前回の記事で紹介した8月5日の参議院決算委員会における大河原雅子議員と大畠章宏国交大臣のやりとりにおいて、ほかにも興味深い事実がありますので補足します。質疑の内容は「八ッ場ダムをストップさせる埼玉の会」の下記サイトにあります。
http://yambasaitama.blog38.fc2.com/page-1.html
大河原議員の質問の中で、国交省が日本学術会議に提出したカスリーン台風の際の利根川上流氾濫図の資料が「ねつ造」ではないかという事実関係も問いただされています。
これは大熊孝氏(新潟大学名誉教授)、まさのあつこ氏などによって指摘されてきました。この事実は、いまや新聞ジャーナリズムの良識の最後の盾となった感もある東京新聞特別報道部によっても報道されていました。大河原議員の質問は、この東京新聞記事を提示しながら行われたものです。
氾濫するはずのない高台が浸水区域になっているので、局所的に重力が反転するということでもない限り、事実としてあり得ないということです。もっとも、ドラえもんの秘密道具でもあれば可能かもしれません。国交省官僚たちはドラえもんの住む世界にスリップしていたのかも。
大畠大臣の答弁は「新聞記事を読ませていただいた。事実に反する計算は問題であるという認識は同じ。・・・・氾濫の地図は参考で、計算に用いたのではない」というもの。国交省の答弁も同様でした。
氾濫地図が「事実に反する」ということを大臣自ら認めたのです。その上で、あくまでも「参考」の図なので、このウソの持つ意味はそれほど重くないという認識でした。
しかし、事態はそれほど軽いものではありません。八ッ場ダムの建設を可能にするために必要な資料だったのです。国交省は1947年のカスリーン台風が再来すれば伊勢崎市で2万2000立米/秒が流れて氾濫するから八ッ場ダムが必要だと言ってきました。しかし、当の1947年のカスリーン台風の際に実際に流れたのはそれより7000少ない1万5000立米でした。きわめて過大に見積もった国交省の推定値でさえ1万7000立米なのです。ということは、国交省は差額5000がどこかで溢れていることを証明せねばならなかたったのです。
ところが高台まで浸水するというねつ造氾濫図を用いても、なおかつ5000の差は埋まりませんでした。いわんや、高台には浸水しないのですから、カスリーン台風で2万2000が流れたという国交省の見解は公式に棄却されねばならないはずなのです。
ドラえもんがいる可能性を除けば、この事実から帰納される結論はただ一つ。貯留関数法によって計算された2万2000(学術会議で検討した新モデルによれば2万1100)という数字が誤りであること。中規模洪水から決定された貯留関数法モデルは中規模洪水では精度が高いように見えても、大規模洪水では乖離が大きくなって計算値は過大になるという事実なのです。
ちなみに、日本学術会議もこの可能性を十分に認めつつも、検証は怠ったのでした。
http://yambasaitama.blog38.fc2.com/page-1.html
大河原議員の質問の中で、国交省が日本学術会議に提出したカスリーン台風の際の利根川上流氾濫図の資料が「ねつ造」ではないかという事実関係も問いただされています。
これは大熊孝氏(新潟大学名誉教授)、まさのあつこ氏などによって指摘されてきました。この事実は、いまや新聞ジャーナリズムの良識の最後の盾となった感もある東京新聞特別報道部によっても報道されていました。大河原議員の質問は、この東京新聞記事を提示しながら行われたものです。
氾濫するはずのない高台が浸水区域になっているので、局所的に重力が反転するということでもない限り、事実としてあり得ないということです。もっとも、ドラえもんの秘密道具でもあれば可能かもしれません。国交省官僚たちはドラえもんの住む世界にスリップしていたのかも。
大畠大臣の答弁は「新聞記事を読ませていただいた。事実に反する計算は問題であるという認識は同じ。・・・・氾濫の地図は参考で、計算に用いたのではない」というもの。国交省の答弁も同様でした。
氾濫地図が「事実に反する」ということを大臣自ら認めたのです。その上で、あくまでも「参考」の図なので、このウソの持つ意味はそれほど重くないという認識でした。
しかし、事態はそれほど軽いものではありません。八ッ場ダムの建設を可能にするために必要な資料だったのです。国交省は1947年のカスリーン台風が再来すれば伊勢崎市で2万2000立米/秒が流れて氾濫するから八ッ場ダムが必要だと言ってきました。しかし、当の1947年のカスリーン台風の際に実際に流れたのはそれより7000少ない1万5000立米でした。きわめて過大に見積もった国交省の推定値でさえ1万7000立米なのです。ということは、国交省は差額5000がどこかで溢れていることを証明せねばならなかたったのです。
ところが高台まで浸水するというねつ造氾濫図を用いても、なおかつ5000の差は埋まりませんでした。いわんや、高台には浸水しないのですから、カスリーン台風で2万2000が流れたという国交省の見解は公式に棄却されねばならないはずなのです。
ドラえもんがいる可能性を除けば、この事実から帰納される結論はただ一つ。貯留関数法によって計算された2万2000(学術会議で検討した新モデルによれば2万1100)という数字が誤りであること。中規模洪水から決定された貯留関数法モデルは中規模洪水では精度が高いように見えても、大規模洪水では乖離が大きくなって計算値は過大になるという事実なのです。
ちなみに、日本学術会議もこの可能性を十分に認めつつも、検証は怠ったのでした。
>そんな資料でも重要だという部分が分からなかったのです。
国交省の計算値は、実際に河川に流れた実績地よりも過大です。「どちらが正しいのか?」と問われれば、一般の素人であれば、「実際に流れた実績値の方が机上の計算値より正しいだろう」と考えるはずです。しかし、国交省は計算値が正しいはずだ、と考えるのです。
しかし、計算値の方が正しいと主張するためには、実際に計算値と実績値の差額が、河川から溢れて氾濫していなければ説明がつきません。氾濫した証拠がなければ、計算値の方が正しいとは言えないはずです。
そのためには推定ではあっても氾濫地図が証拠として重要資料になります。
どうしても計算値が正しいと主張したいがために、国交省は氾濫地図を捏造してしまいました。
計算が正しいという国交省の主張を貫くためには、氾濫地図が重要資料だという理由、わかりましたでしょうか?
