ついこないだ101proofのワイルド・ターキーを、ダブルで干す至福について書いたばっかりなのに…
たかが35度の果実酒用リカーの爽健美茶割りで出来上がってしまった…
「悔しいです!!」
ついこないだ101proofのワイルド・ターキーを、ダブルで干す至福について書いたばっかりなのに…
たかが35度の果実酒用リカーの爽健美茶割りで出来上がってしまった…
「悔しいです!!」
先週か先々週、『だんだん』で宍道湖のめぐみ(三倉茉奈さん)と祇園の夢花=のぞみ(三倉佳奈さん)が入れ替わってそれぞれの家に入り込み、事情を知るくだりがあって、ヘアメイクもふたり一時的に入れ替えましたね。“そっくり双子もの”のお話の、ストーリーの節目として“取り違え”と“入れ替わり”はお約束と言うか、もう古典ですね。
音声だけで事情を聞いていて、ある時点でポンと画面を見ると、96~97年『ふたりっ子』からずっとそっくり双子と思っていた三倉姉妹、さすがに実年齢22歳ともなると結構、顔が違ってきちゃってますね。
“公式”の目印は佳奈さんのほうにだけある左目頭の下のホクロですが、白塗り&目尻クチビル真っ赤っ赤の舞妓さん化粧を落とし、いつもめぐみ茉奈さんがしているゴム結びシングルテールの高校生ヘアにすると、夢花佳奈さんのほうが若干顔の下半分が残念なことが如実にわかる。鼻柱と鼻翼が広く、おクチも横広がりで前に突出気味で、従って法令線も深く、濃い。
何つってもまだ若いですから、加齢による非情な法令線とは印象が違いますが、ちょっとアヒルさん系のコミカルなクチもとです。顔の上半分はまだまだ(ホクロ以外)瓜二つですけどね。
アイドル的にシュッと甲高先細にまとまった顔と言えるのは、めぐみ茉奈さんのほうでしょう。佳奈さんは茉奈さんの“そっくり双子”設定を取っ払った、単独での“可愛い子ちゃん設定”キャラで、同年代男子に恋心を抱かれたり、つらい別れにボロ泣きしたりは絵的に難しいかもしれない。
月河の小学校時代、同じクラスに一卵性の女子双子ちゃんがいて、1・2年生までは揃って同クラスになるように先生がたが配慮してくれましたが、3年からは意識的に別のクラスになるように配慮、その甲斐あってか4年の2学期ぐらいから「二卵性だっけ?」と思うくらい顔の違いがはっきりしてきました。お姉ちゃんは活発でリレーの選手になるくらい運動が得意、妹さんのほうはやや口数が少なく、運動も得意でしたが算数のほうがもっと得意。5年になると一方が髪を切ればもう一方は伸ばし放して編んでみたり、服や持ち物も違うものを好んでいたようです。双子ちゃんには、遅かれ早かれ“2人ひと組で扱われることに倦んでくる”時期が必ず来る。
三倉さん姉妹はその倦怠期を乗り越えて、“商売として割り切る”モードに入っちゃったのだろうなあ。芸能活動はふたりとも続けるにせよ、そろそろ“出る時はいつも2人セットでそっくり役”という縛りから解放してあげないと、観るほうがきつくなってくるんじゃないかと思いますが、ほかに競合する年代・ポジションの双子女性タレントが見当たりませんからねぇ。セット販売のほうがおいしい、という結論になってしまうのでしょう。
めぐみが大学生となって夢花とひとつ屋根で下宿するようになり、出会えたこと、そっくりであることをひたすらテンション上げて喜んでいたふたり、次は“そっくりでも能力や魅力に差があることに気づき、妬み僻みに目覚める”段階に行きそう。ちょっと女性視聴者としてはしんどい展開ですが、今回の朝ドラは基本設定が昼ドラテイストなので、NHK流のさわやか料理法でどこまで行けるか、高齢家族に随伴して軽く注目しています。
