すぐれた才能をもち、するどい社会正義の感覚をもっていた経済学の学生の多くがヴェトナム反戦運動に関わって、姿を消してしまったのですが、かれらが残っていたら、アメリカの経済学はまったく違ったものになっていたにちがいありません。それよりも心残りなのは、これらの人間的魅力にあふれた多くの学生たちが、ヴェトナム戦争の奔流に巻き込まれて、悲惨な人生をおくり、なかには、若くして、この世を去ってしまった人も少なくないということです。私はその責任の一端を負いながら、かれらの苦難を救うために、何もすることができなかったことに対して、つよい心の呵責を感じざるを得ません。
宇沢弘文『日本の教育を考える』(岩波新書、1998年、129-130頁)より。
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