これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

朝活英会話

2023年05月28日 21時53分36秒 | エッセイ
 新年度にやると決めたことが実現し始めている。
 まずコーヒーを減らすこと。水を飲む習慣ができてよい。
 次に早起き。4:20に起きて5:45に家を出れば、職場到着は6:50だ。ゆとりを持って始業を迎えることができ、ホッとする。
 問題は英語の学習。私はもっぱらラジオ派なので、テレビは候補に入っていない。でも、ラジオで学ぶ英語講座の多さといったらビックリするほどだ。たくさんあり過ぎて、どれにするか迷ってしまう。
「毎日できて、長めの番組がいいんじゃないかな」
 検索すると「ラジオ英会話」なるものが希望に一番近いとわかった。1日に4回も放送されている上、聴き逃し配信もあり実に手厚い。そんなに面倒みてもらえるなら、頑張っちゃおうかなぁという気持ちになる。で、いつ聞く?
「うーん、お弁当を作っているときがいいかも」
 起床後、身支度をして洗濯機を回し、弁当を作りはじめるのは4:40なのに、NHK第一放送のニュースは朝5時開始である。実のところ、空白の20分を埋める音が欲しいとは思っていた。
 スマホを手に取り、聴き逃し配信にアクセスする。



 一週間は、好きな時間に聴くことができて便利だ。



 再生ボタンを押すと、いきなり講師の男性のダジャレが飛び込んできた。
「なに?」
 続いて女性の「センセーイ、ネタ切れですね」という厳しいツッコミが追いかけてきた。おやおや。何だか開始早々、盛り上がっているぞ。テンポよく進み、聞いて、話して、考えて、練習しての15分間があっという間に終わった。ふーむ、これなら続けられそうな気がしてきた。
「となれば、テキストがあるといいよね」
 本屋でこちらを購入する。



 現金なもので、コストが発生すると、元を取ろうとしてモチベーションが上がる。私だけかもしれないなぁ。このすくすく育った「やる気」が、別のことをしながら聴くのはもったいないと訴えてきた。
 ちゃんと、テキストを見て、集中しなさいよ、と。
「うん、まあ、それもそうだよね」
 結果、どうしたかというと、5:45に家を出るのをやめた。乗る電車を元に戻し、出発を6:15に繰り下げる代わりに、5時までの15分間、テキストとにらめっこをして英会話に集中する時間を確保したのだ。弁当作りは英会話が終わり、5時のニュースを聞きながらすればよい。朝活もできて、気分よく一日のスタートが切れる。
 ここまで読まれて、疑問を感じた方がいらっしゃるかもしれない。
 4時に起きれば、この人は英会話にも集中できるし、6:50に職場に着くことも可能なのに、なぜやらないのかと……。
 いやあ、さすがに4時起きは厳しいので、そ、それは遠慮します。

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Twitter 11カ月

2023年05月21日 20時59分35秒 | エッセイ
 勤務校のTwitterを始めて、今月で11カ月になる。
 開始当時はフォロワーが6人しかいなかった。「公式アカウントなのにこの数字はマズい」と焦ったが、新しいツイートをしないことには、フォロワーが増えるはずもない。とにかくツイート、ネタを絞り出してツイート、人からもらってでもツイート、と粘っていたら、ジリジリと増えてきて、11カ月後の今はようやく3桁になっている。ホッ。
 だが、4桁、5桁のフォロワーを誇る学校もあり、上を見たら切りがない。まあ、200ぐらいいけば御の字だろうと思っている。レベル低ッと言われそうだが、高望みはストレスの素。自然体で行けばよい。
「よく書けるねぇ」
 私の執念に校長は少々引き気味だ。ブロガーとして、私は10年以上、ろくでもない記事をネチネチとアップし続けているのだから、上限140字のTwitterなんぞどうってことはない。なるべくウケそうなネタを探し、それらしい写真を添えてツイートする。「いいね」を71個もらったときは、嬉しくて悶絶しそうだった。やはり、レベル低ッと笑われそうだけど。
 先日、予想外のことが起きた。勤務校よりずっと偏差値の高い都立高校に「フォローされました」との通知が届いたのだ。
「ナニナニ、何があったの?」
 先方のプロフィールを確認すると、フォロワーは4桁いるが、フォローしているのは私の勤務校だけ。こういう場合はどういう対応をしたらよいのだろう。キングジムと井村屋のようなオトモダチ関係を目指すつもりで、こちらからもフォローバックをした。
 だが、何かの間違いだったようだ。翌日にはフォローが解除され、無言で立ち去られていた。おそらく、何らかの原因で偶然にも「フォローする」のボタンを押してしまったものと思われる。あちらの「中の人」が気づいたときは、さぞかし驚いただろうなと苦笑した。「なんじゃ、こりゃあ」と叫んじゃったりして。
 フォロワーが120に届いたとき、気をよくして某カフェで甘いものをいただいた。



