3月11日は私の誕生日だ。
東日本大震災、それに伴い起きた福島第一原発の非常事態。自分たちがたんに「被害者」であると考えることを、私は避けてきた。「3月11日を、私の、否、私たち日本人の、二度目の誕生日としなければならない」と思ってきた。だがそれは、自分で自分たちの新たな生き方を、見つけ出せればの話である。
あまりにも早く一年が過ぎた。
この一年間、数日に一度は、誰もが気がつく程度の「揺れ」があり、私たちはそれを、「あの日」の「余震」である、という感覚を持って受け止めてきた。私たちの意識はいつも「あの日」に戻る。
私たちにとってまだ「あの日」は終っていない。ではいつ終わるのか。学者たちや政府が指摘するように、まもなく来ると予測されている、あの日の衝撃に劣らない「次の大きな震災」が来るその日まで、私たちは「あの日」の延長を生きているのだろう。
私たちは、「あの日」以来、放射能による「目に見えない汚染」に晒されている。私たちは、この事態に対して正しい対応ができているかどうか、自分たちの国を監視しなければならなくなっている。例えば、日本政府が小児を対象に設定した「外部被爆のみで年間20ミリシーベルトまで許容」の基準がおかしいということを、私たちは強く指摘し続けてきた。
津波の被災地で「この風景は、空襲との違いは人が焼けていないだけだ」と言う高齢者がいた。今回の出来事はおそらく日本にとって、江戸時代から明治時代へと転換する開国、第二次世界大戦後の変革に続く、大きな「変化」であり、私たちはその渦中にある。
東北在住の演劇人たちは、自分の場所に踏みとどまり、地域と演劇の関係を洗いなおし、平常心を保とうとし、表現を続けている。例えば、津波から命からがら逃れ、一時は自分の家に住めなくなり、強いショックを受けて創作活動を停止していたある劇作家は、最近、被災地の子供たちと震災体験をもとにしたミュージカルを上演するほどに、ようやく回復した。
赤十字や日本政府による復興支援の援助は被災地に届いてはいるようだが、そうした被災演劇人たちの演劇活動そのもの、稽古場さえ不足している演劇創作の環境整備、困難を極める作品制作じたいに対する補助はない。あるいは極めて乏しい。ダイレクトに演劇人に届く今回の援助は、そうした「現場」、演劇人の生活と活動の整備に役立てられるはずですあり、たいへんありがたいことである。私が会長を務める日本劇作家協会はその援助を被災地現地の演劇人の皆さんに届ける役割を委託されたわけだが、民主主義と人間の自由を守るために、その任務を確実に果たすことを約束します。ニューヨーク、そして全米の皆さまの厚情、友情に、心から感謝いたします。
(会場で英訳が読み上げられる予定です)
………………………………
※以下、詳細情報
東日本大震災から丸1年となる2012年3月11日、ニューヨーク他アメリカ各地で、『震災 SHINSAI: Theaters for Japan』 と題した企画が開催されます。
被災地の演劇人、劇場などのための支援金の募集を目的とし、日米の劇作家による東日本大震災に絡んだ新作短編戯曲の、公開ドラマリーディングまたは上演を行ないます。
この収益金は、日本劇作家協会に委託され、被災地の演劇関係の現場、演劇人達の活動の支援のための寄付とされます。
[日時] 2012年3月11日
[メイン会場] ニューヨーク:Cooper Union大学内Great Hall http://cooper.edu/about-us/the-great-hall/)
他、同時多発的にアメリカ各地の劇場ならびに大学等。
全米70の団体から参加の申込みがありました。
詳細は下記サイト(英語)でご確認ください。
[サイト] http://tcg.org/shinsai/
以下はメイン会場の内容
出演はMichi Barral, Cindy Cheung, Joel de la Fuenta, Angel Desai, Ann Harada, Mary Beth Hurt, Jennifer Ikeda, Paul Juhn, Peter Kim, Ken Leung, Li Jun Li, Jennifer Lim, Angela Lin, Patti LuPone, Paolo Montalban, Olivia Oguma, Jay O. Sanders, Jon Norman Schneider, Thom Sesma, Sab Shimono, Richard Thomas, Jade Wu, Johnny Wu, James Yaegashi and Stacey Yen
演出は「南太平洋」でトニー賞を受賞したBartlett Sher
Program A は午後3時開演
HE REMAINING 『残された人』/鴻上尚史 By Shoji Kokami, Translated by Aya Ogawa
From A FEW STOUT INDIVIDUALS By John Guare
SAYONARA II 『さようなら Ver.2」』/平田オリザ By Oriza Hirata, Translated by Bryerly Long
CHILD IS FATHER TO MAN By Philip Kan Gotanda
