勝間和代女史が菅直人大臣にリフレ政策をプレゼンしたとのニュース以来、ここのところデフレを巡る議論が花盛りです。
で、実体経済の方はと云えば…
政府、デフレ懸念明記を検討 月例経済報告で(共同通信) - goo ニュース
政府は16日、日本経済が物価の持続的な下落状態にあるデフレに陥る懸念が高まっていることを、月例経済報告で明記する検討に入った。デフレの表現が復活すれば06年8月以来。早ければ20日発表の11月の報告に盛り込む。16日発表の7~9月期のGDP速報値は、物価動向を示す国内需要デフレーターが51年ぶりの下落幅を記録。デフレ懸念を明言することで、景気重視の姿勢を明確にする狙いがあるとみられる。
…とのことであります。
日本経済がデフレ傾向にあることは衆目の一致するところだと思ってたんですが、ダイヤモンド・オンラインで、野口悠紀雄氏が、その見解に疑問を投げかけるような記事を書いています。
物価下落の実態は相対価格の変動 真に危惧すべきはデフレよりインフレである!(野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む 2009年11月14日)
詳細はリンク先を読んでいただくとして、氏の主張を要約すると、以下の通り。
・「デフレ」とは、すべての財・サービスが一様に低下することである。
・が、現状はモノ、特に工業製品の値段が長期的に低下している一方、サービスの値段は下がっていない。
・これを単純に「デフレ」と捉えてマクロ経済政策を施すと的外れになる。
・相対価格の変化に対しては、経済行動の変化で対応すべき。
・消費者の立場では、モノを使ってサービス消費に代替すべき。雨が降ったらタクシーに乗るよりも、使い捨てで構わないのでビニ傘を買った方がよい。
・供給者の立場は逆に、モノを作るのをやめてサービスで稼ぐビジネスモデルに転換すべき。
・ところが日本ではそのような経済全体の産業構造の転換が進んでいない。これはおかしな状態だ。
現状がデフレか否かという定義論争は取りあえず置いておいて、野口氏の言うように日本経済の産業構造転換が進んでいないことが、問題のコアなところにあるというのもまた多くの論者が意見を同じくするところ。
だけど、産業構造の転換って、云うは易し行なうは難しで、何十年も自動車や電化製品作って、世界中に輸出して稼いできた成功体験が染みついていると、そうそうモノづくり脱却の機運も出てこない。
労働者の側だって、長年製造現場で働いてきた人々が、いきなり環境だ介護だ農業だと云われたところで、わかっちゃいてもやめられない。
結局は総論賛成各論反対で身動きが取れず、政治も旧来の産業構造を延命するバイアスがかかってしまう。
いやはや改めて高度成長の亡霊は厄介なのであります。