イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

ニン!

2010-07-30 19:42:36 | 夜ドラマ

『熱海の捜査官』3023;15~)予告Vで久しぶりにオダギリジョーさんを見ましたが、右アゴ先のホクロ、なんだか成長してませんか。サイズ的、色調的に。

 『仮面ライダークウガ』で初めて顔と名前が一致した頃は普通に目印兼チャームポイントだなあと思ったのですが、その後、飛び飛びにしか出演作を拝見していないせいか、気がつけば“直径”も“標高”も、“濃度”も、かなりの存在感を発揮しているような。

 …いや、自分も顔の一部に“成長したがってそうなホクロ”を飼っているので気になるだけなんですけど。先頃参議院選挙立候補(蒸し返して悪いけど落選)で話題になった元・読売ジャイアンツ投手で元監督でもある堀内恒夫さんのアゴ版みたいにならないといいですが。

 アフター『クウガ』のオダギリさんと言えば、『ロンブー龍(ドラゴン)』で淳と組んで、道行く女性をナンパして、オゴってもらった金額分だけタクシーに乗って目標地点を目指すみたいな企画(←企画タイトル失念)で亮チームに負けて罰ゲームとして淳とおそろ(←当時)の赤髪にされたり、淳が一時はまっていた赤髪パンチパーマ&赤眉に「目を見て話できない」とビビっていた以外は、『天体観測』『新撰組!』『時効警察』ぐらい、それも登場されたうちの12話ずつしか見てないんですね。

もともと映画監督を目指してアメリカの大学に籍を置いておられたという人ですから、TVのドラマは副業かお付き合い、もしくは、言葉は悪いけど気分転換ぐらいの感覚なのかもしれません。良くも悪しくも、TVドラマでは、アタマも身体も一箇所冷めているというか、どこかでチカラが抜けている印象で、飛び飛びに見て“あぁオダジョーだ”と認識しても、そこから“次もまた絶対見よう”という意欲につながらないところがある。

…しかし、あのホクロの成長ぶりは、ちょっとマジで見守りたい気がしないでもありません。

オダギリさんにとってはチカラが抜けてるどころの話じゃないかもしれませんが、アフタークウガのこの人の仕事の中でいちばん印象的だったのは、実はLifeカードのCMです。上司の社内権力争い、生意気新入部下の取扱いかた、上司からの勘弁して欲しい見合い相手紹介、同窓会で再会したかつてのマドンナからの秋波、取引先重要書類行方不明など、人生=Lifeの中で“そうしょっちゅうではないけど、あるときはある”局面でいちいち「どーする?どーすんのオレ!?」とカード出して悩む、ちょっと長髪ヒゲありで優等生ではなさげな若手リーマンキャラは、アフター五代雄介のドラマで見かけたどの役よりもナイス嵌まり役に見えました。

『熱海の捜査官』はどうかな。『時効警察』は乗れなかったなぁ。可笑しみ表現のコードがいちいち噛み合わなかった。今作はキャストに田中哲司さん、松重豊さん、Xmasの奇蹟』の営業くん役だった少路勇介さんの名前が見えますが、おもしろいといいな。23:15~、『オンバト+(プラス)』と録画はギリかぶらないけど。

古なじみの昼帯枠『明日の光をつかめ』は、3週分録画を溜めっぱなしにして、結局一気再生を一度もする事なく脱落となりました。あー、この枠でこうなるの、何年ぶり、何作ぶりだろう。

いまだアナログVTR録画の月河、帯ドラマを再生する時は必ず、“尻尾”の“次回予告”15秒をチェック、「明日これらのシーン&セリフが用意されているならば、今日はどういう展開、種が蒔かれたと思われる?」と想像を逞しくしてから、やおら巻き戻し進めて本日分の本編再生にかかるのが常なのですが、今作、次回予告の絵・音声で「こりゃ今日の分をすぐ見なきゃ」「見ないではいられない」と、着替えも片付けもそこそこに巻き戻したくなる日が一度もなかった。絵を見ても、セリフを聞いても、気持ちがさっぱり沸き立ってこないのです。

