これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

楽しい文化祭♪

2012年09月30日 17時38分18秒 | エッセイ
 娘の高校では、この週末が文化祭となっている。学校行事には、なるべく顔を出したい。
「お母さん、来るの? ミキが担当する時間は午後だけど、何時にする?」
「朝から行くよ」
「じゃあ、会えないかな。でも、ミキのクラスは絶対見ていってね!」
 娘のクラスでは、「場所探し」というイベントをしている。国内、国外のメジャーなスポットの写真を持ち寄り、来客に当ててもらうゲームだ。何日か前に、娘から「どこの写真にしよう」と相談され、登呂遺跡の写真をプリントアウトしたばかりである。



 しかし、吉野ケ里遺跡が発見されて以来、登呂遺跡はマイナースポットになったようだ。私が使った教科書には、弥生時代の住居として登呂遺跡が載っていたのに、今の教科書や資料集は、吉野ケ里遺跡ばかりになっている。写真を持って行っても、「何これ? どこ?」という反応だったらしい。

 文化祭当日がやってきた。校門をくぐると、受付生徒が「おはようございます」と感じよく挨拶してくれた。
 パンフレットを受け取り、校内をブラブラと歩く。まずは、近場にある鉄道研究会の部屋から入ってみた。鉄道の写真や模型がズラリと並び、鉄ちゃんパワー全開の展示である。打ち込めるものがあるのは幸せだ。
 華道部の展示もよかった。数は少ないけれど、どの作品も上手にまとまっており、写真に撮らせてもらった。部屋にいた女の子たちと言葉を交わし、礼を言って部屋を出た。
 次に、お化け屋敷の呼び込みにつかまった。まだ早い時間だったので、客がいないのだろう。お化け屋敷は小道具、大道具作りが大変なのだが、このクラスは時間が足りなかったようで、恐怖を感じるほどの出来栄えではない。残念なような、ほっとしたような……。
 そして、ようやく娘のクラスにたどり着いた。
 「じゃあ、この紙に場所を書いてください」
 受付の男の子から鉛筆と解答用紙を受け取り、写真の貼ってある場所に進む。写真の上には番号が書かれており、同じ番号の解答欄に答えを書き込む仕組みだ。フジテレビ、首里城、雷門、金閣寺など簡単なものもあるが、全然わからないものも多い。わからないものは空欄にして、わかるものだけ答えを記入した。ちなみに、登呂遺跡は「難関」と書かれた写真に含まれていた。
 「終わりましたか。丸つけします」
 解答用紙を渡すと、受付の男子が集団で採点を始める。まだ作業に慣れていないようで、相談しながら丸をつけていた。
 途中で、一人の男子が声を上げた。
「あっ、登呂遺跡って書いてある。天才だ!!」
 私が、噴き出さないようにするために、どれほど苦労したか……。
 そりゃあ、自分で撮ったのだからわかって当然なのだが、男の子たちはそれを知らない。可愛いもんだ。
 「じゃあ、ここから好きなものをお持ちください」
 私の答案は半分が空欄だった。どうやら、出来不出来に関係なく、参加者全員に景品を配っているらしい。遠慮なく、ドーナツ型のメンディングテープをいただいた。



 一通り校内を見たあとは、家に帰った。
 帰りの電車の中で、再び「天才だ!!」という言葉を思い出した。「くくくくくっ」と笑いそうになったが、息を止め、下を向いて、変な人にならぬよう頑張った。
 また来年も行ってみよう。


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芥川の鏡

2012年09月27日 20時09分12秒 | エッセイ
 美容院で、細い鏡がついた携帯ストラップをもらったことがある。職場の引き出しにしまっておけば、おにぎりを食べたあと、口に海苔がついていないかのチェックができるし、鼻がテカっていないかを確かめることもできる。色気もへったくれもない使い道だが、とても便利だった。
 しばらく使うと金具が壊れ、ストラップはゴミ箱行きになった。軽い気持ちで捨ててしまったが、鏡がなくなると如何に困るか、わからなかったのだ。
 ある日、仕事中、目に異物感を覚えた。私のまつ毛は、長くもないのによく抜ける。そして、抜けたまつ毛は、大きくない目によく入る。チクチクゴロゴロしたときは、たいてい白目に短い毛が貼りついていることが多い。
 どれ見てみようと携帯を取り出したものの、そこに鏡はなかった。ゴロ目は待っていてくれない。不快感が押すな押すなと殺到し、とうとう我慢できなくなった。
 ものぐさな私は、動くのがイヤで席を立たない。座ったまま、手の届く場所に、鏡に代わるものはないだろうか。机の上や中を探してみたら、銀色のスプーンが目についた。



