愛に乱暴 | |
吉田 修一 | |
新潮社 |
吉田修一も、こんな昼ドラみたいな小説書いてたのね。
単なるメロドラマで終わらず、一捻りされているところが「らしい」けれど。
主人公の桃子は、ちょっとセレブなごく普通の主婦に思える。
ほぼ桃子の一人称で小説は進んでいくが、その言動や感覚に直接的な違和感を覚えない。
が、どこかに狂気が潜んでいるようにも感じるのだ。
例えば、かつて勤めた会社の上司の言葉を真正直に頼って、再雇用を依頼しに訪ねてしまうあたりに、そのちょっとした「ズレ」が垣間見える。
日記のギミックにはわりと早い段階で気づいたが、このあたりの人物造形の微妙な巧みさが流石だと思う。
日常に隣接する危うい転落の可能性に触れてモヤモヤできる、という意味ではやはり昼ドラ的なんだよなぁ。