劇場入り。重い原稿を仕上げてから。今回はきわめてシンプルな舞台である。だが、劇場に入ると驚かれると思う。……未明に吉本隆明氏の訃報。もう三十年以上前、十代の頃は片っ端から読んでいた。吉本氏の洗礼を受けたのは私の世代が最後くらいではないか。その後角川文庫が三部作を出したりしたから、そうでもないかもしれないが。呆れるほど多くの諸先輩が彼の引用、受け売り、孫引きをしていた。『共同幻想論』がなぜ全共闘世代のバイブルと呼ばれたか、一読しただけではさっぱりわからなかった。いろいろと疑問も多かったがやはり三部作は読み応えがあった。「情況」というコトバの位相を変えた人でもある。そして私は『島尾敏雄論』から入ったが、戦後文学のすぐれた案内人でもあった。マルチと言うより、文学と思想の繋ぎ方に独自の存在感があった人だが、『マス・イメージ論』『「反核」異論』辺りからズレてきてしまったと思う。だが、当時は、彼がズレてゆくというまさにそのことの中に、「現実」を読み取ろうとした気がする。その手法がおそらく「吉本流」でもあったはずなのだが。
稽古場最後の日。まだまだやることが多い。というより、どうであるべきかの理解が追いつかないでいた面を埋めなければならない。個人的には共同演出の宿命とも考えられるが、俳優個々がきちんと自己を確立するしかない。〈Viewpoints〉がそういうものだし、その方向でやってきたのだから。あとは劇場でしゃんとしないとどうにもならない。柱が邪魔であった稽古場だったが、特殊なアングルから見るしかないこともマイナスに考えないようにはしてきた。すべてのことには可能性がある。気の持ちようが、ライヴであり続けなければ。……吉祥寺通いが終わるのがなんだか寂しい。武蔵関の日々を入れても三ヶ月近く通っていたからだ。とはいっても、ほとんどが稽古場や劇場から直帰で、いろんなところに寄っていたわけではないのだが。もともと私は田舎者なので大きな街が苦手、ちっょと出かける時でも、新宿や渋谷、池袋よりも吉祥寺に出かける方がいいのだ。……机に向かっても作業が追いつかない。実際、イレギュラーなことが唐突に入ってくるからでもあるのだが。……米軍北部訓練場の返還に伴う東村高江へのヘリパッド移設をめぐり、国が移設に反対する住民2人に対する訴訟の判決で那覇地裁は14日、2人のうち1人に対して「通行妨害の禁止」を命じた。国の基地施策に異を唱える表現行為に対する不当な判決。
芝居に使う「声の出演」パートを録音。今回舞台には出演しない劇団員の大西孝洋、宮島千栄の二人だ。意外と時間がかかる。……稽古場では、二度にわたって通し稽古。ちょっとハードだが、ここは頑張ってもらわないとどうにもならない。……大友良英さんが芸術選奨文部科学大臣賞を【芸術振興】部門で受賞。「プロジェクトFUKUSHIMA!」の活動が対象だという。「国が認める」ということの意味を考えると複雑だが、何も引くことはない。ある意味、国家の側からの「宣戦布告宣言」のようにも思える。大友さんからすれば、「堂々と受けて立つ」ということだろう。……「最年少校長」中原徹校長の大阪府立和泉高校の卒業式で、国歌起立斉唱の際、約60人の教職員が本当に歌っているかどうかを、口の動きでチェック。その結果、3人の口が動いていないとして、個別に校長室に呼びだしたという。国歌起立条例を提案した地域政党・大阪維新の会代表、橋下徹・大阪市長の影響下にあるらしい。憲法に保障されているという以前に当然な「思想信条の自由・表現の自由」はどこへ行った。それにしてもひどい話だ。全国の公立校よ、真似するんじゃないぞ。……で、板挟みの教員はじめ儀式で苦悩する人達のために(?)、「心ならずも「君が代」を歌わざるを得ない状況に置かれた人のための歌」というのを発明した人がいる。「きみが(あ)よおわ」は「kiss me, girl, and your old one」、「ちよにやちよに」は「a tip you need, it is years till you're near this」、「さざれ(で)いしの」は「sound of the dead "will she know」、「い(し)わおとなりて」は「she wants all to not really take」「こけのむ(う)す(う)ま(あ)で」は「cold caves know moon is with whom mad and dead」。これはこれでどうかと思うが……。