 しかし、このコーヒーゼリーは大人の味だったため、私には苦過ぎた。
 しかも、足場が悪かったせいか、運ばれてきたときからソフトクリームが傾いている。



「こりゃ、この先にも波乱万丈があるって暗示かもね」
 いやあ、上等上等。
 平穏無事な毎日は退屈なだけだ。
 何が起きるか読めないけれど、これからも楽しませていただきますよ。

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忘れ物だらけの墓参り

2023年05月14日 21時57分14秒 | エッセイ
 コロナが5類に引き下げとなり、人の動きが活発化してきた。
 毎年、春先は祖父母の墓参りをしていたので、今年こそはと母に声を掛けてみる。
「いいね、行きたい」
「じゃあ、いつにしようか」
 あいにく、母と都合の合う日は今日しかなかった。だが、私は雨女である。朝は曇りだったが、11時頃からまとまった雨が降ってきて「うへえ」と顔をしかめた。
 幸い、待ち合わせの時間には雨雲が去り、止んでいたのでホッとした。私にも人徳というものがあったのではと勘違いしそうである。
 電車を降りて改札に向かうと、向かい側から見覚えのあるおばあちゃんが歩いてきた。あれは母だ。腹が以前よりも大きく見え、歩くペースが遅くなっている。ちょっと会わないうちに、何歳も老けてしまった感があった。
「お母さん、久しぶりだね」
「ホントだね」
「雨は大丈夫かな」
「今ならいいんじゃない」
「じゃあ行こう」
 いつもだったら、まずコーヒーを飲み、一服してからタクシーに乗り込むのだが、今日はそういうわけにいかない。降っていない今がチャンス、とばかりに急いで花を買いタクシーの列についた。
「八王子霊園の○区までお願いします」
 偶然にも、夫の両親と母の両親が同じ霊園で眠っているため、ここでは2か所の区を回る。まずは夫の両親の下へ行き、忘れ物に気づいた。
「しまった、雑巾がない」
 汚れた墓石が嫌でも目に入る。そういえば雑巾を持参し、拭き掃除をしていたと思い出した。3年も間隔があくと、すっかり忘れてしまうようだ。
「チャッカマンもない」
 しかし、線香にはマッチがついていたので何とかなった。
「ゴミはどうしよう」
 花を包んでいた包装紙やセロファンはゴミになる。バッグを漁ったら、折りたたんだレジ袋が見つかり、「よかった!」と小さく息を吐いた。忘れ物ばかりして、何と準備の悪いことか。
 キレイにしてあげられなかったけれど、花を活けて線香を手向けるだけでも供養になるだろう。そういえば、お菓子やお酒などのお供えも持ってこなかった。本当に会いに来るだけになってしまったと苦笑し、タクシーに戻った。
「じゃあ、駅に行ってください」
 母も私も不届き者であったが、天気は味方してくれたようだ。あとはお昼を食べて帰るだけ。コロナ前は南口まで足を延ばし、揚げ物や寿司、洋食などを食べに行ったものだが、そこまでのエネルギーはない。北口改札横の一言堂にお邪魔することにした。ここは料理もデザートも美味しい。
 母はメニューから料理を選ぶのに時間がかかるようになった。好みはわかっているので、誘導するように尋ねていく。
「カレーとハヤシライスがあるんだって。辛かったらイヤだよね」
「うん。辛くないのがいい」
「じゃあ、ハヤシライスにしよう」
 飲み物にも目を走らせた。
「柑橘系のジュースは酸っぱいかもしれないね。リンゴにしておく?」
「うん。リンゴがいい」
 現金なもので、食べ物にまつわる記憶は鮮明であり、何も忘れていない。
 一方、私は母が避けたカレーライスとオレンジジュースを注文する。決して逆らっているわけではないが、好みが違うのだ。肉は崩れるような柔らかさで、柑橘系の酸味にマッチしていて美味だった。



