人間ドックで「萎縮性胃炎」と診断されたのが去年の12月。
今年は胃内視鏡検査を受けて、胃がんリスクを回避しようともくろみ、病院に電話をかける。
「その日は、一番早くて、15:15分のお時間しか空いていませんが」
「ああ、そうですか。じゃあ、それでいいです」
「かしこまりました。予約をお取りしておきます」
検査日を決めるときは難航した。夏休みはすでに埋まっており、平日は休めない。でも、文化祭の振替休業日であれば、平日の検査が可能だ。ここしかないと意気込んで予約電話をかけたものの、遅い時間帯しか空いていなかった。
「うっそ~、前の日の20時以降から食事禁止?」
私は胃の検査をナメていた。水やお茶なら検査の30分前まで飲んでいいそうだが、繊維の多い飲み物や固形物は一切禁止。夕方まで空腹に耐えねばならない。何と苦行であることか。
「じゃあ、なるべく遅く起きて、家でゴロゴロしていればいいんじゃない?」
と思ったのだが、前日に職場で大きな問題が起きた。校長から、都合のつく職員は振休返上で出勤してくれと要請を受けた。
「うう、14時まで暇だ……。ヤバい」
ついつい応じてしまい、水とアールグレイだけを口にして職場に向かった。待っていたのは、4時間の軽作業であった。重労働ではなかったが、頭も使わないから、どうしても神経が空っぽの胃袋に集中する。
「お腹が空いたなぁ、くうう~」
聞くところによると、いわゆる胃カメラは吐き気を催すものだという。だが、今の私には、「ひもじい」辛さが一番堪えて、検査まで頭が回らない。戦時中の食糧難を乗り切った人たちは偉いと、心から尊敬した。
どうにかこうにか、食欲を抑え込んで検査まで持ちこたえることができた。
「胃カメラは初めてですか」
「はい」
「左の腕から麻酔を入れますからね。喉にも麻酔薬を塗りますから、苦しいことはありませんよ。リラックス、リラックス」
鼻から胃カメラを入れる病院もあるそうだが、「オエッ」となるのは喉だから、感覚を麻痺させることが一番楽だという。言われた通りに横たわっていたら、いつの間にか終わっていた。
「笹木さん、終了です。麻酔がさめるまで、あちらのベッドで寝ていてください」
キツネにつままれた気分である。おそらく、すぐに麻酔が効いて、ガーガー寝ているうちに検査が終了したのであろう。よだれは垂らさなかったか? いびきなんぞ、かいていなければよいのだが。
「はい、20分たちました。まだ横になっていた方がいいですか」
看護師が私を起こす声がした。え、まだ5分しか経っていないんじゃないの? と驚いたが、またまた寝てしまったらしい。幸い、気分は悪くないし、いつまでの寝ていないで、さっさと食事をしたほうがよさそうだ。
「大丈夫です。帰ります」
「では、荷物をお持ちになって2階にお越しください」
麻酔からさめたら、まず水を飲むらしい。むせなければ、食事をとって構わないと説明されたので、そうさせてもらった。病院の目の前には、サブウェイがある。
「えーと、ローストビーフサンドに、ミネストローネ、カフェラテもください」
「トッピングはどうされますか」
「レタスとキャロット、ピーマンで」
レジに進むと、クッキーとパウンドケーキが目についた。すかさず、「これも」と言ってトレイに載せた。

いやあ、食べた、食べた。
2時間後には、家で普通に夕食をいただき、一日分の遅れを取り戻したような気になった。
何があっても、胃の検査は午前中に終わらせないといけないね……。

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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
今年は胃内視鏡検査を受けて、胃がんリスクを回避しようともくろみ、病院に電話をかける。
「その日は、一番早くて、15:15分のお時間しか空いていませんが」
「ああ、そうですか。じゃあ、それでいいです」
「かしこまりました。予約をお取りしておきます」
検査日を決めるときは難航した。夏休みはすでに埋まっており、平日は休めない。でも、文化祭の振替休業日であれば、平日の検査が可能だ。ここしかないと意気込んで予約電話をかけたものの、遅い時間帯しか空いていなかった。
「うっそ~、前の日の20時以降から食事禁止?」
私は胃の検査をナメていた。水やお茶なら検査の30分前まで飲んでいいそうだが、繊維の多い飲み物や固形物は一切禁止。夕方まで空腹に耐えねばならない。何と苦行であることか。
「じゃあ、なるべく遅く起きて、家でゴロゴロしていればいいんじゃない?」
と思ったのだが、前日に職場で大きな問題が起きた。校長から、都合のつく職員は振休返上で出勤してくれと要請を受けた。
「うう、14時まで暇だ……。ヤバい」
ついつい応じてしまい、水とアールグレイだけを口にして職場に向かった。待っていたのは、4時間の軽作業であった。重労働ではなかったが、頭も使わないから、どうしても神経が空っぽの胃袋に集中する。
「お腹が空いたなぁ、くうう~」
聞くところによると、いわゆる胃カメラは吐き気を催すものだという。だが、今の私には、「ひもじい」辛さが一番堪えて、検査まで頭が回らない。戦時中の食糧難を乗り切った人たちは偉いと、心から尊敬した。
どうにかこうにか、食欲を抑え込んで検査まで持ちこたえることができた。
「胃カメラは初めてですか」
「はい」
「左の腕から麻酔を入れますからね。喉にも麻酔薬を塗りますから、苦しいことはありませんよ。リラックス、リラックス」
鼻から胃カメラを入れる病院もあるそうだが、「オエッ」となるのは喉だから、感覚を麻痺させることが一番楽だという。言われた通りに横たわっていたら、いつの間にか終わっていた。
「笹木さん、終了です。麻酔がさめるまで、あちらのベッドで寝ていてください」
キツネにつままれた気分である。おそらく、すぐに麻酔が効いて、ガーガー寝ているうちに検査が終了したのであろう。よだれは垂らさなかったか? いびきなんぞ、かいていなければよいのだが。
「はい、20分たちました。まだ横になっていた方がいいですか」
看護師が私を起こす声がした。え、まだ5分しか経っていないんじゃないの? と驚いたが、またまた寝てしまったらしい。幸い、気分は悪くないし、いつまでの寝ていないで、さっさと食事をしたほうがよさそうだ。
「大丈夫です。帰ります」
「では、荷物をお持ちになって2階にお越しください」
麻酔からさめたら、まず水を飲むらしい。むせなければ、食事をとって構わないと説明されたので、そうさせてもらった。病院の目の前には、サブウェイがある。
「えーと、ローストビーフサンドに、ミネストローネ、カフェラテもください」
「トッピングはどうされますか」
「レタスとキャロット、ピーマンで」
レジに進むと、クッキーとパウンドケーキが目についた。すかさず、「これも」と言ってトレイに載せた。

いやあ、食べた、食べた。
2時間後には、家で普通に夕食をいただき、一日分の遅れを取り戻したような気になった。
何があっても、胃の検査は午前中に終わらせないといけないね……。

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