昨晩(2013年4月28日)9時からNHKスペシャルで「TPP交渉 どう攻める どう守る」という討論番組があった。甘利明経済再生担当大臣をはじめ推進派3人、慎重・反対の立場の3人というバランスのとれた布陣であった。
TPPについてどう考えるかよく分からなかった視聴者が、これを見た結果「是非参加すべき」と思うようになったというケースはほとんどなかったのではないだろうか。推進派は「参加のメリット」を全く説明できていなかった。
慎重派の3人は真っ当な意見を述べておられた。とくにタレントの優木まおみさんの発言はすばらしかった。芸能人というのは庶民感覚から乖離しているのではないかと思いきや、学者・政治家・作家などに比べ、もっとも庶民感覚に近いところで、食の安全性や失業など、TPPに危惧する発言を鋭く発していた。
慎重派から発せられていた発言をいくつか紹介したい。
「農業というのは貿易の自由化にそもそもなじまない分野。モノ・ヒト・カネは自由に流れても、土地は移動できませんから」(水野和夫氏)
「私の出身は佐賀県なんですが、小泉さんのころの規制緩和で大きなショッピングモールがドーンとできて、商店街はすべてつぶれて、いまもシャッター通り。私が育った活気ある街はガラーン。地域の文化もコミュニティも失われた。実際に雇用を失った人もたくさんいた。ベトナムやマレーシアが小規模店舗を守ろうと規制してきた気持ちはよく分かるんです。日本さえよければよいのですか?」(優木まおみ氏)
→ 優木さんのこの発言には感動した。NHKは、TPPで日本が受けるメリットとして、ベトナムやマレーシアが日本のコンビニ・チェーンの出店の規制緩和をして、日本のコンビニが海外で事業展開しやすくなるだろうという事例を紹介していた。ベトナムに進出しているファミリーマートだが、地元商店街の小売店を守ろうと、ベトナム政府が出店を規制しているため、思うように店舗を増やせないそうだ。そこでTPPが発効すれば、ベトナム政府も規制緩和するだろうと。その事例を受けての優木さんの発言だった。
TPPでベトナムでもマレーシアでも家族経営の小売店が片端から破たんして大量の失業者が出ることは明らかである。しかも出店した日本のコンビニチェーンが儲けたとしても、その利潤が日本国内に還流して、日本で雇用が増えるなんてことはほぼないだろう。「TPPのメリット」とNHKが主張しているものにしても、日本の庶民感覚からすれば、たしかに企業のメリットかもしれないが、「それが日本のメリットなの?」という感じで、むしろ「ベトナムやマレーシアに迷惑かけちゃいけないんじゃないの?」としか思えないわけだ。
「グローバル化が進めば進むほど政府支出が増える。グローバル化が進むと雇用が不安定化し、地域が空洞化していくので、政府が支出を増やさなないと社会がもたない、安定化しなくなるから」 (柴山桂太氏)
→ これは安倍内閣の国土強靭化計画でも如実に現れている。グローバル化が進展した結果として、地域の産業が空洞化し、公共事業でしか地域社会を支えることのできない構造が日本でも成立してしまっている。グローバル化の結果、雇用が失われ、法人税も切り下げられて、政府収入が減少していく。こうした中で、善意の政府が政府支出で地域社会を支えようとすればするほど、財政赤字を増やして、財政破たんを早めるだけなのだ。これはアメリカでもヨーロッパでも日本でも共通の悩みである。政府は、大企業の利益に奉仕しようとして、自分で自分の首を絞めているだけなのだ。
こうした発言に対して、推進派の真山仁氏の反論はといえば、「おっしゃる通りだと思うんですよ。でもグローバル化の流れは止められないので、それに背を向けるよりは、その中に参加してしっかりとポジションを確保するしかないんじゃないですか」とのみ言うしかなかった。推進派は、このような消極的な意見しか言えないのだ。
確かに日本のみで背を向けるのは難しいのかも知れない。ゆえに世界各国が協調しながら歪みを修正する必要があるのだろう。グローバル化は、各国の一部大企業のみにメリットがあっても、その国の政府の財政にも大多数の国民にも害悪しか与えない。各国の国民と政府が協力して、一部大企業の横暴に規制をかけるしかないだろう。それこそ、国境を越えた人々の連帯が必要で、真のグローバルな協働といえるのだろう。
