先日そんなわけでリラックマストアに一緒に行くことになった非高齢家族の知人若年女性は、すみッコぐらしの定番商品=てのりぬいぐるみの全キャラコンプリートを志しているらしく、「コレとコレは持ってる、親の家にある、コレとコレは持ってない」と、店がすいてるのを幸い、選びながらかなーり丹念に月河にキャラ別プロフィールを解説してくれました。
ご存じの通り食べ物キャラ偏愛の月河も、ついつい食べ残されチームの“とんかつ”さんと“えびふらいのしっぽ”ちゃん、“あじふらいのしっぽ”ちゃんを買ってしまった。プチサイズのぬいぐるみにしては、それぞれのコロモの質感、色調の再現っぷりがこまやかです。
4月からうちにいるサンリオ組こぎみゅん(←こちらはピュアに小麦粉そのものの妖精)の、ほわほわ感とは違う、パン粉由来のツブザラ感がなかなかリアル。「おにく1パーセント、しぼう99パーセント、あぶらっぽいので残されてしまった・・」とんかつの端っこさんは、お肉の中まで火が通るようにじっくり揚げられた結果、脂肪がにじみ出たのか、えびちゃんあじちゃんよりちょっと浅黒め。このへんもリアル。
若年の連れがぬいぐるみとぶらさげマスコットを物色しているあいだに、当方は文房具の棚でA4の、いい感じに総イラストで透けないクリアファイルを見つけ、たまたま“すみッコたちがなぜかみんなで恐竜や古生物の着ぐるみを着て遊んでいる”絵柄のがいたく気に入りました。
「キョウリュウジャーおもしろかったなあ・・リュウソウジャーは途中下車したけど」等とツボりながら絵柄を見ていて何の気なしに連れに「このさ、“とかげ”って、本当は恐竜なんだよね?」と話しかけたら「そう!そう!!すっごくかわいそうなのっっ!!」と怒涛の勢いで食いついてきて、物色中だったマスコットの“とかげ”と“とかげ(本物)”のタグを見せながらまたまたひとしきり熱く解説。なんだか、二十年ほど前の、平成ライダーの沼に沈み中だった自分を見るようで微笑ましくなりました。こうやって“世界観”を作って、贔屓キャラひとつできればそこからズブズブ、全ワールドすみずみまで掌握したい欲にとり憑かせていくシステムなんですよねぇ、キャラビジネスっちゅうものは。
月河はライダーの後もスーパー戦隊をフォローしていたので、“ハコ推し”の心理はとてもよくわかります。いちキャラ個体だけに興味があって、同じグループ、ユニットの他メンはどうでもいい、とはなりません。今年のレッドかっこいいわ、斬新だわとなったら、ブルーにもイエローにもピンクにも、追加戦士にも敵キャラにも活躍場面がたくさんあってほしいし、キャラが立って、人気が出てほしいと思う。ひとりだけいつも冴えないキャラや、足引っ張りイラつかせ担当みたいのはできてほしくない。
だから、サンリオのはぴだんぶいのように、ちょっと懐かしめになってきた中堅キャラを数個体あつめて、仮想バンド組ませてユニットでプレゼンしなおすというのは、古い様で、結構ツボを突いた商法だと思うんです。
それからキャラ商法で要注意なのは、今般の連れの若年女性を見ててもわかるように、無用に“コンプリート志向”が芽生えてくることね。贔屓キャラ関連商品の“すべてをゲット”したくなるという。同時期に、ぐでたまならぐでたまの或るアイテムが4色とか5パターン売り出されると、最初にいちばん好みのカラーで好みのポージングのバージョンを買うのは当たり前なんですが、「ほかにもあんな色のも、こんなデザインのもあったな」と思うと、どうも落ち着かない。
結局後日ショップを再訪して、前回買わなかったやつを買い足したりする。んで、たまたま、そのバージョンがソールドアウトで棚のスペースがそこだけ空いてたりすると「自分が気に入ったやつより、あれのほうが人気あって先に売れたんだ、クッソー」とかさらに無用に焦燥にかられたりなんかして、路線の反対方向の駅地下の別ショップまで探しに行ったり、そこにも無かったらネット検索して送料かけて取り寄せたりする。