『愛讐のロメラ』で恵(北原佐和子さん)が銀座に開店したバー“Megu”、恵さんが接客するカウンター立ち位置の、ちょうど彼女の右肩の上ぐらいにワイルド・ターキー8年のボトルがいつも見えて、つい「ママ、それ一本入れて、ダブルね」と言いたくなってしまいます。
ワイルド・ターキー。なんと骨太にデンジャラスでアドヴェンチャラスな、エキゾティシズムに満ちた名前でしょう。80年代を通じて憧れのラベルでした。週末コイツをトットッとグラスに注ぐ数秒感の至福のために自分は生きている…と信じて疑わなかった時代が、確かにありました。とにかく101proof、日本流に言えば50.5度ですから、“明日何もないという夜限定”。
シングルよりダブルで飲むほうが、この銘柄独特の甘みを引き出してくれると教えてもらったお店では、ドスンと底厚なオールドファッションドグラスに球形の氷をこれまたドスンとまず入れて、豪快に注いでくれたものです。度数と考え合わせると信じられないんですが、本当に甘いんですね。樽熟成のたまものでしょうね。ウッディ系の甘さ。
「今宵はグラスに、地球をひとつ」「だんだん小さくなって行く」なんて国産のTVCMもありましたっけ。
あんまり小さくならないうちに干すのが、もちろん甘みを存分に堪能するコツなのですが、さすがに2杯以上空けると、翌日午後3時頃まで脳の中ででっかい地球がグイングイン回転してましたね。
…4時過ぎると「よし、スッキリしてきた、また行くか」ってなるんですけど。美味しいお酒ほど、量と頻度を過ごさないこと。
70年代、先日他界したポール・ニューマンとロバート・レッドフォード共演の映画『スティング』を初めて観たとき、話の筋や評判の30年代ファッションより、レッドフォード扮するフッカー行きつけのダイナーの、通りをはさんだ向かいの建物の壁に掲げられた、酒の広告看板にどうしても目が行って仕方がありませんでした。当時まだ中学生だったはずですが、その看板で、ボトルが実に美味そうな角度で傾けられて、実に美味そうにグラスが待ち受けているわけですよ。「酒の飲める年になったら、絶対あの看板のヤツを買って味わってみよう」と心に決め、80年代に入ってレンタルビデオで確かめたら、エズラ・ブルックス(Ezra Brooks)という銘柄とわかりました。
数年後、研修兼仕事兼遊びでアメリカに行けることになり、帰国前免税店でエズラのスタンダード黒ラベルと、101proofのオールドを限度いっぱいまで買ったことを思い出します。「初海外旅行の、女性の土産の中身とは思えない」と同行メンバーに呆れられました。
帰宅して深夜ひとり積年の待望の封を切るときのエキサイト感といったら。某小説家の、アイドルへの求婚の台詞じゃありませんが「やっと会えたね」ってなもんです。
…でもま、本物のケンタッキーストーレートバーボンウイスキーの甘ーい旨さがわかるためには、そこからさらに2~3年、ワイルド・ターキー開眼の日を、いや夜を待たなければなりませんでした。
当時はバブル景気の引き金になったと言われるプラザ合意の頃で、エズラもWTもいま種類安売り店で売られている価格の、ざっと2~4倍はしていたはずです。
映画やドラマの劇中で酒のラベルが登場すると、本当に美味しそうに見えますね。『処刑遊戯』で松田優作さんからりりィさんが教わったのはオールド・クロウだったかな。当時はいまのような、そのものずばりカラス(Crow)の絵じゃなく、もっとシンプルでカントリーな、愛想のないラベルだったはずです。こちらは40度。慣れるとジュースのように飲めます(よいこのみなさんはまねをしないようにしましょう)。
