受験生のメッカ、湯島天神に行ってきた。目的は、中3の娘の合格祈願である。
「ご祈祷っていくらかかるの? ミキのだから、自分で払うよ」
出発前に、娘が財布を持って尋ねる。
「3000円、5000円、10000円から選ぶんだよ」
「じゃあ、10000円だ。ケチって落ちたら困る」
娘は、残り少ないお年玉を財布に入れ、支度を始めた。
湯島まで、家から1時間弱かかる。本郷3丁目から歩いていくと、鳥居が見えてきた。
参道は人がまばらだったが、境内に入ると混雑している。合格祈願だけでなく、商売繁盛や厄除けで来る人も多いようだ。参拝者をあてにして、屋台がズラリと並んでいた。
「お母さん、見て! あの絵馬の数」
娘が仰天し、大きな声を出した。
なんだ! この多さは!!
私も度肝を抜かれた。境内には他にも数箇所、絵馬をかける場所があったが、どれも鈴なりになっており、重そうだ。夏に来たときは、こんな状態ではなかった。
気を取り直して、まずはご祈祷受付に足を運ぶ。本殿は開放されており、外気がもろに入ってきて寒い。受付の足元に、ホットカーペットが敷いてあるのも道理である。
ご祈祷では、「平常心を保ち、実力が発揮できるように」と祈ってくれる。勝負ごとは、相手に勝つ前に、まず自分に勝たねばならない。落ち着いて試験に臨むことが、何よりも重要だ。決して頭がよくなるわけではないけれど、心の安定には役立つだろう。
ご祈祷が終わると、お札や神饌を受け取って本殿を出る。ここで絵馬がもらえるので、鈴なりの上から掛けてきた。合格できますようにと願いながら……。
「甘酒が飲みたい」
娘が屋台に目をやった。
合格という文字には弱い。1杯300円という強気の価格であったが、買ってみた。
ここの甘酒は、甘さ控え目だ。私はもうちょっと甘いほうが好きなのだが……。
物足りなくて、大判焼きも買った。こちらは、小倉あんがグッドである。
家で、ご祈祷でもらった袋を開けてみた。
学業成就暦という、11月から3月までしかない不思議なカレンダーが入っていた。それに「入試突破」の文字が入ったハチマキが、異様な雰囲気をかもし出している。「おさがり」と書かれた箱の中身は、梅干であった。
「入試まであと25日で、この梅干もちょうど25個だから、1日1個食べるよ」
「それがいいね」
「ハチマキもする」
全員が「合格」や「必勝」といった文字入りのハチマキをして、勉強させる塾もあると聞く。ミキは髪の上からハチマキを締め、机に向かった。
「ちょっと休憩」
一時間後、ミキがお茶を飲みにやってきた。入試突破のハチマキを取る。
「あっ!」
ハチマキの下の、前髪が真っ直ぐになっていた。ミキはクセ毛で、アイロンを使わないと直毛にならない。しかし、ハチマキで押し付けられて、同様の効果が発揮されたらしい。
「毎朝、ハチマキをしてから学校に行けば、アイロン使わなくてすむね」
「……」
ミキが無言で睨んできた。
wikipediaによると、ハチマキは「精神の統一や気合いを向上させるために用いるもの」とされている。これに「クセ毛の矯正」をつけ加えてはどうだろう?
というのは冗談だが、精神統一と気合いで頑張ってほしい。
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
「ご祈祷っていくらかかるの? ミキのだから、自分で払うよ」
出発前に、娘が財布を持って尋ねる。
「3000円、5000円、10000円から選ぶんだよ」
「じゃあ、10000円だ。ケチって落ちたら困る」
娘は、残り少ないお年玉を財布に入れ、支度を始めた。
湯島まで、家から1時間弱かかる。本郷3丁目から歩いていくと、鳥居が見えてきた。
参道は人がまばらだったが、境内に入ると混雑している。合格祈願だけでなく、商売繁盛や厄除けで来る人も多いようだ。参拝者をあてにして、屋台がズラリと並んでいた。
「お母さん、見て! あの絵馬の数」
娘が仰天し、大きな声を出した。
なんだ! この多さは!!
私も度肝を抜かれた。境内には他にも数箇所、絵馬をかける場所があったが、どれも鈴なりになっており、重そうだ。夏に来たときは、こんな状態ではなかった。
気を取り直して、まずはご祈祷受付に足を運ぶ。本殿は開放されており、外気がもろに入ってきて寒い。受付の足元に、ホットカーペットが敷いてあるのも道理である。
ご祈祷では、「平常心を保ち、実力が発揮できるように」と祈ってくれる。勝負ごとは、相手に勝つ前に、まず自分に勝たねばならない。落ち着いて試験に臨むことが、何よりも重要だ。決して頭がよくなるわけではないけれど、心の安定には役立つだろう。
ご祈祷が終わると、お札や神饌を受け取って本殿を出る。ここで絵馬がもらえるので、鈴なりの上から掛けてきた。合格できますようにと願いながら……。
「甘酒が飲みたい」
娘が屋台に目をやった。
合格という文字には弱い。1杯300円という強気の価格であったが、買ってみた。
ここの甘酒は、甘さ控え目だ。私はもうちょっと甘いほうが好きなのだが……。
物足りなくて、大判焼きも買った。こちらは、小倉あんがグッドである。
家で、ご祈祷でもらった袋を開けてみた。
学業成就暦という、11月から3月までしかない不思議なカレンダーが入っていた。それに「入試突破」の文字が入ったハチマキが、異様な雰囲気をかもし出している。「おさがり」と書かれた箱の中身は、梅干であった。
「入試まであと25日で、この梅干もちょうど25個だから、1日1個食べるよ」
「それがいいね」
「ハチマキもする」
全員が「合格」や「必勝」といった文字入りのハチマキをして、勉強させる塾もあると聞く。ミキは髪の上からハチマキを締め、机に向かった。
「ちょっと休憩」
一時間後、ミキがお茶を飲みにやってきた。入試突破のハチマキを取る。
「あっ!」
ハチマキの下の、前髪が真っ直ぐになっていた。ミキはクセ毛で、アイロンを使わないと直毛にならない。しかし、ハチマキで押し付けられて、同様の効果が発揮されたらしい。
「毎朝、ハチマキをしてから学校に行けば、アイロン使わなくてすむね」
「……」
ミキが無言で睨んできた。
wikipediaによると、ハチマキは「精神の統一や気合いを向上させるために用いるもの」とされている。これに「クセ毛の矯正」をつけ加えてはどうだろう?
というのは冗談だが、精神統一と気合いで頑張ってほしい。
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)