そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

『ハプスブルク家』 江村 洋

2013-10-16 22:48:29 | Books
ハプスブルク家 (講談社現代新書)
江村 洋
講談社


世界史という科目の取っつき難さは、地球上の様々な地域の歴史がパラレルに語られるがために(だからこそ「世界史」なのだけど)時代が行きつ戻りつせざるを得ないところ。
また政治史・経済史・文化史など同じ地域でも流れが複数走り、且つ、それぞれが結びつきを持っているがために、ちょっと齧ったくらいだとなかなかその全体像をイメージするのが困難であるところにあると思います。
基本的に一本のシリアルな流れで概観することのできる日本史とは大きく異なるところ。

その取っつき難さを解消するための方策として、基軸を一本決めてその軸を中心に周辺を眺めることにより、シリアルな視点を導入してみるというのが効果的なやり方の一つになるのではないかと思います。
その点では、ハプスブルク家というのは格好の基軸になってくれる存在。
なんたって、王朝の始祖・ルードルフ一世が神聖ローマ帝国の王位に就いたのが1273年、そして最後の皇帝フランツ・ヨーゼフが逝去して王朝が途絶えたのが1916年、13世紀から20世紀まで欧州国際政治のメインプレーヤーを務めたのだから。
欧州の近代史イコールハプスブルク家の歴史といっても過言ではないほどであります。

16世紀、神聖ローマ帝国の領土に留まらずスペインやイタリアまで版図に収めたハプスブルク家は、最大のライバル・フランス王家と激しく争うことになりますが、その過程で、フランスはハプスブルク家に対抗するために本来宗教的に相容れないはずの新教徒勢力やトルコとまで結ぼうとする。
敵の敵は味方、という国際政治の本性を実感させられます。

しかし、本書を読んでから『もう一度読む山川世界史』を読み返してみると、世界史教科書におけるハプスブルク家の皇帝たちの存在感が意外なほど薄いことに驚かされます。
マクシミリアン一世、カール五世、フェリペ二世、マリア・テレジアがそれぞれ一箇所ずつ登場するくらいで、ルードルフ一世やフランツ・ヨーゼフなど名前すら出てこないんだよね。
こうやって通史的に語られれば新書一冊分の大河ドラマになるというのに。

本書は、1990年に初版が出たものですが半数を重ねて読み継がれているようです(著者は故人)。
自分のような素人が歴史の流れを大掴みにするには最適の一冊であります。

もういちど読む山川世界史
「世界の歴史」編集委員会
山川出版社
コメント
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