これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

大人だってオマケが好き!

2024年11月17日 15時47分42秒 | エッセイ
 職員の上村さんはお煎餅が好き。
 机に何種類もの袋を詰め込んで、昼食代わりに「バリバリ」と食べている。体に悪いところはないようで、アラカンというお年頃でもすこぶる元気なオジサマだ。
 ソフトサラダ、歌舞伎揚げ、ばかうけを食べる場面はよく見るが、その日は新潟仕込みを手にしていた。



「あれっ」
 上村さんの怪訝そうな声が聞こえてきた。
「1袋2枚入りのはずなのに、この袋は3枚入っているよ」
 すかさず、隣の職員が反応する。
「えー、見せて見せて」
「ほら」



「あー、ホントだ! ラッキーだね」
「うん。ちょっと嬉しい」
 小さくて薄手の煎餅が、ほんの1枚増えただけで、劇的にお腹が膨れるはずもない。でも、予期せぬオマケに出会うことで、自分の運のよさを感じ、打って変わって幸せな気分になるのだから不思議なものだ。特に家と職場の往復に明け暮れ、長年同じ仕事を繰り返している大人には、よい刺激になると思う。あまり感情を表さない上村さんが、その日はしばしば笑っていた。
 今日は私にも幸運が訪れた。午前中に出かけた埼玉県日高市のお寺で御朱印をお願いしたときのことだ。



 御朱印帳を受け取るときに、「よかったらどうぞ」とお菓子をいただいた。思いがけない幸運である。



「なぜ鎌倉?」という疑問はさておき、朝イチからお寺巡りをするため、せっかくの休みに5時半に起き、昼食の仕込みをしてから家を出たことを褒められたのかもしれない。仏様からねぎらわれたようで、とてもとても心が和んだ。
「うま~」
 さつまいもを原料にした口当たりのよい焼き菓子に舌鼓を打つ。
 次の土曜日も日曜日も仕事になってしまい、12連勤を不安に感じていたが、仏様からの差し入れて頑張れそうな気がしてきた。
 してもらって嬉しかったことは、誰かにしてあげるとさらによいだろう。
 3枚入りの煎餅はないけれど、美味しいお菓子ぐらいだったら常備できるかな。

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職場にスマホを忘れて帰った日

2024年11月10日 21時45分19秒 | エッセイ
 その日は多人数の保護者にメールを送る予定があり、添付ファイルに貼り付けたURLが正しく機能するかのチェックが必要だった。
「自分のスマホに送ってみよう。そこからサイトに飛べればオッケーだから」
 しかし、Outlookが不調で、スマホにメールが届かない。何どもやりなおして、ようやく正常に作動することが確認できた。窓を見ると外は暗く、すでに日没を迎えたことを知る。チャチャッとメールを送り、時計を見た。
「大変。もうこんな時間になっちゃった。急いで帰らなくては」
 机上の片づけもそこそこに、洗った弁当箱をリュックに入れて、コートを羽織るや否や職員室を飛び出した。今なら急行に間に合う。その一心で駅に向かった。
「よーし、乗れた乗れた」



 意中の電車の中で、スマホを取り出そうとした。ボスに翌朝の予定について連絡したかったからだ。財布やタオルの下に隠れているかと思ったけれど、それらしいものは見当たらない。
「うーむ。どうやら職場に忘れてきたみたいだ……」
 帰る直前までスマホを見ていたことを思い出す。きっと机の上に置きざりになっているのだろう。今さら取りに戻ることはあり得ない。どうせLINEは家族からしか届かないし、なければないで何とかなるはず。それ以上は考えずに読みかけの本を開いた。小林弘幸先生流に言えば、自律神経を乱さず平常心で過ごせる状態だったはずだ。
「ただいまぁ」
 帰宅してすぐにしたことは、古いスマホの充電であった。引退したスマホでも、Wi-Fiがあればある程度は活用できると知っている。どこまでできるか、試してみようではないか。



 機種変更して以来、2年間使っていないので、バッテリーがすっからかんになっている。しばらく経つと起動しWi-Fiにつながった。画面には「SIMカードを挿入してください」とのメッセージが出てくる。通話はできないだろうが、それ以外の機能が使えるかを確認しようと思った。
 まずはメールにアクセスする。「SIMカードなし」と表示しつつも送受信ができ、不要なダイレクトメールの削除も可能だ。PCアドレスにメールしてみたら、ちゃんと届くことに少々驚く。
 次にショートメールにチャレンジした。何しろ、ボスに連絡したかったので、これが一番気になっていた。過去のやり取りは機種変更前で止まっている。予想としては、できないのではないかと絶望的な気持ちでいた。
「できなかったら、夫のスマホをひったくって、使わせてもらえばいいや」と安易に考えないでもなかったが、ボスが混乱するといけない。勇気を出して「明日の連絡」として、おそるおそる送信したら、エラーメッセージは表示されなかった。「おやおや」と画面を見守っていると、5分後にはボスから「承知しました」の返信が表示される。ちゃんと届くことがわかり、結構びっくりする。
「なーんだ、古いスマホでできちゃうんだ。へー」
 夫のスマホを強奪せずに済んだことに安堵である。
 しかし、LINEはデバイスが変わったことで、本人確認が必要となるらしい。認証のためのショートメッセージが送られても、なぜか古いスマホには届かない。おそらく現在のデバイスでしか開けないのだろう。仕方なくLINEは諦めた。どういう仕組みになっているのか、ひたすら首を傾げるばかりだ。Xやインスタ、FacebookはPCでもできるようになっているので、何の不自由もなく「いいね」の確認ができた。ついでに乗換案内もサクサクと動き、翌日の電車をチェックした。
 寝る前にはアラームを設定する。スマホには、目覚まし時計という重要な役割を期待しており、私が寝坊しないで職場に行かれるかどうかがかかっていた。これも難なくクリア。ぐっすり眠った後は、ちゃんと4時53分に起こしてくれたので、朝の爽やかな空気を肺の中にたっぷり吸い込んで職場に向かうことができた。
 職場で、まずスマホを探す。
「あった、あった」
 予想通り、机の上に置きっぱなしになっていた。上にメモが載っていたので隠れてしまい、見落としたのであろう。画面を開くと、昨日チェックできなかった認証コードが届いていた。ついでに、ボスに送った「明日の連絡」も表示されていた。謎だったが「まあいいや」と流すことにする。
 こうして、意外と簡単に、スマホのなかったひと晩を乗り切ったわけだ。「いつ忘れても大丈夫」という妙な自信がついてきたが、友達が多い人は、同じようにはいかないだろう。
 しかし、娘には強く叱られた。
「何かあったら電話できないと困るんだよ! 絶対に忘れないで」
 まあ、そうですね……。
 調子に乗らないよう自戒しなくては。

