最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

連れ去りではなくハーグ条約の対象外と判断

2018-03-27 20:04:45 | 日記
平成29(許)9  終局決定の変更決定に対する許可抗告事件
平成29年12月21日  最高裁判所第一小法廷  決定  棄却  大阪高等裁判所


国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律に基づくXの申立てによりその子であるA,B,C及びDを米国に返還するよう命ずる終局決定が確定した場合において,次の(1)~(4)などの事情の下では,A及びBについては同法28条1項ただし書の規定を適用すべきであるとはいえず,C及びDについては同項4号の返還拒否事由があるものとして,上記決定の確定後の事情の変更によってこれを維持することが不当となるに至ったと認め,同法117条1項の規定によりこれを変更し,上記申立てを却下するのが相当である。
(1) 上記決定は,A及びBについては,同法28条1項5号の返還拒否事由があると認めながら,米国に返還することが子の利益に資すると認めて同項ただし書の規定を適用すべきものとし,C及びDについては,返還拒否事由があるとは認められないことなどを理由とするものであった。
(2) Xは,子らを適切に監護するための経済的基盤を欠いており,その監護養育について親族等から継続的な支援を受けることも見込まれない状況にあったところ,上記決定の確定後,居住していた自宅を明け渡し,それ以降,子らのために安定した住居を確保することができなくなった結果,子らが米国に返還された場合のXによる監護養育態勢が看過し得ない程度に悪化した。
(3) A及びBは,米国に返還されることを一貫して拒絶している。
(4) C及びDのみを米国に返還すると,密接な関係にある兄弟姉妹を日本と米国とに分離する結果を生ずる。

朝日新聞によると
子どもの引き渡しに関するハーグ条約に基づき、母が米国から連れ出した子を米国在住の父に返還するよう命じた裁判所の決定について、最高裁第一小法廷(山口厚裁判長)は「父親側の養育環境が悪化し、事情が変わった」とし、返還を認めないとする決定をした。決定は21日付。
 同条約は原則、連れ去られた子は元の居住国へ返還すると定めている。ただ、返還で子が耐え難い状況に陥る危険などがあれば例外としている。今回はこの例外が適用された形だ。外務省によると、同条約に基づき裁判所の決定の変更を求めた初のケースだったという。
 決定によると、両親は子4人と米国で同居していたが2014年7月、母が当時6~11歳の4人を連れて日本に入国。父は日本の家裁に子の返還を申し立て、16年1月に米国への返還を命じる決定が確定した。
 その後、父は競売で自宅を明け渡すことになったため、母は「決定の確定後に事情が変わった」として、決定の変更を求めていた。
 第一小法廷は「確定後、安定した住まいを確保できなくなっており、返還は子の利益にならない」と判断した。

ちなみに、親による連れ去りは、アメリカでは一級誘拐罪になるそうです。
大方は朝日新聞に書いてありますが、詳細はこんな感じです。
・相手方は,抗告人から平成26年9月以降もしばらく日本にいるように言 われたため,抗告人の了承を得て本件子らを同一のインターナショナルスクールに 入学させた。

これは明らかに連れ去りではないですね。

・ 家庭裁判所調査官に対し,長男及び二男 は,米国に返還されることを強く拒絶する旨を述べ,長女及び三男も,米国に返還 されることに拒否的な意見を述べたほか,本件子らは,いずれも他の兄弟姉妹と離 れたくない旨を述べた。
・ 抗告人は,平成28年2月に相手方及び本件子らと居住していた米国の自 宅が競売されたため,同年8月頃,自宅を明け渡し,知人宅の一室を借りて住むよ うになった。
・ 執行官は,同月15日,長男及び二 男と抗告人との間で会話をさせたが,長男及び二男の意向に変化はなく,上記代替 執行については,執行を続けると長男及び二男の心身に有害な影響を及ぼすおそれ があることなどから,その目的を達することができないものとして,執行不能によ り終了させた(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律 による子の返還に関する事件の手続等に関する規則89条2号)。


国内であれば、経済状況が破たんしている、子供本人の意見で帰りたくないと言っている。子供には、その年齢から自分の意思を言うことができる。
問題は、連れ去った側の事が一切書かれていませんね。ここは外せない内容ではないでしょうか。

結論は全員一致でした。
変更前決定は,その確定後の事情の変更によってこれを維持するこ とが不当となるに至ったと認めるべきであるから,実施法117条1項の規定によ りこれを変更し,本件申立てを却下するのが相当である。

裁判官小池裕の補足意見は
子の利 益のためには子の監護に関する紛争を子の常居所地国において解決することが望ま しいという前提の下に,不法に連れ去られた子の迅速な返還を確保すること等を目 的としている。本件条約を受け,実施法27条は,同条に掲げる返還事由が存する 場合には子の返還を命じなければならないという原則を定めており,裁判所として は,子の利益を図るという観点から,この原則を強く尊重して迅速に対処しなけれ ばならない。

2 長男及び二男については,一貫して米国への返還を拒絶する意思を示してお り,実施法28条1項5号に該当する事由が存する。兄弟姉妹(きょうだい)との 分離を避けることは子の利益の観点から重要であるが,抗告人の監護養育態勢の不 備等に照らすと,長男及び二男について,その意思に反しても長女及び三男と共に 米国へ返還することが「子の利益」に資するとして,同項ただし書の規定により返 還を命じた変更前決定は,一審と結論を異にしていることに照らしても,判断の分 かれ得る限界的な事案についての裁量的な判断であったといえる。
3 本件は,子の返還拒絶の意思,監護養育態勢の評価と変化,兄弟姉妹の分離 の当否等の事情を考慮しつつ,本件条約の趣旨に沿って判断することを要する困難 な事案であったこともあり,各裁判所の判断が異なったものと思われる。本件条約 に関わる事例が次第に蓄積されつつあるが,裁判所としては,合目的的な裁量によ り後見的な作用を行うという非訟事件の性質を踏まえ,本件条約の趣旨,実施法の 規定の趣旨と構造を十分に考慮して,事案に即した法の適用や,事実の調査の在り 方等について工夫を図るなどして,適切な判断を迅速に示すよう努めていく必要が あると考える。

裁判長裁判官 山口 厚
裁判官 池上政幸
裁判官 大谷直人
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之

やり切れませんね。ここでは家裁の調査官の全文が出ていないのでなんとも言えませんが、片親引き離し症候群の可能性はなかったのでしょうか。連れ去った側が、もう片方についてでっち上げや嘘を言い続け、「あなた方の敵よ」と洗脳する行為です。それと、連れ去り側の経済的状況についても何も書かれていません。これは最高裁は事実関係を明らかにするところではなく、法の判断が妥当か否かしか判断しないところだとは言え、家事審判についてはそうもいかないでしょう。
平成27年8月に裁判開始、最高裁まで29年12月の2年ちょっと最高裁まで来たことは評価できますが、身の回りの離婚訴訟を見ると家裁で3年以上かかっているのがざらです。3年もいれば完全に引き離し症候群にすることは可能です。その点からすれば、今回の判決は画期的速さと言えるでしょう。
この件については、連れ去りではないし通常の別居であることからすると、妥当なのかもしれません。

しかし、国内法ではまだハーグ条約対応の法整備は全くない状態ですし、離婚裁判も子の利益を考えるならば3か月の集中で一審が終わるくらいにしてほしいですし、また親権については裁判員裁判をぜひともやっていただきたいと思います