これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

初めての坐禅

2019年05月26日 22時04分43秒 | エッセイ
 私の勤務している高校では、月に2度ほど土曜授業がある。
 休日が日曜日だけだと、たまった家事をこなすだけで手いっぱいだ。トイレ掃除、食料品の買い出し、部屋の片づけ、生協の注文、弁当の仕込み、食事の支度などで一日が終わってしまう。
 でも、この週末は土曜日が休みだった。つまり、土曜も日曜も休めるというわけだ。
「すごいすご~い! 家でゴロゴロしているなんてもったいないよ。どこかに行かなきゃ」
 しかし、5月とは思えぬこの猛暑。高尾山では日焼けしそうだし、秩父では汗だくになりそうだ。静かで涼しくて、美味しいみやげの買える場所はどこだろう。
「そうだ、大船観音。たしか日曜日に坐禅会をやっているはず」
 電話で問い合わせると、初めての人は8時20分までに来ればいいという。
「せっかくだから写経もしようっと。あそこは納経もできるのよね」
 先日、友人のお母さんが亡くなったこともあり、菩提供養を願って写経もした。時間の都合で2枚しか書けなかったけれど、ゼロよりはいいだろう。
 観音様は、大船駅から徒歩5分。しかも早朝だから、坂道を上っても汗はかかなかった。
 思った通り、寺には緑が多く、住宅街よりひんやりしている。蚊に刺されたのは想定外だったが、蚊取り線香を焚いてくれたので、一か所のみの被害ですんだ。
 坐禅の座り方、手の組み方を教わり、ポジションを固定する。
「腕時計やアクセサリーは外してください。靴下も脱いでください。私語は厳禁です」
 細かい注意を受けたのち、まずは30分間チャレンジしてみる。
 ここでは肩をピシッと叩かれることもなく、ただひたすら自分と向き合った。

 コーヒーが飲みたいな。
 お昼は何にしよう。
 おみやげは観音最中ね。何人分買えばいいんだろう。
 帰ったら自転車のタイヤに空気を入れなくちゃ。

 次から次へと雑念が浮かんできた。久しぶりに会った友達とは、話が弾むのと同じかもしれない。普段、忙しさにかまけて自分と対話していない証拠であろう。堰を切ったように、ドッと思考が押し寄せてくる。とうてい「無」になるなんてできない。さらなる誘惑もやってきた。

 意識を飛ばして。
 せっかくだから、前の学校に行ってみようよ。
 ほら、校舎に書かれた文字が見えてきたでしょ。
 入口から中に入るよ。
 廊下を歩いて階段上って、そうそう。

 チーン、チーン、チーン。
 30分経ったことを告げる鈴の音が聞こえてきた。「もう30分経ったのか」と驚いた。無になった時間はゼロで、雑念しかない。私は何をやっているのか。
 足は痺れていなかったから、座ること自体に苦痛は感じない。でも、何も考えずに座ることができない。休憩後の30分間も似たようなものだった。まったく重要でなく、どうでもよくて、取るに足らないことばかりが頭の中をグルグルと走り回っている。家でもできるというから、もっとトレーニングしてから出直した方がいいかもしれない。
 坐禅後は、お茶とお菓子をいただいて参加者たちが交流した。それはそれでよかったけれど、どうにも達成感がない。
 お坊さんや常連さんにお礼を言って別れた。観音様にお参りをしたあとは胎内に納経してひと安心。



 みやげも買った。



 3体入って500円の最中だが、白とピンクはこのお寺でしか売っていないらしい。オシャレではないか~。
 去年、秩父札所に連れて行ってくれた栗本さんは、こんなことを言っていた。
「私は落ち着きがないので、坐禅に向いていません。歩行禅にしています」
 そのときは笑ってしまったが、他人事ではないかもしれない。
 悔しいから、私はもうちょっと頑張ってみます……。


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (10)
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