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富士の高嶺にココアパウダー

2024年11月03日 17時19分16秒 | エッセイ
「そういえば、富士山5合目に行ったんだっけ」
 10日ほど続いたトラブルがようやく解決して、心の平穏を取り戻したとき、意外に楽しかったバスツアーのことを思い出した。
 職場きってのお祭り男である村井さんが、着任したばかりの外国人講師を楽しませたい一心で、「みんなで『富士山5合目とシャインマスカット食べ放題ツアー』に参加しよう」と声を掛けてくれたのだ。その日は祝日で、家でまったりしたかったけれど、親睦のためでは断りづらい。加えて、大好きな富士山にはしばらく行っておらず、渡りに舟という気もした。目標人数は20人ということもあり、一人でも多い方がよいのではと思って娘を誘い参加した。
「えっ、5人?」
「うん。ほとんどの人から断られちゃった」
 村井さんは苦笑いしていたが、落ち込んだ様子もない。雲一つない上々のお天気だし、都合のつく少人数で楽しめばよかろう。
「シャインマスカット楽しみ! あと富士山5合目には美味しいメロンパンがあるって、松井玲奈ちゃんが言ってたよ」
 娘は山に興味がない。でも、メロンパンとシャインマスカットには強く惹かれているらしく、母娘の利害関係も一致した。この時点で、バスツアーに高評価がつくことは明白である。
「じゃあ、皆さん、バスにお戻りいただく時刻は11:30です。お気をつけて」
 添乗員に送り出され、まずはメロンパンに急いだ。富士山は逃げないが、メロンパンは売り切れるかもしれない。この順番が正しいに違いない。
「あったあった」
 


 幸い、店には数人並んでいただけだ。5分待ち、ホカホカの焼き立てメロンパンにかぶりつくことができた。



 てっぺんの茶色の粉はココアパウダーだろうか。メロンの香りによくマッチしている。
「おいし~」
 夫は家に置いてきたので、みやげとして3個入りのテイクアウトも購入した。我ながら「まだ食べる気なの?」と呆れてしまったけれど。



 温かいコーヒーも飲み、腹ごしらえをしてから富士山に向かった。
 やはり逃げていなかった。



 5合目は圧倒的に外国人が多く、日本人は2~3割といったところか。わけのわからない言葉が飛び交っているが、どの人も笑顔で富士山をエンジョイしている雰囲気だった。
「いいじゃん、外国に来たと思えば」
 村井さんはあくまでもポジティブだ。遠くに見える湖は山中湖だと言っているが、本当だろうか。



 バスに戻り、昼食会場に向かう途中で、景色のよい場所を通った。



 絵になる一枚に感謝である。
 富士山の近くに住んでいる人が羨ましい。
 お昼はほうとう。富士山で冷えた体が温まり、午後の活動の準備をした。



 最後に、シャインマスカットの食べ放題でしめくくった。
「甘い房は黄色ですからね。黄色っぽい葡萄を探してください」
 農園の方のアドバイスに従い、なるべく黄色のシャインマスカットを探す。
「これなんかどう?」



「いいんじゃない」
「うん、甘い!」
 さすがに1房でお腹いっぱいになった。おみやげに購入することもできるので、夫にも買って帰ることにした。もちろん、私たちも横取りするけれど。
 帰りのバスでぐっすり眠る。
 職員プラス家族という変な組み合わせだったが、好きな場所で美味しいものをいただく企画は見逃せない。
 面倒くさがらずに、気になるところには足を運ばなくっちゃ。
 楽しいことがあれば、イヤな問題も乗り越えられるしね。

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2024 悩める誕生日

2024年10月27日 15時27分38秒 | エッセイ
 一年で一番楽しみな日は誕生日なのだが、今年はツキに恵まれなかった。
 2日前から仕事上のトラブル続きで対応に追われ、片づいたと思ったら別の場所から苦情を受ける。よかれと思ってしたことなのに、逆に恨まれたときは全身の力が抜けるようだった。
「はああ、何でこんなについてないんだろ……」
 土曜出勤の代休日でも、家から何度も職場に電話連絡を繰り返す破目になり、休養できた気がしない。布団に入っても寝つきが悪く、20分も30分も眠れない日が続いた。もっとも、家族に言わせると「ガーガー寝ていた」とのことだが、本人はそんなことないと信じている。まあ、小さな地震には気づかなかったけれど。
 それでも誕生日がやってきた。
 昨年までは、日付が変わるとワクワクし、高揚した気分で朝を迎えたのに、今年は明るい気持ちになれない。石橋を叩いて渡るように、慎重に慎重に仕事を進め、大きなトラブルもなく退勤を迎えてホッとした。
「ただいま~」
「おかえり!」
 夫と娘がお祝いの準備をしてくれていた。
 夕食に寿司をリクエストしたら、ちゃんと用意ができている。デリバリーの寿司屋はネタが悪く、もう何カ月も頼んでいない。スーパーのテナントの寿司屋で折詰を買ってきてくれたのだが、まだシャリが温かく、新鮮なネタを載せて並んでいる。値段の割に、とても美味しかった。



「イケる~」
「これからもここで買おう」
 ケーキは、夫が開店と同時に地域で一番の店に飛び込み、小さ目デコレーションをゲット。



 フワフワのスポンジに、重みを感じさせない生クリームが盛り付けられ、鮮やかな赤に食欲をそそられる。ロウソクを立てて「ハッピーバースデー」を歌った後に切り分けた。食べすぎかしらという気もしたが、3人でペロリと平らげてしまった。
「プレゼントだよ!」
 欲しかったのは木の弁当箱。秋田杉ではなく、紀州の天然木を使用した、ちょいスリムなものを買ってくれていた。



