「農産物関税を撤廃してはいけない」シリーズは前回までの記事で完結の予定でしたが、どうやら多くの方々が、「日本の農業は過保護にされすぎて、それ故に競争力がないのだ」というマスコミや経団連が振りまく言説を信じているようです。そういう人々は、まずはアメリカとEUの農家がどれだけ大切に保護されているかを知る必要があるでしょう。そこでこの補足記事を書くことにします。
米国とEUの農業保護
農業保護をしていない先進国は存在しません。そして日本の農業保護は、アメリカやEUに比べて全く足りないのです。現に政府が農家に出す補助金も、農産物の平均関税率も、日本はEUの水準よりもはるかに低い。
以下は、ウィキペディアのページ「食料自給率」の項目に出ているデータですが、つぎの通りです。
「農業所得に占める政府からの直接支払いの割合は、フランスでは8割、スイスの山岳部では100%、アメリカの穀物農家は5割前後というデータがあるのに対し、日本では16%前後(稲作は2割強)となっている」
ウィキペディア「食料自給率」より
フランス農家の所得の80%は政府からの直接支払い。アメリカですら50%で、日本はたったの16%。これだけ補助されていれば、アメリカやフランスの穀物に競争力があるのは当たり前でしょう。日本に競争力がないのは補助が全く足りないからです。
本日(2011年2月7日付け)の東京新聞は、EUや米国の農家が国にいかに大事に保護されているのかということを数字で論証していました。さすが東京新聞。他の全国紙とは違います。それによれば、EUの農家一世帯が受ける直接支払額は日本の農家一世帯の3.6倍、アメリカの農業予算は年間10兆円などと紹介されていました。アメリカ政府が農業保護にかける予算の情熱といったら、ちょうど日本がダムや道路の公共事業にかける情熱に匹敵するといえるでしょう。
前々回の記事のコメント欄で日本の中山間地の棚田など滅びてもよいとのコメントが寄せられましたが、スイスは全額政府が支出して山岳部の農地を守っています。国土を守るために必要だから。それが国民的合意なのです。このような国土を守るための保護主義は全く正当な行為であり、日本もスイスを見習うべきでしょう。
財政不足の国は関税で防衛するしかない
私は国土保全と食料安全保障のためのスイスのような自衛の保護主義は全く正当な行為だと思います。しかし、米国の輸出のための保護主義は、他国の人々の胃袋を支配し、国際覇権を維持するための戦略的道具であり、おまけに他国の国土をも破壊するという迷惑この上ないシロモノです。自衛の保護主義は正当であり、攻撃の保護主義は不当なのです。
アメリカに攻撃されたらひとたまりもないから、インドのような途上国は平均124%の高関税で対抗して懸命に農業を保護しようとしています。EUや米国のような先進国は補助金(農家への直接支払)の大盤振る舞いができますが、財政が限られている途上国はそれができないから関税で防衛するしかないわけです。
財政破綻寸前とさわがれている日本も、インドの農産物平均関税率124%を見習うべきでしょう。何せ日本の農産物の平均関税率は12%で、EUの19%よりも低いのだから・・・・・・。アメリカの攻撃的保護主義から身を守るために、関税という自衛のための防御を使って何が悪いのでしょう。アメリカ並みの何兆円という巨額の財政を支出して農家保護するよりも、税収の増加になり財政再建にも寄与する関税の方がはるかにスマートです。納税者の合意を得やすいでしょう。マスコミは、あれだけ「財政再建、バラマキ反対」と叫ぶのだから、関税政策を支持すべきなのです。
アメリカの輸出補助金の仕組み
悪名高い米国の穀物輸出補助金の仕組みは以下のようです。
まず、米国政府は、米国の農家が満足に暮らし営農を再生産するために必要な目標価格(=A)を決めます。ところが国際市場で競争力を持つための市場価格(=B)は、Aより低い。そこでAとBの差額(A-B)は、全額政府が所得補填します。そのダンピング輸出により、米国の穀物は必ず国際競争力を持つというわけ。これはいったい、どこの社会主義国の行為でしょう? 市場原理もへったくれも何もないのです。
