今日の日経新聞朝刊、終面文化欄の鳥越規央・東海大学准教授のコラムより。
一点差で負けている9回裏ノーアウト走者一塁の状況、日本の野球においては「手堅く送りバント」というのが定石ですが、数学的・統計学的にはそれは合理的な選択ではないとのこと。
筆者が日本プロ野球の過去データを分析したところによれば、9回裏ノーアウト一塁における後攻側の予想勝率は32.11%であるのに対し、ワンアウト二塁になると28.38%に下がってしまう。
即ち、この状況での送りバントは、現状よりも「予想勝率が下がる」状況を「手堅く」選択しようとする戦術であり、非合理的ということになります。
送りバントが成功したとしても予想勝率は下がるので、送りバント失敗の可能性まで考慮すればさらに損ということになる。
日本の野球界では、このような統計学的考え方はほとんど採り入れられていないが、メジャーリーグでは「セイバーメトリクス」としてかなり浸透している(そして送りバントは戦術としてあまり使われない)とのこと。
日本野球にも統計的考え方が採用される日が来るのを信じて地道に研究を続けたい、と結ばれています。
なかなか興味深い数字が紹介されていますが、これを読んで、それでは日本では何故送りバントが「手堅い」戦術として一般に理解されているのか、その理由を考えてみました。
ノーアウト一塁で強硬策に出た場合、成功すればチャンスが一気に拡大する一方、失敗すると最悪の場合ダブルプレーでチャンス消滅、そこまでいかなくてもワンアウト一塁という状況になってしまう。
ワンアウト二塁とワンアウト一塁の予想勝率を比べれば、前者よりも後者のほうが悪い数値となるのは明らか。
即ち、ここでの行動選択には「最悪の数値が最大化されるような行動を選ぶ」マックスミン原理が働いているのだろうと思います。
日米における送りバントに対する評価の違いには、単に合理的か否かというだけでなく、日本ならではの失敗を恐れる文化というのが影響しているのかもしれません。
また、一試合限定での合理性のみで考えるのではなく、仮に強硬策に出てゲッツーなどという最悪の結果が出たケースにおいて、チームの雰囲気が悪化して以降の試合の士気にも影響する、といったことまで考慮するとすれば、「最悪の場合」のマイナスの期待値に加重して考える必要もあるのかもしれません。
一点差で負けている9回裏ノーアウト走者一塁の状況、日本の野球においては「手堅く送りバント」というのが定石ですが、数学的・統計学的にはそれは合理的な選択ではないとのこと。
筆者が日本プロ野球の過去データを分析したところによれば、9回裏ノーアウト一塁における後攻側の予想勝率は32.11%であるのに対し、ワンアウト二塁になると28.38%に下がってしまう。
即ち、この状況での送りバントは、現状よりも「予想勝率が下がる」状況を「手堅く」選択しようとする戦術であり、非合理的ということになります。
送りバントが成功したとしても予想勝率は下がるので、送りバント失敗の可能性まで考慮すればさらに損ということになる。
日本の野球界では、このような統計学的考え方はほとんど採り入れられていないが、メジャーリーグでは「セイバーメトリクス」としてかなり浸透している(そして送りバントは戦術としてあまり使われない)とのこと。
日本野球にも統計的考え方が採用される日が来るのを信じて地道に研究を続けたい、と結ばれています。
なかなか興味深い数字が紹介されていますが、これを読んで、それでは日本では何故送りバントが「手堅い」戦術として一般に理解されているのか、その理由を考えてみました。
ノーアウト一塁で強硬策に出た場合、成功すればチャンスが一気に拡大する一方、失敗すると最悪の場合ダブルプレーでチャンス消滅、そこまでいかなくてもワンアウト一塁という状況になってしまう。
ワンアウト二塁とワンアウト一塁の予想勝率を比べれば、前者よりも後者のほうが悪い数値となるのは明らか。
即ち、ここでの行動選択には「最悪の数値が最大化されるような行動を選ぶ」マックスミン原理が働いているのだろうと思います。
日米における送りバントに対する評価の違いには、単に合理的か否かというだけでなく、日本ならではの失敗を恐れる文化というのが影響しているのかもしれません。
また、一試合限定での合理性のみで考えるのではなく、仮に強硬策に出てゲッツーなどという最悪の結果が出たケースにおいて、チームの雰囲気が悪化して以降の試合の士気にも影響する、といったことまで考慮するとすれば、「最悪の場合」のマイナスの期待値に加重して考える必要もあるのかもしれません。
セイバーと言ってもやはり平均値であり、状況によって1outの価値も変わるのですべてを統計で考えるのは無理がありますし、同じくらい打てる選手9人をそろえるのはほぼ不可能であり、迎えるバッターに応じて状況は変化します。
非常に分かりやすい例として1993年のジャイアンツを挙げると、非力で長打は期待できない2番の川相選手が無死1塁で打席に立った時に確実に予想勝率である32.11%を下回ると考えられます。逆に当時3番打者で本塁打王に輝いた松井秀樹選手の打席だと確実に予想勝率は上がると考えられます。この二人は2番、3番の関係であるので川相選手がバントをした場合には(松川相選手はバントの世界記録保持者でありほぼ100%バントを決めるとする)1out2塁で松井を迎えることになるのです。
つまり、打線全員が高出塁率、高長打率の超強力な打線は現実的には有り得ないので(この場合で考えると松井秀樹のようなスラッガーはチームに何人も並ぶとは考えられないし、2番に松井を置けるような打線はNPBではほとんど考えにくい)、打線の中にあって平均より打力が劣る選手が無死1塁からの得点確率を平均値の逆側にいる打者(つまり平均を上回る打者)に近付けるためのツールがバントであると。
長ったらしくなりましたが無死1塁から川相がヒッティングに出るのと一死2塁にして松井秀樹を迎えるのとではどちらが有用かと考えたらいいということです。結論として、良い2番打者と言い3番バッターはセットで考えると良いということ(かな)。長文失礼しました。
平均値で考えるのではなく個人の特性に着目すべきとのご指摘、ごもっともと思います。
ですが、それは結局個人レベルでのきめ細かいデータ分析をどこまでやるかという話で、「統計的に考える」ことへの反証にはなっていないようにも思います。
「無死1塁から川相がヒッティングに出るのと一死2塁にして松井秀樹を迎えるのとではどちらが有用かと考えたらいい」との問いについてイメージ的には後者が有用であることが自明であるように思えますが、果たして本当にそうなのか、統計的な分析により常識を疑ってみよ、というのが日経コラムの趣旨ではないかと思います。
無死1塁から川相がヒッティングに出て、無死1,2塁、或いは無死1,3塁で松井を迎えれば、一死2塁で松井を迎えるよりもさらにチャンスは広がります。
もちろん強硬策が失敗する確率もあるので、すべてを斟酌してどちらが有利かという話です。
ただ、無死1塁で実際に川相がヒッティングに出るケースはきわめて少ないので、実績データサンプルを集めるのが難しそうですが。