「わあい!」
 使ってみてわかったことだが、ご飯とおかずの仕切りに工夫がある。あえて幅を抑えることにより、どの位置でも活用できるのだ。今日はご飯少なめ、多めと調整できる点が優れている。フタを開けると森林の香りが漂い、「やはり弁当箱は木だな」と確信した。
 不運続きのときこそ、人の好意が身に沁みる。
 あらためて、家族の存在を「ありがたい」と実感した。
 しかし……。
 先週末から同じトラブルが再燃している。いつまで続くことやら。
 そろそろ出口が見えてくるはず。
 ハロウィンまでに片づくとは思えないが、早く楽になりたいな。

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お久しぶりです、沖縄さん(2)

2024年10月20日 17時25分04秒 | エッセイ
 かつて都内では沖縄への修学旅行が人気だったが、バス代が高騰している昨今では少なくなってきた。
 経費節約のため、無料スポットを行程に組み込むことも重要となる。おかげで、今まで訪れたことのない見どころを知れてありがたい。
 そのひとつが座喜味城跡である。



 石垣しか残っていないのに世界遺産という点が不思議だったが、それもそのはず。600年前の琉球時代にタイムスリップできる魅力に取りつかれた。





 決して大きな城ではなかったという。





 しかし、人や空間を支配する力があちらこちらに感じられて、さぞや立派な佇まいだったであろうと察することができた。軟らかい赤土に工夫をして、強固な土台を作ったとのエピソードにも感心した。
 帰り際、階段を下りると施設名の表示の裏側が見えた。「文部省」の3文字に大きく頷く。人気スポットではないようだが、素敵なところなので、たくさんの人が見られるといいのだけど。



 メル・ギブソン監督の映画「ハクソー・リッジ」の舞台となった場所も遠目から見ることができた。



 映画自体はところどころしか覚えていないが、途中でお腹が痛くなり、トイレに行くため中座したことは忘れられない。何とも情けない話である。
 安定の万座毛。



 海がキレイな残波岬。



 そして美ら海水族館へ。



 何でこんなに混んでいるのかと不思議に思っていたら、15時の食事タイムが近いせいだった。混雑する場所は得意じゃないが、せっかくの機会なので見ることにする。
「ジンベエザメは食事のときに体を縦にするんですよ~」
 朗らかなアナウンスに「へー」と納得した。



 本部(もとぶ)まで行けば伊江島が見える。



 エメラルドの海、白い砂。
 強い陽、高い気温。
 沖縄の魅力は南国らしさにあるようだ。教員にも一定数の沖縄フリークがいる。年に一度は沖縄に行き、日焼けして帰ってくるそうだ。おそらく、今回参加した200人の生徒の中にも、沖縄へのリピーターが生まれるであろう。ここには、それだけの磁力がある。
 あわただしい毎日を忘れ、非日常を楽しんだ、忘れがたい修学旅行となった。
 お久しぶりです、沖縄さん。
 また行くからね、沖縄さん。

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お久しぶりです、沖縄さん(1)

2024年10月13日 21時30分31秒 | エッセイ
 沖縄に行った。2015年以来だから、実に9年ぶりだ。
 プライベートではなく、修学旅行引率という仕事でだったが、久しぶりの遠出はいい。
 だいたい、どの学校も、那覇到着の日に平和学習をする。各施設が南部に集中していることに加えて、初日に重い内容に取り組ませ、後半は沖縄の魅力を理解し明るい気分で終わりたいからであろう。
 まずは沖縄平和祈念資料館へ。



 沖縄の人たちは米軍だけでなく、内地から来た日本兵からも危害を加えられ、本当にひどい戦いだったと理解しないといけない。
 ガマやひめゆりの塔にも足を運んだ。



 生徒たちは、同じ年頃の少女たちが戦争に駆り出され、無残に亡くなった事実に言葉を失っていた。そういう歴史があったことを忘れないでほしい。
 翌日は遠くから米軍基地を見て、基地問題を考える行程が組み込まれていた。
 道の駅から見える嘉手納基地は空軍の基地で、戦闘機や輸送機が多いという。



 住宅に隣接した普天間基地も見た。こちらは海兵隊の基地で、オスプレイが4機並んでいるとのことだった。



 左上のがそうかな?
 どちらの基地も騒音がひどく、落下物などで危険と隣り合わせである。移設を望む声がある一方で、基地から収益を得ている者は「このままでいい」との発言をするようで、単純な問題ではないという。
「うーむ」
 首里城公園にも行った。



 5年前に火事で正殿が消失して以来、再建に取り組み、2026年に完成予定との報を聞いた。
 あの美しい城にお目にかかれる日が近づいているとは、うれしい限りだ。
 復興中の建物の上に、奇妙な形の雲がモクモクと盛り上がっていた。



 ここまで来たら、国際通りもセットになっている。
 まずは沖縄料理に舌鼓を打つ。



 ゴーヤチャンプルーもジューシー(炊き込みご飯)もイケた。宿ではコストの関係で沖縄料理が出ないから、こういう場面で食べなくては。
 お菓子御殿松尾店の2階にはカフェもあり、紅いもタルトの入ったパフェがいただける。



 これは美味しいし、見た目も端正で南国らしく、大いに勧めたい!
「そうだ、食べるだけじゃなくて、おみやげも買わないと」
 食後はブラブラと歩き、お菓子や衣類を買い求める。
「なにこれ、面白~い!」



 シーサーの絵柄が入ったパックも迷わず購入する。ユーモアがあり、かつ実用的なよいみやげといえそうだ。
「あれ、ここにもガンダムが」



 全然関連はなさそうだが、沖縄にもガノタがいることに安心した。
 そして、矢吹ジョーらしき男も……。



 仕事とはいえ、自由時間は楽しまないとね。
 この日の那覇は最高気温が32度。せっかく東京の猛暑が終わったのに、また汗をかく破目になるとは。でも南国の解放感は大きな魅力である。他校の修学旅行生や外国人旅行客に混じり、私も沖縄を謳歌した。
 次回は北部に向けての見どころをご紹介します。