http://ha6.seikyou.ne.jp/home/AALA-HOKKAIDO/kiss_me.htm
http://ha6.seikyou.ne.jp/home/AALA-HOKKAIDO/kiss_me.htm
天皇の3/11発言がカットされて報道されたことが物議を醸しているそうだ。天皇が君が代を公式の場で歌わないことを批判する右翼もいるという。どういう解釈なのか知らない。で、維新の会も自民党も「国家元首は天皇」を公約とするそうだ。どうかしている。……稽古場を見学に来て下さる方々。あまりに演技エリアが広くて居所がなくて申し訳ない。……ここ四日間、蒲団で寝たのは二時間だけだ。慣れているからいいのだが。……国連の人種差別撤廃条約の委員会は、在沖縄米海兵隊・普天間飛行場の辺野古移設計画が歴史的な琉球先住民差別に当たる恐れが強いとして、日本政府に対し、人権侵害問題の観点から計画の現状や地元住民の権利を守る具体策について説明を求める異例の質問状を出すという。東村高江のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設のことも指摘されている。日本政府は7月31日までに回答しなければならない。
というわけで五十歳になった。韓国流の数え方だととっくに五十歳になっていて、というか、韓国ではおそらく既に五十二歳にカウントされてしまうのだが。かの国では生まれた時に一歳で、次に正月を迎えるともう二歳という数え方なのである。まあ、半世紀である。フェイスブックなど始めたためか、今までにない数の御祝いメッセージが届いて、劇団員たちも稽古後にケーキなど用意してくれて、なぜかだるま柄の彫られた湯飲みやら肩こりマッサージ器具(アーム付きツボ押し)やらプレゼントもいただいて、ありがたいことである。まあ劇団員にしてみれば、ちょうど一年前『裏屋根裏』通し稽古中に震災に遭遇し、二度にわたって通しが中断したときの衝撃もあって、今ふたたび、その同じ稽古場にいるので、どこか気持ちのリセットというか、持ち直しというか、そういうことに意識が向かっているのではないかと思う。今の稽古は、私としてはとにかく、今回の実験の初期の新鮮さを失わないことと、可能な限りクオリティを上げていくことが主眼である。清水弥生助手に言わせると「サカテさんがいま猛磨き中」。リアンは現在販売中の雑誌「世界」に掲載されている私の文章(震災一年後の特集に寄せた『「一年間」と「水の変容」』)を読んで、「9.11の後、(アメリカでは)すごい勢いで、日常が戻ってきた。でも、内面では何かが変わったかもしれない。だが、その外的に時間のたつ速さと、内面の時間のたつ速さはずれがあった。3.11以後の日本もそうかもしれない。このテキストを読んでこういうことを思った。前を向いているはずなのに、どっかずれている、実は進んでいない、そういう時間感覚。ある日常のひとつひとつの場面をとらえ直して、刻みつけることで、その速さに、ある意味、抵抗する。日常のなかの動きのなかで、美しいと感じる瞬間を作っていきたい。あるいは発見していきたい」という。演出補の明子は「10秒を8分にのばした波の映像を見たことがある。それは、普通に見る波よりも随分違って見えて、美しかった。この部分も、そういう感覚かなと思う」。この部分の稽古のスタートは私が『荷』にどっぷり浸かっていた時だったので、ある程度の話はしてはいるものの、後に清水の克明なノートで稽古場での言葉として再確認できるわけである。その部分は我々が「あの日」と呼ぶ場面になっている。さて、なんにしても新作『ALL UNDER THE WORLD』の上演時間は、一時間半を切る。今まで劇団がやった本公演では一番短いはずである。
公演詳細は以下の通り
http://rinkogun.com/Next.html
公演詳細は以下の通り
http://rinkogun.com/Next.html
3月11日は私の誕生日だ。
