代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

スーパー堤防にかんするフェイクニュースと現実

2017年10月25日 | 治水と緑のダム
 台風で水害が起こるたびにスーパー堤防にかんするフェイクニュースが流れ、ウンザリする。流している人々はだいたい想像がつくが・・・・。フェイクニュースというより、悪質なデマである。
 台風21号で大和川が氾濫したことにより、大和川のスーパー堤防を事業仕分けの対象とした民主党政権が悪いというのだ。
 そもそも氾濫した奈良県三郷町はスーパー堤防の対象区間ではない。かりに、そこにスーパー堤防が築かれていたとしても、スーパー堤防は堤防の幅を広げて強度を高めるというもので、堤防の高さを高める事業ではない。ゆえに、今回の水位において、やはり氾濫は起こっていたはずである。

 このブログでも再三書いてきたが、スーパー堤防は1mの堤防を整備するのに数十億円という天文学的な予算が必要な事業であり、実際にはその100分の1の予算で堤防の強化工事は可能である。スーパー堤防に予算を取られることにより、堤防の強化工事のスピードは100分の1になってしまう。最下流のごく一部地域にのみ集中的に予算を投下して、上流の堤防強化が後回しになってしまうため、日本列島の災害リスクを高めているだけなのだ。

 この問題に関して、週刊エコノミストの今週号(2017年10月31日号)に、以下の画像のような記事を書きました。「スーパー堤防は災害リスクを高める」と断言しています。
 ネット上で、ウソにまみれたスーパー堤防必要論を展開している皆様、反論をどしどし御寄せ下さい。


 『週刊エコノミスト』(毎日新聞出版)2017年10月31日号93頁より。



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3 コメント

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関良基先生へ (山岸 光夫)
2017-11-04 12:51:39
こんにちは、初めまして山岸光夫と申します。神奈川在住です。
関良基先生のIWJでのインタビューと「赤坂小三郎ともう一つの明治維新」、ブログを拝見させていただきました。
先生にどうしても聞きたいことがあり、コメントいたしました。

1.サービス業等の苦境
2.慰安婦問題等の戦後補償
3.創価学会・公明党についてです。

今のアベ政治には幻滅しております。私は創価学会員ですが、今の公明党の姿勢に批判的です。残念ながら学会員の半分はネトウヨになりつつあります。そして相変わらず長時間労働と過重労働が蔓延るサービス業等の本当に絶望しています。

1について、私は1年間契約社員の警備員として働いていました。私は働いていた職場で直面した苦労から「日本はサービス業によってボロボロに滅ぼされる」と危機に感じています。サービス業はもちろんコンビニや飲食店、介護福祉や建設業、物流・運送業、中小製造業、警備業、原発廃炉労働等々と相変わらず劣悪な環境で、長時間労働が横行して、鬼上司・体育会的かつ説教おやじ的な先輩・同僚が職場を支配し、「気合」や「根性」、「忍耐」が求められて、お客様から攻められて、仕事が当たり前にできることが求められて、次々と人がやめていく状況です。このままでは、オリンピックどころではありません。私はAIやロボットが解決してくれるのではないかと期待していますが、なかなか改善される見込みがありません。ところが企業側はそういった現場の疲弊を改善するどころか。新たな奴隷労働者を輸入しようしています。コンビニ大手のローソンが人手不足を補うために、ベトナムで募集を行い、留学生らに事前研修を行い、かつ日本に着いたら、現場での戦力していました。私は外国人労働者を否定することはしません。しかし、企業側はサービス業はじめ介護福祉などの現場における劣悪な労働環境を改めることもなく、小手先の人手不足解決のために、外国人労働者を悪利用することに反対します。企業はもっとやるべきことがあるだろう思います。
 どうしたらいいのでしょうか。

2について、もうそろそろいい加減にしてほしいと思います。元慰安婦の方々はじめ強制労働を強いられた朝鮮人・中国人労働者、元日本兵で恩給を受けられなかった朝鮮人・台湾人兵士等々…これら被害者に対し、日本政府はしっかりとした補償もせず、”見舞金”とかなんだかんだでお茶を濁す程度で、総理大臣が直接謝罪せず、誠意を見せず、ちゃんとした記念碑として記録に残すこともなく、被害者に対しては「カネがほしいだけだ」と誹謗中傷が今日まで行われています。被害者はもう高齢であり、このままでは、被害者の無念を救うことができません。
 どうしたらよいのでしょうか。

