薬指の標本 | |
小川洋子 | |
新潮社 |
Kindle版にて読了。
表題作『薬指の標本』と『六角形の小部屋』の2編収録。
実は、初・小川洋子だったりする。
『薬指の標本』は、ちょっと村上春樹の世界観にも通じる印象。
まずは「標本にする」という行為に着目したセンスには感心する。
主人公の女性が、無意識のうちに危うい香りのする状況に入り込んでいく過程の、長閑な一方微妙に恐ろしげな空気感にの描出が秀逸と思う。
『六角形の小部屋』も日常から繋がったちょっと不思議な異空間を舞台にしている点は共通。
が、こちらの設定はややありきたりかな、という気はする。
むしろ、男には窺い知れない、女性にとっての恋愛感情(が消長する瞬間)が作品に刻み込まれているところにドキッとした。
いずれも小品だが、先を読ませる力はある。
が、オリジナリティという点では今一歩であるようにも感じた。