イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

拍手してやりなさい

2012-04-29 01:23:00 | 朝ドラマ

 だはは、まさか幸吉っつぁん(片岡鶴太郎さん)の“どソロ”をフルコーラス聴くとは思わなかったですよ(@『梅ちゃん先生』)。それも歌会始みたいなタテ書き字幕つき。

 タイトルもつけもつけたり『復興節(ぶし)』。原曲は大正時代、関東大震災後に流行ったものだそうですが、♪家は焼けても江戸っ子の 意気は消えない 見ておくれ…と、ドンズバド直球な復興応援アゲアゲソング。“○○っ子”の○○を任意に変えれば、どの地域のどんな状況への応援歌にもアレンジできます。

 当然、のど自慢場面は幸吉さんのソロで打ち止め。賞をとったか、とれなかったのかのフォローもなし。なんとも唐突だった幸吉のチャレンジは、要するに帝都戦災復興に仮託した、震災被災者の皆さんへのエール劇だったのでした。あきらめない、「どうせ」「しょうがない」と言わない。会場に父親の応援に来なかった息子ノブ(松坂桃李さん)への、まだまだ枯れない町工場一代、親父の決意表明は、そのまま「次世代の子供たちのために故郷を取り戻したい」と、被災地や転職・転居先で頑張るお父さんお母さんの願いに読み替えられる。

 言葉は悪いが『梅ちゃん先生』、どうやらドラマの体裁はとっているもののドラマのようでドラマではない様子。まるごと2012年“一周年震災復興応援ソフト”ドラマ形式版、と受け取るべきでしょう。いきなり大空襲後の焼け野原東京~玉音放送で始まり、そのわりには人物が皆、肌ツヤ良好でふんわか文化的に暮らしており、出征の婚約者を待つ間お針のお稽古にかよっていたりするのも、つまりは目線を戦争体験無し世代の被災感覚に合わせるためだったのかも。

 『梅ちゃん先生』を額面通り、焼け跡世代の女医志願少女成長ビルドゥングス・ロマンと思って視聴すると、今後も首をかしげることが多そうです。とにかく被災地に元気を、日本よ立ち直れ、へこたれるなの一種の啓発ビデオと思っていたほうがいい。

 家出して闇屋修業中の竹夫兄さん(小出恵介さん)を父・建造(高橋克実さん)となんとか和解させたくて、「家でラジオを聴いて、安岡のおじさんを皆と一緒に応援しましょう」と梅子(堀北真希さん)が説得を試みるくだり。これがきっかけに使えるほど竹夫って安岡家&幸吉さんと親交あったっけ?と疑問に思ってはいけない。震災直後に被災各地で見られた“高台の無事な家に近隣全員集合”という状況を、戦後設定の中でなぞったと思えば納得。。

 月河も日本人、それも今回の被災地に比肩する地震好発地域の住人ですから、被災された皆さんを応援し元気づけることなら大いに賛成です。でもそれなら真っすぐに「応援します」と言えばいいのであって、別に広大焼け跡セット作って、演技してなんぼの役者さんたちを集めて“戦後コスプレ”しなくてもね。ドラマとしての土俵で『梅ちゃん』に言及するのはこれで最後にしたいと思います。

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ハイ結構です

2012-04-28 00:39:29 | 朝ドラマ

 ♪ァ貸したカネなら返って来ない~ とか息子ノブくん(松坂桃李さん)をイラつかせるネガティヴ都々逸みたいのじゃなく、幸吉父さん(片岡鶴太郎さん)は『ギンギラギンにさりげなく』を歌ってほしいですね(@『梅ちゃん先生』)。 醒めた仕草で熱く見ろ。涙残して笑いなよ。「マッ  チでぇ~~す」と、名乗らなきゃ何のモノマネなのかすら微妙な、顔パンパンの鶴ちゃんはいずこ。いまやご本人より痩せぎすかもしれません。アタマがひときわおっきくて、なんだか本当にデビュー前の、ニックネームの由来となった“マッチ棒”みたいですな。

 しかしなぜ、このタイミングで素人のど自慢?幸吉さん、酔っぱらって何やら大声でクチずさんでいた描写はあったものの、放送のど自慢に出たがるほどの歌好きだったとは。

 ラジオのみ時代のNHKののど自慢風景秘蔵VTRを出すためってことはないと思います。どうも、既に登場顔見世済みのある人物がプロの○○になることが決まっているため、そこへ持って行くための布石のような。

 あらかじめ“ゴールはこうする”が決まっていて、そこへ定規をあてて線を引いて行くような展開が、どうも目立つ『梅ちゃん』なんですよねぇ。

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イッヒアッハダッハ

2012-04-26 20:46:54 | 朝ドラマ

 『カーネーション』の余韻にひたったり『特命戦隊ゴーバスターズ』を心配したりしているうちに、気がつけば…っていつまで気失ってたんだ!余韻がさめる間もなく『梅ちゃん先生』が4月卯月とともに始まってますが、いかがでしょう。『カーネーション』からなかなか脱皮できない皆さん、見てますか。“カビ生えても咲き続ける”根性のカーネーションのフェードアウトを待ちきれず、梅も咲いちゃいました。