 背を顔に向ければ自分が映る。だが、丸くカーブしているため目が上に寄り、鼻は芥川龍之介の小説に登場する僧、禅智内供(ぜんちないぐ)のように長い。とどめは、しもぶくれになった顎のない輪郭だ。ひどく滑稽な姿に悲鳴を上げそうになった。
 ひっくり返し、凹んだ面に映してみると、上下が逆になり逆立ちしている私がいる。まったく、わけがわからない。
 ようやく、私は重い腰を上げ、トイレの鏡に向かった。やはり、白目にまつ毛がへばりついている。慎重に指を触れ、どうにか取り除いた。
 これにて一件落着!
 それにしても、スプーンを通した顔の悲惨だったこと……。
 20年後、鏡に映る私が、『羅生門』のオババみたいにならぬよう、身なりには十分気をつけよう。


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70歳になったら

2012年09月23日 20時01分38秒 | エッセイ
 4カ月ぶりで母に会った。
「このベスト着る? いいと思ったら、若向きだったんだよ」
 母は、ビニールに包まれたままの黒いベストを取り出し、私に勧めた。
「ベスト?」
 チョッキ、と言われなくてよかった。
 70歳の母が好むデザインは、たいてい私の好みではない。野暮ったかったり、肌触りが悪かったりで、結局はこっそり捨てる破目になる。だが、涼しい秋は、チョ……ではなくベストが欲しくなる。部屋着にする分には、地味でも問題ない。役に立つ予感がしたので、私はお礼を言って受け取った。
 ひとまず、袋から出し、タンスにしまっておく。
「寒ッ」
 今日は、東京でも半袖ではいられないほど、気温が低かった。久しぶりに、長袖のTシャツを出す。それでも、肩のあたりが冷える感じがした。

 そうだ、あのベストを着よう!

 意外に早く、出番がやってくるものだ。早速タンスから取り出し、Tシャツの上に重ねてみた。



 結構かわいい。
 そして、肩も背中もポカポカして、安心感が生まれてくる。これは気に入った。
 母に感謝である。
 おそらく、母は裾のフリフリを「年甲斐もない」と感じたのではないだろうか。でも、おばあさんが着ても悪くない気がする。思い切って着てみれば、気持ちが若返ってよかったかもしれない。
 今度、母にお返しとして、明るい色でフリフリなしの服をプレゼントしてみよう。
 年寄り染みた固定観念から解放され、あと20年は元気でいてほしい。
 今度は妹に、「砂希からもらったんだけど、着てくれない?」なんて言ってたりして……。


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ガンプラの館

2012年09月20日 20時38分44秒 | エッセイ
 今週、甥が12歳、姪が10歳の誕生日を迎えた。
 誕生会に招かれ、夫と娘を連れて妹宅へ向かう。妹の家は、去年新築したばかりなので、まだピカピカだ。間取りも広く、トイレや洗面所は1階と2階にあるし、子供部屋はもちろん、祖父母用のゲストルームまである。
「お誕生日おめでとう~!」
 甥と姪に誕生祝いを渡すと、2人とも、はにかみながら手を出した。
「ありがとう」
「ありがとう」
 今年のプレゼントは現金だ。欲しい物が「ガンプラ」だというので、自分たちで好みのものを選んでもらえばいい。
 妹宅に来たのは4カ月ぶりだ。リビングを見渡すと、棚の中に飾ってあるガンプラを見つけた。
「あっ、ガンプラがある! 見せて見せて」
「いいよ」
 甥が得意気にガラス戸を開けた。