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お初です 新白河駅

2024年10月06日 06時30分56秒 | エッセイ
 那須に住む母が右手の手術をした。
 幸い3日で退院したのだが、利き手が不自由になり、完治するまで家事や炊事に支障が出てしまう。お手伝いのため、食料を持って両親の家に行った。



「お父さんったら、アタシが留守の間に、一つも薬を飲まなかったのよ」
 母はお怒りモードである。
 それもそのはず、入院中、一人残された父が部屋を散らかし、夜更かし等の不規則な生活をしていたのだから。父の自己管理能力は格段に落ちたと思う。
 でも、イライラしたり、無理して動いたりすると、ゆっくり過ごしてほしいはずの母が休めない。雑炊、にゅうめん等のインスタント食品や、肉じゃがやロールキャベツ等のレトルト食品を段ボール2個ほど送り、母が家事から解放されるようにした。母は「便利なものがあるね」と喜んでくれた。
 両親の家に行ったその日、帰りの新幹線の乗り継ぎが悪かったため、ためしに新白河駅まで行ってみた。
 ここはもう福島だ。



 駅構内にはなぜかダルマが飾ってある。どうやらダルマの産地らしいとわかり、名物とおぼしきダルマ最中なるみやげを買った。



 外はパリパリ、餡はしっとり、餡と一緒の牛皮はもっちりで、かなりクォリティが高い。
「おいし~」
 味は三ツ星クラスなのに、なぜか顔が怖い……。



「ひいいっ!」
 目が合うと食べにくいではないか。
 福島といえば、三万石のままどおるが浮かんでくる。



 安定の口当たりのよさで、あっという間に10個が消えた。
 新白河っていいところだな~と思ったひとときであった。
 父はそうとうボケてきたが、途中から「娘と孫が来た」ことを理解したようで、私たちの隣に座り、ニコニコしながら楽しそうであった。
 そうだ、次に新白河に行ったらダルマを買い、両親の健康祈願をしようかな。
 あ、最中じゃないダルマでね。

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ブログ開設6000日を迎えて

2024年09月29日 21時21分17秒 | エッセイ
 毎日せかせかと走り続けている気がする。フルタイムの仕事にエンドレスの家事、数少ない友達とのつきあいに両親の世話。合間に趣味が挟まっているという感じだ。
「だからこそ、切りのいいところで後ろを振り返らなくちゃね」
 先日、ブログ開設6000日という節目の日を迎えた。人に例えれば、高校1年生というところか。よく育ってくれたものだ。ようやく立ち止まって背後に目をやり、これまで進んできた道のりを顧みるときが来た。



「今年で16年目か。早ッ!」
 開設当初はアクセス数を稼ぎたくて、週に3回は更新していた。閲覧数が増え、仕事が忙しくなってからは週に2回の更新となり、5年前からは週イチ更新が精一杯という状況であるが、続けられること自体がうれしい。
「よし、記念に何か作っちゃおう」
 幸い、手元にはフェルトケーキの材料と、セリアで購入したビーズがある。
 お読みいただいている皆様への感謝の気持ちを込めて、針仕事をすることにした。
 まずはフェルトケーキの袋を開けた。マスカットケーキに使う材料はすでにカットされている。



 細かいパーツは生地に切り込みが入っており、使うときに切り離すことで紛失を防いでいる。



 準備万端で、かなり親切という印象を受けた。
 しかし、慣れないせいもあり、縫い合わせる作業ではいろいろ間違えた。糸を2本どりにして縫う箇所を1本にしていたり、微妙に大きさの違うパーツを取り違えて縫い付けたりと、失敗だらけであった。
「キイーッ! また違ってた!」
 しかし、布の便利なところは、多少の融通が利く点だ。引っ張ったり縮めたりで、何とかなるのだからありがたい。途中からは要領をつかんで軌道に乗り、イージーなミスがなくなった。
「このオレンジ、上手くできたぞ~」



 まあ、オレンジ以外は普通と並以下の仕上がりだったりするのだが、完成すると気分も上がる。
 さらに、6000という数を金色のビーズで作ることにした。



 こちらはお手本がないので、まったくの自己流である。ビーズを釣り糸でつなぎ合わせただけでは、滑らかな曲線にならないとわかった。横着せずに、ちゃんと本を読んだりサイトを見たりして、勉強すればよかったなぁ。
 そんなこんなで、出来上がったのがこちらである。



 現在、アップしている記事が1428個ある。1500個になったら、またお祝いしようかしら……。
 今日も何か書くぞ! という気持ちになれるのは、読んで下さる皆様のおかげです。
 今後ともよろしくお願いいたします。

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パフェを食べたし 席はなし

2024年09月22日 20時17分03秒 | エッセイ
 9月17日は中秋の名月だったが、夜になっても汗が止まらず、ひどく暑かった。
「団子って気分じゃないよね。パフェ、パフェ」
 この日は運悪く、知り合いのお通夜と重なってしまったため、仕事のあと、ちょこっと腹ごしらえをして葬祭場に向かうつもりだった。池袋を通るので、数日前に見た東武百貨店のチラシが浮かんでくる。



「そういえば、すごく美味しそうなパフェがあったじゃない。あれを食べて行こうかな」
 しかし、催事場に着くと、目当ての店には長蛇の列ができていた。並んで待ったらお通夜は終わってしまうだろう。泣く泣く諦め、ゆっくり座れるレストラン街に移動し、プリンで我慢した。フルーツが立派でみずみずしい。



 葬祭場からも名月が見えた。温和で人柄のよかった故人を見送る日として相応しかった気がする。
 他の人はどうか知らないが、面倒な仕事や気の進まない出来事があるとき、私はパフェが食べたくなる。見た目の美しさに気分が上がり、アイスや生クリームの冷たさで頭を冷やし、フルーツやシロップの甘味に満たされ、自分へのご褒美として最適なスイーツだからだ。

(水信フルーツパーラー)