アメリカの農業補助金制度を「攻撃的保護主義」と呼ぶ鈴木宣弘氏はアメリカのコメ価格の実態に関して下記サイトの記事で以下のように解説していました。ちょっと古い記事なのですが分かりやすいので引用させていただきます。
http://sugar.alic.go.jp/japan/view/jv_0411b.htm
***鈴木宣弘「WTOの枠組み合意とその意義」より引用*****
(前略)
例えば、米国のコメの価格形成システムを、日本のコメ価格水準を使ってイメージしてみると、ローンレート(融資単価)1.2万円/俵、固定支払い3千円/俵、目標価格1.8万円/俵とすると、政府(CCC)にコメ1俵質入れして1.2万円借りて、国際価格水準5千円/俵で売った場合、5千円だけ返済すればよく(マーケテイング・ローンと呼ばれる)、さらに、固定支払い3千円/俵と、目標価格1.8万円/俵と(ローンレート+固定支払い)との差額3千円/俵も支給される(いわゆる「復活不足払い」)。ローンレート制度を使っていない場合は、5千円/俵で売ったら、ローンレートとの差額7千円/俵が支給される。つまり、いずれにしても、国際価格水準5千円と目標価格1.8万円の差額が政策的に補てんされる。全体が大きな輸出補助金ともいえる。しかし、WTO上は、このシステムは、輸出補助金としての削減対象に認定されておらず、国内支持として分類されたため、これまでも緩い削減ですまされてきた。
(後略)
***引用終わり***************
いったい何という複雑怪奇なシステムだろうと面食らいます。要するにコメの目標価格と国際市場価格の差額は全部政府が補助しているということなのです。この鈴木氏の数値例ですと、じつに農家の所得の2/3以上が政府からの補助ということになります。もちろんいつでもこのような多額の補助をしているわけではなく、目標価格と国際価格は変動します。国際価格が上昇すれば政府からの補助金も減ることになります。ただし全米・全穀物で平均すれば農家所得の50%は政府からの直接支払ということになるわけです。
これは実質的に輸出補助金なのですが、そのように銘打つとWTO協定違反になってしまうから、あの手この手で分かりにくい制度にして「これは輸出補助金ではない」と強弁してWTOをごまかしてきたわけです。
このような輸出補助金付き穀物で攻撃されたら途上国の穀物生産は破滅します。実際、メキシコ、エルサルバドル、ハイチ・・・・と多くの国々がアメリカの攻撃的保護主義の犠牲になり、自国の自給的穀物生産を衰退させた挙句、国際価格の高騰によって2008年には深刻な飢餓に直面しました。まさにアメリカが仕組んだ飢餓輸出といえるでしょう。
アメリカは輸出補助金で国際市場をゆがめ、飢餓リスクを高めるという犯罪行為を行っています。しかるに日本が防御の関税を維持しても飢餓リスクを抱える途上国には何ら悪影響は及ぼしません。それどころか日本が自給率を高めることは自国を守る正当防衛のみならず、途上国の飢餓リスクの減少につながります。下手な援助をするよりも、よっぽど国際貢献になるといえます。
TPPという新戦略の意味
さて、このように不公正な補助金によるダンピング輸出は当然にWTOで問題とされます。財政不足の国々としてはアメリカのように補助金など出せませんから、アメリカが輸出補助金を維持する以上、高関税で防衛するしかない。アメリカとしては輸出補助金を維持したまま、他国の農産物関税のみ削減させたい。WTOを自国の覇権の道具として使いたいアメリカは輸出補助金は棚に上げて、関税のみ削減せよと要求します。しかしながら、「もう騙されないぞ」とばかりに途上国の発言権が高まる中で、次第にWTOもアメリカに不利な裁定を下すようになってきました。米国からしてみれば、自国の言いなりだと思っていたWTOが、生意気にも途上国の言うことを聞いて、アメリカに向かって「輸出補助金を削減せよ」などと要求をするようになったわけです。アメリカは面白くないことこの上ないのでしょう。かくしてアメリカもドーハ・ラウンドに意欲を失い、交渉は行き詰ったというわけです。
