一瞬の雲の切れ間に | |
砂田 麻美 | |
ポプラ社 |
小学生の男の子が犠牲となった交通事故を巡る人間模様を描いた5編の連作。
小さな生命の「死」が、周囲の「生」に対して与える影響を描こうというのが著者の意図なのだろう。
そのあたりの意図は、事故に直接関わりを持たない人物が突如語り部として登場する最終話によく現れている。
が、個人的には、「死」の部分についてはあんまり響くものがなくって、夫婦という明確な線引きの内外で、女と男が、時に傷つけあい癒しあう関係の機微を描く繊細さのほうに魅かれた。
特に第1話の不倫に流れ落ちていく女性の心理の細かな描写は印象深い。
著者自身が女性なだけに、その他も女性の心理描写には深みを感じるのだが、逆に男性の登場人物の造形にはなんとなく作為性を感じてしまうのである。