WIND FROM NORTHWEST 『北西の風』/篠原久美子 By Kumiko Shinohara, Translated by James Yaegashi
WHERE WERE WE? By Richard Greenberg
DROPPING BY THE HOUSE 『一時帰宅』/坂手洋二 By Yoji Sakate, Translated by Leon Ingulsrud
THE LENGTH OF THIS PLAY HAS THE HALF LIFE OF URANIUM By Suzan-Lori Parks
Two Songs from PACIFIC OVERTURES adapted for SHINSAI Music and Lyrics by Stephen Sondheim, Book by John Weidman
Program B は午後8時開演
Two Songs from PACIFIC OVERTURES adapted for SHINSAI Music and Lyrics by Stephen Sondheim, Book by John Weidman
HASSAKU 『はっさく』/石原燃 By Nen Ishihara, Translated by James Yaegashi
THE ISABEL WHO DISAPPEARED By Naomi Iizuka
From THE SONIC LIFE OF GIANT TORTOISES 『ゾウガメのソニックライフ』/岡田利規 By Toshiki Okada, Translated by Aya Ogawa
UNDERWATER from CAROLINE OR CHANGE By Tony Kushner and Jeanine Tesori
A GUIDE TO JAPANESE ETIQUETTE By Doug Wright
ABANDON HOME 『ふるさとを捨てる』/鈴江俊郎 By Toshiro Suzue, Translated by James Yaegashi
Charlie痴 Monologue from SEASCAPE By Edward Albee
A PROBLEM OF BLOOD 『血の問題』/坂手洋二 By Yoji Sakate, Translated by Leon Ingulsrud
From THE SKIN OF OUR TEETH Musicby John Kander, Lyrics by Fred Ebb, Book by Joseph Stein
東日本大震災、それに伴い起きた福島第一原発の非常事態。自分たちがたんに「被害者」であると考えることを、私は避けてきた。「3月11日を、私の、否、私たち日本人の、二度目の誕生日としなければならない」と思ってきた。だがそれは、自分で自分たちの新たな生き方を、見つけ出せればの話である。
あまりにも早く一年が過ぎた。
この一年間、数日に一度は、誰もが気がつく程度の「揺れ」があり、私たちはそれを、「あの日」の「余震」である、という感覚を持って受け止めてきた。私たちの意識はいつも「あの日」に戻る。
私たちにとってまだ「あの日」は終っていない。ではいつ終わるのか。学者たちや政府が指摘するように、まもなく来ると予測されている、あの日の衝撃に劣らない「次の大きな震災」が来るその日まで、私たちは「あの日」の延長を生きているのだろう。
私たちは、「あの日」以来、放射能による「目に見えない汚染」に晒されている。私たちは、この事態に対して正しい対応ができているかどうか、自分たちの国を監視しなければならなくなっている。例えば、日本政府が小児を対象に設定した「外部被爆のみで年間20ミリシーベルトまで許容」の基準がおかしいということを、私たちは強く指摘し続けてきた。
津波の被災地で「この風景は、空襲との違いは人が焼けていないだけだ」と言う高齢者がいた。今回の出来事はおそらく日本にとって、江戸時代から明治時代へと転換する開国、第二次世界大戦後の変革に続く、大きな「変化」であり、私たちはその渦中にある。
東北在住の演劇人たちは、自分の場所に踏みとどまり、地域と演劇の関係を洗いなおし、平常心を保とうとし、表現を続けている。例えば、津波から命からがら逃れ、一時は自分の家に住めなくなり、強いショックを受けて創作活動を停止していたある劇作家は、最近、被災地の子供たちと震災体験をもとにしたミュージカルを上演するほどに、ようやく回復した。
赤十字や日本政府による復興支援の援助は被災地に届いてはいるようだが、そうした被災演劇人たちの演劇活動そのもの、稽古場さえ不足している演劇創作の環境整備、困難を極める作品制作じたいに対する補助はない。あるいは極めて乏しい。ダイレクトに演劇人に届く今回の援助は、そうした「現場」、演劇人の生活と活動の整備に役立てられるはずですあり、たいへんありがたいことである。私が会長を務める日本劇作家協会はその援助を被災地現地の演劇人の皆さんに届ける役割を委託されたわけだが、民主主義と人間の自由を守るために、その任務を確実に果たすことを約束します。ニューヨーク、そして全米の皆さまの厚情、友情に、心から感謝いたします。