スティーヴン・キングの、映画にもなった『Apt pupil』(邦訳題『ゴールデンボーイ』新潮文庫)の元ナチ収容所副所長・クルト・ドゥサンダーはアーサー・デンカーと名乗ってアメリカ隠遁中、AAことエンシェント・エイジを愛飲していたという一節がありました。原作小説のペーパーバック『Different seasons』はやはり初めてのアメリカ渡航時に、現地の近藤書店みたいな店で入手し帰りの機内で「さばけたナチだなあ」と思って読んだものですが、98年の映画化版での、イアン・マッケランが演じたらしいドゥサンダーにはそんなシーンはあったのかな。こちらは未見です。
ところで、類型的若者言葉で“空気が読めない”を“KY”と表記する向きがありますが、Kentuckyストレートバーボン愛好派にとっては失礼千万火がバーバー、いやボーボーですな。せめて“空気が読めNい”→“KYN”にするとか。
…ますますまぎらわしいか。
“携帯電話”と“自分の個人的な心情”が密接かつ切実に結びついた経験がないので、ドラマや映画の劇中で人物が携帯を扱い出すと、一気に疎遠に感じられる…という意味のことを先日ここに書きました。
最近ドラマで「あ、携帯もこういう使い方ならいけるな」と思ったのは、『相棒season4』の『最後の着信』(本放送2006年1月)。
(…このところ『相棒』がらみで書く機会が増えていますが、現行TVドラマで“1話完結でありながら世界観が一貫経過”作としては、ひとつの頂点を提示してくれる例には違いないと思うので)
当地でここのところ春先から何回か反復再放送されている同シリーズseason4・5、全話というわけにはいかないのですが視聴できた中では月河、いちばん好きなエピソードかもしれません。
この時点ではいまだ独身の亀山(寺脇康文さん)が夜さり屋台ラーメンのあと一服つけようとすると煙草の箱がカラ。そこへ一杯機嫌のチンピラ・脇(桐谷健太さん)が箱ごと差し出し、気安く話しかけてきます。「煙草はやめとき、自分、独りもんやろ?結婚でけへんよ、煙草やめな、オンナに嫌われるさかい」「オレもやめんねん、結婚するからやめんねんけどな」…千鳥足で去っていった彼を、美和子さんとの入籍待望な亀山は憎からず「ヘンなやつ」と見送ったその3日後、脇は自宅近くの公園の石段から転落死体で発見されます。
手には携帯を持ったまま。爪の間から皮膚断片が発見され、何者かに突き落とされた殺人の線が濃厚に。手にしていた白い携帯のほかにも赤と青、都合3台の携帯電話を所持していて、赤に登録された電話帳は実家や銀行、行きつけ飲食店などプライベート用、青はカタカナファーストネームか名字のみ。そして白への登録は2件だけで名前はなし。
(記事タイトルは鑑識米沢(六角精児さん)からトリコロール携帯を見せられた捜査一課伊丹(川原和久さん)のリアクションです)
直前に通話していた白の通信記録が国際電話転送利用のマスキングをされていたことから亀山が見当をつけた通り、脇は覚せい剤の売人で、青は商売の相手。白に登録されていたもう1件の電話番号から、生活安全課は仲買人の鷲津を連行しますが、鷲津は薬物を卸した件だけは認めたものの、殺害は否認。
脇の過去の、薬物がらみの最初にして唯一の逮捕時の状況を、当時の担当所轄刑事菱沼(中西良太さん)から聴取した右京(水谷豊さん)は、いくつかの不審な点から菱沼刑事が脇の罪状を軽く報告、送検を免れさせる代わりに以後情報屋として使っていたことを突き止めます。
殺害される当夜の脇は、最近再会した大阪時代のガールフレンドでOLの由美(黒坂真美さん)とデート、彼女を送ってから自宅近くの行きつけのバーに立ち寄り、深夜の公園で白の携帯で、鷲津ではないもう1件の登録先と通話し、切った直後転落したとわかる。犯行時刻近辺に公園で鷲津が目撃されており、薬物取引がらみのトラブルで殺した可能性がまず考えられますが、右京らの調べで菱沼刑事が鷲津に、脇が情報屋であることをわざと漏らしたこともわかる。脇が警察に通じていたと知ったから消そうとしたのか?鷲津はこれも否定。確かに脇を痛めつけてやるつもりで待ち伏せはしていたが、脇の携帯での通話を盗み聞くうち相手が菱沼刑事だとわかって退散したと供述。
