先ごろ終了した中国共産党第17回党大会で政治局常務委員の人事が注目を集めていた。今回、新しく抜擢された若手の常務委員の中からポスト胡錦濤の指導者が選ばれる可能性が高いからだ。新たに50代で常務委員になった「若手」は、習近平氏(上海市党委員会書記)と李克強氏(遼寧省党書記)であった。二人とも文革の混乱の最中に青年時代をすごし、二人とも農村へ下放され、下放の中で立派な実績をあげた経験を持つ。この二人のうちのどちらかが「ポスト胡錦濤」の国家主席になる可能性が高いそうだ。
李克強氏に関しては、法学士と経済学博士を併せ持つということで「おや」と思った。というのも中国共産党の指導部といえば理工系ぞろいで、法学者や経済学者はきわめて珍しいからだ。おそらく中国は世界の主要国の中で唯一、政治指導者層が理系人間ばかりで占められている国といってもよいかも知れない。
「技術立国」を標榜しながら文系の政治家・官僚に政治権力を握られている日本も、少しは中国の理系重視の姿勢からは学ぶべき点はあると思う。少なくとも日本政府は、政策立案を新古典派エコノミストのおバカたちばかりに任せるのではなく、技術畑の人間の知恵をもっと取り入れるべきなのだ。
ちなみに今度の中国共産党の政治局常務委員9名の中で文系は李克強氏一人である。
習近平氏の方は、上海閥の江沢民人脈ではないか、親の七光りの太子党ではないかと日本のマスコミの評判は悪いようだ。しかし、その程度の人物ではないのではないかと思われる。習氏の経歴を見ていたら驚いた。下放された先が陝西省の延川県だという。
じつは私は2003年8月に、陝西省延川県のとある村の植林事業の調査をしたことがあった。その際、村の農家のおじいさんと植林現場の山道を散策していて、以下のような話を聞いたのを思い出した。おじいさんは廃屋になったヤオトン(黄土高原に一般的な横穴式の住居)を指して次のように語った。
「文革の頃、あのヤオトンに下放されてきた知識人青年が住んでいたんだ。最初のころは村の生活に適応できなくて大変に苦しんでいたものだった。しかし、大変な努力家で、見事に困難を乗り切った。村人から農作業を熱心に学び、ついには村内の青年たちが見習うべき模範的な農村青年になった。文革が終わって彼は北京に戻ったが、その後連絡がない。今頃どうしているのだろう」
私はそれを聞いて、「それだけの人物なら今頃、党幹部に出世しているんじゃないですか」と答えたものだった。
一瞬「もしや」と思い、詳しく習近平氏の経歴を見てみた。彼の下放先は延川県の中の別の村であった。何せ延川県の中には346もの行政村があるから・・・・。だが、少なくとも私がいた村と同じ県内の近くの村だ。それで習近平氏に妙に親近感が沸いてしまった。
上の写真は私が滞在していた村のヤオトンの写真。写真を見ての通りの貧困地域である。習氏はこのような貧困地域に7年間も下放されていた。最初は青白い都市青年が不慣れな農村生活を強いられて大変な苦労をしたそうだ。いったんは北京に逃げ帰ったそうだが、また連れ戻された。その後、努力して農村生活に適応し、村の改善に立派な業績をあげたそうだ。文革が終わるまで村に住みながら、省で最初のメタンガス・エネルギー利用のシステムを確立し、黄土流出防止のダム建設でも実績を上げたという。
中国政府は現在、農村地域における薪炭・石炭依存度削減と環境保全・資源循環を目的として、家畜と人の糞尿を利用したメタンガス利用システムを推進中である。これはもちろん地球温暖化対策としてのクリーン・エネルギーになる。習氏は文化大革命中に、下放先の村において既にこのシステムを確立したという。相当に創造力の高く、実行力のある人物であることは間違いがないだろう。
中国共産党は、下放という困難の中で、立派に農村生活に適応するだけの忍耐があり、また努力のできた人間たちを党の幹部に抜擢している。だから、中国を敵視する日本のウヨクは、「中国が必ず崩壊する」などと、中国をあまり舐めてかからない方がよいだろう。
申し訳ないが、人材不足の末期的様相を呈しているバカ殿2世・3世議員が跋扈する永田町や、言われたことを従順にこなす能力はあっても困難を切り開く創造的能力の低い受験偏差値エリートばかりの霞ヶ関官僚では、下放の困難に打ち克った中国共産党の指導層の足元にも及ばない。
といっても、中国の官僚や知識人と話していると、農民と辛苦をともにした下放経験者はとても尊敬できる立派な人々が多いのに対し、その下の世代になると農民への露骨な差別意識を持つ人々が多くなる。下の世代は、正直に言ってかなり危ない。
私は、中国の友人に「もう一度下放政策を実施したらどうだ」などと半ば本気で提案している。もちろん毛沢東がやったようなやり方ではないが、国が制度的にプログラムを作って国家官僚を2~3年は農村に住まわせて、それにちゃんと適応し、村の改善に業績をあげた人間を出世コースに乗せるような仕組みを作れば、だいぶ汚職や腐敗も減るのではないかと思う。
もっとも、日本もそれをやるべきかも知れない。あの何か勘違いした官僚連中の間違ったエリート意識の鼻っ柱をへし折るのには有効だろう。
国民の税金をつぎ込んで官僚をアメリカに留学させてやり、市場原理主義で洗脳されて帰国してきた官僚に日本を破壊させてしまっているのに比べ、よほど安上がりでよい政策だと思うのですがどうでしょう?