ヒロイン・広瀬アリスさんは文句なくかわいいし、榊原徹士さんもちょっと硬いけどいいマスクをしている。渡辺いっけいさんも出るたびはずれのない演技、役柄表現を見せてくれる、好きか嫌いかで言えば好きなほうの俳優さんです。

しかし、ドラマの引き込まれなさというものは、出演俳優さんの好感度や技量だけでは何人分集めても埋め合わせがつかないものです。

月河はとことん“学校的な世界”のお話が苦手なんだなあ。自分でも、これほど細部にわたって、すみずみ、ことごとく受け付けないとは思わなかった。

“学校”“教室”“教師”といった直球ど真ん中でではない、合宿的なもの、部活的なもの、思春期の少年少女がわいわいうじうじ、ときに元気にときに角突き合わせ、汗流したり涙流したりしながら甘くピュアにやり合っているだけで、もう興味がなくなってしまうらしいのです。

前にもそんなことをここで書いた気がしますが、「自分が万障繰り合わせて毎日見なくても、誰かもっとこういうのを好きな人が世の中いっぱいいて、自分よりこまやかに、正しく感受し味読しているだろう」「このドラマを見守り、見届けるのは自分の任ではないという気がしてしまうのですね。

 まあこの枠、いろいろ間口が広がっていますから、ドラマ枠として存続する限り、いずれ“任”な作品も来るでしょう。

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いきなり地獄

2010-07-29 00:28:57 | 昼ドラマ

『あさイチ』の深い時間のコーナーゲストに深沢社長(@『ゲゲゲの女房』)役・村上弘明さん登場。『ゲゲゲ』公式サイトでゲストイン自体はあらかじめ知らされ済みではあったものの、あさイチごはんをさわやかに試食して終了くらいの軽いゲストだろうと思って、録画スタンバイもしていなかったのですが、来週放送分から“思い入れあるシーン”を先行Vつきで紹介してくれて、次コーナー(←例の巨大怪花ショクダイオオコンニャクの開花映像)へのジャンクションに「変身!」ポーズまでサービスしてくれました。いい人だ。

若き日に特撮ヒーローを演じ、のちにメジャードラマの主演クラスに出世した俳優さんの中には“その話はなかったことに”的態度を通す人も残念ながらいまだ散見される中、現在の村上さんは特撮専門誌でもたびたびスカイライダー時代のことを気持ちよく語ってくれています。

「“子供のおやつ”と漫画をバカにする人もまだ多いが、いつか漫画が世の中を動かす時代が必ず来る」「漫画出版は男子一生の仕事」と『ゲゲゲ』劇中でさわやかに熱弁をふるう深沢役に、実にナイスマッチな人をキャスティングしたものです。

ところで『ゲゲゲ』と言えば、毎週月曜放送分ではOPが主題歌1フレーズ分ロングヴァージョンになり、スタッフ・協力クレジットが載りますが、“出雲ことば指導”の広戸聡さんは、調布の喫茶“再会”のマスター役で顔出し出演中でもありますね。方言指導の先生が、方言使いではない東京人の役、というのもおもしろい。出演決定してからたかだか半年ちょっとの期間に、指導されて喋ってる俳優さんと、指導する先生とが方言のセリフでからんだら、ネイティヴと俄か仕立ての“落差”が歴然としてしまうから、あえて広戸さんを東京チームに配置したのかも。

“大阪ことば指導”はいまのところ大阪人設定が窪田正孝さん演じる倉田だけですから、神奈川県出身窪田さんはマンツーマンで舩阪裕貴さんに師事中なんでしょうね。ゼタの嵐星社で深沢、布美枝(松下奈緒さん)と初対面の場面や、村井家に来て、看板屋の徒弟をしながら独学で漫画修業していた経験を語る場面では“やっぱりネイティヴじゃない、演技の大阪弁”と苦笑ものでしたが、仕事するより仕事増やすほうが多い菅井(柄本佑さん)や、年齢の近いいずみ(朝倉えりかさん)とのくだけたやりとりなんかは、大阪的グルーヴに乗って来たというか、ずいぶん聞きやすくなりました。