 ヒロイン梅ちゃん役=堀北真希さんのつやつやお肌とキラキラおでこが焼け跡オープンセットに眩しい。くりっとした目鼻立ち、キリッ!パリッ!と元気全開でなく、基本ポジティヴな中にもほわらんとした雰囲気。たぶんヴィジュアル的には、ここ数年でいちばん朝ドラヒロインらしい朝ドラヒロインではないでしょうかね。どの作品に出てもこんなんというわけではなく、民放ドラマではいろいろな役をすでに経験済みのようですが、そういう、ほどほど定着した認知度のもたらす安心感も、朝にふさわしいと言えばふさわしい。顔見るのも声聞くのも今作が初というド新人さんが出ずっぱり主役だと、演るほうがいちばんそうでしょうが見るほうも結構、緊張を強いられるもんです(同じ朝でも学校がない、大きなお友達には出勤のない日曜朝の、スーパーヒーロータイムの仮面ライダー諸君やスーパー戦隊の面々は、毎年毎作、この“お初”緊張感を、vs怪人、vs悪の組織との戦いドラマに転移させる作戦で引き込むわけです)。

 しかしまあ、堀北さんは頑張っていると思うけれども、OP主題歌がSMAPというだけで開口一番“これは、それほど一生懸命観なくていいドラマだよ”オーラ出まくってますな。さしたる特徴のない声質の男性ヴォーカルが一節ずつ歌いつないで、ソロ以外のメンバーが♪うぉおお とか合いの手コーラス入れてる、隙に満ちた歌唱スタイルがそう思わせるのか、SMAPというグループの“アイドル大御所”“余勢”“惰性”感のせいなのか。

 梅の花びらが舞い散る梅ちゃん/ 先生のタイトルロゴといい、スタッフ・キャストクレジットのピンク縁取り白文字の字体といい、漂う雰囲気は『ちびまる子ちゃん』風アットホーム、ご近所&スクールグラフィティ。正枝お祖母ちゃんはSKD出身で元祖ナイスバディの倍賞美津子さん、お母さん芳子さんは元・芥川賞作家夫人で現・ハリウッド俳優夫人の南果歩さん、優等生の松子お姉さんはデビュー作月9主演のミムラさんで、竹夫お兄さんは慶應ボーイの小出恵介さんと、背景は焼け跡闇市でもなんともキラキラした顔触れの家族ですが、OPの町並みジオラマと人形のイメージもあって、漫画にすると全員3頭身ぐらいになりそう。

 そんな中、丸顔丸頭に丸メガネ、漫画にしなくても漫画っぽいヴィジュで、ヴィジュと真逆な融通利かない謹厳教授の建造お父さんを演じる高橋克実さんがひとり異彩を放っておられますな。いつボケるか、お父さんが映るたびに手を止めて観るんですがなかなかボケてくれませんね。お隣さん安岡家のご主人が片岡鶴太郎さんで、何事も“智”本位な下村家とは対照的な、腹巻きステテコの典型的町工場ブルーカラー父ちゃんなので、学者と職人、“噛み合わなーい丁々発止”なんか期待したんだけど、いまのところそれもなし。

 『フルスイング』とか、『官僚たちの夏』、あと『平塚八兵衛の昭和事件史』など、近年月河がお見かけするときはなぜか決まって“丈夫そうなのに早死に”な役の高橋さん、今度は梅ちゃんが一人前のお医者さんになるまで、そばで見守ってくれるお父さんだといいのですが。なることはわかっているんですからね。

 “医者になれるか、なれないか”に関しては最初から答えが出ているに等しいので、過程のすったもんだ、出会い別れる人物たちをどうおもしろく見せるかにかかっているわけですが、なんか主題歌同様ゆるゆるで隙だらけです。ドイツ語の扇田先生役にせっかく美声の大和田伸也さんをキャスティングしたんだから、動詞変化全員暗誦できるまで帰さない!としごかれてる場面でもあれば、21話の山道荷車運びもちょっとしたほほえま感動シーンになったかもしれないし、22話のおくればせC班メンバー自分語りも、典子さん(西原亜希)さんの子持ち未亡人カミングアウトが唐突だったため興趣が半減してしまいました。他メンより明らかに年上そうな雰囲気をただよわせてはいた彼女ですが、もう少し隠させて、“講義後の付き合いが悪い”“生理周期や、小児のひきつけや下痢の症例にやけに詳しい”などをちらつかせておいて、お先走りの雪子(黒川智花さん)あたり主導で尾行でつきとめ、「隠すつもりはなかったけれど…」と秘めていた戦死夫との甘悲エピを語らせたりしたほうがおもしろかったのに。

 江美(白鳥久美子さん)の秋田弁にしても、あれだけ記号的に田舎くさヴィジュな人が東京で、度を超えて無口だったら、たいがい訛りを気にしてに決まっている。前作でも次女直子(川崎亜沙美さん)が上京時気にしまくっていたし、絶賛再放送中(BSプレミアム月~土7:15~)『ゲゲゲの女房』でもこみち書房常連の太一くん(鈴木裕樹さん)がそうでした。なんのサプライズもない。視聴者の大方がそうだろうなと思っていたことを、足かけ何日何話後に本人のクチから説明させるとはなんとも芸のないこと。

 “謎の陰気無口の理由は訛り”を劇中使うなら、逆に全メン中いちばん垢抜けてすっきりヴィジュのキャラで発動すべきでした。個人的には西原亜希さんの訛り芸を見たかったので、秋田美人未亡人じゃだめかな。江美さんはむしろ、見た目田舎くさでもドイツ語ペラペラとかさ。

 「もっとヒネりを」。これだけ切に要望したい。ベタでも、隙ありありでも、堀北さんの肌ツヤ頼みでも、それが味と思えば味読はできます。しかしヒネりがないことには。フィクションなんだから、ヒネってなんぼじゃないですか。

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