これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

真犯人

2018年02月25日 20時17分14秒 | エッセイ
 お気に入りのシャンパングラスがある。
 先月、一大イベント終了のご褒美に、シャンパーニュのハーフボトルを買い、ひとりで乾杯した。



 ほろ酔い気分で、使ったグラスを洗っていたら……。
 あらら。



 ポロッという鈍い手ごたえのあと、グラスが台座から外れてしまったではないか。
 なんで~?
 決して、組み立て式のグラスではない。購入したのは2016年だから、古いグラスでもない。
 椿が首から落ちるような外れ方だったから、何かの暗示ではないかと気になっていた。
 うーん、何だろう……。
 2月に入り、ようやく謎が解けた。
 郵便受けを開けると、人間ドックを受診した病院からの封書が届いている。やっと、結果が送られてきたようだ。昨年末に受けたのに、事務作業の遅れから、3週間も待たされたのだ。「おせーよ」と小声で毒づきながら封を開けた。
 なになに。
 総合判定「D 要精検」。
「は? ふざけんなよ」と目を見開く。
 どうやら、胸部レントゲンで肺に影が映ったから、このような判定になったようだ。後日、CTを撮ったら異常なし。よかったけれど、判定を見ただけで寿命の縮む思いがする。
 心電図で引っかかるのはいつものことだ。ドンマーイ!
 胃部X線では「萎縮性胃炎」と書かれている。しょうがない、結果説明を聞きに行くか。
 白血球が少ないのも、いつも通り。
 緊張するのは血糖値である。HbA1Cの値が、去年は5.5であった。甘いものをできるだけ我慢し、食事の前にキャベツの千切りを食べたりしてセーブした結果、下がっていることを期待したのだが……。
 そこに書かれた数値は「5.9」であった。



 グワーッ!
 思わず叫びたくなる。
 なんでなんで??
 こんなに頑張ったのに、どうして悪化しているの?
 あまりのショックに意識もうろうとなりそうだった。だが、そこで天の声が聞こえてきた。

 ほら、ビールよ。

「え? ビール?」

 スパークリングワインも飲んでるでしょ。

「あ、なるほど」
 どういう仕組みかわからないが、ときどき、私にはこういうことが起きる。自分では気づかない内容だけに、ご先祖様か誰かが耳元でささやいて、助けてくれるようだ。いつも女性の声である。
 調べてみると、ビールの糖質は予想以上に多い。スパークリングワインも然り。これでは血糖値が上がるわけだ。しかも、年末は宴会続きで酒量が増えていた。それで、5.9になったのだろう。
 5年前まで、私は赤ワイン派だった。何となく飽きてきて、泡物に移行した時期と、血糖値に悩み始めた時期は一致する。もともと、ご飯や麺類などの主食は控えめだから、パンケーキやパフェなどのスイーツが元凶だと思っていたが、大間違いだった。
 真犯人が見つかってよかった。ビールなど、なくても生きていかれる。でも、スパークリングワインやシャンパーニュは好きなのだ。飲みたくなったら、耐えられるだろうか。

 だからね、グラスを……。

「あ、そういうこと」
 メーカーに連絡すれば、グラスを台座に取り付けてもらえるのだが、血糖値が下がるまでは我慢しよう。
 しかし、私もつきあいがある。まったく飲まないわけにもいかず、エッセイ仲間おススメの秘密兵器を購入した。
 ジャーン!



 今度こそ、今度こそ、本気で血糖値を下げてみせますっ!