 どうやら、義弟と甥、姪の3人で組み立てたらしい。
 特に私が魅かれたのは「ジオング」だ。



 自在に伸びる手を、上手く再現している。私も欲しい。


  (映画パンフレットより)

「すごいね! いっぱいあるじゃん」
 私が感動していると、義弟が涼しい顔で答えた。
「……2階には、あと50個くらいあるよ」
「えっ、見たい!!」
 義弟と甥、姪に案内され、私と娘はドタドタと階段を上っていった。
「ほえ~~~!」
 言われたとおり、その部屋には、かなりの数のガンプラが並んでいた……。

















 まさか、ガンプラ部屋まであるとは!!
 私はすっかり度肝を抜かれ、しばしその場に立ち尽くしていた……。
 
 よし、決めた! 私もガンプラコレクションに協力しよう!

 これからは、クリスマスもお正月も誕生日も、すべてガンプラ代を渡すのだ。
 前に地図を見ていたら、「世田谷代官屋敷」という施設を見つけたことがある。
 妹宅もゆくゆくは、「さいたまガンプラ屋敷」として、一般公開できるかもしれない。


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風が吹いたら文章修業

2012年09月16日 23時23分14秒 | エッセイ
 文学科に進んだ教え子は、文章修業の最中である。
「トレーニングのひとつに、短い文章を膨らます、という課題があるんです。たとえば、『風が吹き、嵐がやってきた』であれば、必ずその言葉を入れて、短編を作らなければなりません」
 私は、こういうトレーニングが大好きだ。早速、自分でもやってみた。

 先月、携帯電話を買い換えた。スマホではなく、ガラケーと呼ばれる普通の携帯だが、操作が難しいことには変わりない。メールや電話帳など、できるようになるまで苦労した。
 余計な機能がたくさんついているせいか、電池の消耗も激しい。以前のものは、電池の持ちが驚異的に長く、日に何度かメールする程度であれば、3週間から4週間充電せずにすんだ。ところが、新しい携帯はそうではない。色は黒、チェックの布地で男性的なデザインだというのに、まったくスタミナない。充電して電池残量が100%となっても、1時間も経てば95、夜になれば80と、じわじわ目減りしていく。まるでカウントダウンだ。せいぜい5日しか持たず、実に気に入らない。
「お母さん、普通の人は毎日充電しているんだよ。5日持てば十分じゃない」
 私の不満に、高2の娘は耳を貸さないが、ちょくちょく充電するのが面倒なのだ。ドコモからもらったガイドブックを見て、「何とかならないかなぁ」と調べてみた。すると、「サポートガイド」という冊子に、「電池を長持ちさせる方法があります」との吹き出しを見つけた。読むと、以下のようなことが書かれていた。
 1.ecoモードに設定する
 2.画面の明るさを控えめにする
 3.自動消灯時間を短くする
 4.GPS機能をオフにする
 5.ネットワーク設定を「3G」に設定する
 加えて、電話の傾きに反応するモーションセンサーをオフにすれば、電池の持ちがさらに伸びるらしい。すべて設定してみたら、1週間持つようになった。

 やったね!

 以後、週の初めに充電し、土曜や日曜は電池残量15とか6という状態で過ごすサイクルができあがった。
 ちょっと前に、絵画を見に行ったときのことだ。地味なのに、気になる絵が目にとまった。作者の愛犬と思しき、可愛い柴犬が描かれていた。目が、嵐の二宮くんに似ている気する。柴犬を飼っている同僚に写メしようと思い、私は携帯を取り出した。
 電池残量を見ると「9」となっている。



 カメラを起動させるため、ボタンを押したとき、思いがけないことが起きた。
「電池残量が足りません」
 どうやら、携帯は腹ペコで動けなかったらしい。
 お出かけのときには、たっぷり充電してやってから連れてきたほうがよさそうだ。

 課題の文は短いが、私が書きたいことではないから、挿入するのに多少苦労した。
 まったく原型をとどめない文に仕上げるほうが、だんぜん面白い。
 またやってみたい。


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誘いがいのない女

2012年09月13日 21時08分06秒 | エッセイ
 先月、ひょんなことから二科会の役員さんに会う機会があり、二科展の招待状をいただいた。



 美術鑑賞は大好きだ。「絶対行くぞ~!」と楽しみにして開催を待った。
 そして、ようやく国立新美術館に行く日が来たのだが……。

 大変、招待状がない!!

