安倍総理という人は、ご本人の力量とは別に、よほど対人運、部下運が無いんでしょうか。小泉時代には沈静化していた“政治とカネ”問題に続いて、またしても任命責任を問われる話が出てしまいました。
柳沢伯夫厚労相、大臣の中でも、“恥ずかしい失言”はいちばんしそうもないタイプに見えたんですけどねぇ。
ものの喩えとして、着眼は(すばらしく冴えているというほどでもないけど)悪くないと思うのです。子供を“製造品”とすれば、増産するには製造機の台数を増やすか、台数が増やせないなら一台当たりの製造個数を増やすかどちらかだと。至極当然でわかりやすい。
頭のいい人の陥りやすい落とし穴だと思います。こういう人は、当人の本意不本意にかかわらず、人生の大半を“自分より頭の悪い、ものを知らない人との会話”についやしているので、「物事はわかりやすく言わなければならない」と無意識のうちに思いこんでいる。
何でもわかりやすければいいってもんじゃないのです。
人間が深く考えないで、流れでなんとなくやっていること、たとえば“結婚”や“子作り”なんてのは、わかりやすく言ってしまったら身もフタもなくなる事柄の典型です。“就職”“雇用”“民主主義”“選挙”なんてのも、誰も柳沢さんのように親切にわかりやすく言ってくれませんが、言ってくれたら速攻、身もフタもなくなるはずです。
大体、この手の、女性議員やフェミニスト団体の格好の燃料となりそうな“子作り”“子育て”にかかわる政策は、ここのところずっとちぐはぐなんですよね。“男女共同参画社会なんたら”を提唱し専任大臣までつけた小泉首相がバツイチ、シングルアゲインだったり、引き継いだ安倍首相は、ご自身にお子さんがなかったり。
別に、“少子化対策”なんて、単体で、目の色変えて論じる必要は無いと思うんですけどね。
まじめに勉強して、学力に見合った学校を出れば見合った職に就ける。それぞれの持ち場でまじめに働けば給料もきちんと上がって、まあまあの家が持て、勤め上げたらまあまあの退職金と年金を確実に受け取れる、途中で病気になっても健保で病院にかかれる。
そんな当たり前の国、当たり前の世の中でさえあれば、特に肉体的な問題がない限り、たいていの人が子供は作ると思うんですけど。
「その、当たり前の世の中を保たせるために、もっと子供を作ってもらわなきゃいけないんだよ」と言うなら、それは国の構造が間違っているんじゃないでしょうか。
こうした政策を云々している人たちが、一人でも多く欲しいのは、子供ではなくて、“税金、年金の払い手”“国の借金の返し手”だろ?ということはもう見え見えです。
このさもしい構図が消えない限り、目の色変えて論じれば論じるほど、少子化は続くでしょう。