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修学旅行は秋葉原

2018年02月23日 20時44分08秒 | エッセイ
 仕事で秋葉原に行った。さっさと用事をすませ、いそいそとガンダムカフェに飛び込む。
 時計は10時30分を回ったところである。早めのランチをすませ、職場に戻るとしよう。
 店の奥まったところには、大型ディスプレイがある。ここで歴代のガンダム映像を延々と流し続けているので、客は映像の見やすい席に座る傾向がある。私も、画面ほぼ正面の2人掛けに座った。
「おや、高校生かな?」
 近くの4人席には、男子高校生らしき3人連れが掛けていた。飲み物はすでにカラ。開店直後の10時頃からいたに違いない。3人とも第一ボタンを外すことなく、ネクタイをシャキッと上げて、身だしなみが整っている。静かに談笑したり、行儀よく映像を見ているところから、地方から修学旅行に来ている生徒ではないかと思った。
「きっと、今日は自由行動の日なのだろう。迷わずアキバを選ぶなんて偉い!」
 さて、この日、私がランチに選んだのは「ガンダムカレー」であった。



 ホワイトカレーなる料理は食べたことがないが、ほどよい辛さでヴェリーグッドだ。
 ガンプラ焼きも食べたかったのだが、しばらく来ないうちに、秋葉原店のメニューからなくなっていた。3カ月前に行った、お台場のガンダムカフェにはあった。でも、ホームページには、「アキバ名物ガンプラ焼き」などと書かれている。
 おい、矛盾しているではないか!
 秋葉原店のガンプラ焼きを復活させるか、「お台場名物ガンプラ焼き」に替えるべきだ。
 しかし、季節限定メニューとして「ガンダムまん」と「シャアザクまん」があったので許すことにした。ガンダムまんは肉まんだが、食後は甘いものが食べたい。あんまんである、シャアザクまんを注文した。



 中はこんな感じ。



 うま~い!
 帰り際に、隣のグッズ売り場をのぞき、フォークを買って機嫌よく出口に向かう。



 秋葉原は、目的がないと何の楽しみも感じられない場所である。私の友人は、夫と息子につき合って秋葉原に来たとき、「オタクすぎて時間をつぶす場所がない」と嘆いていた。彼女には、楽しめる場所がまったく見つけられなかったのだ。
「あれま。あの子たち、まだいるわ」
 店内に目をやると、男子高校生3人組は、同じ場所で同じ姿勢で映像に見入っていた。もう1時間以上もいるのではないか。ニコニコ笑い、楽しそうな表情が印象に残った。
 そろそろ、お台場に移動して、等身大ユニコーンガンダムを見に行くといいよ!


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お雛様がいっぱい

2018年02月18日 21時44分48秒 | エッセイ
 目黒雅叙園のイベント「百段雛祭り」のチケットをいただいた。
 大学3年の娘を連れて行ってきたが、ここには独特のタイムスリップ感が漂っている。



 今年は「近江・美濃・飛騨」がテーマとなっていた。





 エレベーターを下りたところから、お雛様がお待ちかねだ。





 真打はこの先の展示室である。出入口でブーツを脱ぎ、スリッパに履き替えた。
 穴の開いた靴下は、履いてこないようにしましょう。
 いくつか撮影可能スポットもあるので、カメラも用意しましょう。
 さあ、お雛さまツアーの始まり、始まりぃ~!
 百段階段をちょっと上ったところに最初の展示室があった。中に入ると、かなり年季の入ったお雛様が鎮座していたが、どの人形も重々しいオーラを背負っている。
「やだ、このお雛様。怖い」
 娘が拒否反応を起こした。
「だって、お雛様は持ち主の身代わりとなって、災いを受け止めてくれるものなんだよ。厄災を背負ってきたから怖いのかもね」
「ふーん……」
 雛人形のいわれを説明しても、娘は展示室から出てしまった。
「ミキのお雛様の方がずっとキレイじゃん。もう来年は来なくていい」
 あらあら。
 冒頭からこれでは先が思いやられる。
 私は次女ということもあり、雛人形を持っていない。妹も同じだ。わが家にあった雛人形は長女である姉のもの。身代わりはなかったけれど、きっとご先祖様が守ってくれたのだろう。無事に大人になれてよかった。
 二つ目の部屋。人形の衣装も、顔つきも、今風ではないところが新鮮だ。
「ねえ見て。どの人形も首が前に伸びてるよ」
 怖いと言いつつ、娘が新たな発見をして喜んでいる。これが当時の流行だったのか、人形の姿勢が全部前のめりになっていた。すごく貴重なお雛様を見たようで、得した気分である。
 人形たちが身代わりとなって守り抜いたのは、由緒正しい生まれのお姫様に違いない。姫は妻や母となり、やがて寿命を迎えて鬼籍に入る。でも、残された人形たちが、現代まで大事に保存されているのは、役目を果たしたご褒美なのかもしれない。
 人形たちは、相変わらず妖しげな気を発していたが、娘も慣れてきたようだ。撮影可の部屋では、スマホを出してシャッターを切っていた。







