イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

星の姫は星になった ~芦名星さんを悼む~

2020-09-20 23:11:52 | ニュース

 不本意ながら前の記事の続きの様になってしまいました。芦名星さん、月河にとっては未だ『仮面ライダー響鬼』(2005年)の、魔化魍(まかもう)の姫のイメージがいちばん鮮明なのですが、調べたら当時21歳。今年36歳でしたか。もう女優歴も十五年選手です。

 初めて見たとき、その次に見たとき、インターバルがあいてしばらくぶりに見たとき・・と、演技力というか“女優らしさ”は確かに右肩上がりな一方、一貫して“生活感のなさ”が変わらない人でした。

 直にお会いしたわけではないしトークバラエティなどでの自分語りも、此方がちょうどそのテの番組を好まなくなった時期に入っていたせいもありあまり聞く機会がありませんでしたが、なんとなく、出演作品や役柄の表現には積極的で貪欲でも、自分自身を露出し表出することは得意ではなく、それゆえに最小限にとどめおくようにして生きてきた人のような気がします。 

 ・・教育機関や企業でカウンセリングを担当する人の複数から聞いたことですが、向上心に富み前向きで、目標を掲げ努力を惜しまない人=周囲から「頑張り屋さんね」「見ているとこちらも元気が出る」「私も、僕も見習わなきゃ」と言われるような人ほど、いまの自分や状況に満足できていないので、活発でほがらかな言動や雰囲気とは裏腹に、絶えず自分に対するいら立ちや焦りに苦しんでいるといいます。

 また、大きな夢や希望を持っている人、やりたいこと、なりたいもの、行きたい場所、欲しい物がはっきりしている人ほど、“たくさんの事や物をあきらめ、断念したり妥協したり、第二希望以下に目標を下げたりして、悔しい思いを積み重ねてきているものだ”とも。

 こういう人は“ポジティヴ、前向き=善、ネガティヴ、鬱屈、停滞=悪”と心の底で思っていますから、人に会う時や人から見られるときにはいつも明るく、多くの趣味や興味関心対象を持ち、面白そうな事や面白かった事に水を向けられればいくらでも話してくれます。聞く人は“楽しい事がいっぱいある人生でいいな、幸せそうだな”と思って疑いません。聞く方もたいていポジティヴ信者なので、相手が見た目明朗快活で前向きだと安心、気楽なため、わざわざ奥底のネガティヴを探り出そうとは思わないのです。

 芦名星さんもそんな、クチ下手ならぬ“ネガティヴ下手”さんだったような気がします。ファッション雑誌のひたすらおしゃれなモデルさんから動いて話す女優に転身して十五年以上にもわたり、揺るぎない“生活感のなさ”を維持するなんて並大抵のことではありません。モヤモヤしたりカリカリしたり、どんよりしたりする所を人に見せないようにしているうちに、自然と、ドログチャなリアルから一線を引いて距離を置いてるようなたたずまいが身についてきたのではないかと思います。外から接している人は、ドログチャ感が無いのは気分がいいですから、「感じのいい人」と好感度大で、それゆえに自死だったと報じられると「信じられない」「そんな筈はない」「動機が思い当たらない」と当惑するのでしょう。

 36歳という若さを思うと、ベストな選択だったとはとても言えません。何かしら、どうにかして他の手立てはなかったものかと思わずにいられませんが。もう時間を逆回しできない以上「少なくとも、もう夢や希望を持ち続けなくても、頑張らなくても良くなった」事にだけは、彼女のために少しだけ安堵してあげてもいいのではないかと思います。

 「人間が最後に罹る病気、それが“希望”である」

 ・・この至言を思い出します。サン・テグジュペリ、代表作はもちろん『星の王子さま』。

 ちなみに、芦名さんの芸名“星”、『響鬼』のクレジットで初めて見たとき、”一字で女性名、「何と読むんだろう?」と月河はかなり長い間悩んで結論が出ませんでした。『響鬼』放送が終わる頃か、終わって久しい頃、TV誌のグラビアページか何かしらの紙活字媒体でルビを読んで正解を知るまで、当てずっぽうでひかりさんじゃないか、と決め込んでいました。文字通りの“キラキラネーム”と見たわけですな。当たらずとも、そう何万光年もは遠からずだったと思いますがどんなもんでしょう。