昨年の昼帯ドラマ『Xmasの奇蹟』で“身体は体育会系大学生、中身が中年音楽プロデューサー兼ピアニスト”という超絶設定を演じ切った窪田さんですから、大阪弁ごときで役を台無しにする様なヤワじゃありますまい。

そう言えば“妊婦指導”ってクレジットもあったな。松下奈緒さんに妊婦らしい挙措を指導するのかな。時制の進行に合わせてお腹の詰め物の増やし方を指導するとか。大葉ナナコさんというお名前です。藍子ちゃんがお腹にいた第10週にもクレジットあったかな。録画を確認してみませんと。

今日(28日)の放送回は、TV版悪魔くん放映決定の吉報を持って来た豊川編集長(眞島秀和さん)と船山P(風間トオルさん)にお茶出し終えて台所に行こうとした布美枝をしげる(向井理さん)が「あ、おい(ちょっと)」と脇に座らせる仕草がよかった。“めでたい話だから苦労をかけた妻に聞かせて喜ばせたい”だけではなく、いろいろなニュアンスが含まれていると思うんです。話が始まっても、しげる自身まだ夢のような気がしていて、“証人を増やしときたい”とか。“勢いに乗る向こうさんがうまい話をぞくぞく持ちかけてくるかもしれん、うっかり安請け合いしないようにストッパーとして”とか。呼びかけは「おい」と関白チックだけど、どこか、布美枝が頼りなんですね。

「(『少年ランド』百万部突破なら)重ねて積んだら、富士山5つ積んだより高くなります」と豊川に言われて、「ふぅじさんいつつ~はぁーー」とシンクロして宙を見上げたり。見上げたって何もないっつうの。夫唱婦随の古き良きうるわしい夫婦愛ってことだけじゃなく、基本的にこの夫婦、生まれ育ちは違う他人ではあるけれど、感性とか根性の基本設計において“似たもの同志”っぽいところがあり、それが多話数視聴続けていても鼻につかない要因でしょう。

水木先生接客中に、仕事部屋でTV化の話題にはずむアシスタント諸君の中で、「奥さんも嬉しいやろねえ」とつぶやく倉田さんもよかった。昨日(27日)の、味噌汁をめぐる布美枝との会話の後だけにね。中卒で看板屋に弟子入りして、先輩たちと雑魚寝の寮の部屋で布団かぶって漫画の練習、ゼタの新人コンクールでようやく受賞、しげるにアシにと白羽の矢を立てられるまで7年とのこと。若いけれど、食えない苦労、食うための苦労を知っている人らしい、普通の表現だけど深い共感が感じられました。

しかし、不思議なのは、最初から“アニメではなく実写”前提で進んでいる話なのに、実現を報せに来た豊川も船山も、聞いているしげる夫婦も、又聞きのアシ諸君も、ミーハー精神旺盛そうなすずらん商店街キャンディーズも、深沢も郁子さん(桜田聖子さん)も、誰ひとり「演じる俳優さん、子役さんは何という名前?どんな人?」に引っかからず、話題にしないことです。当時の子供向け実写ドラマって、それくらい“聞いてわかるほどの名のある、あるいは写真なり見せられてオッと思うほどの役者が出るわけがない”ものだったということでしょうか。

いまの子供向け特撮番組なら、毎シーズン、タイトルやキャラの前情報が流れると、月河なんかは「主役がどんな新人さんでどのくらいカッコいいか、好みか」は興味のメインディッシュですけどね。

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点々くん

2010-07-27 15:38:07 | 朝ドラマ

押しかけ寄り切り居座りアシスタントのスガちゃんこと菅井伸くん(柄本佑さん@『ゲゲゲの女房』)は、結構美味しい役どころですね。実話ベースで、実在モデル人物を下敷きにせざるを得ないことが縛りにも、魅力にもなっているドラマの中で、フリーダムお構いなしに「モデルさんがいて、視聴してたら怒るだろ」と思うようなドジも踏めるし赤っ恥もかける。

