タックスヘイブン―グローバル経済を動かす闇のシステムクリスチアン シャヴァニュー,ロナン パラン作品社このアイテムの詳細を見る |
タックスヘイブン、オフショア市場といえば、ケイマン諸島などの南の島の小国や、パナマ・リベリアなどの便宜置籍船国がパッと思いつくわけですが、スイスなど銀行業での秘匿性を強化している国や、ロンドンなど規制の緩い国際金融市場なども含めるのだということを、この本で初めて知りました。
タックスヘイブンの歴史、そこで誰が何を行っているのかについて、客観的かつ網羅的に解説されており、自分のような素人が何となく全体像のイメージを掴むにはいい本です。
といっても概要のみの記述なので、具体的にタックスヘイブンがどんな利用のされ方をしているのかはさわりしか分からない。
特にユーロダラー市場については、どんな仕組みで何が問題なのかなどが理解できずやや消化不良でした。
マネーロンダリングやテロマネーなど犯罪がらみは別として、租税回避のためのタックスヘイブンの活用は、完全にグローバル経済に組み込まれており、もはやそれなしでは世界経済が成り立たないほどになっているようです。
当然その分、各国政府の租税収入は損なわれているわけですが、それを規制すれば国際経済活動全体が収縮してしまうがために、国際的な規制の取り組みもなかなか強化されない。
「必要悪」として確固たる位置づけを占めてしまっているわけですね。
そんな事情もあってか、グローバル経済にこれだけ深く組み込まれているタックスヘイブンですが、体系的に研究された例は極めて少ないそうです。
自分のような一市民にはなんだか雲をつかむような話ですが、こうやって世界中をお金が回っているのだ、こうやって莫大なお金を稼いでいる人たちがいるのだ、というようなことを何となく知っておくのも必要なことのように思います。