代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

日本の世論はトランプ候補を誤解している

2016年01月04日 | 政治経済(国際)
 大方の日本人はドナルド・トランプを誤解している。私は、共和党の候補の中では、トランプが相対的にいちばんまともだと思う。他の共和党のどの候補が大統領になっても世界大戦の危機は高まると思うが、トランプが大統領になれば相対的に平和に導く可能性が高いと思う。
 昨日のトランプ演説の一節を紹介する。「ヒラリー・クリントンはオバマと一緒にISISをつくった(Hillary Clinton created ISIS with Obama)」と。
 

Trump: 'Clinton Created ISIS with Obama'



 クリントンも含めたオバマ政権がISISをつくったというのは、正しい分析だ。そもそもISは、アメリカがシリアのアサド政権を潰すために、シリアの反体制派グループに軍事支援を行い、その中から生まれたものだからだ。元国務長官のヒラリー・クリントンにも当然、その責の一端はある。

 トランプは一貫して「ISの資金源を絶て、ISの支配地域の油田を破壊せよ」と主張してきた。これは、罪のない一般市民への被害が及びにくい賢明な作戦だ。
 ISを潰すのは論理的には簡単である。誰もISが生産した石油を買わなければよい、誰もISに武器を売らなければよい、武器もカネもなくなればISなど雲散霧消するしかない。オバマ政権はその二つを放置してきたという点で、ISをつくったと批判されても仕方ないのだ。

 IS支配地域を空爆をすることなど、「IS支援作戦」といえる愚の骨頂だ。一般市民の犠牲者を増やすだけ、難民を増やすだけ、ISの支持者を増やすだけの三愚作戦だ。軍産複合体が戦火の拡大が自らの利益と考え、わざわざ愚行に誘導しているとしか思えない。他の候補はたいてい空爆支持だ。それと比べてもトランプはよほどまともだ。他の候補者は、軍産複合体の利益のために、他国に余計な軍事的なちょっかいを出そうとするが、トランプはもっともそれをしそうにない候補だ。トランプは軍産複合体から利権の供与を受けていないからである。
 
 トランプは以前にも、「フセインやカダフィを潰すべきではなかった。テロリストが跋扈するくらいなら、フセインやカダフィの方がよほどましだ」ということを言っていた。これも正しい。これはシリアのアサド政権に対してもいえる。アメリカがアサド政権を転覆しようとさえしなければ、ISは生まれなかったのだ。
  
 トランプはロシアのプーチン大統領を評価しており、プーチンもトランプを評価しているから、米露関係は改善に向かうだろう。米露関係の悪化は世界平和にとって最大の脅威ともいえるから、この点でもトランプ大統領の誕生は世界平和に寄与しそうである。

 民主党候補の中でもっともリベラルなサンダース候補でさえ「サウジやトルコなど他のイスラム諸国と連合軍を編成し、地上戦でISを殲滅すべき」という主張をしている。この主張は危うい。私は、基本的にサンダース候補が米国大統領になるのがいちばんよいとは思っている。しかし、サンダース候補の対IS作戦のスタンスには危ういものを感じる。

 もちろん私も、トランプの「すべてのイスラム教徒を当面入国禁止にする」という主張、特定の宗教を差別する主張には同意できない。しかしすべての外国人を、特別の許可のない場合、入国禁止にするというのであれば、人種差別や宗教差別ではないから支持できる。そうしてくれればよいのだ。

 おそらく、日本のメディアが執拗にトランプ候補を攻撃するのは、トランプ候補がTPPに反対し、また反日的な発言も多いからだろう。そう、たしかにトランプ大統領になったらTPPは潰れるし、日米関係は間違いなく悪化する。もちろん、それでよい。向こうから日本と距離を置いてくれるのなら、こちらが脱米する苦労が減るだけだから。長期的には日本にとって何ら不都合ではない。

 


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