李克強氏に関しては、法学士と経済学博士を併せ持つということで「おや」と思った。というのも中国共産党の指導部といえば理工系ぞろいで、法学者や経済学者はきわめて珍しいからだ。おそらく中国は世界の主要国の中で唯一、政治指導者層が理系人間ばかりで占められている国といってもよいかも知れない。
「技術立国」を標榜しながら文系の政治家・官僚に政治権力を握られている日本も、少しは中国の理系重視の姿勢からは学ぶべき点はあると思う。少なくとも日本政府は、政策立案を新古典派エコノミストのおバカたちばかりに任せるのではなく、技術畑の人間の知恵をもっと取り入れるべきなのだ。
ちなみに今度の中国共産党の政治局常務委員9名の中で文系は李克強氏一人である。
習近平氏の方は、上海閥の江沢民人脈ではないか、親の七光りの太子党ではないかと日本のマスコミの評判は悪いようだ。しかし、その程度の人物ではないのではないかと思われる。習氏の経歴を見ていたら驚いた。下放された先が陝西省の延川県だという。
じつは私は2003年8月に、陝西省延川県のとある村の植林事業の調査をしたことがあった。その際、村の農家のおじいさんと植林現場の山道を散策していて、以下のような話を聞いたのを思い出した。おじいさんは廃屋になったヤオトン(黄土高原に一般的な横穴式の住居)を指して次のように語った。
「文革の頃、あのヤオトンに下放されてきた知識人青年が住んでいたんだ。最初のころは村の生活に適応できなくて大変に苦しんでいたものだった。しかし、大変な努力家で、見事に困難を乗り切った。村人から農作業を熱心に学び、ついには村内の青年たちが見習うべき模範的な農村青年になった。文革が終わって彼は北京に戻ったが、その後連絡がない。今頃どうしているのだろう」
私はそれを聞いて、「それだけの人物なら今頃、党幹部に出世しているんじゃないですか」と答えたものだった。
一瞬「もしや」と思い、詳しく習近平氏の経歴を見てみた。彼の下放先は延川県の中の別の村であった。何せ延川県の中には346もの行政村があるから・・・・。だが、少なくとも私がいた村と同じ県内の近くの村だ。それで習近平氏に妙に親近感が沸いてしまった。
上の写真は私が滞在していた村のヤオトンの写真。写真を見ての通りの貧困地域である。習氏はこのような貧困地域に7年間も下放されていた。最初は青白い都市青年が不慣れな農村生活を強いられて大変な苦労をしたそうだ。いったんは北京に逃げ帰ったそうだが、また連れ戻された。その後、努力して農村生活に適応し、村の改善に立派な業績をあげたそうだ。文革が終わるまで村に住みながら、省で最初のメタンガス・エネルギー利用のシステムを確立し、黄土流出防止のダム建設でも実績を上げたという。
中国政府は現在、農村地域における薪炭・石炭依存度削減と環境保全・資源循環を目的として、家畜と人の糞尿を利用したメタンガス利用システムを推進中である。これはもちろん地球温暖化対策としてのクリーン・エネルギーになる。習氏は文化大革命中に、下放先の村において既にこのシステムを確立したという。相当に創造力の高く、実行力のある人物であることは間違いがないだろう。
中国共産党は、下放という困難の中で、立派に農村生活に適応するだけの忍耐があり、また努力のできた人間たちを党の幹部に抜擢している。だから、中国を敵視する日本のウヨクは、「中国が必ず崩壊する」などと、中国をあまり舐めてかからない方がよいだろう。
申し訳ないが、人材不足の末期的様相を呈しているバカ殿2世・3世議員が跋扈する永田町や、言われたことを従順にこなす能力はあっても困難を切り開く創造的能力の低い受験偏差値エリートばかりの霞ヶ関官僚では、下放の困難に打ち克った中国共産党の指導層の足元にも及ばない。
といっても、中国の官僚や知識人と話していると、農民と辛苦をともにした下放経験者はとても尊敬できる立派な人々が多いのに対し、その下の世代になると農民への露骨な差別意識を持つ人々が多くなる。下の世代は、正直に言ってかなり危ない。
