しい需要を取り込むことができる。減反のおかげでおいししいコメへの品種改良は進んだ。食味では世界に冠たる日本米が価格競争力を強化すれば、発展するアジア市場に参入できるようになる。減反を廃止するだけで輸出が視野に入り、さらに規模を拡大すれば輸出を活発に行えるような価格状況になる。輸出価格はさらに上昇するだろう。中国が都市部と農村部の一人当たりの所得格差が三倍以上に拡大しているという三農問題を解決していくと、農村部の労働コストが上昇し、中国の農産物価格も上昇していくからだ。
日本米と中国米の価格差がここまで接近しているとは俄かには信じがたい気もするけど、こういう話をきくと農業問題に対する見方も変わってくる。
環境や医療・介護と並んで「成長分野」に農業を挙げるのは既に紋切り型になってしまっている印象ですが、このようなストーリーを描いて農業の生産性を語るのはちょっと夢があっていいな、と思います。