 年配の来客もたくさんいた。百段階段は厳しいだろうが、楽しんでいたようだ。
 最上階の展示室が最後だった。下りの展示室はない。スリッパからブーツに戻り、ホテルをあとにした。
 帰りに気づいたのが、「お七の井戸」である。



 お七とは、江戸時代の八百屋お七。
「ああ、火事で避難したとき知り合った男を好きになって、また火事になれば会えると思って放火した人でしょ」
 意外なことに、娘もお七を知っていた。
 ここにも妖気が立ち込めているような……。
 本当は怖い目黒雅叙園?


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2018 バレンタインデー

2018年02月15日 20時16分43秒 | エッセイ
 ひと月前のこと。バレンタインデーに備えて、夫へのチョコを探しにデパートの特設会場まで行ってきた。
 たったの4粒で3000円を超えるような高級品はもったいない。ピンとくるものに出会えず、ここで買うのはあきらめた。しかし、せっかく来たのだから、ソフトクリームくらい食べてもよかろう。



「よし、生協にしよう」
 生協でもバレンタインデーに合わせて、ロイズや六花亭などの商品を取り扱っている。リーズナブルで美味しいから、こちらのほうが喜ぶかもしれない。
 ズバリ、今年は「質より量」作戦である。
 そのまま、2月14日を迎えたわけだ。
「はい、パパ、チョコレートだよ」
「わあい」
 世の男性は、多少なりとも、バレンタインデーを意識するようにできているらしい。たとえ、誰がどう見ても義理チョコにしか見えないものでも、もらえれば嬉しいようだし、もらえないと敗北感に打ちのめされるのだとか。なんとも気の毒である。私は男に生まれなくてよかった。
「どれ、開けてみよう」
 尻尾をフリフリ、夫が包装紙を剥がしていく。散歩に出かける前の犬のように、動きが弾んでいる。



「あ、ロイスだ」
「ロイスじゃなくて、ロイズ」
「そうそう、ロイズ」
 何度言っても、夫はROYCE'をロイスと読む。恥ずかしいヤツだ。
「こっちは、ろっかていか」
 よーし、六花亭。漢字の読み書きは、加齢とともに苦手になったが、食べ物に関連していればおぼえているらしい。
「全部で4つもあった」
「あれ? 5つじゃなかった?」
 数が数えられなくなったのかと焦ったら、一番小さな箱が隅に追いやられていた。こちらも六花亭の商品で、「大地」というセミスィートの生チョコである。



「5つだった」
「でしょ」
「いただきまーす」
 食べるのは家族全員で。夫を差し置いて、誰よりも早く「シュッ」とチョコマロンに手を伸ばす。食べたことがなかったから、どんな味なのか興味があったのだ。しかし、包みをひっくり返して仰天した。
「あ、これ、賞味期限が明後日だぁ」
「えー」



 日持ちのしない菓子とわかっていたら、14日まで待たず、届いた日に開けたのになぁ……。確認もせず失敗した。
「じゃあ、残りはしまっておこう」
 夫がいそいそとフタを閉め、箱を片づけている。エサをもらった犬のように、幸せそうな顔をしていた。
 そういえば、職場でも同じ表情をしていたオジさんがいたことを思い出す。今日は、男女を問わず、同じ部の同僚にコインチョコを配った。還暦を過ぎた大ベテランの男性は、遅れて出勤するとのことだったので、机の上に置いておいた。すると、あとから、わざわざ私の席までお礼を言いに来てくれた。
「笹木さん、たいそうなものをいただいたようで、ありがとうございました」
 深々と頭を下げられると、安物の義理チョコなんぞで申し訳ない気持ちになる。でも、「いいことしたのかな」という達成感もあり、こちらの頬も緩む。
 あら、ワタシ、季節外れのサンタクロースになった気分だわ。