東日本大震災、それに伴い起きた福島第一原発の非常事態。自分たちがたんに「被害者」であると考えることを、私は避けてきた。「3月11日を、私の、否、私たち日本人の、二度目の誕生日としなければならない」と思ってきた。だがそれは、自分で自分たちの新たな生き方を、見つけ出せればの話である。
あまりにも早く一年が過ぎた。
この一年間、数日に一度は、誰もが気がつく程度の「揺れ」があり、私たちはそれを、「あの日」の「余震」である、という感覚を持って受け止めてきた。私たちの意識はいつも「あの日」に戻る。
私たちにとってまだ「あの日」は終っていない。ではいつ終わるのか。学者たちや政府が指摘するように、まもなく来ると予測されている、あの日の衝撃に劣らない「次の大きな震災」が来るその日まで、私たちは「あの日」の延長を生きているのだろう。
私たちは、「あの日」以来、放射能による「目に見えない汚染」に晒されている。私たちは、この事態に対して正しい対応ができているかどうか、自分たちの国を監視しなければならなくなっている。例えば、日本政府が小児を対象に設定した「外部被爆のみで年間20ミリシーベルトまで許容」の基準がおかしいということを、私たちは強く指摘し続けてきた。
津波の被災地で「この風景は、空襲との違いは人が焼けていないだけだ」と言う高齢者がいた。今回の出来事はおそらく日本にとって、江戸時代から明治時代へと転換する開国、第二次世界大戦後の変革に続く、大きな「変化」であり、私たちはその渦中にある。
東北在住の演劇人たちは、自分の場所に踏みとどまり、地域と演劇の関係を洗いなおし、平常心を保とうとし、表現を続けている。例えば、津波から命からがら逃れ、一時は自分の家に住めなくなり、強いショックを受けて創作活動を停止していたある劇作家は、最近、被災地の子供たちと震災体験をもとにしたミュージカルを上演するほどに、ようやく回復した。
赤十字や日本政府による復興支援の援助は被災地に届いてはいるようだが、そうした被災演劇人たちの演劇活動そのもの、稽古場さえ不足している演劇創作の環境整備、困難を極める作品制作じたいに対する補助はない。あるいは極めて乏しい。ダイレクトに演劇人に届く今回の援助は、そうした「現場」、演劇人の生活と活動の整備に役立てられるはずですあり、たいへんありがたいことである。私が会長を務める日本劇作家協会はその援助を被災地現地の演劇人の皆さんに届ける役割を委託されたわけだが、民主主義と人間の自由を守るために、その任務を確実に果たすことを約束します。ニューヨーク、そして全米の皆さまの厚情、友情に、心から感謝いたします。
(会場で英訳が読み上げられる予定です)
………………………………
※以下、詳細情報
東日本大震災から丸1年となる2012年3月11日、ニューヨーク他アメリカ各地で、『震災 SHINSAI: Theaters for Japan』 と題した企画が開催されます。
被災地の演劇人、劇場などのための支援金の募集を目的とし、日米の劇作家による東日本大震災に絡んだ新作短編戯曲の、公開ドラマリーディングまたは上演を行ないます。
この収益金は、日本劇作家協会に委託され、被災地の演劇関係の現場、演劇人達の活動の支援のための寄付とされます。
[日時] 2012年3月11日
[メイン会場] ニューヨーク:Cooper Union大学内Great Hall http://cooper.edu/about-us/the-great-hall/)
他、同時多発的にアメリカ各地の劇場ならびに大学等。
全米70の団体から参加の申込みがありました。
詳細は下記サイト(英語)でご確認ください。
[サイト] http://tcg.org/shinsai/
以下はメイン会場の内容
出演はMichi Barral, Cindy Cheung, Joel de la Fuenta, Angel Desai, Ann Harada, Mary Beth Hurt, Jennifer Ikeda, Paul Juhn, Peter Kim, Ken Leung, Li Jun Li, Jennifer Lim, Angela Lin, Patti LuPone, Paolo Montalban, Olivia Oguma, Jay O. Sanders, Jon Norman Schneider, Thom Sesma, Sab Shimono, Richard Thomas, Jade Wu, Johnny Wu, James Yaegashi and Stacey Yen
