子供のとき、私は「大きくなったらお嫁さんになりたい」と思うような女の子だった。
当時はまだ、女性の社会進出が盛んでなかったし、女性は結婚したら家庭に入るのが当然とされていたせいかもしれない。
三食昼寝付きと揶揄された専業主婦だが、ささやかな幸せの象徴にも感じられ、私は好意的にとらえていた。
しかし、主婦の本音を知ると、現実は甘くないことに気がついた。
学生のとき、アルバイト先のコンビニで、同じシフトを組んだ主婦たちがこんな会話をしていた。
「うちのは、最近ずっと飲み続きで帰りが遅いのよ。文句言いたいけど、給料日まで我慢しなきゃって思ってて……」
「いつ給料日なの?」
「明日よぅ」
「じゃあ、あとちょっとじゃない!」
つまり、給料を手渡されるまで、旦那の機嫌を損ねないようにということらしい。
そういえば、私の父も、夫婦ゲンカの度に「誰に食べさせてもらっているんだ!」と、偉そうに怒鳴っていたっけ……。
主婦のひとりが私に向き直り、真剣な顔で話しかけてきた。
「笹木さんは、キャリアウーマンにならなきゃダメよ。収入がないと、家庭内の立場が弱いからね。言いたいことも言えなくなくなるよ」
父親が仕事に専念できるのは、主婦が家事育児を一手に引き受けているからなのに、稼ぎがないというだけで、これほど肩身の狭い思いをするものなのか……。
そういえば、新聞の「人生相談」では、暴力をふるう夫と離婚したいが、経済力がないから我慢しているという内容が多い気がする。
現実問題を突きつけられて、私は愕然とした。
その2年後、当時の彼氏が九州の企業に就職することになった。
「一緒に来てくれないか」と言われたけれども、彼についていったら専業主婦の道しかない。せっかく取った教員免許状をふいにするのは、まっぴら御免だった。
もし、あのとき彼を選んでいたら、どんな人生が待っていたのだろうか。コンビニの主婦たちのように、夫の顔色を伺いながら、愚痴をこぼす毎日だったかもしれない。あるいは、テレビドラマにもなった鬼嫁のように、収入の有無にかかわらず家庭の実権を握り、夫を尻に敷く毎日か……。いや、それはなさそうだ。
今では、退職した夫が専業主夫となり、家事、育児、PTA、地域行事などの役割を引き受け、仕事をする私を支えてくれる。娘の授業参観も夫が行き、娘の友達が遊びに来たときも、夫がおやつを出してもてなすから、私の出る幕はない。
最近、ようやく理解した。
専業主婦になりたかったわけじゃなくて、専業主夫と結婚したかったんだわ、私!!
「ミキちゃんちはお母さんがいないの? って聞かれたよ」と娘からは不評だが、退勤時間を気にせず、帰ってからも「風呂、メシ、寝る」と言うだけの生活は魅力的だ。妻には家にいてほしいという、男性の気持ちがよーくわかった。
ウチの主夫の弱点は、洗濯物である。表と裏を区別できないらしく、タオルも下着も、裏返しでたたむことが多い。つい先日は、自分のブリーフを裏返しのまま履いていた。まだまだ発展途上である。
働く女性に、家庭を守る男性という図も悪くない。
楽しんでいただけましたか? クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
当時はまだ、女性の社会進出が盛んでなかったし、女性は結婚したら家庭に入るのが当然とされていたせいかもしれない。
三食昼寝付きと揶揄された専業主婦だが、ささやかな幸せの象徴にも感じられ、私は好意的にとらえていた。
しかし、主婦の本音を知ると、現実は甘くないことに気がついた。
学生のとき、アルバイト先のコンビニで、同じシフトを組んだ主婦たちがこんな会話をしていた。
「うちのは、最近ずっと飲み続きで帰りが遅いのよ。文句言いたいけど、給料日まで我慢しなきゃって思ってて……」
「いつ給料日なの?」
「明日よぅ」
「じゃあ、あとちょっとじゃない!」
つまり、給料を手渡されるまで、旦那の機嫌を損ねないようにということらしい。
そういえば、私の父も、夫婦ゲンカの度に「誰に食べさせてもらっているんだ!」と、偉そうに怒鳴っていたっけ……。
主婦のひとりが私に向き直り、真剣な顔で話しかけてきた。
「笹木さんは、キャリアウーマンにならなきゃダメよ。収入がないと、家庭内の立場が弱いからね。言いたいことも言えなくなくなるよ」
父親が仕事に専念できるのは、主婦が家事育児を一手に引き受けているからなのに、稼ぎがないというだけで、これほど肩身の狭い思いをするものなのか……。
そういえば、新聞の「人生相談」では、暴力をふるう夫と離婚したいが、経済力がないから我慢しているという内容が多い気がする。
現実問題を突きつけられて、私は愕然とした。
その2年後、当時の彼氏が九州の企業に就職することになった。
「一緒に来てくれないか」と言われたけれども、彼についていったら専業主婦の道しかない。せっかく取った教員免許状をふいにするのは、まっぴら御免だった。
もし、あのとき彼を選んでいたら、どんな人生が待っていたのだろうか。コンビニの主婦たちのように、夫の顔色を伺いながら、愚痴をこぼす毎日だったかもしれない。あるいは、テレビドラマにもなった鬼嫁のように、収入の有無にかかわらず家庭の実権を握り、夫を尻に敷く毎日か……。いや、それはなさそうだ。
今では、退職した夫が専業主夫となり、家事、育児、PTA、地域行事などの役割を引き受け、仕事をする私を支えてくれる。娘の授業参観も夫が行き、娘の友達が遊びに来たときも、夫がおやつを出してもてなすから、私の出る幕はない。
最近、ようやく理解した。
専業主婦になりたかったわけじゃなくて、専業主夫と結婚したかったんだわ、私!!
「ミキちゃんちはお母さんがいないの? って聞かれたよ」と娘からは不評だが、退勤時間を気にせず、帰ってからも「風呂、メシ、寝る」と言うだけの生活は魅力的だ。妻には家にいてほしいという、男性の気持ちがよーくわかった。
ウチの主夫の弱点は、洗濯物である。表と裏を区別できないらしく、タオルも下着も、裏返しでたたむことが多い。つい先日は、自分のブリーフを裏返しのまま履いていた。まだまだ発展途上である。
働く女性に、家庭を守る男性という図も悪くない。
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「うつろひ~笹木砂希~」(日記)