まぁいまさらながらお国柄と言うか、まるごと人品を疑いたくなるような“かの国”のニュースが一面に採り上げられているわけですが、持ち前の“臆面の無さ”が良い意味“でも”活かされているのは、やっぱり韓国ドラマなのではあります。
前の前のエントリで触れた『その女の海』とともに8月下旬、夏の終わりから、途中下車したりまた追いかけてタラップにつかまったりしながらなんだかんだで秋深まる今日まで追尾しているのが『あなたはひどいです』(BS11月~金13:59~)。
・・・もうね、タイトルの身も蓋も無さが大半を語ってるでしょう。あなたはひどいです。本放送時の英語タイトルは『You are too much』だったらしいですが、これを、たとえば、えーと『あなただけは許さない』とか『魔女の欲望』とか『憎むほど愛して』とか(思いつきなのでご容赦を)、たとえばですよ、さもなきゃ『ヒドい女 ~虚栄の煌(きら)めき~』とかでなく、こう訳したのは日本側のセンスなわけで、“乗っかっていってやる”ほうもすでにかなりなレベルまで来てんなと思わざるを得ない。
初っ端から飛ばしますよー。国民的大スター歌手と、そのモノマネを売り物にする無名キャバレー歌手とがふとしたことから知り合い最初はほのぼの交流を持つが、無名歌手の彼氏がスターに気に入られて禁断の両思いになり三角関係に・・あたりまで内容紹介を読んで、月河の大好物=華やか虚飾業界のバックステージものかと思って食いついたら、斜め上、いや斜め下かな?とにかくオーバードライブして出るわ出るわ。
いきなりの交通事故から財閥の跡目争い、会長夫人の謎の自殺か殺人か?そして隠された遺言の行方、出生の秘密に生き別れの親子、嫁姑バトルに嫁同士の確執、さらには年齢差・格差恋愛と、「韓ドラならこういうの来るよね」と思われている要素が「ご期待ですかそうですか!しからば!」とばかり惜しげなく、これでもかとばかりぶちまけられます。
“お約束”踏襲にいささかもためらいがない、この臆面のなさ、ベタでやると決めたら手加減しないでベタのみで貫くのがかの国ドラマの真骨頂。
大スター歌手役で本業の歌唱を披露してくれるオム・ジョンファさんの貫禄な悪女ぶりもさることながら、物語の核心である財閥の叩き上げ会長役チョン・グァンリョルさんがやっぱりすごいし頼りになります。韓ドラに付き物の、怒鳴ったり号泣したりのパッショネートな演技より、“何を考えてるのかわからない”思案顔や、劣勢なのか勝算ありなのかどっちともとれる当惑顔が、この人、抜群にうまいのです。静の演技が濃いから、一気に動に転じたときの怖さや悲惨さがいや増しにすさまじい。
『ホジュン ~宮廷医官への道~』が初見で、『朱蒙(チュモン)』の徐々に壊れていく先代王役で改めて見直した人ですが、今作のように「いねーよそんなヤツ!」「有り得ねーよこんな状況!」の連続が、「・・いや、居るかも」「有るかも」に点滅して、結局次回が見逃せなくなる。
ダブルヒロインのもう一方、家族の生活を背負って毎晩モノマネパフォのステージに立つ下積み歌手役は、当初のキャストが序盤で病気降板交代となったせいか、どちらかというと巻き込まれヒロイン的立ち位置になり、物語を突き動かしていく驀進力は早々になくなったので、今作はかなりの比重でグァンリョルさんと、オム・ジョンファさん、そして『ホジュン』でもグァンリョルさんの厄介な母親役だったチョン・ヘソンさん扮する“最強のおばあ様”=会長母次第となりました。
本国での本放送土・日全50話を、日本の月~金一時間枠におさめるのにどう切って貼ったものか、シーンとシーンとの間の繋ぎがえらく不自然かつ乱暴で、CM明けのシーンの冒頭に、切った前のシーンのBGMの最後のほうがチラッと聞こえたりするので、毎度微妙にストレスのたまる視聴なのですが、こういう、お世辞にもココロザシが高いとは言えないドラマに、人の鼻づらつかんで先へ先へと引きずって行くような野太いパワーがあるんですよねぇ。とんでもない最高裁判決も下りるわけだわ(それ納得してどうする)。