演出は「南太平洋」でトニー賞を受賞したBartlett Sher
Program A は午後3時開演
HE REMAINING 『残された人』/鴻上尚史 By Shoji Kokami, Translated by Aya Ogawa
From A FEW STOUT INDIVIDUALS By John Guare
SAYONARA II 『さようなら Ver.2」』/平田オリザ By Oriza Hirata, Translated by Bryerly Long
CHILD IS FATHER TO MAN By Philip Kan Gotanda
WIND FROM NORTHWEST 『北西の風』/篠原久美子 By Kumiko Shinohara, Translated by James Yaegashi
WHERE WERE WE? By Richard Greenberg
DROPPING BY THE HOUSE 『一時帰宅』/坂手洋二 By Yoji Sakate, Translated by Leon Ingulsrud
THE LENGTH OF THIS PLAY HAS THE HALF LIFE OF URANIUM By Suzan-Lori Parks
Two Songs from PACIFIC OVERTURES adapted for SHINSAI Music and Lyrics by Stephen Sondheim, Book by John Weidman
Program B は午後8時開演
Two Songs from PACIFIC OVERTURES adapted for SHINSAI Music and Lyrics by Stephen Sondheim, Book by John Weidman
HASSAKU 『はっさく』/石原燃 By Nen Ishihara, Translated by James Yaegashi
THE ISABEL WHO DISAPPEARED By Naomi Iizuka
From THE SONIC LIFE OF GIANT TORTOISES 『ゾウガメのソニックライフ』/岡田利規 By Toshiki Okada, Translated by Aya Ogawa
UNDERWATER from CAROLINE OR CHANGE By Tony Kushner and Jeanine Tesori
A GUIDE TO JAPANESE ETIQUETTE By Doug Wright
ABANDON HOME 『ふるさとを捨てる』/鈴江俊郎 By Toshiro Suzue, Translated by James Yaegashi
Charlie痴 Monologue from SEASCAPE By Edward Albee
A PROBLEM OF BLOOD 『血の問題』/坂手洋二 By Yoji Sakate, Translated by Leon Ingulsrud
From THE SKIN OF OUR TEETH Musicby John Kander, Lyrics by Fred Ebb, Book by Joseph Stein
東日本大震災、それに伴い起きた福島第一原発の非常事態。自分たちがたんに「被害者」であると考えることを、私は避けてきた。「3月11日を、私の、否、私たち日本人の、二度目の誕生日としなければならない」と思ってきた。だがそれは、自分で自分たちの新たな生き方を、見つけ出せればの話である。
あまりにも早く一年が過ぎた。
この一年間、数日に一度は、誰もが気がつく程度の「揺れ」があり、私たちはそれを、「あの日」の「余震」である、という感覚を持って受け止めてきた。私たちの意識はいつも「あの日」に戻る。
私たちにとってまだ「あの日」は終っていない。ではいつ終わるのか。学者たちや政府が指摘するように、まもなく来ると予測されている、あの日の衝撃に劣らない「次の大きな震災」が来るその日まで、私たちは「あの日」の延長を生きているのだろう。