 どこにしまったか、まったく記憶がない。クリアファイルの中、バッグの中など、心当たりを片っ端から探してみる。せっかくいただいたのに、なくすとは何たる失態か。役員の方に申し訳なくて、一生懸命探した。結果、20分後に見つけることができた。
 バンザーイ!
 二科展は、絵画の他に彫刻、デザイン、写真がある。まずは1階の部屋に入ってみた。
「こんにちは」
「こんにちは」
 受付の方と挨拶を交わし、招待状を差し出す。案内図や出品者一覧をもらい、会場に入った。



 まずは彫刻からだ。力作ぞろいで、見るだけではもったいないと感じた。近くの係員に声をかけてみる。
「あのう、写真撮影はできますか?」
「はい。スナップ写真程度でお願いします」
 デジカメを持ってきた甲斐があった。気に入った作品を次々に撮り、絵画へと進んだ。
 一番目立つ場所に、福島の子供たちが描いた作品が飾られている。



 柔らかなタッチや明るい色づかいが「希望」や「再生」を連想させ、胸が熱くなった。いい絵だ。
 彫刻は1階だけだったが、絵画は数が多く、1階から3階に渡って展示されている。会場の広さに迷いながら、順番に見ていった。
 細部までを忠実に再現した風景画が目に留まる。描き手の優れた観察力と、巧みな筆づかいに感心した。次は、イラストのようにデフォルメされた外国の街並みに魅かれる。写真と違い、作者のフィルターを通した景色が心地よい。
 私は絵画の魅力を考えてみた。彫刻と違い、二次元の世界でありながら、見事な立体感を表現する技術や、シャッターを押すだけの写真と違い、自らの指で線を描き、色を塗るプロセスに感動するのだ。どの作品にも、作者の想いが込められていて、大きなエネルギーを感じる。
 たくさんの絵を堪能したら、仕事で消耗した体が充電できた。
 お腹のほうも充電しなくては。



 すっかり元気になって、家に帰った。
 しかし、大事なことに気がついた。

 しまった、役員さんの絵を見るのを忘れた!!

 こともあろうに、私は招待状をくれた二科会の役員さんの絵を見損ねたのだ。
 大失敗……。
 誰か、写メしてくれませんか~!?

☆追記☆
 心機朗さんのコメントに刺激を受け、2度目の二科展に行ってまいりました!
 後ろ暗い想いで過ごすより、「エイヤッ」と出かけたほうがいいですよね。
 役員さん、ちゃんと見せていただきましたよ。
 ありがとうございました。


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宿題クッキング

2012年09月09日 14時28分38秒 | エッセイ
「お母さん、今日の夕飯はミキが作るから教えてね」
 高1の娘が家庭科で、昼食か夕食を作り、感想を書いて提出という宿題を出されたらしい。普段は、娘に家事を手伝わせることがない。何しろ手際が悪いものだからイライライして、自分でやったほうが早いと思ってしまうのだ。前から「これではいけない」と感じていたし、ちょうどいい機会だと思った。
「じゃあ、ミキにもできそうなメニューを考えてみよう」
「よろしく」
 冷蔵庫をのぞくと、使いかけのカボチャがある。それから、パンが食べたくなってきた。

 よし、今夜は蒸し鮭とエノキの炒め物、カボチャのポタージュ、茹でたオクラで決まりだ!