 多少は値が張るが、食べる回数はせいぜい年に1~2回。外出は家と職場の往復だけで、外食はめったにしない毎日を送っている。質素な生活が基盤にあると、たまにはパーッと贅沢したいという気持ちにもなるのだろう。平凡な日の繰り返しにアクセントをつけるように、機会があればパフェやサンデーを頼むようになった。

(椿屋カフェ)


 ファミレスはお手軽でいい。いくつもある中で、選ぶとしたらジョナサン。デニーズも家の近くにあって便利だ。








 ちょっとだけ食べたいときにはミニサイズがあるとありがたい。

(トゥザハーブズ)


 贈答用果実で知られる店もクォリティが高い。千疋屋は池袋にもあるのでときどきお邪魔している。


 ルノアールのクラシックなパフェは安定感があってよい。


 モンスーンのむらさき芋のパフェは甘さがちょうどよかった。


 先日、残念なことに気づいた。新宿ルミネ1にあったワイヤードボンボンが閉店していたのだ。この店はパフェが充実していて、秋の味覚であるモンブランパフェが絶品だったのに。


 急きょ地下のパフェテリア変更し、シャインマスカットのパフェをいただいた。


 フードコート並みでコスパもよく、クレープもある。2月に一度は新宿を通過するため、この味を求めて、また利用したい。
 シャインマスカットといえば、渋谷の「夜パフェ専門店」にもシャインベルという名のパフェがある。


 ホワイトチョコの妖精や中のアイスや洒落ていて、人気があるのも頷ける。
 アフタヌーンティールームにも足を運ぶ機会がある。今年も秋らしいパフェが食べられるかな?


 かつてのアキバのガンダムカフェには、モビルスーツをかたどったパフェがあった。
 何をデザインしたかがわかったら、立派なガノタに違いない。




 ところで、縄文時代の火焔型土器をご覧になったことがあるだろうか。



 これは新潟で発掘されたものだが、なぜか非常に魅かれるものを感じていた。理由は明確だ。
「パフェに似ている」
 火焔型土器が好きだからパフェに惹きつけられるのか、パフェが好きだから火焔型土器も気に入ったのか、どちらが先かわからない。
 この先も、自分へのご褒美にパフェを食べ続けるだろうし、博物館に行ったら火焔型土器にまっしぐらであることに変わりはない。
 暑さ寒さも彼岸までとはよく言ったもので、今日の気温はグンと低くなっている。
 食欲の秋到来を実感し、新たなパフェを発掘しに行こうっと。

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中高生はインスタがお好き

2024年09月15日 08時22分17秒 | エッセイ
 高校に勤める身としては、そろそろ募集対策活動に本腰を入れなければならない。
 10月から12月は学校説明会のシーズン。他校での合同説明会や相談会に参加するのはもちろん、中学校まで出前授業に教員を派遣したり、校内で入試説明会を開催したりで、休む暇がない。
 露出を増やすために始めたTwitterは3年目に突入した。最初の頃は、生徒に「Twitter始めました。フォローしてね」と呼び掛けても効果がなかった。
「えっ、フォロワー12だって。人気なーい」
 そんなこんなで、情けないていたらくだったが、執拗に投稿を繰り返した結果、ジリジリ増えて今では400近い数になっている。途中でXに変わったときは戸惑ったけれど、個別相談の際に中学生の保護者から「X見てますよ」と声を掛けてもらえることも多くウレシイ。



 だが、作戦的にはまだまだのようだ。先日、若手の教員から、ちょっとズレていませんか的なことを指摘された。
「笹木先生、中学生や高校生って、Xよりもインスタみたいですよ。私のクラスの生徒もXはやってないって言っていました。中学生に見てもらうなら、インスタも始めた方がいいんじゃないですか」
「えっ、そうなの? インスタかぁ。やったことないなぁ」
「LINEも使わずに、インスタのDMで連絡を取り合うと言ってました」
「マジ?」
「でも保護者はインスタよりもXが多いみたいです」
「なるほど」
 衝撃を受け、立ち止まって考える。時代が変わったことに気づいていなかった。たしかに、Xのフォロワーはほとんどが大人だ。都や区の議員、学習塾、出版社、保護者、卒業生、地域の住民、教職員が主な顔ぶれであり、言われた通りではないか。となると、インスタに手を出さないことは考えられない。元々発信することは好きで、プライベートでもブログ3つ、Facebook、読書メーター、mixiと張り切る毎日である。これに加えて、仕事としてのXもあるが、キャパはまだまだイケる。
「よしっ、インスタも始めちゃお~!」
 右手をグーにして、勢いよく天に突き上げた。



 善は急げで、早速アカウントを作成する。やり方をネットで確認しながら進め、プロフィール画像には校章を使った。Xと違って文字数に制限はないらしい。複数の写真を投稿するには向きを揃えなければいけないそうだ。ならば撮影するところから意識しなくては。
 苦労しながら1件目の投稿をして、無事にアップされたときは感動した。
「ううう、できた! よし、次もやってみよう」
 ちまちまと部活動の写真を上げて、5件ほどたまったところで生徒に向けて一斉に連絡をする。
「インスタ始めました。フォローしてくれるとうれしいでーす!」
 投稿ボタンを押して5秒後ぐらいだったろうか。
 次々と「○○があなたをフォローしました」「△△があなたの投稿にいいねしました」の通知画面が表示されるではないか。
「うわ、何これ何これ」
通知は目まぐるしく入れ替わる。チャカチャカ、チャカチャカと素早い動きで出ては消え出ては消えを繰り返した。画面を追っていたら酔いそうだ。何年何組の誰かはわからないけれど、このタイミングなら、うちの生徒に間違いない。
 若手教員が言っていたことは本当だった。なにしろ、1日でフォロワーが100を超えたのだから。Xでは12から100に増えるまで9カ月もかかったというのに、何たる違いだろう。
「いやあ、すごいな……」
 こんなに反応があるなら、もっと早く始めればよかった。全校生徒が500人であることを考えると、たったの一日で、5人に1人がフォローしてくれたというわけだ。
 すっかり気をよくして、背筋を伸ばし写真撮影に励む。
「フォロワー1000を目指すぞ!」
 もう一度、右手の拳を天に向かって突き上げた。
 無謀とは思うけど、夢は大きく持たなきゃね!