アメリカとしては、途上国の発言権が高まり、WTOを自国に都合のいいようにコントロールできなくなってきたことから、別の枠組みを模索する必要がありました。そこで目を付けたのがTPPだったというわけです。アメリカに不利になる可能性のあるドーハ・ラウンドはあきらめて、TPPという自国主導の新たな枠組みの中で恣意的にルールを設定していこう、こういう目論見なのでしょう。
農産物を工業製品と同列に扱ってはいけないことは前回まで3回にわたって書いてきたとおりです。WTOにおいてすら、農産物は工業製品とは別のカテゴリーに分類され、農産物には暫定的に高い関税率が認められるなど、不十分とはいえ農業に対して幾ばくかの配慮はなされています。しかるにTPPにおいては、農産物も工業製品も全く同列に扱って、例外なく関税を撤廃せよという。これが如何に雇用と環境を破壊し、飢餓の原因になるかは過去3回の記事を読んで下さった方は納得してくださるでしょう。
しかもTPPでは輸入国側が一方的に関税の撤廃を強いられるのに、悪名高いアメリカの輸出補助金制度は不問にされます。WTOにおいてすら、アメリカの輸出補助金制度は不公正と非難され削減を求められているにも関わらず、です。TPPにおいては万事米国主導でルールが作られるから、米国にとって都合の悪いテーマは除外されるのです。このような米国主導の身勝手な枠組みに丸裸で日本が飛び込むことは自殺行為以外の何物でもありません。
菅政権がメンツにかけてもTPP交渉に参加するというのであれば、アメリカに次のように要求すべきでしょう。「米国は、例外なくすべての農業補助金を全廃せよ。でなければこちらも関税を撤廃できない」と。アメリカとしては受け入れられるわけがありませんから、日本はめでたく交渉の場から「じゃあサヨナラ」とオサラバできるわけです。このような要求をアメリカに突き付けることができれば、菅政権の評価も少しは高まろうというものです。
米国とEUの農業保護
農業保護をしていない先進国は存在しません。そして日本の農業保護は、アメリカやEUに比べて全く足りないのです。現に政府が農家に出す補助金も、農産物の平均関税率も、日本はEUの水準よりもはるかに低い。
以下は、ウィキペディアのページ「食料自給率」の項目に出ているデータですが、つぎの通りです。
「農業所得に占める政府からの直接支払いの割合は、フランスでは8割、スイスの山岳部では100%、アメリカの穀物農家は5割前後というデータがあるのに対し、日本では16%前後(稲作は2割強)となっている」
ウィキペディア「食料自給率」より
フランス農家の所得の80%は政府からの直接支払い。アメリカですら50%で、日本はたったの16%。これだけ補助されていれば、アメリカやフランスの穀物に競争力があるのは当たり前でしょう。日本に競争力がないのは補助が全く足りないからです。
本日(2011年2月7日付け)の東京新聞は、EUや米国の農家が国にいかに大事に保護されているのかということを数字で論証していました。さすが東京新聞。他の全国紙とは違います。それによれば、EUの農家一世帯が受ける直接支払額は日本の農家一世帯の3.6倍、アメリカの農業予算は年間10兆円などと紹介されていました。アメリカ政府が農業保護にかける予算の情熱といったら、ちょうど日本がダムや道路の公共事業にかける情熱に匹敵するといえるでしょう。
前々回の記事のコメント欄で日本の中山間地の棚田など滅びてもよいとのコメントが寄せられましたが、スイスは全額政府が支出して山岳部の農地を守っています。国土を守るために必要だから。それが国民的合意なのです。このような国土を守るための保護主義は全く正当な行為であり、日本もスイスを見習うべきでしょう。
財政不足の国は関税で防衛するしかない
私は国土保全と食料安全保障のためのスイスのような自衛の保護主義は全く正当な行為だと思います。しかし、米国の輸出のための保護主義は、他国の人々の胃袋を支配し、国際覇権を維持するための戦略的道具であり、おまけに他国の国土をも破壊するという迷惑この上ないシロモノです。自衛の保護主義は正当であり、攻撃の保護主義は不当なのです。
アメリカに攻撃されたらひとたまりもないから、インドのような途上国は平均124%の高関税で対抗して懸命に農業を保護しようとしています。EUや米国のような先進国は補助金(農家への直接支払)の大盤振る舞いができますが、財政が限られている途上国はそれができないから関税で防衛するしかないわけです。