私たちは、「あの日」以来、放射能による「目に見えない汚染」に晒されている。私たちは、この事態に対して正しい対応ができているかどうか、自分たちの国を監視しなければならなくなっている。例えば、日本政府が小児を対象に設定した「外部被爆のみで年間20ミリシーベルトまで許容」の基準がおかしいということを、私たちは強く指摘し続けてきた。
津波の被災地で「この風景は、空襲との違いは人が焼けていないだけだ」と言う高齢者がいた。今回の出来事はおそらく日本にとって、江戸時代から明治時代へと転換する開国、第二次世界大戦後の変革に続く、大きな「変化」であり、私たちはその渦中にある。
東北在住の演劇人たちは、自分の場所に踏みとどまり、地域と演劇の関係を洗いなおし、平常心を保とうとし、表現を続けている。例えば、津波から命からがら逃れ、一時は自分の家に住めなくなり、強いショックを受けて創作活動を停止していたある劇作家は、最近、被災地の子供たちと震災体験をもとにしたミュージカルを上演するほどに、ようやく回復した。
赤十字や日本政府による復興支援の援助は被災地に届いてはいるようだが、そうした被災演劇人たちの演劇活動そのもの、稽古場さえ不足している演劇創作の環境整備、困難を極める作品制作じたいに対する補助はない。あるいは極めて乏しい。ダイレクトに演劇人に届く今回の援助は、そうした「現場」、演劇人の生活と活動の整備に役立てられるはずですあり、たいへんありがたいことである。私が会長を務める日本劇作家協会はその援助を被災地現地の演劇人の皆さんに届ける役割を委託されたわけだが、民主主義と人間の自由を守るために、その任務を確実に果たすことを約束します。ニューヨーク、そして全米の皆さまの厚情、友情に、心から感謝いたします。
(会場で英訳が読み上げられる予定です)
………………………………
※以下、詳細情報
東日本大震災から丸1年となる2012年3月11日、ニューヨーク他アメリカ各地で、『震災 SHINSAI: Theaters for Japan』 と題した企画が開催されます。
被災地の演劇人、劇場などのための支援金の募集を目的とし、日米の劇作家による東日本大震災に絡んだ新作短編戯曲の、公開ドラマリーディングまたは上演を行ないます。
この収益金は、日本劇作家協会に委託され、被災地の演劇関係の現場、演劇人達の活動の支援のための寄付とされます。
[日時] 2012年3月11日
[メイン会場] ニューヨーク:Cooper Union大学内Great Hall http://cooper.edu/about-us/the-great-hall/)
他、同時多発的にアメリカ各地の劇場ならびに大学等。
全米70の団体から参加の申込みがありました。
詳細は下記サイト(英語)でご確認ください。
[サイト] http://tcg.org/shinsai/
以下はメイン会場の内容
出演はMichi Barral, Cindy Cheung, Joel de la Fuenta, Angel Desai, Ann Harada, Mary Beth Hurt, Jennifer Ikeda, Paul Juhn, Peter Kim, Ken Leung, Li Jun Li, Jennifer Lim, Angela Lin, Patti LuPone, Paolo Montalban, Olivia Oguma, Jay O. Sanders, Jon Norman Schneider, Thom Sesma, Sab Shimono, Richard Thomas, Jade Wu, Johnny Wu, James Yaegashi and Stacey Yen
演出は「南太平洋」でトニー賞を受賞したBartlett Sher
Program A は午後3時開演
HE REMAINING 『残された人』/鴻上尚史 By Shoji Kokami, Translated by Aya Ogawa
From A FEW STOUT INDIVIDUALS By John Guare
SAYONARA II 『さようなら Ver.2」』/平田オリザ By Oriza Hirata, Translated by Bryerly Long