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シャインマスカットは秋の季語

2024年09月08日 11時12分49秒 | エッセイ
 職場で突出したお祭り男の畑中さんが、ニンマリしながら近寄ってきた。
「笹木さん、これどう? これどう?」
 彼の手には日帰りバスツアーのチラシがあり、「富士山5合目とシャインマスカット食べ放題!」との文字が見える。
「みんなで行こうと思って20人分予約しちゃった。行くのは来月だけど」
 今までにも彼のお出かけプランを提示されたことがあるが、休みの日は出かけるのが面倒でパスしてきた。しかし、大好きな富士山とシャインマスカットとあれば心が揺らぐ。家に帰って娘に「行きたい?」と聞くと、「いいよ!」との返事だったので、2人で参加を決めた。
 この夏は、おそらくシャインマスカットを食べていない。もっとも、カットケーキに入っていた一粒ぐらいは食べたかもしれない。実は、夫に平日の食事の支度を任せていたら、食材の値段を見ずに買ってしまうので、「ちゃんと値札を見るように」と注意したこともあり、高価なフルーツを買いづらくなった。スーパーに行くたび、パステルグリーンのたわわな葡萄に目を奪われ、自分で自分の首を絞める結果になったことを後悔した。だが、これはチャンスだ。たくさん食べてこよう。

 マスカットといえばもうひとつ。
 少し前に見た「ビーズ展」をアップしたら、ブロ友のヤッギーさんからお手製のビーズネックレスをいただいた。



 細かい作業の繰り返しの末に完成したものと思われ、「おおっ」と感嘆の声が出た。
 未使用のキットと作り方の本も添えられており、俄然やる気がわいてくる。
 箱の中には、ビーズに加えて、フェルトで作るケーキのキットもたくさん入っていた。たとえば、イチゴのロールケーキとストラップだとこんなにラブリーな仕上がりとなる。



「うわぁ、これはやりがいがありそう。どれから作ろうかな」
 選んでいるうちにマスカットのケーキが登場した。



 食べるわけではないので、シャインマスカットかどうかは関係ない。ちょうど今の時期にピッタリな作品になるだろう。ありがたいことに、キットのパーツは裁断ずみのようだ。



 これをチクチクと縫い合わせ、綿を入れて完成するのであろう。
 楽しみ~。
 ヤッギーさん、ありがとうございました!
 
 葡萄やマスカットは秋の季語として、しばしば俳句に用いられるようだ。では、シャインマスカットは季語として使われるのだろうか。俳句の文字数の半分を占めることを考えると、さすがに難しいのではと予想したのだが、検索してみたらヒットした。
「へぇ、入賞するなんて大したもんね」
 きっと、私以上にシャインマスカットが好きな方なのだろうな。
 この秋は、残暑が厳しく気温が高いだけじゃない。
 私の期待値も高いぞう~。

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台風に追われたダイヤモンド婚式

2024年09月01日 17時38分42秒 | エッセイ
 父と母が結婚してから、今年で60年を迎える。
「すご~い、ダイヤモンド婚式じゃない! お祝いしなくちゃね」
「うん、ありがとう」
 はにかむ二人を見て、姉・妹と一緒に、両親を喜ばせるプランを考えた。高齢となった父は車で遠出しなくなったという。那須の住まいに、私たち子どもが行くしかない。
 だが、家に大勢で押し掛けると、母に負担を掛けてしまうリスクがある。父は風呂を沸かす以外は家事をせず、テレビを見ているだけの戦力外だが、母は客用の布団を干し、部屋に掃除機を掛け、タオルや飲み物、食料の準備などクタクタになるまで動くので、自宅を会場にするのは避けなければ。三姉妹のライングループで相談を続けた。
「近場のホテルを予約する?」
「宴会できて、できれば温泉付き」
「ゆっくりさせないとね」
「いつにする?」
「8月あたりかな」
 6月には方向性が定まってきた。忙しい姉とやってくれるかわからない妹に任せるわけにいかず、自分で宿を探す。最初は高級ホテルばかりがヒットしてビビッたけれど、慣れてくると低価格帯まで見つけられるようになった。さすがに、夕食がバイキングという宿で祝うはずもなく、適さないところは除外する。
「ん? ここ、よさげ」
那須に限らず栃木県全域を検索したら、イメージ通りの宿があった。部屋は質素だが、源泉かけ流し、豪華な食事というコスパのよさが気に入った。電話であれこれ尋ねても、感じのよい対応が伝わってきて安心できる。両親、姉夫婦、妹一家、我が家の4部屋を確保し、当日を待った。
そんなときに現れたのが台風10号である。8月31日に予約をとったので、発生当初は通り過ぎるだろうと軽く考えていた。ところがかなり速度が遅く、関東に接近するであろう予想日が8月27日、28日、29日とどんどん後ろにずれてくる。
予報円に宿泊日が入ったときは、いったんキャンセルした。だが、さらにズルズルと台風接近日が遅れ、「やっぱり大丈夫かしら」と再予約をして強行突破を試みた。傘を開く必要もなく宿に着き、荒れる前に帰宅できたのだから、行って正解である。まったくお騒がせの、心臓によくない台風だった。

