そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

コア競争力を捨てる

2011-10-05 23:29:29 | Economics

日が経ってしまいましたが、日曜日(2日)の日経新聞朝刊の「世界を語る」というインタビュー面で、クレイトン・クリステンセン氏というハーバード経営大学院の教授が、なかなかいいことを語っていたので、以下メモしておきます(太字は引用者による)。

「トップは往々にして収益の大部分を稼ぐ中核事業に注力しがちだが、実は中核事業は既に稼ぐ仕組みができあがっており放っておいても回るものだ。トップはむしろ将来の収入をどう稼ぐか考えることに集中すべきだ」

-利益率の追求は当たり前では。

「デルは台湾メーカーにまずパソコンの回路基板を、次にマザーボードを、最後に完成品の組み立て全体をアウトソースしていった。コストと資産が減り、純資産利益率が上がるからだ。台湾メーカーはデルに『組み立てはデルのコア競争力ではない』と提案し、デルもそう思った。だが気づくと全米の量販店に価格の安い台湾製の同等品が並んだ。デルは利益率を追求することで国内雇用を減らし、自らの競争力まで弱めた」

-自らのコア競争力を見誤っていたのが問題では。

実は経営判断においてコア競争力は重要ではない。眼前に見えているコア競争力とは過去に成功をもたらした能力のことだからだ。経営者が注目すべきは変化する世界のなかで今後どんな能力が必要なのかという問題なのだ」

<中略>

「企業経営で危険なのが将来キャッシュフロー(現金収支)という物差しだ。ある事業が今後生み出す現金黒字を予想し、事業に必要な投資額を銀行預金や国債での利息収入と比べて、投資すべきか判断する。しかし何も新規投資しなければ企業は衰退する。つまり新規事業への投資と比較すべき対象は預金利息ではなく、衰退というマイナスの価値だ。経営大学院や株式市場で常識になっているこの投資家視点の物差しが企業にまん延すると革新が実行されにくくなり、国全体の成長力、雇用成長力を弱める。米国ではそれが起きていると思う」

まさに本質。
キャッシュフロー計画に縛られると、新しいこと何もできなくなっちゃう。
うちの職場のトップも「強みを生かした上で変革を!」なんて言ってるけど、自家撞着なんだよね…

コメント (1)
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