23日(土)放送回で、しげる布美枝夫婦(向井理さん松下奈緒さん)と経理担当・兄嫁佐知子さん(愛華みれさん)の会話を立ち聞き(←正確には雑巾がけポジ聞き)、「オレ、クビかぁ…」と茫然と仕事場に戻って、年下の倉田(窪田正孝さん)から“(水木)先生を呼んできてくれと言うたのにどないした”と訊かれて我にかえり「……………あぁいけね…もう一回行ってくる」の「…………」の、115分ドラマのサブのそのまたサブ人物には大胆とも思える間合いなど、お父上の柄本明さんをホウフツとさせましたぞ。

「ボクはもう出て行く人間なので」(←誰も訊いてねえし)、いずみ(朝倉えりかさん)が姉からの手紙と写真でアシの顔と名前を予習して来たと聞いて「なんだそうか」(←「彼女、なぜボクの名前を知ってたんだろう」と妄想し過ぎ)など、パパ柄本さんとママ角替和枝さんのDNAを感じるボソッと突き放すセリフ回し。“何でも実話、何でも努力上昇ストーリー”に偏るとドラマとしてつまらなくなりがちになりそうな局面を、うまく救うナイスキャラ配置です。

“別にメインストーリーの原動力にはならないし、メイン人物の美点や主張をフィーチャーする役にも立たないけど、とりあえずおもしろい”キャラも、そろそろ来てよかった。

それでもスガちゃんのおかげで、雄玄社部下の北村(インディゴの夜DJ本気の加治政樹さん)のいずみちゃんLOVEや、倉田の日の丸弁当→布美枝の「アシスタントの皆さんに健康で仕事してもらうのがしげるさんのため♪」昼食味噌汁差し入れなどが浮き彫りにできて、“ただその場の可笑しさ担当”だけではなく、ますます美味しいじゃないですかスガちゃん。画力に秀でた、元はと言えば独り立ち貸本漫画家だった小峰(斎藤工さん)や、看板屋仕込みの技術抜群、実家に仕送りもして努力人一倍の倉田は早晩独立できそうですが、点を打てと言えば点々、渦巻きを描けと言えば一日中こうぐーるぐるぐーるぐるのスガちゃんはアシスタント一代で終わりそう。

でも、なんとなく最終話まであの感じで、水木プロにいてほしいような。

青二才ふたりに思われ中のいずみちゃんは、実は「ああいう人が将来、亭主関白になって、お父さんみたいに家で威張るんだわ」と、ぶっきらぼうで愛想のない倉田のほうに関心がある様子。“結婚後”“亭主としてどうか”を想像してみる時点で、もうその男に持って行かれている証拠ですぜ。

布美枝さんは“漫画家の嫁”のどん底をとことん経験しているから、いずみちゃんの気持ちがわかっても賛成できないだろうなぁ。

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日の下の者

2010-07-25 14:49:22 | ニュース

とにかく暑い。連日暑い暑いアヅイ

「うだるような」なんちゅう昭和的な世界じゃないですな。「生きたまま焼かれてる」に等しい、ユダヤ教原理主義のような(知らないけど)世界になっておる。

 当地はおかげさまで高緯度北国につき、とりわけ関東~中部のもんのすごい最高気温報道を媒体だけで聞きながら「今日は30度超えるかな~」「超えるかもね~」「やっぱり超えたって~」「だよねー暑いもんね~」なんて牧歌的な会話を繰り広げているのですが、「7日間で熱中症による死者25人」(24日共同通信報道)なんて聞くと、日本って文明国じゃなかったんかいな?と思ってしまう。

“暑さ”、それも、(ある程度は)暑いのが当たり前の“夏”の暑さという普通の気象現象が原因で人が死ぬ。ある程度は寒いのが当たり前の冬でも、寒いことにかけては全国の上位10%には余裕で入ると思う当地で、寒さが主因、つまり“凍死”が20人も30人も出て媒体ダネになった記憶はここずっとありません。