菱沼刑事は脇から「結婚して大阪に帰る、ヤクから足を洗う、情報屋もやめたい」と告げられて困惑していました。脇を使って管轄外押収で検挙実績を上げ、何度も総監賞を受けるなど腕利きで通ってもいる。情報屋をひとり失うだけなら代わりを見つければ済むが、脇には実績水増しの手口を知られている。思い余って鷲津に脇の正体をバラし暗に“処刑”を示唆したのではないか。あるいは当夜待ち合わせて自分で…しかし大河内監察官(神保悟志さん)の聴取に、菱沼は「“これから会って話し合おう”と約束はしたが、行ったらすでに脇はいなかった」と。
しかし右京は、脇が殺害直前に会っていた由美と、デート場所お好み焼き屋店員との、脇の携帯が何色だったかという記憶の食い違いから真犯人に至りました。実は当日店内での脇の携帯大声会話を注意した店員が突き落としの犯人。注意されたばつ悪さと、由美から「あんたと居ると大阪の頃を思い出して楽しい、一緒に暮らしたいわ」と言われた有頂天がだぶって、脇は店員をテーブルに呼びつけ「お好み焼きの焼き方が悪い、(お好みの本場)大阪人にようこんなもん出すわ」と因縁をつけていました。店内だからと店員は我慢して引き下がり、その場はそれで済んだ。
由美を送った後「彼女に“一緒に暮らしたい”まで言われたら男としてけじめつけな」となじみのマスターにものろけてグラスを重ねた脇は、帰宅途中公園で菱沼に携帯からかけ、足を洗いたいと相談。菱沼はどうにか思いとどまらせたく「すぐそっちへ行く」と約束し電話を切る。そこへたまたま勤務を終えて帰宅途中の店員が通りかかり、脇が見咎めてしまった。
これから堅気になるべく決着をつけようという高テンションと酒の勢いで、脇は携帯を切ったあと店員を追いかけて再びしつこくからみ、無視されるとさらに罵倒。堪忍袋の緒が切れた店員が「うるさい」と突き飛ばして脇は転落。普段おとなしい店員でしたが、巨漢でした。
店員は右京と亀山に「店内で注意した携帯は白だった」と答えましたが、実は由美の答えた赤が正しい。白には店内滞在時間の通話記録はなかったのです。公園でからまれ突き落としたとき脇が持っていた携帯が白だった記憶があったから、店内で大声通話していたのも白と店員は思い込んでいたのです。
結局は薬物売買も、そのさらに裏の情報屋稼業も直接は関係なく、意中の彼女からの逆プロポーズに舞い上がり、足を洗おうと意気込んだあまりの尊大な言動が、行きずりの店員を激昂させ、殺される運命になったのでした。
赤は実家や友人たちとの明朗なプライベート、青はウラの薬物顧客。白はその顧客達にもさらにウラの、仕入先と情報提供先。赤の登録先の人々は、脇に青や白の交際があったことを知りません。青の顧客たちも、白の付き合いがあったことを知らない。脇という、根は気のいいヤンキー青年の複数の世界を象徴するツールとして、携帯電話を登場させた実に周到な脚本。
“彼女の前で偉そうぶりたいための大声通話”“公共の場所での迷惑通話で店員に注意される”“注意したほうとされたほうとの心理的わだかまり”など、携帯が生活感情と密着する世代ではない月河にも「さもありなん」と思わせる絶妙の活用です。
右京と亀山が脇の当日の足取りをトレースするくだりでは、自宅アパートの固定電話に残された、大阪の実母からの「急に電話してきて“結婚する”なんて言うから驚いたわ、どんな娘さんやの?お母ちゃん嬉しいわ、待ってるさかい帰ったら電話しい」との留守電メッセージも流れました。録音の時刻には、脇はすでに殺されていますが、実家のオカンは知るよしもない。再生して聴く亀山も、右京さんも複雑な表情。携帯が事件の主モチーフとなる話に、固定電話ゆえの哀しさをちゃんと併行描写している。ちなみにこのオカン、警察から遺体確認引き取り要請を受けたらしい描写はあるものの、この留守電の声だけで画面には登場しません。