ビデオを見る限り、国交大臣は地図のことは言っていないように思えます。これでは使えませんね(+_+)。
大熊孝先生の意見書をご紹介くださりありがとうございました。でも、難しかったのでよく分かりませんでした。haと万m3とm3/秒がいっぱい出てきてついて行けませんでした。
>学問の世界でもっとも重いのは実証的・実験的事実であり、モデルに基づく計算値ではありません。観測された事実から結論を導きださねばなりません。
結局、関先生の書かれている事実というのはどれだったのでしょうか?関先生の意見書にも数字がいっぱい出ているので、あたしのような素人には難しいです
ところで、この前あたしが最後に書いた、論理展開について行けなかったところは、この国交省の資料は間違っていなかったとしても、高台に目をつむっても、説明になっていない資料だというふうにおっしゃっているのではないかなと受け止めましたが、そんな資料でも重要だという部分が分からなかったのです。ここが分かればつっこみどころになるような気がします。
こういうつっこみどころは是非勉強したいと思いますし、みんなに広めるべきだと思います。
m(._.)mよろしくお願いします。
この記事で紹介した参議院決算委員会の議事録はまだ公開されていませんが、ビデオでしたら見れます。下記から、参議院決算委員会の8月5日を開き、さらに大河原議員の質問を開いてください。
http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php
大畠大臣は、問題の浸水地図に関して「山のところを平地とか、山のところを谷などと、事実に反するような計算をして数量を出しているとしたらそれは問題であるという認識は共有しています」と明言しています。
ただ「地図を下に具体的な洪水計算を行ったものではない」「あくまで参考」と述べ、地図は誤っていたとしてもただの参考資料なので許してね、というニュアンスです。
国交省の主張する基本高水2万2000立米/秒(カスリーン台風が再来した場合の貯留関数法による計算流量)と国交省の実績流量1万7000との差額は、毎秒5000立米ですが、これを積分した総量に直しますと1億1000万立米ほどになります。
1億1000万立米が上流で氾濫していなければ、2万2000という国交省の主張はウソということになります。
しかし大熊孝氏の推計では、実際の氾濫量は1億1000万立米の10分の1ほどの1000万立米でしかありません。
大熊孝先生が学術会議に出した下記意見書をご参照ください。
http://yamba-net.org/doc/201106/ohkuma_ikensho.pdf
そこで国交省は氾濫量を多く見積もろうとして、重力の法則に逆らって高台まで浸水させるというウルトラCで弁明しようとしたのです。
しかし、局所的に重力が反転するという国交省のウルトラCを前提としても、説明できる氾濫量はせいぜい3900万立米です。これでは1億1000万立米に到底足りません。
よって国交省の計算値である2万2000は棄却されねばらなず、2万2000だから八ッ場ダムが必要という同省の命題も棄却されます。
学問の世界でもっとも重いのは実証的・実験的事実であり、モデルに基づく計算値ではありません。観測された事実から結論を導きださねばなりません。
しかるに国交省は誤謬だらけの貯留関数法モデルに基づく計算値を事実に優先させます。カスリーン台風が再来すれば2万2000という机上の計算値を死守するために、実際にカスリーンが流れた際の実際の洪水流量という事実の方を捻じ曲げているわけです。
日本学術会議は科学的であろうとするのであれば、モデル計算より実証的事実を重んじるべきでしたが、残念ながら計算を事実に優先させる国交省の姿勢を追認してしまったのでした。日本の学者の良心は絶えたのかと、私は深く憂うものです。
私が学術会議に出した下記意見書もご参照ください。
http://yamba-net.org/doc/201106/seki_ikensho3.pdf
八ッ場ダムを検索しているうちにたどり着きました。
東京新聞の記事を見て興味を持っていました。
もう少し詳しく教えてもらえませんでしょうか?
>氾濫地図が「事実に反する」ということを大臣自ら認めたのです。
埼玉の会のリンクは端折られていて、地図が事実に反することを国交大臣が認めたというところがよく分かりませんでした。具体的な発言を教えていただけませんでしょうか。
>ところが高台まで浸水するというねつ造氾濫図を用いても、なおかつ5000の差は埋まりませんでした。いわんや、高台には浸水しないのですから、カスリーン台風で2万2000が流れたという国交省の見解は公式に棄却されねばならないはずなのです。
ちょっと展開について行けていません。結局、棄却されねばならないのであれば、この資料は重要でないような気もしますが・・・。論理展開を教えていただけませんでしょうか。
m(._.)mよろしくお願いします。