CHILD IS FATHER TO MAN By Philip Kan Gotanda
WIND FROM NORTHWEST 『北西の風』/篠原久美子 By Kumiko Shinohara, Translated by James Yaegashi
WHERE WERE WE? By Richard Greenberg
DROPPING BY THE HOUSE 『一時帰宅』/坂手洋二 By Yoji Sakate, Translated by Leon Ingulsrud
THE LENGTH OF THIS PLAY HAS THE HALF LIFE OF URANIUM By Suzan-Lori Parks
Two Songs from PACIFIC OVERTURES adapted for SHINSAI Music and Lyrics by Stephen Sondheim, Book by John Weidman
Program B は午後8時開演
Two Songs from PACIFIC OVERTURES adapted for SHINSAI Music and Lyrics by Stephen Sondheim, Book by John Weidman
HASSAKU 『はっさく』/石原燃 By Nen Ishihara, Translated by James Yaegashi
THE ISABEL WHO DISAPPEARED By Naomi Iizuka
From THE SONIC LIFE OF GIANT TORTOISES 『ゾウガメのソニックライフ』/岡田利規 By Toshiki Okada, Translated by Aya Ogawa
UNDERWATER from CAROLINE OR CHANGE By Tony Kushner and Jeanine Tesori
A GUIDE TO JAPANESE ETIQUETTE By Doug Wright
ABANDON HOME 『ふるさとを捨てる』/鈴江俊郎 By Toshiro Suzue, Translated by James Yaegashi
Charlie痴 Monologue from SEASCAPE By Edward Albee
A PROBLEM OF BLOOD 『血の問題』/坂手洋二 By Yoji Sakate, Translated by Leon Ingulsrud
From THE SKIN OF OUR TEETH Musicby John Kander, Lyrics by Fred Ebb, Book by Joseph Stein
徹夜で原稿。……息子の卒業式には行かず。彼はせっかく遊べる春休みのはずなのだが、最近どうも暇そうにしている。それも今だけだろう。アルバイトの相談などしている。……午前中、新聞の取材を受ける。逆にいろいろ相談される。……稽古は時を惜しまず。小峰公子さんによる歌唱指導。さすがである。……ドナルド・キーンさんが日本国籍所得。日本名の当て字は「鬼怒鳴門」だという。震災後の日本について「率直に言って、がっかりしている」そうだ。申し訳ない。……今日も電車の「人身事故」。最近むやみに多いわけだが。心が荒む春の嵐。……「SHINSAI Theater for Japan」開催のニューヨークへ、メッセージを送る。
アメリカの宇宙気象予報センターによると、太陽表面の巨大な爆発現象「太陽フレア」が発生、放出された電離ガス(プラズマ)などによる太陽嵐が、今現在、そしてこの後も十数時間、地球に届いているという。最近5年間では最大規模の太陽嵐で、通信や送電線網、飛行機の運航などに悪影響を及ぼす恐れがあるという。何も感じないが、そうなのだという。私の原稿が進まぬのは、この太陽嵐の影響に違いない。……ともあれ、稽古へ。3月7日付け読売新聞に燐光群『ALL UNDER THE WORLD 地球は沈没した』の、「人の対話、内面を抽象的に」と題した、リアンのインタビュー紹介記事が載った。彼は「幻影肢」の話は通じにくいかと思っていたらしいが、誰に話しても意外とすんなり受け入れられるようだ。文中、〈坂手のブログと、「500年前の人間は現代の何に一番驚くか」「文明が失われた時、一番寂しいと感じることは何か」などの質問に役者が書いた答えをランダムに構成して台本とする〉とあるが、つまり、この劇の何割かは、みなさんがお読みになっているこのブログの過去の記事から、リアンと俳優たちが選び引用した言葉が、使用されているのである。太陽嵐の話も入れたいような気がするが、今からでは無理かな。
