しかし種市先輩(福士蒼汰さん)(@『あまちゃん』)、また、なして転職するに事欠いて寿司屋とな。
花の南部ダイバーが東京スカイツリー現場に配置替えされて重度の高所恐怖症発覚→退社まではわかるけど、東京なら高卒潜水士資格持ち、南部もぐりを生かせるクチがいくらでもありそうなんですけどね。
寿司→海産物→潜り、と連想がはたらいたか。アキちゃん(能年玲奈さん)から「ちっちぇー男!」とカツ入れられた現場が寿司屋だったこともあり、あるいは「天野が頑張ってる職場(=東京EDOシアター)の近くにいて、これからもちょくちょく叱ってほしい」との潜在意識が頭をもたげたか。本命ユイちゃん(橋本愛さん)への告白もリアスの前でキレられた流れのときだったし、ひょっとしたら先輩、“叱られたい男”“叱ってもらわないと本気出ない男”なのかもしれませんぞ。恋愛感情はいまだ地元のユイにあるにしても、先輩にとって別ベクトルから天野はなくてはならない存在になりつつあるのかも。いいぞアキ。目指せ男女の友情。
それにしてもアキちゃん、アイドルとしてはいまだシャドウもかなわない下積みではありますが、憧れの大女優鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子さん)の付き人に指名されて、多忙ながらも行動をともにできるし、反省会ではタメグチで本音トーク。夜はGMTの仲間と晴れの舞台を夢見つつレッスンでいい汗をかき、大女優からは高級寿司の差し入れ。しかもその配達は再会した初恋の人。結構、贅沢な上京青春ライフではありませんか。
それに対して地元に居残ったユイちゃんはいまどん底です。やっとお父さん(平泉成さん)がリハビリ退院、上京してアキと合流し全国区アイドルへのスタートラインに立てると思ったら、今度は介護疲れ?でお母さん(八木亜希子さん)が失踪。ここまで来るとユイちゃん、“妖怪・東京いけず”に取り憑かれてるとしか言いようがない。
あるいはこちらも潜在意識的に“東京でのまだ見ぬ高レベルライバルたちとの、アイドルスペックガチバトル”を恐れ避ける心理が奥底にあって、それがコンマ1秒の上京ベストタイミングを逸せしめているのかもしれません。極端な話、親が倒れたって、いつかのように家出で飛び出すことだって、やる気になればできるのですからね。 天下の県会議員先生、お母さんも“根っからのサブレ(セレブともいう)”で実家にお金ありそうだし、介護ならカネで人にいくらでも依頼できるでしょうし。
結局ユイは東京に出て、ワンオブゼムからアイドル戦線を勝ち上がることより、なんだかんだでいい人揃いで裕福でもある家族と、かわいいかわいいとちやほやしてもらえる地元の居心地よさのほうが、深層では好きなのだと思う。根っからの“持てる者”なんですね。
でもまた、化けるに事欠いてメッシュに眉毛剃り込みにマンボズボンみたいの履いたヤンキーとは。アイドルを志すだけあって、ユイちゃんは本当に秘めたる自己顕示欲の人なのね。目立つ存在でいたい、注目されたい、別格でいたい。アイドルが“かわいがられる、愛される、好感度、憧れの対象”としての目立ち方チャンピオンなら、メッシュ剃り込みヤンキーはその対極のチャンピオン。
?上京してアイドル志願という、誰がやっても本来無謀な、勢いで一気に行かないとダメな行動を、親のアクシデントで立ち止まって客観的に考える時間ができてしまった。
?何によらず地元では同年代の他の女子に負けたことがないユイとしては、アイドル能力は自分よりずっと下と思っていたアキより遅れを取ってのスタートになるのも気が進まない。
そして、これは伏線になる場面がひとつしかないのでユイ自身も気がついていないかもしれませんが、
?“お母さんのような人生(=若くしてキャリアを捨て田舎で家事に明け暮れる)は嫌”と殊更に否定していた母親が、自分が夢を掴みに行く直前を見計らったように失踪。“仇を取られた”とのショック。ユイも母親の愛娘として、“結婚し子を持つことを選んだためにあきらめざるを得なかった夢が、お母さんにもあったはず”との思いはあるのです。母の秘めた悔しさを蹂躙して手前勝手に夢。夢と言いつのってきた自分に、苦い一抹がないわけがない。
かつて自分も親の都合で夢が途切れそうになり、こちらは力ずくでおん出た経験のある春子さん(小泉今日子さん)のカラダを張っての(←服はともかくわざわざあばずれメイク)一喝で、ユイちゃんはもう一度本気を見せてくれるでしょうか。
しかしまあ、鈴鹿ひろ美さんは退屈しないね。アキに言わせれば「芝居だけやってればいいと思う」、芝居以外見事に何もないおばちゃんですが、月河史上最高の昼帯ドラマ『女優・杏子』の杏子さんのふんわかヴァージョンみたい。
鈴鹿さんと、香月杏子さんと、西条玲子さん(@『エゴイスト』)の豪華三大女優競演スペシャルドラマとかあったら楽しそうだな。杏子さんが本妻、玲子さんが愛人、鈴鹿さんが・・・そうね、調停代理人の弁護士で(おめでたはナシで)。