隅田川花火大会のため、今年は屋形船のツアーに申し込んだ。
花火は7時過ぎに始まるが、水上でも場所取りがあるらしい。集合は2時である。
2時半に屋形船に乗り込み、早くも夕食をとる。
アナゴがとても美味しかった。
刺身も豪華である。
つづいて天ぷらが運ばれてきて、お腹がどんどん重くなっていく。
「今日は屋形船が200艘くらい出てますよ」
船主の言葉通り、隅田川にはたくさんの船が浮かんでいた。
「あそこに、第一会場の花火があります。あれを打ち上げるんですよ」
写真で見たことはあるが、どの花火も大きい。花火師の腕の見せどころであろう。
「正面にはスカイツリーが見えます。お写真をどうぞ」
せっかくだから、一枚撮っておいた。
4時半頃には、花火の見やすい場所で錨を下ろし、ジッと開会を待つ。
「あと2時間半ありますが、飲み放題もありますし、お休みになっても結構ですからお待ちください」
添乗員もあれこれ気をつかい、大変そうだった。
私は仕事を持ってきていたので、時間を有効に使うことができた。相席になった2組のご夫婦は、どちらも品がよく、すぐに仲良くなれてよかった。ときおり会話に参加し、あとはマイペースで仕事をする。結構有意義な2時間半だったと思う。
「それでは皆様、座布団を持ってデッキにお上がりください」
7時ちょっと前になると、花火見物の準備をする。船の屋根にはデッキがあり、建物などに遮られることになく花火を楽しめる特等席である。早く始まらないかとワクワクして待った。
7時5分。時間通りに最初の花火が上がる。
「わあ、すごい!」
あちこちから歓声が上がり、花火大会がスタートした。
いろいろな花火が打ち上げられ、夜空の彩りを楽しむことができた。
15分ほど経ったころだろうか。手に雨粒が落ちてきた。
「雨?」
パラパラといった程度だが、デッキの上では隣近所でざわめきが起き始めた。
なにしろ、天気予報では、夕方から雷雨と言っていたのだから……。
雨粒にはお構いなしに、花火が上がる。
「うわ、結構降ってきた」
雨は、パラパラからポツポツに変わり、だんだん粒が大きくなってきた。お年寄りを中心に、早々と船内に引き上げる客も出始めた。
私は傘を広げ、「もうちょっと」と粘る。
ドーン、ドドーン。
さきほどまで、火薬の煙で花火が霞んでいたのに、雨で視界がよくなっている。
花火は何事もなかったかのように打ち上げられ、天高く舞い上がっては鮮やかな花を咲かせていた。
まだまだ、と思っていたが、雨粒が痛く感じられてきた。
ドドドドドッ!
銀玉鉄砲のような水滴に、そろそろ限界かと悟った。
「戻ろうか」
隣の娘に声をかけ、船内に避難することにした。私たちが最後である。
花火が見られないのは残念だが、体を壊しては元も子もない。雨には勝てないと察した。
雨音はどんどん大きくなり、土砂降りになったようだ。
「えー、花火大会は中止になったそうです」
しばらくしてから、船主が両方の眉毛を下げて報告した。たったの30分しか打ち上げていない。
船内には脱力感や疲労感が漂い、誰もが肩を落としていた。決して安くはないツアーだが、荒天とあっては諦めるしかない。私の席では「残念会」と称して、ビールで乾杯が始まった。もちろん、私も飲んだ。
「こういうことは珍しいので、今日はぜひ、宝くじを買ってお帰りになってください」
船主の軽妙なトークに、船内が和む。
まあ、こういうこともあるんだな……。
花火見物の客はガッカリだが、打ち上げられなかった花火を作った人たちもガッカリだろう。
何事もあきらめが肝心だけど。
ちなみに、宝くじは買わなかった。億万長者への道を逃したかもしれない。
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
花火は7時過ぎに始まるが、水上でも場所取りがあるらしい。集合は2時である。
2時半に屋形船に乗り込み、早くも夕食をとる。
アナゴがとても美味しかった。
刺身も豪華である。
つづいて天ぷらが運ばれてきて、お腹がどんどん重くなっていく。
「今日は屋形船が200艘くらい出てますよ」
船主の言葉通り、隅田川にはたくさんの船が浮かんでいた。
「あそこに、第一会場の花火があります。あれを打ち上げるんですよ」
写真で見たことはあるが、どの花火も大きい。花火師の腕の見せどころであろう。
「正面にはスカイツリーが見えます。お写真をどうぞ」
せっかくだから、一枚撮っておいた。
4時半頃には、花火の見やすい場所で錨を下ろし、ジッと開会を待つ。
「あと2時間半ありますが、飲み放題もありますし、お休みになっても結構ですからお待ちください」
添乗員もあれこれ気をつかい、大変そうだった。
私は仕事を持ってきていたので、時間を有効に使うことができた。相席になった2組のご夫婦は、どちらも品がよく、すぐに仲良くなれてよかった。ときおり会話に参加し、あとはマイペースで仕事をする。結構有意義な2時間半だったと思う。
「それでは皆様、座布団を持ってデッキにお上がりください」
7時ちょっと前になると、花火見物の準備をする。船の屋根にはデッキがあり、建物などに遮られることになく花火を楽しめる特等席である。早く始まらないかとワクワクして待った。
7時5分。時間通りに最初の花火が上がる。
「わあ、すごい!」
あちこちから歓声が上がり、花火大会がスタートした。
いろいろな花火が打ち上げられ、夜空の彩りを楽しむことができた。
15分ほど経ったころだろうか。手に雨粒が落ちてきた。
「雨?」
パラパラといった程度だが、デッキの上では隣近所でざわめきが起き始めた。
なにしろ、天気予報では、夕方から雷雨と言っていたのだから……。
雨粒にはお構いなしに、花火が上がる。
「うわ、結構降ってきた」
雨は、パラパラからポツポツに変わり、だんだん粒が大きくなってきた。お年寄りを中心に、早々と船内に引き上げる客も出始めた。
私は傘を広げ、「もうちょっと」と粘る。
ドーン、ドドーン。
さきほどまで、火薬の煙で花火が霞んでいたのに、雨で視界がよくなっている。
花火は何事もなかったかのように打ち上げられ、天高く舞い上がっては鮮やかな花を咲かせていた。
まだまだ、と思っていたが、雨粒が痛く感じられてきた。
ドドドドドッ!
銀玉鉄砲のような水滴に、そろそろ限界かと悟った。
「戻ろうか」
隣の娘に声をかけ、船内に避難することにした。私たちが最後である。
花火が見られないのは残念だが、体を壊しては元も子もない。雨には勝てないと察した。
雨音はどんどん大きくなり、土砂降りになったようだ。
「えー、花火大会は中止になったそうです」
しばらくしてから、船主が両方の眉毛を下げて報告した。たったの30分しか打ち上げていない。
船内には脱力感や疲労感が漂い、誰もが肩を落としていた。決して安くはないツアーだが、荒天とあっては諦めるしかない。私の席では「残念会」と称して、ビールで乾杯が始まった。もちろん、私も飲んだ。
「こういうことは珍しいので、今日はぜひ、宝くじを買ってお帰りになってください」
船主の軽妙なトークに、船内が和む。
まあ、こういうこともあるんだな……。
花火見物の客はガッカリだが、打ち上げられなかった花火を作った人たちもガッカリだろう。
何事もあきらめが肝心だけど。
ちなみに、宝くじは買わなかった。億万長者への道を逃したかもしれない。
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