いや、ホームレス路上生活者が年の暮れや寒中に、通行人の通報で搬送されたら絶命してたとか、生活保護高齢者が灯油の買えないアパートや、除雪もされず玄関も開かなくなった一軒家で孤独死とかの変死事案は毎年あるのでしょうが、厳密には死因は“栄養失調”や、風邪をこじらせての肺炎や、かねてからの心臓や血圧の持病悪化の結果だったりすることが多く、ほどほどの生活環境で起居している健康な人が、山の遭難などでもなく“寒いことのみが原因で死んだ”はまずないと思います。

 そうは言っても氷点下の露天に丸腰で放り出されたら、誰だって低体温になって死ぬわけで、“寒さだけでもじゅうぶん人間は死ぬ”ことが身にしみている北国住民は、如何にして寒さを撃退し、暖を確保して生活するかを長年必死に考えて、住宅設計や都市開発、道路建設、電力ガス等のエネルギー開発に取り組んでいますから、たまたま或る年の或る時期に想定外の寒波が来てもそう簡単には人死にを出しません。

 要するに、温暖な地域の皆さんは、“暑さだけでは人間、死なない”とナメている部分があるのではないかと思うのです。

 『徒然草』に「家のつくりやうは夏をむねとすべし/冬は如何なる処にも住まる/暑き比わろき住居は堪へ難き事なり」とあるように、中世、日本の版図に入っていなかった蝦夷(えみし)の国=東北奥地や北海道を除く、京都中心の文化観、生活観では“冬の寒さよりも夏の暑さのほうが難物、マジで闘い、撃退すべし”という危機意識はあったと思うのですが、その後文化や言論の発信が、山に四囲された盆地の京都より海浜に近くて条件温和な江戸=東京重心に偏り、戦後の家電三種の神器(冷蔵庫、洗濯機、テレビ)→3C(カー、クーラー、カラーテレビ)の流れもあって、気がつけばえらく“夏は暑い”ということを甘く見た地合いができてしまった。

なんぼエアコンで密閉した鉄筋ビルやマンションでハイテクにクールに過ごしていても、356℃ともなれば、一歩外に出りゃ生きたまま焼かれるわけです。“車内に乳幼児や、要介護高齢者を放置して取り返しつかないことに”なんて報道を見ると、本当に、温暖地域の皆さん、北国住民がガチンコ立ち向かっている“寒さ”に比べて、“暑さ”を軽んじているツケだなと思わざるを得ません。

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そんなバナナ

2010-07-24 20:53:10 | アニメ・コミック・ゲーム

23日(金)放送回でめでたくビフォーアフター成った村井家(@『ゲゲゲの女房』)の食卓にある、しげるの好物コーヒー用クリーミングパウダーのラベル。綴りは“Creamy”とも“Crearity”とも読めるけれど、黄色地のロゴデザインはまったく、あのおなじみロングセラー品を再現してますな。

このドラマには貧乏時代から、お台所には“カネクレンザー”、しげる(向井理さん)の仕事机には“明墨汁”、商店街の看板には“ユニコーンビール”など、「アレのことね」とわかる架空の商標ラベルが絶妙の似せデザインで満載です。ユニコーンビール、普通に飲んでみたいんですけど。平成のいまは“一搾り”とか、発泡酒“麗生”、新ジャンル“コクの時”とかを製造してるのかしら。

ライバルは“ヒノデビール”の“ウルトラドライ”と“クリアヒノデ”だろうね。

昭和41年夏時制ですでに部数80万部を勇躍越えたらしい雄玄社『少年ランド』編集部の柱には、同社の少女誌部門の看板『少女ガーデン』表紙写真が貼ってありますが、テイストがなんとも当時の講談社『少女フレンド』っぽいカントリーくささで嬉しくなります。ライバルの集英社『マーガレット』に比べると、なんとはなし、非日常に突き抜けてないというか、生活感、家庭感、みたいのがありましたからね、少フレ。