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ドットなマット

2018年02月11日 20時25分13秒 | エッセイ
 22年前、わが家は新築だった。
 ガスレンジもピカピカで、汚れても雑巾でひとふきすればキレイになったものだが、今は違う。
 ベタベタの汚れはまだよい。ガスレンジ用の洗剤で、だいたい落とすことができるから。問題は、積もり積もって盛り上がった油汚れである。ガスバーナーで熱され、ベタベタが乾いて、カサカサのかさぶた状になっている。ナイロンタワシなんぞ歯が立たないし、無理に剥がそうものならフッ素加工ごと取れてしまう。もはや、お手上げだ。
 料理は好きだが、キチャナイ汚れを見るたびにテンションが下がる。「あーあ、ちゃんと掃除しておけばよかったわぁ」と反省するばかりだ。
 しかし、たまたま、いい商品に出会うことができた。
「なになに、ガスレンジマットだって」
 カタログの写真を見てピピッときた。いや、ピピピピピッッぐらいの音だったと思う。可愛らしい柄のマットは、わが家のガス台にちょうどいい気がした。さっそく、メジャー片手にサイズを測ったら、予想通りピッタリではないか。これを敷けば、バッチイ油汚れが見えなくなる。毎日、気分よく台所に立てるぞ。
「よしっ、注文だ!」
 5日後、商品が届いた。



 マットは紙製だが、耐熱加工が施されている。もっとも、炎に近づければ燃えてしまうから、書いてある通りにセッティングしなければならないが。
「ママ、ガス台、掃除しておいたよ」
 おお、なんという幸運。私が出かけている間に、夫がガスレンジの掃除をしてくれた。夫は夫で、洗剤不要の化学雑巾を買ってきたから、ためしに何かを拭いてみたかったようだ。
 キレイなうちに、マットを敷く。付属品に両面テープがあり、四方を固定するようだ。かさぶた状のところを避け、せっせと貼り付けたあとは、五徳を置いて安定させる。



 どうでっす~?
 カタログでは、「宇宙に広がる星」のデザインに見えたのだが、実物は普通の水玉であった。私の母などは、おそらく「ボツボツ」などと言うだろう。
「イボイボ」だろうが「テンテン」だろうが、何でもいいのだ。気に入ったのだから。
 さあさ、楽しく料理しましょう!