財政破綻寸前とさわがれている日本も、インドの農産物平均関税率124%を見習うべきでしょう。何せ日本の農産物の平均関税率は12%で、EUの19%よりも低いのだから・・・・・・。アメリカの攻撃的保護主義から身を守るために、関税という自衛のための防御を使って何が悪いのでしょう。アメリカ並みの何兆円という巨額の財政を支出して農家保護するよりも、税収の増加になり財政再建にも寄与する関税の方がはるかにスマートです。納税者の合意を得やすいでしょう。マスコミは、あれだけ「財政再建、バラマキ反対」と叫ぶのだから、関税政策を支持すべきなのです。
アメリカの輸出補助金の仕組み
悪名高い米国の穀物輸出補助金の仕組みは以下のようです。
まず、米国政府は、米国の農家が満足に暮らし営農を再生産するために必要な目標価格(=A)を決めます。ところが国際市場で競争力を持つための市場価格(=B)は、Aより低い。そこでAとBの差額(A-B)は、全額政府が所得補填します。そのダンピング輸出により、米国の穀物は必ず国際競争力を持つというわけ。これはいったい、どこの社会主義国の行為でしょう? 市場原理もへったくれも何もないのです。
アメリカの農業補助金制度を「攻撃的保護主義」と呼ぶ鈴木宣弘氏はアメリカのコメ価格の実態に関して下記サイトの記事で以下のように解説していました。ちょっと古い記事なのですが分かりやすいので引用させていただきます。
http://sugar.alic.go.jp/japan/view/jv_0411b.htm
***鈴木宣弘「WTOの枠組み合意とその意義」より引用*****
(前略)
例えば、米国のコメの価格形成システムを、日本のコメ価格水準を使ってイメージしてみると、ローンレート(融資単価)1.2万円/俵、固定支払い3千円/俵、目標価格1.8万円/俵とすると、政府(CCC)にコメ1俵質入れして1.2万円借りて、国際価格水準5千円/俵で売った場合、5千円だけ返済すればよく(マーケテイング・ローンと呼ばれる)、さらに、固定支払い3千円/俵と、目標価格1.8万円/俵と(ローンレート+固定支払い)との差額3千円/俵も支給される(いわゆる「復活不足払い」)。ローンレート制度を使っていない場合は、5千円/俵で売ったら、ローンレートとの差額7千円/俵が支給される。つまり、いずれにしても、国際価格水準5千円と目標価格1.8万円の差額が政策的に補てんされる。全体が大きな輸出補助金ともいえる。しかし、WTO上は、このシステムは、輸出補助金としての削減対象に認定されておらず、国内支持として分類されたため、これまでも緩い削減ですまされてきた。
(後略)
***引用終わり***************
いったい何という複雑怪奇なシステムだろうと面食らいます。要するにコメの目標価格と国際市場価格の差額は全部政府が補助しているということなのです。この鈴木氏の数値例ですと、じつに農家の所得の2/3以上が政府からの補助ということになります。もちろんいつでもこのような多額の補助をしているわけではなく、目標価格と国際価格は変動します。国際価格が上昇すれば政府からの補助金も減ることになります。ただし全米・全穀物で平均すれば農家所得の50%は政府からの直接支払ということになるわけです。
これは実質的に輸出補助金なのですが、そのように銘打つとWTO協定違反になってしまうから、あの手この手で分かりにくい制度にして「これは輸出補助金ではない」と強弁してWTOをごまかしてきたわけです。
このような輸出補助金付き穀物で攻撃されたら途上国の穀物生産は破滅します。実際、メキシコ、エルサルバドル、ハイチ・・・・と多くの国々がアメリカの攻撃的保護主義の犠牲になり、自国の自給的穀物生産を衰退させた挙句、国際価格の高騰によって2008年には深刻な飢餓に直面しました。まさにアメリカが仕組んだ飢餓輸出といえるでしょう。
アメリカは輸出補助金で国際市場をゆがめ、飢餓リスクを高めるという犯罪行為を行っています。しかるに日本が防御の関税を維持しても飢餓リスクを抱える途上国には何ら悪影響は及ぼしません。それどころか日本が自給率を高めることは自国を守る正当防衛のみならず、途上国の飢餓リスクの減少につながります。下手な援助をするよりも、よっぽど国際貢献になるといえます。