 久しぶりに親族11人が勢揃いし「ダイヤモンド婚式お祝いツアー」は8月31日の15時から始まった。妹一家は車で2時間も前に到着したらしい。先にチェックインして、風呂上がりのさっぱりした服装でくつろいでいたところに気合を感じた。姉夫婦も、せっかくだからと集合前に周辺を散策し、終わってからも場所を変えて鮎の炭火焼き体験をしたというから頼もしい。
 主賓の父と母は、集合時刻ピッタリに来てくれて、駐車場でちょうど車から降りてくるところだった。手を振ると、母はすぐに反応してくれたが、父の様子がおかしい。「こっちだよ」と呼んでもボンヤリと空を見上げている。しばらく会わないうちに、だいぶ老化が進んだのかもしれない。「やばい、認知症か!?」と三姉妹が焦った瞬間であった。
 チェックイン後、お茶を飲んでいたら、母から「女子全員集合」の声がかかる。どうやら、使わなくなった指輪を引き取ってほしいと考えていたようだ。娘と姪、妹は指輪選びに夢中になっていたが、私と姉は指輪よりも、父の言動の方に興味があった。姉がすかさず話しかける。
「朝ごはんは何を食べたの」
「テレビ、見なくていいの」
 だが、父の反応は鈍い。
「わからねえ」
「知らねえ」
 話しているうちに、聞こえないからわからないという意味だったことを知った。補聴器を奨めると「いらない」と答える。決してやせ我慢をしているわけでなく、しれっとした顔で「俺は困らない」とか「聞こえないふりができる」などとのたまうものだから、私も姉も大笑いしてしまった。
 宴会は18時からだ。お料理はどれも口当たりがよく、見た目も美しかった。



 地元のスパークリングワインも料理によく合う。



 次々と料理が運ばれてきて、お腹がさらに膨れていく。









 残念ながら、宿でケーキは扱っておらず、大宮で購入したデコレーションを持ち込んだ。宿の冷蔵庫で保管してくれるし、頃合いを見て皿に移し、ナイフやサーバー、取り分け皿までを貸してくれるのだから、至れり尽くせりの対応だ。
 ケーキは父の大好物の桃にした。宿から二人には、サプライズプレートの提供もあり、「うわあ、キレイ!」と声が上がって一段と賑やかになる。



 父も母も、終始ご機嫌だった。
 義弟から、「次は65年目のスターサファイア婚式だからね」と声が掛かり、場がドッと沸く。
 父に聞こえたかどうかは疑わしいが、元気なうちに、補聴器装着作戦を進めていきたいものだ。

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ビーズは何の役に立つ?

2024年08月25日 16時42分25秒 | エッセイ
 夏休み中は授業がないため、出勤時刻を30分遅らせている。
 3日ほど前にホームで電車を待っていたら、右側から「ドンドン」という鈍い音が聞こえてきた。何と、40代ぐらいの男性がホームの屋根を支える柱を強い力で蹴っている音だった。こんな人がいるのかと顔をしかめていたら、翌日はいなかった。ストレス解消のためにやっているのだろうか。
 職場に行けば、生徒間トラブルの仲裁案に納得しない保護者から苦情電話がかかってくるし、家に帰れば、夫が大量に買い置きしたティッシュやトイレットペーパーを見つけてしまいゲンナリするしで、日常生活のイライラを避けては通れない。
「何か美しいものを見に行こうかなぁ」
 年に一度しかない、仕事にゆとりのある8月だ。コロナ前だったら即美術館に向かっていたが、事前予約が必要なところが増えた今は「本当に見たいもの」を展示している場所にしか行かない。正直いって、絵画だったら姉の絵以外は見たいと思わないし、文化・教養系の展覧会も厳選するようになった。
「やっぱり服飾系よね。ドレスとか」
 すかさず文化学園服飾博物館をチェックしてみる。
「ビーズ展?」



 私が仕事を休める日と開館日が一致していたこともあり、すぐにアクセスを調べた。都庁前や新宿から徒歩で行かれるらしい。これは狙い目だ。
「これもビーズ? 何をもってビーズと言うのかしら」
 チラシの画像に疑問を感じ、ネットで検索してみたら、まずはロックユニットの「B’z」がトップに出てきて「あはは」と笑う。いい曲はいっぱいあるが、『ARIGATO』が私にとっての一番かな。
「大好きだけど、これじゃな~い!」
 やっと目当てのサイトを見つけ、「主にアクセサリーに使用する、穴の開いた小さな玉状のもののこと」であるとわかった。もっとも、展示品には玉状ではなく、細長いビーズもあったので、糸が通せればみんなビーズなのであろう。
 博物館は甲州街道沿いにあり、とてもわかりやすい。



 2階に上がり、ビーズの歴史から学習した。アクセサリーだけでなく、富や権力の象徴、社会的地位、アイデンティティー、精神世界とのつながり、防具等としての役目も果たしていたとのくだりに「へえ~」と驚く。たしかにトルコ石や翡翠をふんだんに使った装飾品を見たら、裕福なことがよくわかる。
 展示品は撮影禁止なので、チラシの裏面からご紹介したい。



 鳥がたくさんついているナイジェリアの王冠はユニークだった。



 すべて小さなビーズをつなぎ合わせてできており、従者に作らせた権力を感じる。
 ポーランドの女性用衣装は華やかだ。



 どれが刺繡でどれがビーズなのかの区別はさておき、ハレの日の一着として注目を集めたに違いない。おそらく、親が可愛い娘のために、金に糸目をつけず調達したのではないだろうか。
 1階にも素敵なドレスがたくさんあった。「特別出品 田川啓二 オート・クチュールのビーズ刺繍」と書かれた一角に、目を奪われる。



 すご~い、着てみたいっ! 身長足りないけど。

 数々の力作を堪能し、入館料は大人500円なのだから破格の価格である。
 11月4日まで開催しているようなので、ぜひ目の保養にどうぞ。

 すぐに影響されるタチなので、ブログ開設から6000日を迎える記念として、何か作ってみたくなった。きっと、垢ぬけなくて野暮ったい作品になるけれど、あと29日あるから何か考えよう。ブレスレットなら簡単かも。分不相応なトルコ石などが使えるはずもなく、オールプラスチックであること間違いなしだ。
 アクセサリーで思い出した。私はビーズの指輪を持っている。



 これは3校目の勤務先で、生徒からもらったものだ。難病にかかっていた女の子だったが、自分で体調をコントロールしながら生徒会や部活動にも取り組む明るい生徒だった。日光に当たってはいけないため、体育の時間はいつも日陰で見学していた。担任だったわけではないけれど、ある日「趣味で作っているので、よかったら使ってください」と、作品のおすそ分けをいただいたというわけだ。
 無事に卒業してから2年後、彼女は体調を崩し、そのまま亡くなってしまった。葬儀にはたくさんの卒業生が集まり、彼女がいかに多くの人から愛されていて、その死を悔やまれているかを知った。
 この指輪は、色もデザインもキレイに整っている。美しく完成させようと、彼女がせっせと仕上げたであろう工程に思いを馳せた。生きたくても生きられなかった子の前で、元気な者が弱音を吐いている場合ではない。
「イヤなこともあるけど、楽しいことだってあるじゃん。前向いていこっ」
 このビーズの指輪は、「励まし」の役目を果たしてくれたようだ。

