死んでいない者 | |
滝口 悠生 | |
文藝春秋 |
今年の芥川賞受賞作。
好みだ。
何も起こらずだらだらと一夜の出来事が連ねられるだけなのに、思わず読み進めてしまう。
基本的に、大家族ものは好きなのだ。
家族というより親族だけど。
考えてみると、親族って不思議な関係だ。
まず血が繋がっている、という前提がある。
ただし、配偶者になると血縁にはない者も混じる。
長い年月の共通体験を共有している。
ただ、共通体験といっても、それこそ冠婚葬祭や正月の集まり程度のもので、日常生活は別々に営んでいる。
中には、いがみ合ったり、関係性からドロップアウトする者も出る。
葬式の晩、一夜を過ごす親族一同の様子を切り取った話だが、登場人物の誰一人悲しんでいる様子がないのがリアル。
でもやっぱり、どこかしみじみとしている。
かつて自分が経験した、親戚の葬式の様子もこんなんだった気がする。
兄弟姉妹がたくさんいるのが当たり前の時代だからこそ、だけど。
このご時世に、未成年飲酒をかなり大っぴらに描く大胆さにも心意気を感じる。