TPPという新戦略の意味
さて、このように不公正な補助金によるダンピング輸出は当然にWTOで問題とされます。財政不足の国々としてはアメリカのように補助金など出せませんから、アメリカが輸出補助金を維持する以上、高関税で防衛するしかない。アメリカとしては輸出補助金を維持したまま、他国の農産物関税のみ削減させたい。WTOを自国の覇権の道具として使いたいアメリカは輸出補助金は棚に上げて、関税のみ削減せよと要求します。しかしながら、「もう騙されないぞ」とばかりに途上国の発言権が高まる中で、次第にWTOもアメリカに不利な裁定を下すようになってきました。米国からしてみれば、自国の言いなりだと思っていたWTOが、生意気にも途上国の言うことを聞いて、アメリカに向かって「輸出補助金を削減せよ」などと要求をするようになったわけです。アメリカは面白くないことこの上ないのでしょう。かくしてアメリカもドーハ・ラウンドに意欲を失い、交渉は行き詰ったというわけです。
アメリカとしては、途上国の発言権が高まり、WTOを自国に都合のいいようにコントロールできなくなってきたことから、別の枠組みを模索する必要がありました。そこで目を付けたのがTPPだったというわけです。アメリカに不利になる可能性のあるドーハ・ラウンドはあきらめて、TPPという自国主導の新たな枠組みの中で恣意的にルールを設定していこう、こういう目論見なのでしょう。
農産物を工業製品と同列に扱ってはいけないことは前回まで3回にわたって書いてきたとおりです。WTOにおいてすら、農産物は工業製品とは別のカテゴリーに分類され、農産物には暫定的に高い関税率が認められるなど、不十分とはいえ農業に対して幾ばくかの配慮はなされています。しかるにTPPにおいては、農産物も工業製品も全く同列に扱って、例外なく関税を撤廃せよという。これが如何に雇用と環境を破壊し、飢餓の原因になるかは過去3回の記事を読んで下さった方は納得してくださるでしょう。
しかもTPPでは輸入国側が一方的に関税の撤廃を強いられるのに、悪名高いアメリカの輸出補助金制度は不問にされます。WTOにおいてすら、アメリカの輸出補助金制度は不公正と非難され削減を求められているにも関わらず、です。TPPにおいては万事米国主導でルールが作られるから、米国にとって都合の悪いテーマは除外されるのです。このような米国主導の身勝手な枠組みに丸裸で日本が飛び込むことは自殺行為以外の何物でもありません。
菅政権がメンツにかけてもTPP交渉に参加するというのであれば、アメリカに次のように要求すべきでしょう。「米国は、例外なくすべての農業補助金を全廃せよ。でなければこちらも関税を撤廃できない」と。アメリカとしては受け入れられるわけがありませんから、日本はめでたく交渉の場から「じゃあサヨナラ」とオサラバできるわけです。このような要求をアメリカに突き付けることができれば、菅政権の評価も少しは高まろうというものです。
ここしばらく、精神的に余裕が無くなり、自分の専門に逃避していました(笑)
そうこうしている間にも政治状況は悪化の一途でますます、逃避行に身を任せていました。それは今も変わりません。
だから、関様のブログは読めても、コメントまで書き込むまでのエネルギーはあまりありません。それでもTPP問題については一言だけコメントさせていただきます。
関様はTPPは日本の農業を壊滅的な影響を与えるだろうと主張されています。私も直感的にですがそう感じていました。しかし農業は再構築されるでしょう。大資本(外資かも)が農地をかき集めて大規模経営をはじめると想像しています。もちろん政府もそれを後押しするように法改正もするでしょう。そしてそこでできた作物は高い値段で海外に輸出されるようになるのと予想します。一般の庶民は国内産を食することができず、輸入した遺伝子組み換え食品を口にするようになる。そんなシナリオが浮かびました。
関様は「TPP交渉に参加するというのであれば、例外なくすべての農業補助金を全廃せよ」と訴えるべきだと主張されていますが、補助金云々の問題ではないと思います。TPP加盟は理屈抜きでも断固反対すべきだと私は考えます。