3について,2015年の安保法制の時のことが忘れられない。公明党は率先的に法案作成に狂奔して、創価学会執行部はなんと容認姿勢をみせたのだ。そして何よりも、多く学会員...私の両親も含め、テレビ報道で国会前において安保法制反対デモをリードしていたシールズ(SEALs)等の私より年下の決然とした若い人たちに対し、「あいつらは、共産党だ」と誹謗中傷したのです。私はあまりにも今までの創価学会員としての常識が崩れてしまいました。世界平和を願い、力による平和はできないと信じてきたのに…と。それ以来、公明党・創価学会はすべてが変わってしまいました。今回の衆議院選挙の時もそうでした。私はフェイスブックを見ていたとき、学会員でかつ音楽家の方の投稿を見て、驚きました。その投稿には他党を写真を使い、なんの根拠のなく選挙違反だと誹謗中傷していたのです。こんなに人間が変わるとは思えないショックだった...本当にネトウヨになった。心ある学会員は立ち上がったものの、結局小数にとどまっています。私が気が付いた時には、同郷の同じ年代の学会員は厳しい労働環境にいて、その代わり、創価学会本部執行部の高級幹部たちはお金持ちばかりで生活に困らない状態になっていました。もはや日蓮大聖人様の教えと三代の会長のご指導も形骸化しつつあります。
私は何とかこの状況を変えたいと思っていますが、就職が決まらず、目の前の生活に追われて、何もできません。
私たちはどうしたらいいのでしょうか。

長くなりすいません、何かヒントでもあればと思い、メールいたしました。

追記
ブログで亀井静香さんのことに言及しておられましたが、私にとりましては、引退する前に、創価学会・公明党に対する誹謗中傷攻撃を謝罪してほしかったです。
あと、このメッセージをメールで送ろうとしましたが、エラーが出て送れませんでした。
以上

11月4日 山岸 光夫
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コメントありがとうございました ()
2017-11-05 15:29:09
山岸光夫様

 コメントありがとうございました。
 私のメールですが、ふつうに送れるはずです。atを@に書き換える必要があり、そのときに入力ミスしてしまったのではないかと思われます。
guanliangji@gmail.com
 このアドレスで通ります。
 
>1.サービス業等の苦境

 私も大学で教えており、学生たちでコンビニや飲食でバイトしている子が多いですが、本当にノルマがきつくて、つらそうです。コンビニの恵方巻きノルマなど、今年ようやく問題にされましたが、勤務時間外にあのような営業ノルマを課すのは常軌を逸しています。
 私もノルマに追われる学生がかわいそうで、買ってあげたりしました。コンビニの不当なノルマのせいで、バイト学生とその周辺の家族友人などにどれだけ迷惑が及んでいるのか計り知れません。
 社会的迷惑を承知であえてやっているのですから、もはや正常な思考とも思えず、社会が崩壊しかかっているのを象徴していると思います。
 
>小手先の人手不足解決のために、外国人労働者を悪利用することに反対します。

 究極的には経済のグローバル化の流れに歯止めをかけるしかないと思います。大規模チェーン店しか生き残れないのは異常です。多様な小規模小売店を保護する法的規制措置が必要と思います。
 

>2.慰安婦問題等の戦後補償

 これに関しては、私などではとても妙案など思い浮かびません。
 日本政府としては、1965年の日韓条約の際に行った経済協力で戦後補償問題は終わっていると言いたいのでしょうが、その経済協力金の支払額は、フィリピンやインドネシアへの戦後賠償資金よりも少ないので、35年間の植民地支配に対する償いとしては少なすぎることは言うまでもありません。

 短期的な解決策は思い浮かばないです。
 このブログでは、英米には卑屈な態度をとりつつ、対アジア関係でひたすら尊大にふるまうという日本人の精神的態度が、l明治維新の誤りに由来すると訴えてきました。私たち歴史認識の根本的な見直しが必要と考えます。
 創価学会系の潮出版から出た、安部龍太郎著『維新の肖像』は、そうした観点ですばらしい文学作品でした。このブログでも書評させていただきました。
 http://blog.goo.ne.jp/reforestation/e/2d2c5784e3142e1b2405d2a438a682a3

 歴史観を見直す、こうした地道な作業が必要と思います。こうした歴史観が根付いていかないことには、日韓問題の解決も難しいと思います。

>3.創価学会・公明党についてです。

 一昨年の安保国会の折には、創価学会の旗をもった方も来ておられ、学会員の方々には満場から割れんばかりの拍手が送られていて、感動的でした。
 かつての野党時代の公明党の精神に戻ってほしいと、第三者の私の目からは思われます。

 しかし一度権力の味を味わってしまうと、人間も変わってしまうのだと思います。
 公明党さえ自民党から離れれば、自民党政権は自ずと崩壊するでしょう。その意味で、日本を動かすキャステイングボードを握っているのは皆様方だと思います。大変でしょうが、歴史を動かし得る、すごく重要な地位におられることは生きていくうえでの甲斐性になるのではないでしょうか。
 たとえ少数派であっても、心ある方々で集まり、声をあげ続けるしかないのではないでしょうか。やり甲斐のあることだを思います。

