ジャパンC降着明けのブエナビスタが差し切りきっていれば、有馬記念にふさわしいきれいな復活劇になっていたのでしょうが、そうならないというところが、逆に、実にこの年のラストGⅠとして象徴的な幕切れになりましたな。ローズキングダムの取消といい、競馬の神様が「わかりやすいスターホースなんかつくるもんか、感動の結末になんか誰がするか」みたいなね。
1・3・4着揃って、3歳の強みで55キロ。年下坊主たちとは言え男の子と同斤では、牝馬のビスタにちょっと不利だったかもしれません。
月河は「有馬だからキーワードは“ラスト”」で押してこうと思い、来年2月定年を迎え今回が最後の有馬記念となる池江泰郎調教師のトゥザグローリーをワイドでからませたところまでは結構ヒット(7-11で24.3倍)だったと自画自賛してるんですが、「同厩舎2頭出しは人気薄から狙え」というどっかのバカの戯言をこんなときに限って思い出して、角居勝彦厩舎の、ヴィクトワールピサではなくルーラーシップのほうを厚く行ってしまったため、結局トータルで行って来い。
池江ジュニア・泰寿厩舎の、ドリームジャーニーではなくトーセンジョーダンのほうを重視したのも、着眼としては悪くなかったものの(自画自賛)、手を広げすぎ。こういう失敗は来年に引きずらず、さっくりフォゲッタブル。
しかしそれにしても、1~3着まで外国人騎手騎乗馬という結果もいささか複雑ですね。アンカツアンミツウチパクに岩田、小牧といった地方競馬からの参戦組がひと通り“安定勢力”化してしまうと、ここ一番の勝負師!的なキャラの、破壊力を感じさせる日本人騎手は本当に見当たらなくなりました。
伸びしろを感じさせるのは3年目の三浦皇成騎手ぐらいでしょうか。彼の場合、競馬界によくある、“家族・親族が競馬サークル”という出自ではなく、普通のスポーツ少年が数ある種目の中で“競馬”を選んでなった騎手ですから、何と言うか、乗りがピュアなんですよ。“競馬汁(じる)”で煮しまっていない、とでも言いましょうか。デビュー当時からそこそこの完成品だった、たとえば武ブラザーズや福永祐一、横山典弘、柴田善臣騎手らの若い頃とはどこか毛色が違い、そこに未知の魅力がある。お行儀の悪い騎乗やいただけないレースもたまさか見受けられ、まだ出来不出来がはっきりし過ぎですが、ヘンにアベレージのまとまった乗り役にならないでほしいとも思います。
日本人で、いかにもメイドイン競馬学校といったたたずまいではない、危険な香りの鉄火場男(女でもいいけど)の参戦を、来年は切望したいものです。