『相棒』シリーズの脚本家さんは、再放送のスタッフクレジットで確認できただけでもざっと5人は揃っていますが、月河と同年代かもうちょっと上ぐらいの人が多いのかもしれない。携帯電話を、身近で一体化した自明のツールではなく“観察対象”として客観化しているふしも見受けられ、これは心強いことです。
結局殺人容疑で送検されたのはお好み焼き店員。鷲津は覚せい剤取締法違反容疑のみ。情報屋を使っての薬物捜査自体は違法ではないので菱沼はお咎めなし。
「まさか売人やってたなんて…騙された気持ちです」と顔をこわばらせる由美に、亀山は「でも、あなたから一緒になりたいと言われて、足を洗おうと思っていたのは彼、本気だったんですよ」と精一杯のフォロー。亀ちゃんにとっては「オレ結婚するから煙草やめんねん」と満面の笑みでのろけていた脇がどこかいじらしく、浮かばれなく思える。
しかし由美は「久しぶりに同郷の友達と会って、お酒も入っていたから、軽い気持ちの冗談で言っただけです。そういうことあるでしょ?」とにべもなく背を向け去って行きました。
「刑事に利用され、行きずりの相手に殺されて命を落とした…薬物などに手を染めた報いだったかもしれませんね」と右京さん。「右京さんは厳しいっすね、オレはそこまでは…」と亀山。「それがキミの良いところですよ」と右京さん。
でも、月河にとっては『冬の輪舞』で親しい黒坂真美さん演じる由美は、足早に右京たちの前から歩き去った後、一度歩をとめて脇の写真を取り出し、振り切るようにひとつ吐息をついてまた歩き出すワンカットもあり、「冗談だった」は警察の前での強がりで、本音では本気だったともとれます。
お好み店員にしても、由美ほか店内に居合わせた客や、先輩店員から脇の態度にも非があったとの事情が聴ければ、殺人ではなく傷害致死で済む目もあるでしょう。
「脇に結婚を約束した女がいたとは、自分が迂闊だった」と大河内の聴取に悔しがった菱沼は、次の情報屋を探す前に若干は脇を哀れむこともあるのか、それとも早晩上手の手から水がこぼれて懲戒の憂き目を見るか。想像力次第で全員に少しずつ救いがある辺り、よく出来た短編小説のような味わいのエピソードです。
『相棒』がドラマとしてよく出来ているなと思うのは、“バランス感覚”でしょう。一点集中しそうで、一点には集中しない。
22日放送のseason7初回SPで言うと、「犯人は(頚動脈一撃による膨大な)返り血をシャワーで洗い流すべく、自前のタオルと着替え持参で犯行に及んだ可能性」「着替え後現場の部屋を出てエレベーターで逃走した人物は、入室した人物とはバッグを掛けた肩が違う故、別人の可能性」を推論指摘したのは右京さん(水谷豊さん)ですが、続く推論「着替えて逃走したと見せかけて、移動しても防犯カメラ2基いずれにも映らない同じ10階フロア内の別の部屋に、逃走せずにとどまっているかも」を引き出すに至ったのは「帽子サングラス鞄という目立つ3点セットを脱いで、防犯カメラ映像とは別の機会に逃走したかも」という“踏み台”に相当するヒントを提示した、メガネの鑑識にして、いまや天下のオフスピナー米沢(六角精児さん)。これがあったから10階客室連泊者ローラーがかけられた。
