台風12号で紀伊半島中心に甚大な被害が出ています。亡くなられた方々に心よりお悔やみ申し上げます。東北、北海道の方はまだまだ激しい雨が降るようですので、くれぐれもお気を付け下さい。
さて、これだけ被害が出ると、すぐに「やっぱりダムは必要だ」という議論が出てきます。しかし、今回の災害も死者・行方不明者の多くが土砂災害によるもののようです。ダムがあれば防げたような災害ではりません。98人の死者を出した2004年の台風23号災害のときも死者の多くが土砂災害によるものでした。
国交省は、温暖化に伴い台風が巨大化し、ゲリラ豪雨なども増え・・・ということを根拠にダム建設を正当化しようとします。しかし治水ダムなどいくら造っても、土砂災害は防げません。ダムによる治水には財政的にも技術的にも限界があるのであり、河道主義治水から流域治水への発想の根本的な転換が必要だと思います。
私はこのブログで、国交省の河川局と林野庁をくっつけて森林と河川と一体に、流域単位で治山治水対策に取り組むべきだと書いてきました。それは河川局(最近改名して、水資源管理・国土保全局)にとっても、この間に失墜した評価を高め、あらたな展望を切り開くことにつながると思うのです。
台風災害対策としては、ダムなどより、土砂災害対策や既存の堤防強化にお金を使う方が喫緊で人命を守るという観点から重要と思われます。しかし、林野は国交省の管轄外で手を出せないので、国交省は土砂災害対策の面でできることは少なく、河道にダムをひたすら叫ぶことになります。
一方の林野庁は、木材自給率を上げようとして、結果、伐採跡地の再造林放棄などを招いてしまっています。それは河川に悪影響を与えますが、河川は管轄外なのでお構いなしになります。
しかし河川局と林野庁が組んでしまえば、総合的な土砂災害対策+治水対策が可能になります。
表層崩壊や土石流の災害リスクという点で、写真のような放置された杉やヒノキのモヤシ状人工林(写真は2004年の台風災害の際に徳島県で崩れた場所です)が、もっとも崩壊しやすく、リスクが高いものです。間伐をして、スギやヒノキの単層林でなない、針広混交林にするだけで、効果があります。今回の災害で崩れた場所も、航空写真を見る限り、放置人工林が多いようです。
間伐を進めながらさらなる土砂災害対策を進める方策として、間伐材で木杭をつくり、それを急斜面で鉛直方向に打ち込めば相当に効果があると思います。横滑りの斜面崩壊への抵抗強度が上がるからです。間伐材を山の中に放置しておくと、腐らせて二酸化炭素やメタンの発生源になってしまいますが、土の中に打ち込んでおけば、腐食せず、二酸化炭素の貯留機能も果たします。
こうした作業は森林組合などではできないので、土木・建設業者の出番になります。
ダム建設がなくなれば、地方の建設業界は大打撃を受けるのでは危惧を抱いている方が多いでしょう。しかしダム治水ではなく、崩壊しにくい森づくり、また水田の貯留機能強化、水害防備林の整備など緑のダム方式の治山治水に転換すれば、地方の建設業界に、より安定して永続的な雇用を与えます。
ついでに木質バイオマスのエネルギー利用などの新エネルギーのベンチャーにも直結し、経済波及効果も高いのです。ダムは一過性の雇用を生み出すだけで、じきにその地方を衰退させますが、緑のダム治水はその地方を活性化させます。
河川局と林野庁がくっつけば、こうした取り組みもやり易くなると思うわけです。お互いにとって悪い話ではないと思うのですが・・・・。
しかし、今回の和歌山県田辺市の土砂災害現場など、明らかに深層崩壊で、森林に手を入れても、どうしようもなく崩れてしまうような大規模なものでした。
こうした大規模な深層崩壊は、土木的には防ぎようがないのではないでしょうか。やはり危険な場所にはなるべく住まない、そしてやはり逃げることを徹底するしかないのです。「逃げる」ことを含めたソフトな防災対策、「減災」の考え方を、震災後に政府が立ち上げた復興構想会議も提言していた。コンクリート防災に頼るのではなく、ソフトな防災対策に十分なお金をかけていくことも今後ますます重要になってくるでしょう。