ところで米国で「食品安全近代化法」が上院で可決しました。これが下院を通過して実施となれば、米国からの輸入物はほとんどが遺伝子操作された食品になるでしょう。それどころか日本もTPP加盟によって同様の法律ができて家庭菜園すらできなるなるといった事態も到来しかねないと私は考えています。
関様の主張する農家への保護政策の必要性については全面的に賛同します。今後もTPP反対の主張を続けてくださることを期待します。
米は,800%の関税をかけて尚、農家が売り渡す米価は、60kgで1万数千円です。反収、15万円ほどにしかなりません。1haでも150万円にしかなりません。其れで,農家の平均耕作面積は、1.4とか1.8haとかですね。生活できないじゃないですか。
補助金は全く農家には届いてはいないのですよ。800%の関税をかけて尚、米作は崩壊している。TPP以前の問題なのですよ。その現状に対する解決策も持たないままに、TPPに反対しても全く農業を救うことにはなりません。
所得補償と言っても,反当たり15千円くらいですね。ha15万、此で何の補償になりますか。駄目ですね。
5兆円とも言われる農業補助金が,農家に全く届かないところで消えてしまっている。其れが此の国の農業の実態であり、農業を崩壊させている元凶なのです。
農業は,既に崩壊してしまっている。その現実を見ようともせず、外国の補助金がどうたら言っても虚しいだけです。
もし、本当に米農家を救済する気があるのなら、此の国の米作の規模で,コストに見合う買い取り米価を設定して、安心して供出できる所得を補償することです。其れを実現するためには,現行の買い取り価格を5倍くらいにしないと駄目ですね。その上で、800%の関税を維持して農業を保護する。さすれば,仰るように、此の国の農業は自活できるようになります。
簡単ですね。そして、其れしか此の国の農業が生き残る方策はありません。よろしくお願いします。
まずは関税を維持して、農業がむき出しの国際競争にさらされるのを阻止することです。国際競争に勝てるだけの補助金を出すよりも、関税を維持する方がずっとコストが小さいことは、関さんが指摘している通りです。
その上で、いかにして米農家がやっていける持続可能なシステムに移行するかを、皆で考えていく必要があります。
かもさんの言うように、かつての食管制度下をはるかに超える逆ザヤをかますのも1つのやり方でしょう。しかし私には、ただつくることに補助金を出すよりも、むしろ農業の多面的価値、すなわち安全なものをつくっている、地域景観の維持に寄与している、水環境や生物多様性の保全に役立っているなどの貢献を評価してそれに応じた補助金を出す方が、より良いように思われます。その方が農家が食の安全や環境保全のための工夫をするようになり、新たなやりがいも生じてくることになります。そして認証制度などを通じて、多少高くても消費者がそれを選ぶようになれば、国や地方公共団体の財政的負担もより小さくなろうというものです。
こういったやり方の萌芽はすでに表れているのですが、現在、農水省が進めようとしている「環境保全型農業直接支払」では環境保全型農業の範囲をかなり狭く限定しており、その点では流れに逆行しています。これについては場を改めて議論したい内容です。
かなり話がTPPからずれていましたので、このあたりにしておきます。
800%の関税をかけて、50倍価格の米を国民に食わせるなど犯罪です。
アメリカの米が安くて、美味いなら、其れで結構。低価格で、付加価値の高い物を作り、売り、消費する。其れが経済の原理です。
原理を潰して、無理を通せば、道理が引っ込むのが理です。
中山間地のどうにもならない棚田を原生林に戻しても、自然は破壊されません。自然は棚田を作らないし、自然は自然のままにしておけば、自然に自然に戻るのです。
そんなことより、農家への直接補償をきちんと論議すべきです。今現に、5兆円を超える農林業関係予算が、全く農家に届くことなく、農協や、農業土木業者や、農林省の役人を養うために消えてしまっています。その全部を農家に分け与えれば、関税などかけなくても農家はやっていけます。