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/stage/theater/20120307-OYT8T00781.htm
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/stage/theater/20120307-OYT8T00781.htm
原稿が進まぬまま、『ALL UNDER THE WORLD』稽古へ。3時間弱しかいられない。……夜は座高円寺、劇作家協会戯曲セミナー。今年度最後の授業。この年度の受講生の皆さんは脱落者も少なく、空気がいい。演劇について考えることがそれぞれにとって意味のある営為なのだ。皆の関心事を聞くにつけ、今を生きる厳しさと、それでも自分たちの世界を見つめようとする個人それぞれの生命力を思う。これからも演劇に関わっていってほしい。
3月6日、東京電力福島第一原子力発電所の事故で、原発から海に流出した放射性セシウム137の総量は最大で5600テラ・ベクレルに上るとの試算を、海洋研究開発機構がまとめたという。1テラの単位は1兆。5600テラ・ベクレルは東電の推計量の約6倍にあたる。同機構では、福島県の沿岸など約500地点で採取した海水のセシウム濃度や、潮の流れなどをもとに、昨年5月7日までにセシウムが移動した経路を模擬計算し、その結果から、海に流出した高濃度汚染水のセシウムの総量は、4200~5600テラ・ベクレルと算出。このほか、同原発から大気中に放出され、雨などによって海に沈着したセシウムは1200~1500テラ・ベクレルとなっている。それを入れたらもっと多いわけだ。海はすっかり汚れてしまった。今も汚染値は落ちていない。流出し続けていることを当局は否定しているが、信ずるに足る根拠はない。……『ALL UNDER THE WORLD』は、海、そして地球についての劇だ。昨年十二月下旬から長い間、本人にとっても未知の領域に踏み込んだというリアン・イングルスルード演出、そして演出補の相澤明子両氏による構築作業を、じっくりと継続してきた。今日の稽古より主導権をバトンタッチされたわけだが、もう大枠は出来上がっている。そしてこの劇は即興のための究極のメソッドと言うべき「VIEWPOINTS」に基づいて、俳優たち自身が手探りで作ってきたものでもある。それらの方向性を尊重しつつ、「上演」に向けて磨き上げてゆくことになる。そう簡単には手に負えぬ仕事だ! だが、迷わずこの共同作業を楽しむことこそが、何よりも近道であると思う。信頼と実践。……かねてから観たかったのに果たせずにいた、震災被災地でその後一ヶ月以内に撮影したというドキュメンタリー映画『大津波のあとに』『槌音』をようやく観る。やはり思ったことは、海、そして地球についてだ。そしてそこに、人は生きている。撮影者である森元監督らの息遣いも伝わってくる。この二本は3月10日(土)~16日(金)、オーディトリウム渋谷でも上映されます。この映画、詳細はまだわからないが、直近に何か賞をもらったらしい。
http://farthe~n.soragoto.net/
http://farthe~n.soragoto.net/