私は、中国の友人に「もう一度下放政策を実施したらどうだ」などと半ば本気で提案している。もちろん毛沢東がやったようなやり方ではないが、国が制度的にプログラムを作って国家官僚を2~3年は農村に住まわせて、それにちゃんと適応し、村の改善に業績をあげた人間を出世コースに乗せるような仕組みを作れば、だいぶ汚職や腐敗も減るのではないかと思う。
もっとも、日本もそれをやるべきかも知れない。あの何か勘違いした官僚連中の間違ったエリート意識の鼻っ柱をへし折るのには有効だろう。
国民の税金をつぎ込んで官僚をアメリカに留学させてやり、市場原理主義で洗脳されて帰国してきた官僚に日本を破壊させてしまっているのに比べ、よほど安上がりでよい政策だと思うのですがどうでしょう?
温暖化問題で温度差(?)がありましたが、郵貯や平和やその他の問題点は、ほとんどとむ丸さんブログのご意見に賛成です。私がこのブログをつくったのも郵政民営化への反対論を提示しようというのがキッカケでした。
どうぞ今後ともよろしくお願い申し上げます。
一人っ子政策の前の世代は、伝統的に叔父や叔母といった縁戚関係にある人の下に送られて育った人が結構いるようです。もちろん、養育費は実父母が負担するようですが、実父母とは違った愛情をかけられて甘やかされずに立派な人間になる、と互いに信じています。
実際私の知っている人たちは、男女とも人間的にも優れているように思います。
で、彼等自身は、将来の中国を背負っていく甘やかされた一人っ子たちのことを憂慮しています。
なるほど。かなり幅の広い「カルト」の定義なんですね。
かくいう私も、学生のころから途上国の農山村の貧困や環境問題に興味をもっていた割りには、青年海外協力隊に応募する気にはなりませんでした。その理由は、あくまでも一市民として関わりたかったので、日の丸を背負うのがイヤだったからです。
>>都市住民も農村住民もそれぞれ井の中の蛙になってしまわないことですね
>これが最も重要なことだと思います。
この点で意見の一致ですね。今後ともよろしくお願いいたします。
青年海外協力隊はカルトっぽいですね。(笑)
子供のころから、『はまると日本の暮らしに適応できなくなるから止めておけ』と言われてました。
(楽しすぎて帰ってこないのだとか)
農作業もアレですよね。うちの祖母なども農業の虜で、畑のことと仏のことしか考えていないので皆困っています。
冗談はさておき
>都市住民も農村住民もそれぞれ井の中の蛙になってしまわないことですね
これが最も重要なことだと思います。今の日本の都市はあまりにも大地から切り離されてしまっていますから。
>ルト教団のよくやる手ですね。
隔離した上で、ある思想を上から強制したらカルトでしょう。しかし、別に都市青年が村に住み込んだところで、農民は組織的に洗脳したりやしませんから。農作業教えるのがカルトですか? 日本政府がやっている青年海外協力隊もカルトですか?
>私などは逆に田舎出なので、田舎の人間の持ってい
>る『自分が絶対に正しい』という根拠の無い自信の
>ほうをどうにかしたくなることのほうが多かったですね。
私も田舎出なので、それは理解できます。都市住民も農村住民もそれぞれ井の中の蛙になってしまわないことですね。お互いを知ることです。中国でも、都市への出稼ぎ者が帰村して、村で新しいビジネスを起こしたりしています。
新しい思想を叩き込むには最も簡単で効率の良い方法ですが、そうなったらもうそれは『人間』ではないのではないでしょうか?
私などは逆に田舎出なので、田舎の人間の持っている『自分が絶対に正しい』という根拠の無い自信のほうをどうにかしたくなることのほうが多かったですね。
子供の教育費は出せないけどお布施は数百万出す、でもそれが私にとって正しいことでお前は間違っている。そんな祖母との長い戦いに疲弊した母の姿を今でも覚えていますから・・・。