Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

舞台上でじっさいにナイフは刺せないが、ピアノはほんとうに弾くことが出来る。

2018-03-30 | Weblog
『ブラインド・タッチ』、あと4ステージ。

終わりに近づくほど混雑が予想されます。
今日の夜の回が、一番余裕があります。

30(金)19:00
31(土)14:00. 19:00
4/1 (日)14:00

ピアノの存在感は、すごいと思う。
ホンモノだからだ。
ホンモノとして使用できるからだ。

舞台に刃物を登場させたとする。
それはホンモノだ。
しかしそれで実際に人間を刺すわけにはいかない。

ナイフは刺せないが、ピアノは弾くことが出来る。
ナマであり、ホンモノである行為を、舞台に出現させることが出来る。

ぜひホンモノを、観てください。

⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯


『ブラインド・タッチ』、公演情報は以下の通りです。

https://www.blind-touch.com


当日パンフレットに掲載している私の文章を、初日ブログに引き続き紹介いたします。

⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯

『ブラインド・タッチ』は、2002年が舞台である。
2002年の夏に脱稿し、秋に上演された。
2002年の物語であることは重要なので、今回の上演にあたって、冒頭に「2002年」という字幕を出そうかとさえ思った。
2002年は、アメリカ同時多発テロの翌年。
世界が新たに不穏な領域に入っていく「前夜」である。
第二次世界大戦の記憶を持つ人たちがまだ社会の中心にいて、戦後の貧困から日本経済が発展していった過程の記憶を多くの人たちが共有していた最後の時代、インターネットの発達等によって「個人」のありようが変貌していく過渡期、と言ってもいい。
百年後の研究者にはその時代背景の推移にこだわっていただきたいものだが、もちろん、そうした背景を背負いながら、人間は、ただ、その人として、裸で、そこにいる。
演劇は、そのことを示すための仕組みを持っている。

2002年、岸田今日子さん・塩見三省さんのコンビに、書いた。
その後、韓国では、盟友キム・カンボの演出により上演。日本公演もあった。出演者は、ユン・ソジョンさんとイ・ナミさんだった。
岸田今日子さん、ユン・ソジョンさん、お二人とも亡くなられた。
いま、高橋和也さん・都築香弥子さんの出演であらためて上演できることは、感慨深い。

『ブラインド・タッチ』は、イギリスの劇作家デヴィッド・ヘア に触発されて書いた戯曲である。デヴィッドは、社会の出来事について批評的なドキュメンタリー演劇を発表すると同時に、ドラマティックなストレート・プレイも書く。共感するところの多い作家だ。
二十年以上前、ロンドンで彼の『スカイライト』初演を観て、私もしっかりとしたストレートプレイを書こうと思った。『エイミーズ・ビュー』を観てそれが決意に変わった。
私はデヴィッドの「バーベイタム・シアター(報告劇)」の新作三部作(『パーマネント・ウェイ』『スタッフ・ハプンズ』『ザ・パワー・オブ・イエス』)を日本で演出している。
8年前、東日本大震災直後のイギリスでの『ブラインド・タッチ』リーディグ初日に、そのデヴィッドから御祝いのFAXをいただいた。ここに一つの円環が成立した、と思った。

『ブラインド・タッチ』は、1971年の「渋谷事件」を背景としている。今も獄中にある星野文昭さんは、明らかに冤罪である。文昭さんと暁子さんの獄中結婚に設定をお借りしているこの劇に携わりながら、私の申し出を承諾してくださったお二人に心から感謝すると共に、文昭さんの一刻も早い解放を願っている。
コメント
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