さて、これだけ被害が出ると、すぐに「やっぱりダムは必要だ」という議論が出てきます。しかし、今回の災害も死者・行方不明者の多くが土砂災害によるもののようです。ダムがあれば防げたような災害ではりません。98人の死者を出した2004年の台風23号災害のときも死者の多くが土砂災害によるものでした。
国交省は、温暖化に伴い台風が巨大化し、ゲリラ豪雨なども増え・・・ということを根拠にダム建設を正当化しようとします。しかし治水ダムなどいくら造っても、土砂災害は防げません。ダムによる治水には財政的にも技術的にも限界があるのであり、河道主義治水から流域治水への発想の根本的な転換が必要だと思います。
私はこのブログで、国交省の河川局と林野庁をくっつけて森林と河川と一体に、流域単位で治山治水対策に取り組むべきだと書いてきました。それは河川局(最近改名して、水資源管理・国土保全局)にとっても、この間に失墜した評価を高め、あらたな展望を切り開くことにつながると思うのです。
台風災害対策としては、ダムなどより、土砂災害対策や既存の堤防強化にお金を使う方が喫緊で人命を守るという観点から重要と思われます。しかし、林野は国交省の管轄外で手を出せないので、国交省は土砂災害対策の面でできることは少なく、河道にダムをひたすら叫ぶことになります。
一方の林野庁は、木材自給率を上げようとして、結果、伐採跡地の再造林放棄などを招いてしまっています。それは河川に悪影響を与えますが、河川は管轄外なのでお構いなしになります。
しかし河川局と林野庁が組んでしまえば、総合的な土砂災害対策+治水対策が可能になります。
表層崩壊や土石流の災害リスクという点で、写真のような放置された杉やヒノキのモヤシ状人工林(写真は2004年の台風災害の際に徳島県で崩れた場所です)が、もっとも崩壊しやすく、リスクが高いものです。間伐をして、スギやヒノキの単層林でなない、針広混交林にするだけで、効果があります。今回の災害で崩れた場所も、航空写真を見る限り、放置人工林が多いようです。
間伐を進めながらさらなる土砂災害対策を進める方策として、間伐材で木杭をつくり、それを急斜面で鉛直方向に打ち込めば相当に効果があると思います。横滑りの斜面崩壊への抵抗強度が上がるからです。間伐材を山の中に放置しておくと、腐らせて二酸化炭素やメタンの発生源になってしまいますが、土の中に打ち込んでおけば、腐食せず、二酸化炭素の貯留機能も果たします。
こうした作業は森林組合などではできないので、土木・建設業者の出番になります。
ダム建設がなくなれば、地方の建設業界は大打撃を受けるのでは危惧を抱いている方が多いでしょう。しかしダム治水ではなく、崩壊しにくい森づくり、また水田の貯留機能強化、水害防備林の整備など緑のダム方式の治山治水に転換すれば、地方の建設業界に、より安定して永続的な雇用を与えます。
ついでに木質バイオマスのエネルギー利用などの新エネルギーのベンチャーにも直結し、経済波及効果も高いのです。ダムは一過性の雇用を生み出すだけで、じきにその地方を衰退させますが、緑のダム治水はその地方を活性化させます。
河川局と林野庁がくっつけば、こうした取り組みもやり易くなると思うわけです。お互いにとって悪い話ではないと思うのですが・・・・。
しかし、今回の和歌山県田辺市の土砂災害現場など、明らかに深層崩壊で、森林に手を入れても、どうしようもなく崩れてしまうような大規模なものでした。
こうした大規模な深層崩壊は、土木的には防ぎようがないのではないでしょうか。やはり危険な場所にはなるべく住まない、そしてやはり逃げることを徹底するしかないのです。「逃げる」ことを含めたソフトな防災対策、「減災」の考え方を、震災後に政府が立ち上げた復興構想会議も提言していた。コンクリート防災に頼るのではなく、ソフトな防災対策に十分なお金をかけていくことも今後ますます重要になってくるでしょう。