農家が、自ら企画して、必要とするところに国費を投入することこそが必要な政策なのです。
先ず、農協を解体しましょう。
農協こそが、自らの保身のために、誰よりも熱心にTPPに反対し、恫喝して、策動して、煽動しているのです。
目を覚まして下さい。そして、気付いて下さい。農家の的は他でもない、農協なのです。
原理を潰して、無理を通せば、道理が引っ込むのが理です。」
これが道理だなどと、誰が決めたのでしょうか?
経済の基本は、経世済民。世を経め民を済うのが目的であって、保護貿易も自由貿易もその手段に過ぎないはずです。
アダム・スミスがいう「公平な観察者」の目から見たら、穀物を投機の対象にする人たちはどのように映るのでしょうか?聞いてみたいところです。
「中山間地のどうにもならない棚田を原生林に戻しても、自然は破壊されません。自然は棚田を作らないし、自然は自然のままにしておけば、自然に自然に戻るのです。」
あなたも農業と農村を知っている人ならば、一旦山に戻ってしまった水田を元に戻すのにどのくらいの労力とエネルギーを要するのか、わかっているはずですね。特に水田は、維持することの方が新たに拓くよりはるかに容易だということも、当然、理解してることと思います。
「自然に戻る」ことが、人と自然の安定したかかわりを保証することには、必ずしもならないのです。
「そんなことより、農家への直接補償をきちんと論議すべきです。今現に、5兆円を超える農林業関係予算が、全く農家に届くことなく、農協や、農業土木業者や、農林省の役人を養うために消えてしまっています。その全部を農家に分け与えれば、関税などかけなくても農家はやっていけます。
農家が、自ら企画して、必要とするところに国費を投入することこそが必要な政策なのです。
先ず、農協を解体しましょう。」
このことは十分に理解できます。「関税などかけなくても」というところを除いては。こういう農家の工夫と努力、そしてそれに対する補助を無駄なものにしないためにも、農業がむき出しの国際競争にさらされることを関税で阻止する必要があるのです。
宮城県のコメどころの一等農地を耕す老農家の話を聞いてきました。3反の水田1枚(だいたい1,500kgの米がとれる)の地価がわずか150万円、農業機械1台が1,500万円とのことです。これではとてもやっていられません。年収2,000万円あっても、収支がカツカツになる理由がよくわかります。農家以外の取り分が多すぎるのは確かでしょう。富の分配や適正技術の観点から、農の営みを見直す必要あるという点では、かもさんの意見に賛成します。
ただ、この話はこのブログの主題ではありませんので、よそでやりましょう。少なくともかもさんの関税批判・自由貿易礼賛は、議論の体をなしていませんよ。
自然と出来上がっていく、日々の生活の積み重ねです。
食糧は、平たく言ってしまえば、生命維持のために作るのであって、それ以上の付加価値は、必須のものではありません。だからこそ、それ以上の付加価値を与える日本の農業は、表面上「負けて」しまうのです。
市場(貨幣経済)から完全に切り離し、家庭菜園や、手芸の世界のようにして生き残るのが、ベストと考えますが…
市場原理が成立しない商品は存在し得ないと考えています。
実は、私も、反収200万ほどになる農産物を、東京の太田市場に出荷しています。全くの個人出荷です。農協にも、商社にも農林省にもお世話にはなっていません。市場では、1円もあれば、100円もあります。需給バランスが崩れれば、値崩れも、暴騰もあります。その中で、安定的に取引をするのが、経営です。
それでも、品質が良い商品を安定的に市場に供給すれば、仲卸は私の商品を待っていてくれます。値が付かぬ時には、申し訳ないと電話が掛かってきたりします。
知り合いの農家でも、家族経営で、3000万くらいの収入を得いている農家は普通にあります。
農業も、技術と知恵と才覚です。
日本の米を、中国人お金持ちが争って土産に買って帰ります。上海では、日本の米は高く売れるそうです。米が商品であるなら、市場原理に委ねるのが筋です。商品でないなら、反収15万でやるしかありません。
TPPで鍛えられる農業を頑張って作りませんか?