小笠原(西岡徳馬さん)に犯行自供・任意出頭させる決め手となった接着剤による指紋一時抹消にしても、相棒コンビに同行した米沢さんのブラフ協力はもちろん、「印象に残りやすい禁煙DXツイン予約を入れたのは、携帯でもネットからでもなく、いちばん足のつかない公衆電話」とはじき出した組織犯罪対策5課「ヒマか?」でおなじみ角田課長(山西惇さん)の勘と、(ヒマにまかせた)洗い出しがあったればこそ。これで「鍵はホシがフロントで書いた宿泊カードの指紋(の有無)」と絞れた。
さらには、自供したものの「やりました」以外完黙していた小笠原の所持携帯着信記録調べを可能にし、富司商事非鉄金属本部の部下・田坂を協力者と割り出せたのはなんと捜査一課伊丹(川原和久さん)の一か八かの計算ずく取調中暴行致傷による、内田刑事部長(片桐竜次さん)からの逮捕許可。
さらにさらに、殺害された兼高(四方堂亘さん)の遺品のダイアリーに記された“シンガポール 空”に行き着かせてくれたのは、大河内監察官(神保悟志さん)とのイエローカード談義にもめげずうまいことかいくぐって、相棒コンビに閲覧させてくれた米沢さんの尽力のたまもの。
つまり、“ものすごく洞察力にすぐれた天才的名探偵杉下警部の名推理”だけで、もしくは、“知的な警部と体育会巡査部長の絶妙のコンビネーション”だけであざやかに事件解決、周囲関係者感嘆、で終わる話に、なりそうでなっていない。
もっとマクロに見れば、そもそも亀ちゃん(寺脇康文さん)がホテルロビーで旧友兼高を見かけるきっかけを作ったのは小野田官房長(岸部一徳さん)の「ヒマでしょ?付き合ってよ」→写真展、「誘われついでに、もちょっと付き合わない?夜、パーティーがあんの」→瀬戸内代議士(津川雅彦さん)のチャリティパーティー、という(作為的なくらい)絶妙の勧誘なんですね。
メインストーリーたる“事件解明”に、ひとりのスーパーヒーローだけでなくレギュラー陣ほぼ全員が関わり、前進させている。虚構ドラマの作りとしてこれはスマートかつさわやかです。
被害者が直接の昔馴染みの分か、亀ちゃんの動物的高体温反応と、夫人・美和子さん(鈴木砂羽さん)のジャーナリスト魂が事態を打開する局面が見られなかったように思いますが、ここらは29日放送予定の解決篇に待たれるところか。
そう言えば美和子さん、5月の当地での再放送時のseason6に比べると二の腕や肩など若干ふっくらされたように思いますが、NHK朝『だんだん』でド演歌大好き肝っ玉お母さんを掛け持ち好演中ですね。今日(25日)の放送分で「めぐみが京都(の大学)に行って、真喜子さんのところに下宿するなら、それでいいと思ちょります、真喜子さんの気持ちもようわかります、私はめぐみの母親だけん」と言い切った場面はカッコよかった。忠(吉田栄作さん)が連れて来た乳飲み子の産みの母が誰か、どんな経緯かをいっさい問い質さずに、自分と忠の間の子として18年間心をこめ育ててきた誇りと自信がそう言わせるのでしょう。
それに比べると「めぐみのことで会って話し合いたい、出雲大社に行く」と手紙で知らせてきた真喜子=花雪さん(石田ひかりさん)は、嘉子さんに言伝でもいいからひと言文中で詫びと礼を含めた断りを書き添える気遣いがあってもよかったですね。再婚にせよ妻を持つ男、しかも地縁血縁の濃厚な郷里在住の男が、昔かかわりのあった女性と家の外で、2人きりで会うというのはかなりの心理的ハードルを越えなければならないことですから。
嘉子さんへの刺激接触をあえて避けるのは、花街に生きてきた女性のたしなみ、粋感覚のしからしむるところと取るべきかな。
忠が真喜子に「君が京都で守ってきた、祇園での生活が崩れるかもしれんけん」と言ったときの“キミが~”呼びはちょっとドキッとしました。大恋愛でそれぞれの夢を中断してまで燃え上がり、親には許されない子供までなした2人ですもんね。昼ドラならここから果てしない焼け棒杭の連鎖が始まるのですが、やはりNHKは世界観、人間観が綺麗事だなあ。