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初心者でもできる網戸張り替え

2024年08月18日 08時55分38秒 | エッセイ
 リビングの網戸が破れていた。



「ありゃあ~」
 我が家は築30年。確認したら、南からの直射日光が当たる網戸がもう一つ、同じように破れている。西日の当たる場所や日の当たらないところは何ともないので、日差しの破壊力を思い知らされた。しばらくはテープで応急処置をしていたが、お盆休みを機に、自分で張り替えに挑戦するぞッと決めた。
 頼りになるのがこの本だ。



 用意するもの、溝の掃除の仕方、ゴムを押し込む開始地点などがこと細かく書かれており、安心して「やってみよう」という気持ちになれる。ホームセンターの動画も見たが、ここまで親切な説明ではなかった。DIYの知識が乏しい者にとってはありがたい一冊だ。
 まずは網や押さえゴムの購入から始める。網目の細かさには種類があるが、26mmというスタンダードなものを選んだ。少しでも明るい色がいいので、黒ではなくグレー。
 中にはディズニーの可愛らしい網もあった。





 好きな方は、破れていなくても張り替えちゃったりして~!
 押さえゴムは太さが重要らしい。2.8mmから6.8mmまでのバリエーションがあるので、細すぎると網が浮き、太すぎると溝に入らない。面倒がらずに、今使っている押さえゴムのサイズを測って、フィットするものを注文する必要がある。我が家のサイズは4.5mmであった。
 あとはゴムを溝に押し込むローラーを買い、道具は揃った。



 問題は作業場所をどこにするかである。あまりに暑いため、室内に段ボールや新聞紙をつなげて網戸を置き、冷房をつけて取り掛かったが、これで正解だったようだ。初心者ということもあり、わずか2枚の張り替えに2時間もかかった。暑い屋外で作業していたら、具合が悪くなっていたかもしれない。
 まずは、押さえゴムを外し、溝やフレームの掃除をする。我が家では全然していなかったので、網から白い粉が落ちてきたのにはビックリした。年に1回は洗わなくてはと反省する。



 次に網を張る場所を決める。ここで大事なのは、網目がまっすぐになることと書いてあった。しかし、老眼だと網目がよく見えない。勘でやったら、案の定曲がっていた。プロはコツをつかんでいるんだろうな。教えてほしい~!
 網を仮止めする。外した押さえゴムを短く切って上部に押し込み、ずれないように固定した。クリップ等も売られているが、この方法で十分と感じる。
 新しい押さえゴムは7m。



 ねじれないように注意し、網がたるまないように引っ張りながら、これをローラーで押し込んだ。右利きの人は、左下から始めて時計回りにグルッと一周するのがセオリーとあった。



「あはは、楽しい」
 この作業が一番面白くてやりがいにつながる。結構、力がいるが、目の前で網戸が形になっていくので、達成感がものすごい。「やった~、できた!」を最も実感する過程であろう。一周したらゴムを切って見えないように処理した。
 最後に、周囲の網をカットして仕上げとなる。



 ところが、これがかなりイライラする作業であった。網がまっすぐ張れている場所は、テケテケテケとカッターが動き、なんの苦労もないのだが、曲がっている場所はカッターが引っかかり、「カクカク」と抵抗を受けて止まる。余計な時間がかかるし、キレイにカットできず、美しくならないところがストレスだった。網戸の専用カッターも売られていたけれど、買えばよかったのだろうか。クソッ。
 細かいことはさておき、完成すると新品のように見え、素人としては胸を張って「合格」と言いたい。
 あと30年はオーケーでしょ。

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即席バナナホルダー

2024年08月11日 17時22分05秒 | エッセイ
 最近読んだ本の中で、一番役に立ったのは、小林弘幸氏の日経ビジネス人文庫シリーズである。



 たまたま、図書館で時間をつぶす機会があり、チラ見したら自律神経を整える意義が書かれていた。これには大いに共感し、借りるだけでは物足りなくて、購入に至ったというわけだ。ものの見方・とらえ方を変えるだけで自律神経の乱れがなくなり、準備や段取りに力を入れれば、持てる力を存分に発揮することにつながる。誰にもできて難しくないだけに「やってみよう」と前向きな気持ちになれてよい。
 もちろん、元気に活動するには体の調子も重要であり、腸内環境についても触れられていた。ここは少々耳の痛い箇所だ。ソフトクリームやフラペチーノが好きな身としては、腸を労わっているとはいえない。だが、バナナが腸に効くのであればチャレンジしたい。防カビ剤等を避け、有機JASのバナナを買い、腸の健康も目指すことにした。



 久しぶりに食べるバナナは甘い。朝食にしたら、腹持ちがよく満腹感もある。これなら苦もなく続けられそうだ。
 さて、保管はどうしよう。一般的には、バナナは傷みやすいため、ホルダーやスタンドに吊るしておくことが推奨されている。



 残念ながら、うちにはこんな洒落た道具がなかった。でも、吊るすだけであれば、耐荷重1kgの強力マグネットフックがある。



 これにバナナを引っかけてみてはどうか。



 ……違和感がすごいが、置いておくより、バナナへのダメージが減るらしい。最初に買った房は、このように保存し、最後まで美味しくいただくことができた。
 もっといい方法がないかしら、と別の場所を探してみた。



 うん?
 木目込み細工のために買ったスタンドが目に入る。



 やはり! ピッタリではないか。
 しばらくバナナ用にしてしまおうと、安易な考えが浮かんでくる。
 追い出された金魚の「あーれぇ」という哀しい嘆きが聞こえた気がした。
 ゴメンゴメン、セリアで代わりのスタンドを探してくるから待っててね。

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