代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

ダム決壊が被害拡大の原因 ―18ダム決壊のサウスカロライナ水害

2015年10月15日 | 治水と緑のダム
 「1000年に1度」といわれる記録的豪雨で10月8日までに19人の死者を出した米国のサウスカロライナ水害。10月8日までに18のダムが決壊ないし機能不全に陥ったという。ダムの決壊が、水害を拡大させた原因である。

 地球温暖化時代の水害は「想定外」は禁句である。「ダム決壊」という「想定外」を想定しなければならない。ダムこそが災害を増幅させる原因になるという認識で行動せねばならない。治水をダムに任せるという発想からは決別しなければならないのだ。

 サウスカロライナには強度の弱い小規模な貯水用のアース式ダムがたくさんあった。まだ被害の全貌は十分に明らかになっていないものの、今回決壊したダムの多くは老朽化した貯水用アース式ダムのようだ。

 アメリカの気象予報会社のAccuWeatherは、以下のように報じていた。(以下のサイトを要約)

http://www.accuweather.com/en/weather-news/dam-breaches-failures-south-carolina-flooding-evacuations-columbia-photos-pictures/52814314


 記録的な豪雨が数日間続いたため、土でできているアース式ダムの堰堤が水を吸収して強度を下げ、決壊ポイントにまで達してしまった。豪雨がピークを過ぎた後でも決壊が起きている。雨のピークが過ぎた後もアース式ダムは水を吸って強度が弱まり続けるので、決壊リスクは続く。

 以下の写真は土でできたアース式ダムの堰堤が決壊し、水が完全に抜けた状態のオールドミル貯水池。
 

(Twitter Photo/Lexington County Sheriff's Department)

 下の写真は決壊したオーバークリーク・ダムの上流のフォレストレイク・ダム。水が堰堤を超えて越流している様子。
 

The Forest Lake Dam near Columbia, S.C., overtopped and sent water rushing. (Facebook Photo/Gills Creek Watershed Association)

 下の写真はコロンビア近郊のアース式のカーリーズレイク・ダムが決壊した様子。


The Carys Lake Dam in Richland County, S.C., breached amid the historic flooding. (Facebook Photo/Gills Creek Watershed Association)

 リッチランド群のオーバークリーク・ダムは決壊の危険が高まったため、下流の住民の全世帯に対して5日(月)に避難命令が出た。しかし避難命令が出たわずか数分後に本当に決壊したという。
 オーバークリーク・ダム決壊の様子を伝えるCNNニュースの以下の動画を参照。

 
South Carolina Dam Breaches Mandatory Evacuation Overcreek Dam breach 10/5/15



 今回の水害で、アメリカ国民の間に「アメリカのダムは大丈夫か?」という懸念の声は高まっている。以下の「ナショナル・パブリック・ラジオ」の記事を参照されたい。

http://www.npr.org/2015/10/11/447181629/aging-and-underfunded-americas-dam-safety-problem-in-4-charts

 この記事によれば、全米に8万7000基あるダムのうち、4000基は決壊リスクがあり修復の必要性があるが、手は回っていないという。決壊リスクのある4000のうちの半数の2000基では、ダムが決壊した場合、周辺住民の生命が重大な危険にさらされるという。

 今回サウスカロライナ州で決壊したダムもいくつかは、建設から100年以上が経過し決壊リスクが指摘されていた老朽ダムであった。
 全米ダム安全協会(Association od State Dam Safety)によれば、それら危険な2000基弱のダムをすべて修復した場合、必要な予算は540億ドルに達し、現在の予算規模では修復に50年を要するという。その50年のあいだにさらに多くのダムが老朽化していく。

 また、全米のダムのうち65%は政府ではなく民間が所有している。連邦政府予算で、これらのダムを修復することはできず、放置されている。民間のダムの場合、ダムが壊れたり機能不全に陥って住民の生命・財産が脅かされる緊急事態にならない限り、連邦政府予算で修復することはできない。

 アメリカでダムは巨大な不良債権となっている。日本も他人事ではない。


【追記】 10月13日に州政府が発表した直近の情報によれば決壊したダムは18を超えて、20に達したそうです。現在も129のダムが危険で監視下に置かれているとのことです。以下の記事参照。

http://www.wyff4.com/news/building-collapses-in-columbia-numerous-roads-flooded/35646664

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