 アメリカも黄昏を迎え、アメリカに追従するだけの日本外交も行き詰まりますので、そのときこそ創価学会が培ってきたアジア民間草の根外交の蓄積は活かされるのではないでしょうか。
 
 あと、共産党も柔軟に変わってきましたので、創価学会と共産党の関係も修復してほしいと、第三者の目からは思われます。

 再就職が決まられることをお祈り申し上げます。
 
 P.S. お名前が出てしまっていますが、このままコメント残しておいてもよいのでしょうか?
 必要であれば削除いたします。
返信する
スーパー堤防にかんするフェイクニュースと現実 (山好人)
2017-11-06 16:25:39
以下は10月.ne.jp/25日付けのブログに対して日ごろ思うことを述べたものであり、関先生の週刊エコノミスト論文を読まずに書かれている失礼はお許しいただきたいと思います。

スーパー堤防の効用について議論を進めるに当たっては、国交省の基本方針とダム反対派の見解の相違を明らかにする必要がある。
従来の堤防に関しては、国交省の方針は水位が堤防高より余裕高を差し引いた計画高水位を越したら氾濫が発生するとしている。したがって氾濫の発生場所は特定できない。よって被害額最大のケースが対象になる。一方ダム建設反対派は堤防高を越えて氾濫が発生するとしている。したがって氾濫場所が特定できるし、被害額最大のケースが選ばれることもない。そして計画高水位を水位が越えても氾濫が生じないような堤防にすべきと主張している。
現状の堤防でも計画高水位を超えても氾濫が生じないことが多いのは事実であるが、国交省の河川整備の費用対効果の計算では、計画高水位を越えたら氾濫が発生するとしている。
基準によると利根川水系のスーパー堤防の建設が進められている地域で計画高水流量を10000m3/s以上とすると余裕高は2mとなる。現状の堤防では堤防高より2m低い水位で氾濫することになる。一方スーパー堤防では堤防高まで氾濫が発生しないので、計画高水位は堤防高になる。
このメリット以外にもスーパー堤防の場合には堤防高を越えて越水しても堤防の破壊がないことがあげられる。スーパー堤防上が避難場所になるとの主張もなされる。堤防上の水深が30cm程度ならそのような効用もあろうが、水深が深くなるとその主張は無理筋のようである。
通常の堤防ではダム建設反対派の主張のように堤防高まで氾濫が生じないとしても越水が始まれば、堤防の破壊が生じる公算が大きい。堤防の破壊が生じないようにするためにはそれ相応の技術的な検討と費用が発生する。スーパー堤防並みの氾濫防止効果が期待できるかダム建設反対派でも確答が出されていないのが現状である。
つまりスーパー堤防の効用を論じるのは、このような双方の主張の違いを十分に認識する必要がある。国交省側は計画高水位を2m高めることによる、スーパー堤防の建設についての費用対効果を改めて実施する必要がある。またダム建設反対派の主張のように、従来の堤防について堤防高まで氾濫が生じないようにし、越水しても堤防破壊が生じないような改造について、スーパー堤防並みの効果が実現可能か確認し、そしてその費用対効果の計算をする必要がある。
ついでに述べると、双方の主張の違いについて認識すべき点として、利根川の基準点八斗島における基本高水流量22000m3/sの算出方法がある。ダム建設反対派は流出計算のパラメータ(飽和雨量Rsaや飽和流出率fsa)について疑念を持っているようであるが、むしろカバー率の問題を統計学的に検討すべきである。計画雨量で発生が予想されるピーク流量群の平均値を治水安全度1/200の基本高水流量にすべきである。平均値の採用を国交省も総合確率法で実施しているが、一定流量を発生せしめる雨量群の年超過確率の平均値をその流量の年超過確率とするのは間違いで、一定雨量で発生するピーク流量群の平均値の年超過確率をその雨量の年超過確率とすべきである。利根川の計画雨量319mm/3日で発生すピーク流量群の平均値は18000m3/s程度で、ピーク流量群について正規分布を考えれば平均値のカバー率は50%である。
パラメータについての疑念は、国交省の用意した土俵外での反論になり水掛け論になりがちであり、その点共通の土俵上での論戦をすべきである。今回のスーパー堤防についての議論もまたしかりである。スーパー堤防と従来の堤防の氾濫の条件の違いを理解する必要があるのである。
河川整備計画の立案、河川整備の費用対効果の計算には、より正確な基本高水流量が求められなければならない。スーパー堤防の費用対効果の計算でも八斗島の治水安全度1/200における基本高水流量18000m3/sをベースで実施すべきである。
気候温暖化に伴い2050年以降に利根川流域の降雨量は500mm/3日に達するとの試算もあるようだが、当面は計画雨量319mm/3日に基づいて計算をしっかりすることである。
以上
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