其れは決して、米麦だけではありません。
TPPで、農業が壊滅するというのはブラフです。
実は、産業界も同じ事なのです。TPPで潰される産業は、潰されるしかないのです。
例え、食料を100%自給しても、エネルギーも資源もない此の国が、他国と争って生き延びる術はありません。攘夷では駄目なのです。
開国しましょう。
国の基と言われ国家がそれに頼っていた米作りが、どうして今補助金に頼るようになったのかずっと疑問に思っておりました。
それは日本が工業国に転換したためだったのですね。
かつて政府が逆ザヤをこうむってまで米価をコントロールしていたのは、工業部門で働く人の生活費を安く抑え、工業製品を安く製造できるようにするため、と聞いたことがあります。ほんとは工業を保護するためだったのですね。
80年代末あたりの「日本の米作りはいらない」という論調は、安い米を外国から買って、米農家への補助金をなくそう、という狙いだったと思いますが、日本人は高くても日本の米を買い続けました。昨今派遣切りだの就職難だの労働事情がやたら厳しいのは、米価制度の撤廃が遠因でしょうか(先走りすぎは分かっていますけど)?
そうしてみると日本の産業構造は明治以来変わっていないんじゃないかと思います。
超高級農作物はまだ日本に一日の長がありますが、台湾や中国がそういう作物を10倍規模で売り出してきたら対抗できますか?
もし政府が関税を撤廃するのなら、輸出型農業の保護のためにつぎ込むお金は却って増えるのではないでしょうか。
それから、TPPについては「農業の問題は一部に過ぎない」ということを、すでに幾人ものジャーナリストや学者の方々が指摘されています。また、工業で競争力のないメーカーが淘汰されれば済むというような単純な問題でもなく、実は投資や金融こそがメインになるのだという人もいます。
農業者の方でも、外国にも売り込めるような高級品を作ってTPPを乗り切れる自信があるような先進的な方はむしろ、TPPを望まれるのかもしれません。しかし、下記の最後の動画の中での東谷氏の説明によると、そうした作物の市場での競争力よりも、その生産、加工という基本の部分を外資にごっそりさらって行かれる可能性があるということのようです。
私もすべて把握できているわけではありませんが、御参考までに。
2010年12月18日放送 ゲスト 中野剛志 京都大学助教
怪談TPP 世界の孤児になるって本当なのか グローバル時代の中での国益を考える
http://www.youtube.com/watch?v=JcQnZ4ioiGo
岩上安身オフィシャルサイト
2011年2月8日
「TPPを慎重に考える会」会長の山田正彦前農林水産相インタビュー
http://iwakamiyasumi.com/archives/6578
関西テレビ スーパーニュースアンカー 2011年2月16日 放送 東谷
"平成の開国" TPP 真実と真っ赤なウソ 報道されない「TPPの真実」を検証する
[出演] 東谷暁
http://www.youtube.com/watch?v=XD-nv0sfbxQ