『マーガレット』の集英社が、『少年ジャンプ』で少年誌マーケットに殴り込んできたのが、確か昭和44年。創刊当初は週刊ではなく隔週刊ぐらいで分も厚かった。『男一匹ガキ大将』で本宮ひろ志さんの名前と絵柄を初めて知りましたね。“友情”“努力”“勝利”の同誌ですから、もしドラマに出てくるとしたら『少年ビクトリー』とかかしら。負けるなランド(でも抜かれるんですよねマガジン)。

絵に描いたような貧乏ボロ家が、遅ればせながら昭和41年の、幼子持ちの民家らしい、冷蔵庫も炊飯器も、魔法瓶もコーヒードリップもあるしつらえになって、「あの頃は…」と懐古する材料がたくさん出来た分、ちょっと演出が甘くなったかなという気もしましたが、22日(木)のまだボロ家のままの時点での水木プロダクション発足祝賀会に駆けつけてくれた戌井さん(梶原善さん)が「いま思い出してたんですよ、『鬼太郎』が復活すると聞いてお祝いに来たとき、奥さん、ここに座り込んでた」と、ひとり宴席を離れて、茶碗酒片手に裏庭で述懐する場面は良かったですね。

「あんたが早く現われんかと待っておったんですよ」としげるは熱い握手で迎えてくれ、戌井さんも「今日はじっくり水木さんと話したくて来ました」としげる大好物のバナナを土産に訪れたのですが、飛ぶ鳥落とす大手出版編集者、映画会社Pや新人アシスタントら上り坂の人たちが“水木センセイ”をいやが上にも盛り立てんと取り囲んで賑わう席に、下り坂をともに踏ん張る同士だった身が加わるのは何とはなし居心地が悪く「人あたりしそうで」。

奥さんの布美枝さん(松下奈緒さん)相手に、不遇時代に貸本版『悪魔くん』を傑作視して日の目を見せた恩を売るつもりはまったくないのだけれど、水木先生との出会いと親交には貧乏の思い出がついて回り、それは今夜のこの宴にはふさわしくないものなのです。

でも貧乏をともに耐えた時間の長さなら誰にも負けない布美枝(松下奈緒さん)が、「誰も認めてくれない、どこの出版社からも冷たくされて、応援してくれたのは戌井さんだけでした」「これから先どげなるのか、お祭りみたいな騒ぎがいつまで続くのか、怖いような気がします」と、前に進むのみとはなれない一抹の後ろ向きをひととき吐露できるのは、当夜の面子だとやはり戌井しかいないのです。

初めての里帰りで、“本当は貧乏でどうしようもなかったのよ”をぶっちゃけられる相手が実家の中で、両親でも兄でも嫁いだ姉でもなく弟・貴司(星野源さん)だけだったというのと、どこか相似している。努力して、刻苦勉励して、いまより幾らかずつでも上を目指すのが人生のあるべき姿とみんな思っているけれど、上への気流に乗っても四六時中前向き、イケイケどんどんだけでは人間、疲れてしまうのです。ひととき後ろを振り返り、「低迷していた頃も、あれはあれで良かった」「この上向きが続くか不安、怖い」と心ゆくまでしんみりじんわりできるサムタイムがあり、そんな気分を共有できるサムワンがいないとね。

“努力上等、でも要所では懐古躊躇モードでうじうじ”をワンシーンだけでも肯定してくれた、このドラマの風通し良さを象徴するような場面だったと思います。前向きオンリー一方通行でラクさせてくれない朝ドラ、続きましたからね。

「しっかしボクも気が利かないなあ、(皆が高価な酒や菓子を持って来るような水木先生になったのに)いまさら土産にバナナでもありませんでしたよねぇ」と苦笑する戌井さんに、「そんなことないですよ、いちばんうれしい、何よりのお土産です」とお世辞でなく元気づける布美枝。しげるも同じ気持ちだったに違いありません。

できれば祝い客がはけて布美枝がひとり後片付けする深夜、しげるが「酒の飲める人はええなあ」「次から次へと話の相手してるうちに、せっかくのオマエ(=布美枝)の太った餃子、みんな食べられてしまった、宴会の後とは腹が減るもんだな」「あーうまいな、戌井さんのバナナ、あの人は気が利いちょる」とニコニコぱくつく場面があったら良かったですね。

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