 夕方、娘と台所に立ち、夕食の準備に取りかかる。
「じゃあ、最初にオクラを茹でよう」
「お湯を沸かせばいいの?」
「沸くまでの時間に、オクラを洗ってザルに入れるんだよ」
「ふーん。エノキや玉ねぎも切っておくといいんだね」
「そうそう」
 娘は、包丁を材料に押しつけて切るので、かなりモタモタしている。手元に引くように動かせば、スムーズに切れると教えてやった。材料を押さえる左手もぎこちなく、下手すれば、小学生のほうが上手いかもしれないレベルだ。
「はあはあ、やっと切れた」
「お湯が沸いたよ」
「じゃあ、オクラを」
 どうも、熱湯めがけて一気にぶち込みそうな勢いなので、1つずつ静かに入れるように指示を出す。
「なんだ、鍋の上でザルを逆さまにすればいいのかと思った」
 ……やはり。
 勢いよく入れたら、熱湯がはねて火傷する可能性があることに気づかぬようだ。料理のテクニックは、高校生とは思えぬ未熟さである。
「ミキは無神経すぎ。もっと丁寧にやらなきゃダメでしょ」
「あのさ、お母さんはすぐ文句言うけど、知らないんだからしょうがないじゃん。だから、やる気なくなるんだよ!」
 ちょっと厳しいことを口にすれば、即座に反撃してくる。この辺りは年相応の、高校生らしい反応だ。
「次は、鍋にスープと玉ねぎ、カボチャを入れて、ポタージュを作ろう」
「ポタージュに、玉ねぎが入っているなんて知らなかった」
「軟らかくなる間に、オーロラソースを作ってね」
「へいへい」
 ポタージュができたら、鮭を蒸し器に入れ、火が通るまでにエノキを炒める。
 時間を間違えなければ、作る人を選ばない、失敗なしのレシピである。
「できた!!」
 湯気を立てて蒸し上がった鮭に、オーロラソースをかけて食卓に運ぶ。


 
「美味しい!」
 自分で作った料理は、格別の味がするようだ。「ポタージュに胡椒を入れすぎた」などと反省しながら、一つひとつの味を吟味していた。ぜひ、今後も続けていきたいものである。
 食後、レポート用紙を持った娘が尋ねてきた。
「献立名は何て書けばいい?」
「『蒸し鮭のオーロラソースがけ』かなぁ」
「えー、不味そうじゃん。『アトランティックサーモン ボイル仕立て~オーロラソースとともに~』っていうのはどう?」
「…………」
 今度は私がダメ出しをくらった。
 しかし、それを言うならボイルではなく、スチームかと……。
「あとは、『エノキダケのソテー ソイソース風味』とか」
「…………」
 これまた、高校生離れしたネーミングである。もちろん、レストランメニューのコピーなのだが、「普通の家庭料理にこの名前ですか?」というギャップが面白い。きっと、家庭科の先生もビックリするに違いない。
 次回は、「知床鶏のグリエ 2色のパプリカ添え 粒マスタードをのせて」に決めた!


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どっちもどっち

2012年09月06日 20時54分43秒 | エッセイ
 ウォシュレットを買い替えたのは1年半前だ。
 センサーがついていて、人が近づくと「パカッ」とフタが開き、便座から立ち上がると6秒後に自動洗浄する。そして、1分半経つと自動でフタが閉まるものだから、「賢いなぁ」と感心していた。
 トイレ掃除は私の役目だ。お掃除シートでせっせとふき取り、ピカピカになるのが楽しい。自分なりに大事に使ってきたつもりだが、なぜか7月あたりから、自動でフタが開かなくなった。
 ドアを開けても「シーン」としたままで、まったく反応がない。リモコンの開くボタンを押しても、うんともすんとも言わず、実に気に入らない。イラついて、「このっ」とばかりに手でフタをこじ開け、便座に腰かけると、ようやく「ウィーン」という音を出して脱臭作業を始める。「あら、いたの?」と鈍くさく人を認識すると、やがて自動で水が流れ、勝手にフタが閉まる。
 大勢に影響はないけれど、これではフルに機能を使えず、出費額に見合わない。TOTOに電話をし、修理に来てもらった。
「では、ちょっと拝見いたします」
 サービスマンが、手馴れた様子でウォシュレットに近づく。中には、家人のときは動かないくせに、サービスマンが来ると途端に動き始める機械がある。根性の曲がったヤツと同じで、人を見るようだ。「特に異常は見受けられません」と判断され、サービスマンが帰るとまた動かなくなるのが腹立たしい。その点、このウォシュレットは公平だった。誰が来ようが、徹底的にシカトを決め込んでいた。
「開きませんね」
 サービスマンは、リモコンの電池残量をチェックしたあと本体を見て、すぐに原因を突き止めた。
「センサーです」
「はい」
「人がいることを認識するセンサーがあるんですが、錆びています」
 彼はグレーのセンサーを指差した。



