フェイスブックで知り合い、先週の金曜日、イタリア文化会館のフルートリサイタルで面識を得た、イタリア出身でドイツで活躍中のフルーティスト、リタ・ダルカンジェロ女史(Rita D'Arcanjelo)と銀座で夕飯を共にした。
彼女は代表的ナガハラユーザーの一人で、銀座の山野楽器でナガハラが今日、イベントをやっているよ、と伝えて、山野楽器で19時半に待ち合わせた。彼女の楽器は永原完一氏自らがが削った総14金の特注品。そしてリタは最高のナガハラ・ユーザー、ジェームス・ゴールウェイ卿の高弟。
いろいろフルートを試してみたいので、4時ごろ山野へ行ったら、ちょうど彼女もコンサートの伴奏者とスタッフとフルート売り場を訪れていたのに偶然遭遇して挨拶。楽器にかなり興味があるようだ。7時半に待ち合わせることを約して、リタさんはショッピングに。
ナガハラの最新モデルを何本も吹かせてもらったが、素晴らしいの一言に尽きる。オカブが次の楽器を買う金銭的余裕があるとすれば間違いなくナガハラを選ぶだろう。
さて、待ち合わせの時間に会って、先々週、オーストラリアのフルーティスト、ガイ・スカリーズさんとも来た『がんこ寿司・銀座四丁目店』へご入店。最初、店側の手違いで一般席に案内されたが、個室を用意してくれていたのでそちらに移動。
まずは「買い物を楽しんできた?」と水を向けると「銀座はお金が危険ですね」という。「ん?東京にスリは少ないですよ」と返すと、それはジョークでリタの言っている意味は買い過ぎにご注意ということだった。
さて、ミニ懐石『花霞』というのを事前予約していたのだが(がんこ寿司では夜のコース料理は予約が必要)、その日本料理の盛り付けの美しさにリタもいたく感動した模様。ただし、次々と出てくる料理に、さすがの西洋人のリタも量が多すぎたようで、今度はランチをスキップして来ると言っていた。
和牛が食べさせたいので、オプションのしゃぶしゃぶ付きというのを予約していたのだが、このビーフはとろける様だとこれもいたく感動なさっていた。
このがんこ寿司、値段もリーズナブルで、お手軽で、しかし、扱いは丁重で、和風の雰囲気にあふれていて外国人の接待にはお薦めです。
さて、食卓の話題は実に幅広く様々であった。まずは今回のリサイタルの感想から。「あなたは素晴らしいテクニックとソノリテ、そして洗練されたアナリゼをお持ちですね。もったいない隠れた名人だ」と偽らざるところを述べたら「ありがとう」と彼女もまんざらではないのと、隠れた自信があるようだ。
演奏会の内容に触れて、「選曲がいいですね。日本人は不思議と特にハンガリー田園幻想曲が好きです。ヨーロッパではよく演奏されますか?」と聞くと、リタは名曲だと思うがほとんど演奏されない、と答えてくれた。「テクニックを聴かせる曲と、音の美しさを聴かせる曲を取り混ぜて良かったです」と述べた。
「ドイツはイタリアと比べて忙しい国だ。イタリア人はのんびり暮らし過ぎている。でも年金の待遇はドイツよりイタリアのほうがいい。日本の退職者はいい生活をしているんでしょう?」とのご質問に「今の年金世代は幸福でいい生活をしています。でもこれからの世代は不幸になっていくでしょう。理由は年金財源の枯渇です。日本は国の財政赤字が深刻です」と言うと「ヨーロッパと同じ事情だ」と溜息をついていた。
「日本人の持つイタリア人の印象は、『ほら。そこに貴女のハンカチーフが』というような感じです」と言ったら大笑いされていた。
オカブがウィーンに行き、オペラ座の鑑賞のあと、マエストロ・ズービン・メータと食事をしたと語ると、えっ!あのズービン・メータと?!とリタにとってもマエストロは巨匠の様だ。マエストロの印象を聴かれて、「彼は基本的に気難しい人らしいが、会った時はとてもフレンドリーだったよ」と答えた。リタがオペラ歌手では誰が好きか?と聞き、女声ではディアナ・ダムラウ、男声ではサルヴァトーレ・リチートラ、でもセニョールは交通事故で亡くなったけどね、と答えると、えっ!彼は死んだの?とビックリしていた。
「最も尊敬する作曲家は?」との質問に「それは大変答えるのが難しい質問」と。ご尤も。「しかし敢えて挙げればバッハ」とのお答えに納得。こちらも至極ご尤も。音楽、特にフルート音楽を深く分かっていらっしゃる。
その他、様々、話題は尽きないが、リタが明日、大阪に移動し、日本で合計4回のコンサートをこなす忙しさなので、10時半過ぎに店を出た。
リタは来年も来日する計画を練っている。再会を約して、明日大阪に発つリタを見送った。
宴楽し終わりて街は秋冷や 素閑
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