そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

『死んでいない者』 滝口悠生

2016-06-09 23:17:58 | Books
死んでいない者
滝口 悠生
文藝春秋


今年の芥川賞受賞作。

好みだ。
何も起こらずだらだらと一夜の出来事が連ねられるだけなのに、思わず読み進めてしまう。

基本的に、大家族ものは好きなのだ。
家族というより親族だけど。

考えてみると、親族って不思議な関係だ。
まず血が繋がっている、という前提がある。
ただし、配偶者になると血縁にはない者も混じる。
長い年月の共通体験を共有している。
ただ、共通体験といっても、それこそ冠婚葬祭や正月の集まり程度のもので、日常生活は別々に営んでいる。
中には、いがみ合ったり、関係性からドロップアウトする者も出る。

葬式の晩、一夜を過ごす親族一同の様子を切り取った話だが、登場人物の誰一人悲しんでいる様子がないのがリアル。
でもやっぱり、どこかしみじみとしている。
かつて自分が経験した、親戚の葬式の様子もこんなんだった気がする。
兄弟姉妹がたくさんいるのが当たり前の時代だからこそ、だけど。

このご時世に、未成年飲酒をかなり大っぴらに描く大胆さにも心意気を感じる。
コメント
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