 母が食後のコーヒーを楽しみにしていることも知っている。
「食べ終わった? じゃあ、デザートにチーズケーキとコーヒーを頼もうよ」
「いいねえ」
 待っている間に壁に掛けられた絵を見ていた。



 高尾駅を描いたものだが、よく見ると、切手が使われている。



「へー、すごいね、これ。切手アートっていうのかな」
 感心しているうちに、目当てのものが運ばれてきた。



 こちらもイケる。チーズケーキのコッテリ感と、苦み走ったコーヒーの組み合わせは最強だ。「お腹が苦しい」と言いつつ、全部をペロリと平らげた母が微笑ましかった。
 次回はお彼岸の9月だ。
 今からゴミ袋と雑巾をバッグに入れておこうかしら。

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最強のアート鑑賞

2023年05月07日 21時44分34秒 | エッセイ
 今年のGWは人出が多いと聞くが、私は5日のうち4日は家でダラダラと過ごしていた。
 唯一のお出かけは、戸栗美術館とシェ松尾がコラボした企画「アート&イート」に参加するため、渋谷に駆けつけたことである。



 戸栗美術館のTwitterを見たとき、大好きな柿右衛門を鑑賞して、美味しいシェ松尾のフレンチがついてくる程度の認識しかなかったのだが、もっと奥が深かった。
「本日は、奥の部屋で作品に触れていただいたあと、展示室にご案内して初出展を含む展示をご覧になり、そのあとレストランに移動します」
「えっ、さ、触れるんですか!?」
「はい」
「すご~い!」
 しかも、学芸員の方の解説付きであった。
 まずは、1630年頃の作品から。



「この頃は製造技術が未熟で、数カ所に気泡がありますし、裏側には釉薬を塗り忘れたところも見られます」
「ホントですね、アハハ」
 手に取ると、ズシリと重い。390年も前に焼かれた皿が、自分の手元に残っていることにロマンを感じる。
 次に、1650年ごろの作品を紹介された。



「技術の進歩が見られ、薄くて滑らかな仕上がりとなっています。釉薬の使い方も変化しました」
 20年も経ったのだから、それは当然だろう。花のようなカッティングが魅力的だし、華やかな色彩も見事だ。軽くて機能的なお皿という印象を受けた。
 そして、本命の柿右衛門がやってくる。



「こちらは1680年頃ですね。柿右衛門様式は縁に赤で唐草模様が描かれていることが多いのです」
 こんなに近くで見たことはないと思う。お皿に描かれた一つひとつの絵柄まで鑑賞できて舞い上がり、もし窓が開いていたら、風に乗って飛んでいったに違いない。
 最後に1690年頃の金襴手となった。



「窓がいくつもあるデザインですが、中は同じ模様の繰り返しになっています」
「ほー」
 どのお皿も手触りがよく美しかった。こんなに贅沢な鑑賞の仕方は、めったにない。来年もGWに同じ企画をするというので、また参加したい。
 たっぷりお皿に触れたあとは、2階の展示室で「柿右衛門の五色」にまつわる解説を聞いた。自分のペースでゆっくり見るのもよいが、短時間で効率よく理解できるレクチャー付きはありがたい。
「赤、青、緑、黄、金が柿右衛門の五色です。ときには六色になることもあります」
 どの絵柄に何色が使われるかは、規則性があるらしい。
「六色のときは茶色が使われます。植物の枝をご覧ください」
「おお~」
「こちらの犬は3色しか使われていませんので、黒が入ってきます。黒は剥離しやすいので、上から緑を重ねています」
「本当だ~」
 という具合に、展示室の隅から隅まで見て回ったあとは、いよいよランチである。



 渋谷区松濤という場所は、元は鍋島藩の治めた土地だったらしい。佐賀にゆかりのある場所で、佐賀の食材を使ったお料理をいただくのだから、粋な演出である。
 どの料理も美味しかったが、春先のアスパラは季節感があってよい。



 デザートには嬉野茶で作った葉が載っていた。



 なんといっても、柿右衛門のお皿に乗って焼き菓子が登場してきたことがうれしかった。



 食後はお庭に案内され、紅茶をいただいた。





 ほんの4時間ほどのイベントだったが、中身が濃すぎて、家に着いてからも興奮冷めやらず……。
 出かける日数や距離も大事だが、密度という視点から考えると、ここ数年ではこのイベントが一番盛り上がったかな。
 作品と触れ合える、最強のアート鑑賞。

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