んで、次のアイテムからはネットであらかじめ発売スケから調べて全パターン予約入れたりなんかして。「絵柄違いばっかり4個もあったってどうすんだ」「好きな絵柄1個だけ買って、3個分の予算は次リリースの商品にとっておいたほうが絶対賢明」と百も自覚しているのに、絞って買った1個を目の前にして「あと3パターンあるんだよなぁ・・・」とモンモンとする。
・・・「買わなかった3パターンが売れ残って、次の商品開発のときは最初っから1パターンしか制作されなくなるかも」「全パターン完売した別のキャラに比べて人気がないとラクインおされて、来年度から予算減らされるかも」「アイテム数もロットも小さくなったら、当地みたいな田舎のショップや書店のミニコーナーには回ってこなくなるかも」・・・・等々とネガティヴな方向に妄想がエスカレートして、結局有りガネ数えて足りると確認したら「いけるいける」「推ししか勝たん」とかなんとか自分に言い訳してショップにかけつけることになる。
こうなるともはや“買い物”“ショッピング”の域ではなく、限りなく推し活、オタ活、いっそ“貢ぎ”に近いですね。そこまでこのキャラ好きかァ自分?推したってキャラは自分に何も報いてくれないぞ?と醒めることも、大人ですからどこかの段階で毎度あるんですけど、「いま買っておかないと、他の誰かが買うか、売れ残って不人気のデータになるだけ」「いま買える自分がここに居るんだから、いまを謳歌しよう」がたいてい勝つ。
・・・どんだけ深いんだ、沼。
・・・・まだ沼の深度を自覚していない天衣無縫な若年の連れは、リラックマショップからの帰りがけ「コレいいよ、設定わかるし」「エモいよ」と、『すみッコぐらし キャラクターブック ここがおちつくんです』という書籍を教えてくれました。そうか、エモいか。人が肉声で言うのを初めて聞いたわ、その形容詞。
税込964円。ソフトカバー110ページほどにしてはお高めですが、紙の地色がクリーム色、4コマの枠線がブラウンで目に優しいし、絵もみんなアースがかったパステルで柔らかく優しい。描線が柔らかめのエンピツっぽいのも見やすい。キャラがみんな物語をしょっていて、ここを突かれたらツラいという弱点がそれぞれ明示されているのがわかりやすい。スーパー戦隊同様、キャラモノの王道。
キャラではないけど、“アーム”ってのが曲者、この世界観のキーパーソンと見ました。すみっこでホッとくつろいでいると、いきなりどこからともなく現れてすみッコをつかんで持ち上げ、すみっこから連れ出して行くクレーンゲームのアーム。あれは何のシンボルなんだろう。神の手かな。すみッコがすみっこに滞留して安らぎを得ていることを良しとしない何者か。でも、ぺんぎん?(←“?”が重要)さんが自分探しの冒険に出てガケから落ちそうになると、いきなり青天井から降りてきてガシッとつかんで着地させてくれたりもする。お母んか。
エモいし、深いね。あぁ、月河がスーパー戦隊からやっと暫し距離を置いて関連散財から解放されると、こうして次なるキラーコンテンツがツメを研いでくる。
世間では、「新型コロナは抑え込めている、緊急事態は解除した、外に出てよし経済回せ、回せったら回せ」と余計なお節介でうるさいですが、人の財布を懐から引きずり出してこじ開けておカネを出させよう、消費させようというタクラミが、世の中そこらじゅうに地雷のように埋まっているのだなあ。
こうして、この記事を書いている間、傍らから、ぐでたまのもっちりマスコットがニラッとこちらを見ておるし。はいはいムニュムニュ。