辺野古では基地移設容認派が巻き返し工作に出ている。大城康昌辺野古区長は2日、移設に反対する市民団体が座り込みを続けている「テント村」の撤去を求め、区民763人分の署名を稲嶺進市長に提出した。署名を受け取った稲嶺市長は「話し合いで解決できる方法を模索したい」と応じたが、同席した区民から「早く解決しないと、実力行使をしようという若者も出かねない」といった恫喝まがいの発言も出たという。この大城区長は沖縄の建築界大手の國場組社長らと3日から米国を訪れ、日米合意に基づく辺野古移設推進を米政府などに要請するという。「全ての県民が反対ではないと(米側に)伝える」という。「普天間の危険性除去が何より大切」という詭弁。それにしてもなんでこうなるのか。……矢内原美邦さん、岸田戯曲賞。電話でおめでとうを言う。多才とは、彼女のことである。多忙の人でもある。『荷』の現場ではほとんど仕事モードでしか話していないから、今度ゆっくり御祝いしなきゃ。……それにしてもやることが多すぎる。あらためて時間が足りないと思う。急ぐのみである。……今週は誕生日の週である。『荷』打ち上げで一週間前なのだがサプライズのケーキをいただき(写真の中央がそれです)、フェイスブックなどでも御祝いメッセージが届き始めている。ありがたいことだが、まあこれから数日じわじわと半世紀生きてきたことを思い知らされるわけなのである。
超満員。無事に終わって何より。初日に向けた過酷な日々、徹夜も厭わず作業をしてくださった東京演劇アンサンブルの皆さんに感謝。踏ん張った俳優諸氏、韓国からのお二人もお疲れ様でした。自分の劇団以外の現場で結果を出せたことに安堵する面はあるが、ベストスタッフに恵まれ、多くの方に支えられた上でのことである。一昨年の準備の段階から、いろいろな方にお世話になった。幸福な現場だった。皆さん、本当にありがとう。
森下で稽古。福島第1原発、線量依然高く、2号機の原子炉圧力容器底部で温度計がまた異常値を示し、故障かと取り沙汰されている。現在使用できるのは15個ということだが、そのうち温度は測れなくなるのだろう。数字が信用できないということは、故障していない数値のものが疑われるのも同じだ。……『荷』はいよいよ四日の日曜に千秋楽。
嫌な雨。いろいろ捗らずストレス引き摺り状態のまま稽古へ。自分ながらテキスト作りの停滞に焦る。とにかく今やれることをと思うが正確に状況判断ができていないかもしれないまま進むのも危険だ。ここは我慢、そして踏ん張るしかない。……しかし稽古場を出るのが夜十時、十一時過ぎに帰宅しても「今日は早い」という感覚は、いかがなものか。……さて、いよいよ日曜に千秋楽を迎える『荷』には、こんなところでこんな歌が、という歌が一曲流れる(写真の場面です)。これは現場で私が言い出したときから現場のみんなに違和感があったはずだ。音響サイドも「これは演出家の意向だから」と渋々の状態だったはず。しかし幕が開いて三日ほどでこの曲がみごとになじんできた。これはどういうことか。俳優初心者諸氏にわかりやすい事例だから説明すると、この曲を、その場にいる俳優たちが「聴けてきた」ということなのである。きちんと聴いている肉体が聴こえている状態でリアクションを続けていれば、その場面でその曲も含んだ状態は「成立」している。私の想定したニュアンスもきちんと出ている。演劇が「生き物」であるという所以だ。曲でさえそうである。俳優どうしのやり取りだってそうに決まっているではないか。聴く、感じる、受け取る。作為や嘘が入り込む余地を与えない。演劇とはとにかく、きちんとしたリアクションの集積なのである。そこに演劇という表現の魔法があり、可能性がある。……『荷』を小沼純一さんが評価してくださって嬉しい。小沼さんは日本に於けるジョン・ケージ研究の第一人者でもあるが、私が現在やっと稽古に復帰しているこの『ALL UNDER THE WORLD』は、まさにジョン・ケージ理論を演劇に導入しようとするリアン・イングルスルードの果敢な実験を実体化する場である。ミニマル・ミュージックの考え方を演劇で実践する試行にもなっている。小沼さんに観ていただきたいし、観ていただけると思うと、本当にどきどきする。
やることが多すぎて進まない。椅子で眠りかけたがやはり横になって眠る。……受験を終えた息子がのんびりしている。別段うらやましくはないが。私が相変わらずPHSなのに今日からやつがiPhoneになる。やれやれ。ソフトバンクの宣伝の白い犬の湯飲みやらマグカップやらをもらって帰ってきている。……稽古。……いろいろ要請もあって少し遅れつつ『荷』を観に行く。アフタートークでミファがソウルの日本大使館前の元従軍慰安婦たちの抗議の週一の座り込みがもう二十年、千回に達していることを言う。日本政府も韓国政府も動いてほしい、と。『荷』いよいよ日曜日まで。未見の方はお急ぎ下さい。