 最後になりましたが、気がつけばレギュラーだけでも半端ない本数のドラマ出演作があった芦名さん、もし追悼企画で過去作の再放送をやっていただけるなら、ぜひNHKBSの『てふてふ荘へようこそ』(2012年)をお願いしたい。彼女の、演技でなく内からにじみ出る様な、“濃厚な”といってもいいくらいの圧倒的な生活感のなさと、それを裏切るのか補完するのかわからない、これまたにじみ出る様な“体温感、人肌感”が見事に生かされた快作だと思います。

 当時はまだ今ほどブレイクしていなかった鈴木浩介さん、滝藤賢一さん、江口のりこさん等も、ゲストと言うには活躍の多い重要な役で存分にのちの開花の片鱗を見せていますし、本放送時はあまり話題にならなかったけれど、もっと見る人が増えてほしいドラマです。

コメント (2)
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旅立った人たち ~影ながら祈る~

2020-09-07 23:54:20 | ニュース

 義理のやむなき冠婚葬祭以外、もともとあまり人付き合いの良いほうではない月河家も、ステイホーム推奨・非接触型社会推奨の新型コロナ禍以降、ますます孤高深閑の度を深めてまいりました。

 各人夫々に新聞やTVと接している時間が長くなると、なんだか先日一時的局地的に盛り上がった弘田三枝子さん以外にも、今年ここまで、ずいぶん多くないですか。有名知名人の訃報。

 ここ4~5年ではいちばん丁寧に新聞読んだり、家でTVをつけている時間が長かったりするから自然とそう感じるのかもしれません。特に、聞いた瞬間「まだ亡くなる様なお年ではないんじゃ?」「闘病中とかの情報なかったよね?」「ついこの間、変わらない感じで出てたよね?」と思う、意外なかたの突然の逝去が目立ったように思います。

 月河自身がいちばんびっくりしたのは、5月に入ってから公表された、外交評論家の岡本行夫さん。小泉純一郎総理時代の政府外交特別補佐で、ついこの間までBSフジプライムニュース等に出演されていた記憶があったので、新型コロナ、やっぱり怖いなと思いました。74歳、病歴や喫煙歴はわかりませんが、70歳だった志村けんさん同様、“寿命だからしょうがない”と言えるお年ではありません。

 退官後フリーの評論家となられてからも、服装といい、随所に硬骨クセモノ感、諸外国の高官と四つに組んできたしたたか感を垣間見せつつも語り口はソフトでユーモアに富んでいて、「G7(先進国首脳会議)は、各国首脳が(歴史知見など)知性と教養をひけらかし合い、その後愚痴をこぼし合う場」という話は特に愉快でした。

 月河にとっては、ヴァイオリニスト佐藤陽子さんの前の旦那さんというのも印象深い。天才の呼び声高かった陽子さん24歳で、一橋大出身のエリート若手外交官岡本さんと恋愛結婚された時点でかなりの話題をまいたはずですが、月河が知ったのは、陽子さんが版画家で芥川賞作家の池田満寿夫さんと再婚(事実婚)されたときで、岡本さんとは前年にもう離婚が成立していました。“外交官の妻”というのは、ご本人の本業・前職が何であろうと別建ててひとつの技能職みたいなものですから、天才ヴァイオリニストで声楽家・女優としても国際的に活動していた陽子さんがよく飛び込んだなと思います。当時の、20代の岡本さんによほどの魅力があったのではないかな。

 陽子さんと離婚成立後再婚もされていたはずですがそのへんは詳しくないので。日米同盟基軸の重要性を繰り返し強調していた岡本さん、期せずして日本も、ひょっとしたらアメリカもリーダーが代わりそうな現今の情勢及び将来展望をどう観られるか、お元気だったら是非うかがいたかったところです。

 7月の、俳優三浦春馬さん謎の急死、のちに自死と判明というのも、こちらはコロナと何の関連もないだけに一層衝撃が大きかった。ほんの数日前にTBSで新ドラマの番宣にリモートナマ出演されていたし、スキャンダルやトラブルの噂もなかったし、非高齢家族なんか「ちゃんと検死したのか、他殺のセンはないのか」と真顔で言ってましたから。