TPPについてどう考えるかよく分からなかった視聴者が、これを見た結果「是非参加すべき」と思うようになったというケースはほとんどなかったのではないだろうか。推進派は「参加のメリット」を全く説明できていなかった。
慎重派の3人は真っ当な意見を述べておられた。とくにタレントの優木まおみさんの発言はすばらしかった。芸能人というのは庶民感覚から乖離しているのではないかと思いきや、学者・政治家・作家などに比べ、もっとも庶民感覚に近いところで、食の安全性や失業など、TPPに危惧する発言を鋭く発していた。
慎重派から発せられていた発言をいくつか紹介したい。
「農業というのは貿易の自由化にそもそもなじまない分野。モノ・ヒト・カネは自由に流れても、土地は移動できませんから」(水野和夫氏)
「私の出身は佐賀県なんですが、小泉さんのころの規制緩和で大きなショッピングモールがドーンとできて、商店街はすべてつぶれて、いまもシャッター通り。私が育った活気ある街はガラーン。地域の文化もコミュニティも失われた。実際に雇用を失った人もたくさんいた。ベトナムやマレーシアが小規模店舗を守ろうと規制してきた気持ちはよく分かるんです。日本さえよければよいのですか?」(優木まおみ氏)
→ 優木さんのこの発言には感動した。NHKは、TPPで日本が受けるメリットとして、ベトナムやマレーシアが日本のコンビニ・チェーンの出店の規制緩和をして、日本のコンビニが海外で事業展開しやすくなるだろうという事例を紹介していた。ベトナムに進出しているファミリーマートだが、地元商店街の小売店を守ろうと、ベトナム政府が出店を規制しているため、思うように店舗を増やせないそうだ。そこでTPPが発効すれば、ベトナム政府も規制緩和するだろうと。その事例を受けての優木さんの発言だった。
TPPでベトナムでもマレーシアでも家族経営の小売店が片端から破たんして大量の失業者が出ることは明らかである。しかも出店した日本のコンビニチェーンが儲けたとしても、その利潤が日本国内に還流して、日本で雇用が増えるなんてことはほぼないだろう。「TPPのメリット」とNHKが主張しているものにしても、日本の庶民感覚からすれば、たしかに企業のメリットかもしれないが、「それが日本のメリットなの?」という感じで、むしろ「ベトナムやマレーシアに迷惑かけちゃいけないんじゃないの?」としか思えないわけだ。
「グローバル化が進めば進むほど政府支出が増える。グローバル化が進むと雇用が不安定化し、地域が空洞化していくので、政府が支出を増やさなないと社会がもたない、安定化しなくなるから」 (柴山桂太氏)
→ これは安倍内閣の国土強靭化計画でも如実に現れている。グローバル化が進展した結果として、地域の産業が空洞化し、公共事業でしか地域社会を支えることのできない構造が日本でも成立してしまっている。グローバル化の結果、雇用が失われ、法人税も切り下げられて、政府収入が減少していく。こうした中で、善意の政府が政府支出で地域社会を支えようとすればするほど、財政赤字を増やして、財政破たんを早めるだけなのだ。これはアメリカでもヨーロッパでも日本でも共通の悩みである。政府は、大企業の利益に奉仕しようとして、自分で自分の首を絞めているだけなのだ。
こうした発言に対して、推進派の真山仁氏の反論はといえば、「おっしゃる通りだと思うんですよ。でもグローバル化の流れは止められないので、それに背を向けるよりは、その中に参加してしっかりとポジションを確保するしかないんじゃないですか」とのみ言うしかなかった。推進派は、このような消極的な意見しか言えないのだ。
確かに日本のみで背を向けるのは難しいのかも知れない。ゆえに世界各国が協調しながら歪みを修正する必要があるのだろう。グローバル化は、各国の一部大企業のみにメリットがあっても、その国の政府の財政にも大多数の国民にも害悪しか与えない。各国の国民と政府が協力して、一部大企業の横暴に規制をかけるしかないだろう。それこそ、国境を越えた人々の連帯が必要で、真のグローバルな協働といえるのだろう。