『純と愛』ついでに、総合的に朝ドラついでに、『NHK紅白歌合戦』の人選にもモノを申そう、いや書こうと思っていたのですが、意外にもと言っちゃ失礼だけど、結構できてたじゃありませんか、梅ちゃん。いやさ堀北真希さん。紅組司会。
相方・白組司会の嵐の、“数的優位”に巻き込まれず、ちゃんと正面を向いてお行儀よく曲紹介や、オリンピックメダリストなどの“曲紹介の紹介”をこなしていて、『梅ちゃん先生』内の“いっぱいいっぱいキャラ”と齟齬をきたさない範囲内で落ち着いていた。この「範囲内」ってところの匙加減がむつかしいんです。噛み倒しトチり通しの司会じゃもちろん全国的に疲れるけど、落ち着き過ぎて当意即妙過ぎる、余裕かましまくった梅ちゃんなんて誰も喜びませんからね。
応援に駆けつけた高橋克実さんと南果歩さんも“梅子のお父さんとお母さん”を保持してフレームに入ってきてくれたし。意味なくデカ蝶タイで決めたノブ=松坂桃李さんのほうが緊張気味でしたね。そりゃそうだ。堀北さんがこなれていればいるほど、ノブ松坂さんにはいやがうえにもアウェイだもの。梅子の「バーカ」炸裂も見たかったですけどね。
モノを申そうと思ったのは、堀北さんのMC力量ウンヌンについてではありません。ここのところのNHK、朝ドラの人気を“ヒロイン女優流用”という形で、とっくに賞味期限の切れている昔日の看板番組『紅白』に便利使いし過ぎではないでしょうか。怪しからんよコレ。朝ドラファン、ファンでなくてもウォッチャーな我々を虚仮にしとるよ。
2年前、2010年の『ゲゲゲの女房』の松下奈緒さんは、まだしもピアニスト活動実績という点で音楽性もあり、『ゲゲゲ』OPテーマ曲を歌ういきものがかりにピアノ演奏で応援という見せ場もありましたが、2011年の井上真央さんにしても、今回の堀北さんにしても、クソ長尺な、浮わっついててナンボな歌謡音楽バラエティ番組司会に親和する要素は、どう考えても持ち合わせていません。
ようするに、朝ドラをレギュラーで見ていた平均約20パーセントの視聴者に「陽子ちゃん(or梅ちゃん)が長時間出ずっぱりでがんばるらしいから『紅白』ちょっと見てみようか」という気になってもらうためのエサ撒きなのが見え見えなわけです。
これがドラマヒロインでなく、たとえばEテレの番組のナビ役タレントや芸人に全国区人気が出ていたとして、そういう人を“流用”するなら別に何も申しません。しかしドラマヒロイン女優となると、ドラマという虚構世界の、虚構キャラを背負っての全国区人気であり視聴率20パーセントなのです。井上真央さんは『おひさま』陽子のキャラを、堀北さんは『梅ちゃん先生』梅子のキャラを、大きくは裏切らない挙措たたずまい、衣装ヘアメイク、口調声音で『紅白』なら『紅白』のカメラフレームに立たなければならない。実際できるかできないかは別として、そういう買われ方、抜擢のされ方をしたら、そういう義務が自然と生じるのです。スーパーヒーロータイムの本編終了後、次回予告終了後の視聴者プレゼント告知のVTRでも、劇中対立しているキャラ同士は隣り合っては「ごおーぼ、まってまーす」と言わないし、離れて言い終わった後微妙にガン飛ばしあって見せたりして劇中設定を守ってくれます。ドラマという虚構はそれくらい濁りなく澄明に保たれ、繊細に扱われなければいけない。
最近のNHKの見境ない朝ドラ人気便乗には、TVのドラマという世界に対するそもそもの敬意欠如が露呈しているように思われる。人気となれば誰でもどこにでも顔出させて客寄せさせ愛想振りまかせるという貧乏臭い根性は“夢を売る”仕事であるドラマ制作の精神の、真逆、対極にあるもの。速攻捨ててもらいたいものです。