「これを交換すれば直ります」
 彼がてきぱきとセンサーを換えた結果、無事にフタが開くようになった。
「センサーを長持ちさせるには、決してトイレ洗剤に触れないようにしてください。洗剤はアルカリ性をお勧めします」
 正義の味方のように、さっそうと、サービスマンが帰っていった。
 トイレ洗剤は、便器の内部にしか使っていないが、心当たりがある。

 お掃除シートがNGだったんじゃないかしら!?

 私はウォシュレットの取扱説明書を引っ張り出し、「お手入れ方法」という項目を再度読んでみた。
「洗剤を使わず、水ぶきしてください」
 私は目を剥いた。しまった、全然気づかなかった……。
 お掃除シートには、洗剤がたっぷり含まれている。これでゴシゴシこすれば、1年半で錆びても不思議はない。
 今まで、ウォシュレットが言うことを聞かないと決めつけていたが、取扱説明書を無視した私のせいだったようだ。


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長靴以上、ブーツ未満

2012年09月02日 20時21分04秒 | エッセイ
 天気予報の通り、昼前から黒い雨雲が押し寄せてきた。
 ポツポツポツと、ベランダのひさしに雨粒の当たる音がする。ひさしの下の洗濯物を取り込み、お茶を飲んでいたら、今度はドドドドドッという轟音に変わる。
 驚いて窓の外を見ると、お向かいの家が水煙で霞んでいた。大粒の雨がバチとなり、建物や植物を激しく連打して、ドラムのような音を立てているのだ。

 なんと、すさまじい……。

 こんな雨では、傘があっても役に立たない。外出中の人は、さぞかし難儀したことであろう。
 しばらく経つと豪雨がやんだ。出かけるなら今のうちだ。
 私はスーパーに行く準備を始めた。昼食と夕食、それに明日からのお弁当に使う食材を買わねばならない。手早く買い物リストを作ったはいいが、さて何を着て行こう。
 空を見上げると、次の雨雲がネクストバッターズサークルに控えていて、また降りそうな気配だ。雨の日には、ハーフパンツにビーチサンダルを合わせ、濡れてもへっちゃらな服装をする人がいる。だが、私は冷え症なので、なるべく足を守りたい。

 そうだ、長靴!

 梅雨どきに合わせて、オシャレな長靴を買ったことを思い出した。買ったとたんに雨が降らなくなり、まだ一度もはいていないのだ。



 同じ電車に乗っていたミニスカートのOLが、同じような長靴をはいていたのを見て、黒いブーツみたいでいいと思い購入した。だが、私がはいてみると、とてもブーツには見えない。Tシャツにチノパンというラフないでたちが災いしたようだが、年齢的なものかもしれない。「これから野良作業をしてきます」といった雰囲気が悲しい。鏡の向こうの自分にガッカリし、同じ気になってはいけないと悟った。
 気を取り直してドアを開けた。すでにポツポツと雨が降っている。歩いているうちに、ザーザーという音に変わり、雨量が増えてきた。しかし、大事な足は長靴に守られている。安心安心!
 スーパーをはしごし、食材を手に入れた頃には、運よく雨が上がり日もさしていた。
 歩いてみてわかったのだが、長靴の重いことといったら……。雨のときは気にならないのに、晴れると足かせのように感じる。中の湿度も相当なものだ。水虫になったことはないけれど、長時間、これをはいていたら危険かもしれない。

 5本指の靴下がいいのかしら。

 つい、そんなことを考えてしまった。
 こんなことでは、ますます長靴らしく見えてしまうに違いない。


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