(会場で英訳が読み上げられる予定です)
………………………………
※以下、詳細情報
東日本大震災から丸1年となる2012年3月11日、ニューヨーク他アメリカ各地で、『震災 SHINSAI: Theaters for Japan』 と題した企画が開催されます。
被災地の演劇人、劇場などのための支援金の募集を目的とし、日米の劇作家による東日本大震災に絡んだ新作短編戯曲の、公開ドラマリーディングまたは上演を行ないます。
この収益金は、日本劇作家協会に委託され、被災地の演劇関係の現場、演劇人達の活動の支援のための寄付とされます。
[日時] 2012年3月11日
[メイン会場] ニューヨーク:Cooper Union大学内Great Hall http://cooper.edu/about-us/the-great-hall/)
他、同時多発的にアメリカ各地の劇場ならびに大学等。
全米70の団体から参加の申込みがありました。
詳細は下記サイト(英語)でご確認ください。
[サイト] http://tcg.org/shinsai/
以下はメイン会場の内容
出演はMichi Barral, Cindy Cheung, Joel de la Fuenta, Angel Desai, Ann Harada, Mary Beth Hurt, Jennifer Ikeda, Paul Juhn, Peter Kim, Ken Leung, Li Jun Li, Jennifer Lim, Angela Lin, Patti LuPone, Paolo Montalban, Olivia Oguma, Jay O. Sanders, Jon Norman Schneider, Thom Sesma, Sab Shimono, Richard Thomas, Jade Wu, Johnny Wu, James Yaegashi and Stacey Yen
演出は「南太平洋」でトニー賞を受賞したBartlett Sher
Program A は午後3時開演
HE REMAINING 『残された人』/鴻上尚史 By Shoji Kokami, Translated by Aya Ogawa
From A FEW STOUT INDIVIDUALS By John Guare
SAYONARA II 『さようなら Ver.2」』/平田オリザ By Oriza Hirata, Translated by Bryerly Long
CHILD IS FATHER TO MAN By Philip Kan Gotanda
WIND FROM NORTHWEST 『北西の風』/篠原久美子 By Kumiko Shinohara, Translated by James Yaegashi
WHERE WERE WE? By Richard Greenberg
DROPPING BY THE HOUSE 『一時帰宅』/坂手洋二 By Yoji Sakate, Translated by Leon Ingulsrud
THE LENGTH OF THIS PLAY HAS THE HALF LIFE OF URANIUM By Suzan-Lori Parks
Two Songs from PACIFIC OVERTURES adapted for SHINSAI Music and Lyrics by Stephen Sondheim, Book by John Weidman
Program B は午後8時開演
Two Songs from PACIFIC OVERTURES adapted for SHINSAI Music and Lyrics by Stephen Sondheim, Book by John Weidman
HASSAKU 『はっさく』/石原燃 By Nen Ishihara, Translated by James Yaegashi
THE ISABEL WHO DISAPPEARED By Naomi Iizuka
From THE SONIC LIFE OF GIANT TORTOISES 『ゾウガメのソニックライフ』/岡田利規 By Toshiki Okada, Translated by Aya Ogawa
UNDERWATER from CAROLINE OR CHANGE By Tony Kushner and Jeanine Tesori
A GUIDE TO JAPANESE ETIQUETTE By Doug Wright
ABANDON HOME 『ふるさとを捨てる』/鈴江俊郎 By Toshiro Suzue, Translated by James Yaegashi
Charlie痴 Monologue from SEASCAPE By Edward Albee
A PROBLEM OF BLOOD 『血の問題』/坂手洋二 By Yoji Sakate, Translated by Leon Ingulsrud
From THE SKIN OF OUR TEETH Musicby John Kander, Lyrics by Fred Ebb, Book by Joseph Stein