秋の日曜の午後、烏山緑道を延々と歩いて蘆花恒春園に行ってきた。
三茶から約1時間半の旅。
今日は、朝から冷え込んで、冬の訪れの近づきを予感させる一日。しかし、ウォーキングにはちょうど良い気候ともいえる。
太子堂から豪徳寺、経堂、と黙々と烏山緑道を歩き続ける。しかし、沿道の風景は柔らかい晩秋の陽を受けてたおやかだ。
長旅を終えて千歳台で環八を渡り、蘆花恒春園に着く。
この公園は明治の文豪、徳富蘆花の旧宅であることはご存知の通り。蘆花の死後、愛子夫人より東京都に寄贈され、遺構は残され、都立公園になった。
蘆花はこの家を求める前年、パレスチナ巡礼の帰路、ヤスナヤ・ポリヤナのレフ・トルストイを訪ね、田園生活に深く憧憬し、当時、東京の遥か郊外、粕谷の地に 土地を求め居を構え、晴耕雨読の生活を送った。その代表作が『みみずのたはごと』である。
まず、公園の林の中の蘆花夫妻の墓に参った。大きな自然石の墓である。蘆花と愛子夫人の生活は実に葛藤に満ちたもので、今の時代からすれば、夫人はよくぞ連れ添ったといえるものだろう。
茅屋や幾つかの別棟の書院はいかにも鄙びた茅葺の家屋だが、このような地と居に暮らした蘆花の生活はさぞ優雅なものであったと推測される。
蘆花居の内部を見る。もちろん今から100年以上前の建物であるから、近代的な設備などあろうはずもなく、恐らくは隙間風吹き込む、田舎家ではあるが、現代のせせこましい暮らしのうさぎ小屋に押し込められている我々からすれば、 夢のような住宅である。
蘆花旧宅の敷地のベンチには若者の男女連れが寄り添って何組か座っている。恋を語っているのであろうか。蘆花公演はその場に相応しいような気がする。
蘆花と公園、住居の詳細の解説については案内板を写真に撮ってきたので参照されたい。
2時半過ぎ、蘆花恒春園を後にし、長い長い道を歩いて、2時間の旅で帰宅した。
茅屋に照りて傾く秋の陽や 素閑