 「誰?有名なの?」と高齢家族が訊くので「ホラ、大河の『おんな城主 直虎』で幼なじみの亀之丞が大きくなって井伊直親って・・」と説明すると、「あー、あのキレイな顔立ちの子」と意外にすぐ思い出してくれましたが、ちょっと間をおいてから「影薄い感じだったもんね、線が細くてね。年がいってから良い役者になりそうな、ズブトいタイプじゃなかったね」と、後出しジャンケンの様にコメントしてました(高齢組の、特にその2は、『直虎』キャストの中では三浦さんでも、高橋一生さんでも菅田将暉さんでも、柳楽優弥さんでもなく“ユキの字”こと中野直之役=矢本悠馬さんが贔屓で「あのコはいい、ジャガイモみたいな顔してるけど、いい役者になる」と絶賛でした)。

 ・・高齢家族が、テレビやDVDなど媒体を通じて見知った、あるいはリアル社会で人づてに知り合いになって交流を持った人について、「影が薄い」と本人不在の時に評するのは、しょっちゅうではないですけれど、不思議とその後、さほどの年齢でも病気持ちでもなく急逝されることが多いのです。特に霊感が強いとかでもないので、偶然と言えば本当に偶然なんでしょう。

 かつて高齢家族その1が定期的にお世話になっていた理髪店の奥さんで、店主である旦那さんの助手としてテキパキ働いていた人がおられたのですが、その1を迎えに行って帰って来たその2が数日後「あの床屋の奥さんは愛想が良くて気もきくようだけど、なんでか、影の薄い人ね」「今日、店の前を通ったんだけど、旦那さんの顔や体型は思い出せるのに、奥さんの顔は全然思い出せない」。・・次にその1が店に行ったときには奥さんは不在で、入院しているとの話で、それから間もなく忌中の貼紙が。軽く体調を崩して受診したら、その時にはもう手遅れの癌だったらしいのです。・・

 ・・・なんだか月遅れの怪談みたいになってるな。それより少し前だったか後だったか、自民党の二世議員で選挙区が近く、一時は“将来の総理総裁候補”と言われていた中川昭一さんについても「いつ見ても疲れた、泣きそうな顔してるよねぇ」「たぶん総理になんてならないよ、影が薄いもの」と、TVにお顔が映るたびに言っていました。

 中川さんの外遊先での飲酒朦朧会見とその後の転落、そして急逝はつとに知られています。このときはその2「やっぱりね」的なことはいっさい言いませんでした。

 月河も霊感を積極的に、濃厚に信じるほうではないのであくまで想像ですが、人間は誰でもその立場や、目標意識や、職責なりの生命力、生への執着力とでも言うものを内に持ち、放射、放出しながら日々生きている。

 バランスが取れているときは誰が見ても何の不自然さもないでしょうが、何かの理由や動機で“立場は重いのに、社会的に注目され期待されてるのに、或いは家族や同僚から頼られているのに、それに見合う量の生命力が湧き出ていない”状態になることがある。

 理髪店の奥さんの様に本人にはまだ自覚のない病気が原因のこともあるし、中川昭一さんのように深酒癖のこともある。そんな時の何とはなしの、外から感じる気配のバランスの悪さを、うちの高齢家族その2は「影が薄い」と表現するのではないかな、と。

 3年前の大河ドラマで若き井伊家当主を演じていた三浦春馬さんにも、画面を通じて何かしらのバランスの悪さ、枯渇感を、その2としては感じたのかもしれません。ドラマ中での役自体が、非運の予感を終始纏い、予感通りの非運に終わる役だったことも若干は関係しているとは思いますが。

 三浦さんの場合まだ30歳になったばかりでしたし、一時的な“生命力の減圧”はお休み取るなりしてリカバリーして、高齢家族その2の読みを裏切るズブトい名優になってほしかったですね。本当に人の生は日々、いつバランスを崩すかわからない薄氷の上、紙一重の地平を行くようです。

 だからこそ無事に踏みしめ進みおおせる今日一日が途方もなく貴重だとも言えるのですが。

 ちなみに、こんな高齢家族その2がステイホームでTVに親しい日々の中「この人も、影が薄いねえ」と一度ならず所感を述べている有名知名人は現時点でも複数いるのですが・・・書いてデスノートみたいになったらこのブログ自体も汚染される気がするので、きれいさっぱりスルーすることにします。こういう時世ですから、ネガティヴはぜんぶゴーアウェイで。

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