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ぐっすり! 快眠大作戦

2018年02月08日 21時06分55秒 | エッセイ
 快眠は私の特技である。
 枕に頭がつくか、つかないかのうちに眠りに落ち、そのまま朝までぐっすり。いびきはかくが、夜中にトイレに起きることはほとんどない。
 しかし、正月が終わり、成人の日以降の一週間は、「不眠」が特技となってしまった。
 暗がりで目覚め、「あれ、もう朝? まだアラーム鳴ってないよね」と気づく。枕元のスマホをONにすると、時間は「0:53」。最初は、「まだ寝られるじゃん、ラッキー」などと呑気に構えていたのだが、布団に潜り込んでまたすぐに目が覚める。時間は「3:18」だ。
 4時台にも起きてしまったのに、肝心の起床時刻5時を迎えたときには、眠くて起きられないという皮肉な現象が何日も続いていた。
「何で寝られなくなったんだろう」と首を傾げながら、眠い目をこすって身支度にとりかかる。まずは、うがいをして水を飲み、冷蔵庫を開ける。いつもなら牛乳を取り出し、すり下ろした生山葵を加えて「わさびミルク」を作るところだが、わさびが残り少なくなっているし、だんだん面倒になってきて、しばらくサボっていた。
「あ、もしかして、わさびミルクを省略したから不眠になったのかな?」
 牛乳は安眠につながるイメージがあり、調べてみようと思い立つ。
 結果からいえば、やはりその通りだった。眠りを誘うホルモンはメラトニンである。メラトニンは、ビタミンB6とトリプトファンを同時にとることで作られるが、分泌までに時間がかかるので、朝食時でなければ意味がない。牛乳にはトリプトファンが、わさびにはビタミンB6が含まれている。決して豊富な量ではないけれど、しっかりメラトニンが作られていたのだろう。
 不眠に悩み、しみじみと眠りの大切さがわかる。
「よし、今日はデパートに寄ろう」
 生山葵はスーパーでは買えない。わさびミルクを再開したその夜から、中途覚醒はなくなった。これまでの睡眠負債がたまっていたせいか、夢を見たおぼえもなく、柔らかな綿の中に背中から沈んでいくように、どっぷり深い眠りにはまっていった。目覚めたときの幸福感が、一日の始まりを明るくさせてくれる。
「ああ、よく寝た。そうだ、ついでに、もっとメラトニンを増やす朝食を考えてみよう」
 すっかり味をしめ、もっと質のよい眠りを追求したくなった。
 朝食は、アルミホイルを敷いた耐熱皿に、切ったピーマン、ポークウインナー、生卵を載せ、オーブントースターで焼くだけだ。後片づけもラクラクでよい。以前は、目玉焼きトーストを作っていたが、胃が重く感じられるので、糖質はカットした。これに玉ネギのみそ汁と、柑橘系の果物も添えていただく。鶏卵とポークウインナーには、トリプトファンとビタミンB6の両方が入っているし、ピーマンと玉ネギにはビタミンB6が含まれている。
「でも、トリプトファンが少ないんじゃないかなぁ」
 冷蔵庫にはナチュラルチーズがあった。乳製品には、トリプトファンが含まれているから、これもかけよう。ゴマもいいらしい。賞味期限が切れているけれど、これもパラパラ。



 もうひと押し、魚系で何かないだろうか? 魚には、トリプトファンとビタミンB6の両方が含まれているものが多いらしい。
「あ、缶詰のさんまの蒲焼きがあったっけ」



 実は、これは私の好物である。3日で1缶くらい食べれば、胃が重くなることもないだろう。
 かくして、豪華な朝食ができ上がった。



 今は、本当によく眠れる。22時を過ぎると、起きているのがツラくなるけれど、日中の眠気はどこへやら。集中力もアップし、仕事のパフォーマンスが上がったような気がする。
 不眠に悩んでいる方、ぜひお試しください!


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ニコライ堂でお祈りを

2018年02月04日 20時42分48秒 | エッセイ
 昨年末のこと。
 ニコライ堂の愛称を持つ、東京復活大聖堂に行った。



 私は祈祷所、礼拝堂など、祈りを捧げる場所が好きだ。家では、1日に何度も祈っているし、神社やお地蔵さんを見つけたら手を合わせずにいられない。

「は? そんなことしたって何も変わらないよ」
 そう思う人は、祈りのパワーを知らないのだろう。私も、以前は、初詣ぐらいしか祈る機会を持たなかった。でも、今は通勤路にお地蔵さんがいるし、スーパーまでの道には神社もある。部屋の中には神社からいただいたお札もあり、日々、あれやこれやと念じている。
 ちなみに、10代のころ夢中だったアーティスト、デュランデュランの曲では「Save a prayer」が好きだったのは偶然ではあるまい。
 働いていると、心ならずも誰かと、あるいは何かと戦う破目になりがちだ。でも、相手の不幸などマイナスなことは祈らない。いつも願いが叶うとは限らないけれど、目を閉じれば心が落ち着き、後ろから私を見守ってくれる気がする。その安心感か、はたまた神の御加護か、いい結果に結びつくことが増えた。



 ニコライ堂の冬季の拝観は午後1時から。時計は午後0時50分を指しているので、周囲をブラブラして時間をつぶしていた。



 それにしても美しい。東京復活大聖堂は、1891年に大主教ニコライが建てさせたものであるが、関東大震災で倒壊したという。その後、府主教セルギイが6年かけて聖堂を復活させて、今にいたっている。
 -私たちはエルサレムからギリシャ、ロシアを経て日本に伝えられた「日本正教会」です-
 いただいたパンフレットにはそう書いてあった。





