前回のエントリで6月発表のサンリオキャラクター大賞 2021の結果を遅まきに振り返って、金銀銅表彰台独占“犬の時代”、および我がはぴだんぶい諸君の健闘を称えたばかりですが(“ばかり”と言ってももう二週間前だ)、何の気なしに読み進めてくれた貴方、そうアナタも、ふと気がついて怪訝に思いませんか。「サンリオと言えばキティちゃん、ハローキティじゃなかったの?」「キティちゃんどこ行っちゃったの?」と。
サンリオキャラの人気投票の話を延々書いていて、キティちゃんが一度も登場しないのは、吉野家にかよって豚丼とから揚げ丼しか注文しないようなものです。
松屋フーズでぶっかけおろしうどんとバターチキンカレーしか注文しないようなものでもあるか。信州庵で小天丼ととろろご飯か。まぁ別に何でもいいのですが。結論からお知らせしますと、我らがキティちゃん=ハローキティは6位でした。
1位シナモロール2位ポムポムプリン3位ポチャッコのわんこトリオの次、4位がマイメロディ(ちなみにウサギ)。5位がそのマイメロの「ライバル!」をもって自任するクロミ。ハローキティはその次で6位なんです。
えーッそんな下なの?と思う向きと、まだまだ根強いじゃん!と思う向きとあるかもしれない。ちなみに昨年2020年は5位、コロナ禍が影もカタチもなかった2019年は1位に輝いていますから、まだまだキティちゃん、過去の人・・じゃない過去のネコになったわけではありません。
1974年誕生、75年グッズデビューで、月河は思春期ざかりの女子としてリアルで目撃した世代です。文具店や雑貨店、洋品店でキティアイテムがあふれるのはもうちょっと後だったと思います。
初見の印象は、「(1960年代に絵本で知った)ディック・ブルーナの“うさこちゃん(=現・ミッフィー)”に似てるな」「Kitty=子ネコ、だからネコ版?」という感じ。トレードマークのリボンをはじめ、赤がメインで原色多用の、子供にも印象深いカラーリングが似ていたし、キティちゃんもうさこちゃんも、顔がおとなしいんですよ。クチあけて笑ったり叫んだりしないから。
キティ登場前の、女子のキャラクター事情をちょっと思い出すと、月河の幼稚園から小学校低学年の間=昭和40年代初期は、ディズニーものと不二家のペコちゃん・ポコちゃんが席巻していましたね。幼年雑誌の巻末の懸賞に祖母が月河の本名でハガキで応募してくれて、ペコちゃんの舌ペロ顔の合皮のジップ小銭入れが当たったこともありました。
誕生日かクリスマスのプレゼントに、ディズニーの白雪姫と小人たちの絵柄の箱入り24色の色鉛筆をもらったのも覚えています。“きんいろ”と“ぎんいろ”が入っているのがとりわけ嬉しかったから、クリスマスだったかも知れません。当時は親世代も、子供の“TVの見過ぎ”には滅法厳しくても、アメリカ発のディズニーアニメやキャラにはなぜか寛容で、特別しつこくおねだりしなくても、そこそこリーズナブルな物ならわりと気前よく買ってくれたものです。
ハローキティ74年誕生は、個人的にはちょうど「キャラクター物は子供っぽいから卒業」と、誰に言われるでもなく距離を置いた頃で、ドはまりだったのは月河よりもうちょっと後生まれ女子の皆さんだったと思われます。この年代になると、もう持ち物や身の回り品にキャラがついているのは当たり前で、ディズニーがUSAから入って来た頃とは様変わり「キャラクターものだから高価」「同級生に見せて鼻高々」なんてこともない、庶民的でハードルの低い、日常の風景になりつつありました。
キティちゃんはその後も二番腰、三番腰のあるキャラで、80年代後半、90年代にもブームのピークが来て、その都度、より広いファン層を掴んでいます。大人の、所謂“キティラー”なんて呼び方が定着したのは95年ぐらいでしたかね。
月河の周囲でも、記憶する限り最古で1985年(昭和60年)に、すでに“大人のキティラー”かつ“男子”は実在し、日常業務の「セール2函:○○支店TEL確認」「展示会場OPEN時間変更」なんてメモを、キティちゃんパッドに走り書きしてデスク周辺に貼りまくったり部下女子に手渡したりしていました。別に、後に言うフェミ男キャラでもない普通のアラ30が、です。女性の多い職場だったこともあって、誰も咎めも、キショがりもしませんでした。
思うに、特に80年代から、文具や化粧小物など“女子専科”に限らず、インテリア用品やキッチン・ダイニング用品、アウトドア系の自転車・ドライブ用品など、性別や年代を幅広くカバーする戦略が功を奏したんでしょうな。よく揶揄気味に言われる“キティ姐さんの(コラボ・タイアップ)仕事選ばなさ”はすでに始まっていたわけです。
オフィスからリビング、バストイレまで「こんな所のこんなモノにもキティちゃん!?」という戦法は、いつの間にか日本人の心から“カワイイもの”に対する含羞や躊躇の障壁をとっぱらい、いいオトナがキャラクターグッズを身辺にはべらせていても違和感を持たれなくなりました。いまトップを走るシナモロール、ポムポムプリン、ポチャッコの面々も、安定したグッズ開発とセールスを続けていられるのは、キティちゃんが道を開拓し、拡張し、舗装してくれたおかげでもあります。
サンリオさんのコンニチ在るを築き上げた、キティちゃんこそ最大の功労者と言ってもいいでしょう。
誤解を恐れずに言えば、ホリプロさんにおける和田アキ子さんに匹敵する存在、それがキティちゃんです。
・・・・・今年のキャラ大の票数では後輩のマイメロディ(75年デビュー)と、その自称ライバルのクロミ(同2005年デビュー)に先行を許しましたが、TV『ファンファンキティ!』(テレビ東京)のメインMC、ピューロランドのナビ役としても揺るぎないものがあります。月河の地元でメジャーなサンリオショップでは、行くたびに店内でずーっと ♪ハロー キティ こんにちは キティはみんなの にんきもの・・ という、宮川泰さん作曲『あの子はキティ』がエンドレスでかかっていて、しばらく物色滞在してからショップを出ると、一日じゅう ♪・・わんぱく いじわる おこりんぼも つられてやさしく なっちゃうの・・ と脳内ループ不可避です。やっぱりキティちゃんはサンリオ小宇宙のヒロインなのです。
ところで、今日いちばん書きたかったこと。キティちゃんの公式フルネーム“キティ・ホワイト”って、知ってました?双子の妹が“ミミィ・ホワイト”。お父さん“ジョージ・ホワイト”、お母さん“メアリー・ホワイト”。・・
・・家族だから名字みんな一緒なの、当たり前ですけど、白ネコさんモチーフだからホワイト?・・って、このご時世、いいのかしら。毛色とか肌色とか、白とか黒とか、うっかり言ったらめっきりナーバスな空気じゃないですか。
設定では「ロンドン郊外生まれ」、でも企画開発は日本発、のキティちゃん、もちろん日本国内だけじゃなく、レディ・ガガさんやマライア・キャリーさんもファンだという、いまや国際的、地球規模的アイドルですが、そのうち、褐色アフロヘアの、多様性受け容れヴァージョンも登場せざるを得ないかもしれません。あらら、想像したらなんかかわいいぞ。見たいですけどね。