 内部は撮影できない。ポストカードを購入したので、雰囲気は伝わるだろう。





 金の素材をふんだんに使った祭壇に向かって、祈ることはいつも同じだ。自分の健康、家族の健康、世界の平和……それから、あんなこと、こんなこと。神社でも寺院でも、祈る内容に変わりはない。その方が叶うような気がするから。
 外観は、正面からだとファインダーに収まり切れなかったけれど、ポストカードはキレイに写っている。


 
 ロシアといえば、聖ワシリー大聖堂。とてつもなく色鮮やかで、独特の屋根の形がたまらない。いつか行ってみたいものだ。ただし、冬以外。
 代々木上原には、東京ジャーミィ トルコ文化センターなるモスクがあるらしい。「東アジアで一番美しいモスク」というフレーズの通り、画像を見る限りでは実に華やかだ。イスラム教の寺院に行ったことはないから、「いいなぁ、ここで祈りたいなぁ」という思いがムクムクと膨らんできた。
 よーし、まずはモスクにお邪魔します。


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皆既月食 四苦八苦

2018年02月01日 21時10分59秒 | エッセイ
 1月31日は皆既月食が見られると、ニュースや天気予報などで何度も聞いた。
「でも、前にも見たし、寒いし、今回はいいかな~」
 雲が多いから、切れ間から見える程度かもしれないと報道されたことも、私の「やる気」を奪った。
 いつも通りに食事をし、夕刊を読み、お風呂で温まって寝るはずだったのに、何気なく窓の外を見たのがいけなかった。
「ウソ、ちゃんと月が見えてるじゃない。雲なんかないよ」
 いかん、撮影モードのスイッチが入ってしまった。「撮りたい」と思ったら最後、気がすむまで止まらない。ミラーレスを望遠レンズに交換し、コートも着ないで庭に飛び出した。時間は20時台だったろうか。
「ああ、もう欠けてきているんだ。早いなぁ」
 


 今回の月は、通常より大きな姿で迫るスーパームーンに、青く見えるブルームーン、赤く見えるブラッドムーンが加わり、スーパーブラッドブルームーンと呼ばれるそうだ。別のサイトでは、スーパーブルーブラッドムーンとなっていので、色の序列はないのかもしれない。
 欠けている段階では、色の変化はない。



「月が消えた」と思ったら、赤い色に変化した。「これか!」と気合を入れてシャッターを押したが、軽快な音が出ない。ありり?
 どうやら、画像処理に時間がかかっているようだ。「難しいよ~」と助けを求めている気がする。賢い子ではないのかな? 
 30秒くらい待つと、ブレブレにブレた、みたらし団子のような月の画像ができ上がった。
「やだ~、こんな写真じゃアップできないよ」
 再度挑戦。30秒の待ち時間でカメラを動かすから、ブレてしまうらしい。手持ちで30秒、微動だにせず待てるはずもなく、二重、三重のみたらし団子となるのが悔しい。
「くそう、負けるもんか」
 花火大会のあと、三脚を買わなかったことを後悔した。何度やっても結果は変わらず、一度部屋に戻って暖をとることにする。
「ううう、寒い……」
 こたつで暖まるうちに閃いた。2階のベランダで撮ったらうまくいくかも……。手すりにカメラを置き、三脚代わりにしてから、しつこくチャレンジする。
「よーし、やるぞ!」
 予想通り、ブレの幅が激減した。「もう一回」「もう一回」を繰り返し、何度も嫌がるミラーレスを働かせる。10回目ぐらいに、やっとそれらしい写真が撮れた。拡大するとボロが出るので、小さいサイズにしておこう。



「エライ! よく頑張ったね」
 粘り勝ちだ。うっふっふ~!
 時計は22時20分を回っていた。すっかり遅くなってしまったが、暖かいお風呂に冷え切った体を沈めた。
 早く三脚を買わなくては。


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